刑期の始まりと終わりとは?刑期満了を迎えるまで
- 2025年1月20日
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- 10分でわかる刑事手続き
- 刑事事件弁護士相談広場
刑の確定は14日後
刑事事件の終わらせ方には、無罪となる不起訴処分や、有罪となっても早期に身柄の拘束からの解放を実現し社会復帰を果たす執行猶予の獲得など、さまざまな種類があります。
しかし懲役刑に相当する罪を犯してしまった場合、逮捕され勾留を受け、起訴されるとさらに身柄の拘束が続き、執行猶予なしの実刑判決を受けてしまうと、最終的な刑事事件の終わり方は、言い渡された刑期が終了するまで刑務所での受刑生活を過ごすことになってしまいます。
日本の刑事手続きでは、判決の言い渡しの翌日から14日目に判決が確定します。よって裁判が結審してから15日後には刑が確定し、懲役刑を受けた被告人は受刑者となり、刑務所に収監されることになるのです。
被告人から受刑者に
勾留期間中に保釈が認められなかった被告人は、そのまま拘置所において身柄の拘束が継続され、判決が確定した時から受刑者という立場に変わります。保釈が認められていて、一般社会で生活をしながら裁判を受けていた人は、第一審で実刑の判決を受けた場合は、判決が下された後に法廷で身柄が拘束され、そのまま拘置所に行くことになります。
身柄が拘束された直後に控訴手続を行い、追加の保釈金を納付すれば裁判所内で再び釈放されるケースもあります。一方、控訴審で実刑判決を受けた場合は、判決直後に身柄拘束がされることはなく、後日改めて検察庁に出頭するケースが多いようです。
控訴や上告の判断は慎重に
裁判において下された判決に不服があるのであれば、より上級の裁判所に控訴することが可能で、控訴審でも満足できなければ最高裁判所へ上訴することで裁判を繰り返す事は可能ですが、現実的には再審で判決が覆されることはほぼないと考えた方が良いでしょう。
裁判にかかる費用や期間など、現実的な要素を弁護士としっかり相談して、対応策を考えることをお勧めします。もちろん冤罪の場合は、最後まで無実を証明するため徹底的に戦うべきです。
本項では、執行猶予なしの実刑判決を受けた後、どのような流れで刑期が終えるまで過ごすことになるのかを紹介します。
どこの刑務所に収監されるのか?
裁判が結審し、執行猶予が付かない実刑判決が下された場合、どこの刑務所に収監されるのかは、受けた刑の内容や受刑者の状況によって決められます。たいていの場合はすぐに刑務所に移送されることはなく、いったん拘置所に収監され、受刑者の適正と、受け入れる刑務所の収容状態などの調整が行われることになります。
ちなみに、刑務所と少年刑務所、拘置所は合わせて刑事施設と呼ばれていますが、全国には奈良県を除く46都道府県に刑事施設があり、刑務所62、少年刑務所7、拘置所8、刑務支所8、拘置支所103の、合計188施設があります(2010年4月現在)。
そして2016年の矯正統計調査によると、同年末の受刑者数は男44,911人、女4,116人の合計49,027人となっています。
初犯なのか、累犯なのかで行き先が左右される
日本の62の刑務所には、医療処置が必要な受刑者が収容される医療刑務所、重大な交通違反は交通事故を起こした受刑者が収容される交通刑務所などがあり、該当する受刑者はそれらの刑務所に収監されることになります。一方で、明確な規定はないものの、受刑者の適正や受けた刑罰によって、収監される刑務所が決まると言われています。
初犯で実刑を受けた受刑者は、初犯向けの刑務所に収監されると言われていますが、初犯かどうかの判断は、実際に初めて罪を犯したかどうか、よりも再犯の可能性が高いのか、あるいは低いのかという基準で決められるようです。
そのため、反社会的組織の構成員であれば、初犯であっても累犯のように犯罪傾向の進んだ人として、初犯向けの刑務所には送られないようです。加えて、刑期の長さも収監される刑務所の決定要因となります。現在は懲役(禁錮)8年の刑期を基準として、刑期8年に満たない受刑者が短期、8年以上の受刑者が長期とされ、その刑期に対応した刑務所に送られます。
以上のように受刑者の犯罪傾向と刑期の長さ、この2つが勘案されて収容するべき刑務所選考されます。
地元の刑務所に行くことは可能?
全国にはたいてい各都道府県に刑務所がありますが、その地域で起きた事件の受刑者を収容するために刑事施設が設置されているのではなく、各刑務所には初犯向け、長期受刑者向けという区分けがされています。受刑者はその区分けによって最も適した刑務所に送られますので、地元の刑務所に送られるとは限らないのです。
判決が下った後に拘置所内で一定期間、刑務所の選考が行われるのですが、そこで受刑者の希望が聞かれたとして、犯罪傾向や刑期に合わせて矯正管区内で収容可能な刑務所の候補はあるものの、必ずしもそこに収容されるわけではありません。
とはいえ、刑務所には矯正管区という区割がありますので、北海道で起きた犯罪の受刑者が九州の刑務所に送られることはほぼなく、定員オーバーなど刑務所の事情によって矯正管区をまたぐことはありますが、たいていは事件が起きた矯正管区内の刑務所に送られるのが普通です。
受刑者の希望は、家族や友人・知人が面会に来やすい地元の刑務所や、冬の寒さがしのぎやすい地域にある刑務所、あるいは施設の設備が少しでも新しい刑務所となりますが、実際に元受刑者の体験談などからは、その通りの刑務所に送られたという話は聞かない代わりに、最も希望しない刑務所に送られたという話はよく聞かれます。
未決勾留があった時、刑期の計算方法は?
刑事事件の裁判で懲役や禁錮などの実刑判決が確定すると、まずは拘置所へ身柄が収監されます。
但し勾留中に保釈が認められていなかった場合は、ずっと拘置所に未決囚として勾留されているケースも少なくありませんが、裁判で実刑判決が確定すると立場は未決囚から既決囚(受刑者)へと変わります。
勾留期間中に保釈が認められていた場合は比較的簡単なのですが、未決勾留で長期にわたり拘置所に収監されていた場合は、計算方法が変わってきます。
未決勾留期間は刑期から差し引かれる
刑事事件の手続きにおいて、は裁判の結果、無罪となった場合は、裁判のために身柄が拘束されていた勾留期間は、刑事補償法に則り1日あたり1,000円以上12,500円の範囲内で補償が行われますので、請求を忘れないようにしましょう。
また、有罪の実刑判決の場合にも、判決が確定する前の起訴勾留というのは、被告人を必ず法廷に出廷させるために裁判所側の都合で行われるもので、金銭的補償はない代わりに実際の刑期から未決勾留日数分の何割かを差し引かれることになっています。
実刑判決が言い渡される際、裁判官は判決文で「被告を懲役○年○月に処する」と刑罰を申し渡した後、「未決勾留分の○○日を刑期から差し引く」と付け加えるのが一般的です。
未決勾留期間というのは、司法の世界では起訴されてから判決が言い渡されるまでの期間ですが、この日数がすべて刑期から差し引かれるわけではないことに注意が必要です。それは、刑期から差し引く日数を最終的に決めるのは裁判官で、同じような事件であっても裁判官によって差し引かれる日数に違いがあるからです。
基本的には、未決勾留日数は起訴勾留日数-{30+10×(公判期日の回数-1)}=刑期から差し引く日数という公式があります。
起訴勾留の日数から、基本的な審理に必要とされる30日と、1回ごと公判の事務処理に必要な日数10日を公判回数分だけ掛けた日数をまとめて差し引くという考え方になります。
仮釈放を目指して、刑期を過ごす
どの刑務所に収監されるかが決まり、刑期も確定すれば、受刑者は実際に刑期を務める刑務所に行くことになります。入所した際に自分の刑期が満期になるのがいつかは教えてもらえます。
刑務所内で呼ばれる自分の番号と同じく、日付は必ず覚えておくように言われ、受刑者は満期日までの日を数えながら生活を送ることになります。
真面目に刑期を務めれば仮釈放も
日本の刑務所は、受刑者に罰を与える施設であると同時に、矯正させて社会復帰させるという目的もあり、どちらかといえば矯正の方に重きを置いている傾向があります。
そのため、刑期の満期いっぱいまで刑務所で収監されているような人は、よほど短期の刑であったか、暴力団関係者など反社会的組織に属している人、あるいは刑期中に刑務所内でたびたび問題を起こした人でしょう。
仮釈放とは刑期の前に釈放が認められることですが、普通であれば、刑期の3分の2程度が経過した時点で釈放され一般社会に戻る事ができるものです。仮釈放中は制約もつきますが、満期日を過ぎれば、完全に自由の身となります。
ここですべての刑事事件の手続きは終了となり、同じ事件で再度逮捕されたり、裁判にかけられたりすることはありません。
弁護士ができることは?
裁判が終了し刑が確定してしまえば、再審がない限り弁護士が罪を犯した人(被疑者・被告人・受刑者)と関わることはあまりありません。しかし刑期が終えるまで刑務所に収監されたままというのは、刑事事件の終わらせ方としては最も厳しいパターンです。
それ以前に、可能であれば逮捕された直後に、遅くとも勾留期間中には弁護士の力を借り、一日でも早く刑事事件を終わらせる努力をすることをお勧めします。
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