刑事裁判の登場人物~メインは被告人および弁護人、検察官、裁判官~
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この記事で分かること
刑事裁判は形式を重んじる場
裁判所で行われる刑事事件の裁判は、テレビドラマや映画で見るような法廷で行われますが、弁護人や検察官が自由に歩き回って熱弁を振るったり、被告人に発言を迫ったりすることはありません。
裁判官は以下に説明するように、法廷警察権を持っており、法廷の秩序を維持し、適正な審理が行われるように、裁判をコントロールするのです。またほとんどの裁判は公開で行われ、一般人の傍聴が許されますが、ここでも発言は規制され、写真撮影などは許されません。
法廷警察権とは?
法廷警察権とは、裁判官が審理を公正に行うことを目的とし法廷の秩序を守るため、予防的作用、排除的作用、また罰則を与えることができるとするものです。予防的作用とは、多くの傍聴人が予想される裁判においては、人数を規制するためにあらかじめ傍聴券を配布したり、すべての裁判において傍聴人に対して所持品検査を行ったりすることです。
排除的作用とは、裁判官の職務の進行を妨げたり、不当な発言や行いをする人に対して退廷命令、在廷命令、発言禁止令などを行ったりすることとなります。これらの命令に従わなかった場合には、裁判所は対象者の身柄拘束を命じることができ、20日以下の監置、あるいは3万円以下の過料に処することができます。
基本的に裁判は公開で行われる
裁判は基本的に公開の法廷で行われなければなりません。これは、憲法第37条第1項に「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」、および同82条第1項に「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う」と定められている通りです。いわゆる密室裁判で被告人が不当に処せられることを避けるための規定で、衆人環視の下で公平公正な審理と判決が下されるべきだというものです。
しかしながら、同82条第2項には「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない」と規定されている通り、非公開とすることが可能とされています。
一方で上記憲法第37条に定められている、被告人が公開裁判を受ける権利を侵すことはできないという見方が強く、刑事訴訟手続き上では、非公開で刑事裁判を行うことはできないとされています。
刑事裁判の登場人物
裁判には定められた登場人物がいて、このうち一人でも欠けると公判を開くことはできません。刑事裁判は基本的に、被告人、弁護人、検察官、裁判官の4人の登場人物によって進められます。
被告人とは
被告人は、裁判で罪を裁かれる人です。刑事事件の被疑者として逮捕された人は、勾留期間中に起訴されてから被告人と呼ばれることになります。民事事件の裁判では訴えられた人を被告と呼ばれますが、刑事裁判では被告人です。そして被告人不在の欠席裁判は無効とされています。
実際の裁判では、法廷で被告人が大声を上げるなどの不規則発言をしたり、暴れたりした場合には、裁判官が被告人を強制的に退廷させることがありますが、民事裁判と違って被告人が最初から法廷に出廷しないということは許されません。保釈制度を利用して身柄の拘束が解かれていた場合でも、保釈金が還付されるための最低条件は公判には必ず出廷することになっています。
弁護人とは
検察官の追及から被告人を守り、少しでも罪を軽くするために弁護活動を行うのが弁護人です。弁護人の職業は弁護士ですが、刑事裁判の法廷内では、あくまでも弁護人と呼ばれます。弁護人には主に、被告人が選任した私選弁護人、国が指定した国選弁護人がいますが、どちらも同じ弁護士です。
被告人が弁護人を選任しないで裁判を行うことも可能なのですが、必要的弁護事件では必ず弁護人がいないと裁判は開廷されず、弁護人を必要としない軽微な事件では、多くの場合は被告人が全面的に罪を認めていることがほとんどで、裁判が開廷される前に判決が決着していると言っても良いでしょう。
しかしどのような軽微な犯罪であっても、起訴されてしまったからには、少しでも刑罰を軽くするために、もしくは社会復帰を早めるためには、弁護人を選任して刑事事件の手続きを進めるべきだと言えます。
民事事件の裁判では同じ立場の人を代理人と呼びますが、どちらも特殊な場合を除き、弁護士を職業とする人が担当します。
検察官とは
検察官は、被告人の罪を訴追します。被疑者の逮捕を行うのは警察官がほとんどですが、起訴を行うのは検察官でないとできません。身分は検察庁の検事が担当しますが、被告人が逮捕された直後の取調べを担当したり、起訴を決定したりした検事とは別人であることも珍しくはありません。
むしろ高等裁判所のあるような都市部(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)では、検察庁内で被疑者を調べる捜査部と、裁判を争う公判は別のセクションになっていますので、実際の刑事裁判に登場する検事は別人であることが普通です。
裁判官とは
裁判官は、事件を審理して最終的に判決を下す立場にあります。被告人および弁護人、検察官双方の主張を聞いて事件を審理した上で、無罪、有罪、刑罰、量刑の重さなどの判決を下します。
裁判所は役所の一つでありながら、すべての官庁から独立しており、裁判官はさらに一人ひとりが独立した権を持っています。つまり裁判で裁判長として預かった事件の裁判に関しては、すべての権限と責任が与えられているのです。
法廷内では裁判官の権限は絶対で、被告側と検察側は裁判官に対し、自らの主張を認めてもらおうと、ありとあらゆる法廷戦術を駆使するのが刑事裁判だとも言えます。
裁判官は何人いる?
刑事事件の裁判においては、裁判官は1人とは限りません。裁判官の人数は裁判所によって違い、簡易裁判所では1人ですが、地方裁判所と家庭裁判所では事件の内容によって1人または3人、高等裁判所では3人の裁判官によって裁判が進められます。
最高裁判所では、特に重要な問題について審判を下す時は、大法廷において15人の裁判官全員によって裁判が行われます。
刑事裁判のスタート
以上の登場人物が全員揃って刑事事件の裁判は始まります。刑事事件の被疑者として逮捕され、起訴されて被告人となってしまった場合、裁判がどのように始められるのか確認してみましょう。
裁判所には複数の法廷があり、刑事第○○号法廷などと、法廷ごとに民事か刑事かという区別と法廷番号が振られているのが通常です。ここで指定された法廷で裁判が行われるのですが、被告人がどうやって裁判所の法廷に姿を現すのかは、保釈されているかどうかで違ってきます。
裁判における被告人の姿
被告人が保釈されずに勾留を受け続け、拘置所あるいは留置場の刑事施設で身柄を拘束されたままであった場合、公判日の当日朝早くに護送バスで裁判所に連行されます。身柄拘束中の被告人は、一般人が入れないエリアの待合室で公判が開廷されるのを待ち、公判開始の数分前を目安に手錠をかけられ腰縄を打たれた姿で、2人の刑務官に連れられて法廷へと入廷します。
多くの場合、すでに裁判を傍聴する傍聴人が座る傍聴席はすでに開放されているため、そこに手錠と腰縄姿の被告人が現れると、いかにも犯罪者という印象を与えてしまいます。いくら罪を認めていても、判決が下されるまでは法律的に推定無罪の被告人に対して、人権を無視した取り扱いだという指摘もありますが、現状は身柄拘束中の被告人についてはこのような扱いを受けてしまいます。
開廷中は、弁護側の席の前にあるソファが被告人の定位置となり、ここに座る前に手錠と腰縄は外されますが、被告人の両横には刑務官が腰を降ろします。被告人の格好はまだ有罪判決が確定したわけではありませんので基本的に私服ですが、多くの被告人は留置場や拘置所内で着ている衣服、つまりジャージやスウェット姿になってしまいます。
そして被告人の履物は刑事施設で用意している、走って逃げられないサンダルと決まっており、身柄拘束中は自殺防止の観点からネクタイも付けられませんので、スーツ姿で現れる被告人は非常に限られています。しかし最近は、ヒモ状にはなっていないフック型のネクタイと、一見革靴に見えるサンダルなどであれば、それを身に着けて出廷することが認められるようになっています。
一方、保釈を認められ、身柄が解放されている被告人は、弁護士と共に、一般人と同じ入り口から裁判所に入り、法廷へ入廷します。公判が始まる前から入念に弁護士と打ち合わせをしていますので、普通はスーツなど整った服装で現れるため、法廷に入った後に傍聴席と法廷を仕切る柵を開けて被告人席に座らない限り、一般の傍聴者と区別はつきません。
裁判官が現れ、審理がスタートする
民事事件、刑事事件の区別なく、裁判は定刻と同時に裁判官が法廷に入廷して開始されます。この際、裁判所の書記官が、「ご起立ください」と声を掛け、傍聴人を含む全員が起立して一礼をし、一堂が着席するといよいよ審理が開始されるわけです。ただし検察官、あるいは弁護人がまだ法廷に到着していないケースがたまにあります。
公判のスケジュールは、かなりタイトに組まれているため、案件をいくつも抱えている検察官や弁護人は、前の公判の時間が延びてしまうと、次の公判に間に合わないこともあるのです。遅刻といってもたいていは5~10分程度が普通ですので、裁判官の指示によって、皆静かに検察官や弁護人の到着を待ち、刑事裁判の登場人物がすべて揃った時点で、公判は開始されます。
裁判を傍聴するには?
公開の裁判所で行われる裁判は、誰でも傍聴することが可能です。もし家族や友人・知人が被告人として裁判に出廷するようなことになった場合は、できる限り傍聴することをお勧めします。
実際に罪を犯してしまい、家族にあわせる顔もないと被告人は考えるかもしれませんが、逮捕以降外部の人間と一切の接触が断たれ、孤独のうちに日々の厳しい取調べを受け、身柄が拘束される生活が続いているとしたら、かなり精神的に追い込まれていることでしょう。
そういう時には、少しでも家族や友人・知人の顔を見ることができたら、反省の念を強くし、たとえ有罪判決で実刑を受けてしまったとしても、待っている人がいると思えば早期の仮出所につながるような刑務所での服役態度につながるかもしれません。
裁判所に行くだけで傍聴は可能
実際に裁判を傍聴するには、弁護士に公判日程と場所を確認してもらい、その場に足を運べば大丈夫です。どの法廷でも自由に入ることができ、写真撮影や録音は禁じられていますが、傍聴席に座り裁判を傍聴することが可能です。
しかしもし、事件が世間の話題となり、多くの傍聴人が予想される場合には抽選となってしまい、傍聴券が必要となりますので注意しましょう。
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