逮捕後、警察の捜査官が作成する2つの書類。弁解録取書と身上調査書

書類

被疑者が逮捕されて取調べが始まると同時に、捜査官は「供述調書」の作成を始める。たいていの場合は「弁解録取書」と「身上調査書」の2種類となる。後の裁判において重要な証拠となるため、少しでも事実と異なる点があれば、署名拇印を行ってはならない。

逮捕後の取調べで作成される書類とは?

逮捕の現場を描いたドラマやマンガなどでは、捜査官や警官が逮捕した後の場面を細かく紹介しているものはほとんどありません。

逮捕された側の視点でストーリーを描いている場合でも、逮捕された後はいきなり留置場へ入れられているシーンとなる場合が多く見られます。

しかし現実の刑事手続きでは、逮捕後に警察署へ連行した被疑者をそのまま留置場に入れてしまうことは滅多にありません。

警察署の取調室で始まる取調べ

留置場に入れる前に、被疑者の写真撮影や指紋採取といった手続きが行われ、非常に大切な最初の取調べが行われます。

この際に警察の捜査官(警察官や検察官)は、被疑者の供述内容をメモに取り、多くの場合はパソコンで改めて書類の作成を始めます。

捜査官が作成するこの書面は「員面調書(司法警察員面前調書)」というものですが、普通は単に「調書」と呼ばれます。

逮捕された被疑者から聞き取ったことを記録する書類

取調室では、担当の捜査官が被疑者から容疑や事件に関する証言を聞き出し、それを「供述調書」と呼ばれる書類にします。

「供述調書」には決まった形式があるわけではないようですが、被疑者が警察官や検察官に話した内容を、捜査官がパソコンを使ってまとめる形で作成されます。

逮捕直後の警察での取調べにおいては、「弁解録取書」と「身上調査書」という2つの重要な「調書」が作成されます。

逮捕直後とはいえ、この時点で作成される書類は、被疑者の供述を証拠として残すためのものであり、後の刑事裁判における非常に重要な書類となるのです。

被疑者に聞き取りを行い、調書を作成する法的根拠

警察が逮捕状を取り、被疑者を逮捕した後、「供述調書」を作成することの法的根拠は、下記の刑事訴訟法第198条および203条に規定されています。

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

○2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

逮捕後に作成される書類「弁解録取書」の内容は?

被疑者が逮捕された直後の取調べにおいて作成が始められるの が、「弁解録取書」(通称:弁録)です。

この「弁解録取書」は、刑事事件の容疑に対して被疑者が主張すべき行う最初の言い訳 と分と言ってもいいかもしれません。

罪を認めている場合と、否認している場合で書き方が違う

被疑者が逮捕された事件に関して、容疑を最初から認めているのであれば、「弁解録取書」の内容は、「いつ、どこで、罪を犯してしまいました。大変反省しています」と、事件のあらましを語ったあと、自分の罪を認めて反省しているという内容になります。

具体的な内容は、供述した人物(被疑者)の氏名、生年月日、住所、電話番号、職業などの情報から始まり、罪を犯した事件が起こった日付、時間、場所、内容などが一人称で書かれるのが特徴的です。

文章は「私は、…」から始まり、傷害事件ならば逮捕の要因となる行為を事細かに記載し、事件当時の状況が被疑者の語りの体裁を取って書かれることになります。

容疑を認めていない場合は、不自然な文章になる

一方、逮捕容疑を否認している場合には、「そんな事をした覚えはありません」と、事件の内容に関する容疑を完全否定する文面になるのですが、その書き方は一人称ではなく、一問一答形式になります。

例えば、捜査官の「あなたは、○○月○○日に○○にいたのか?」という問いに、被疑者の「いいえ、その時間にそこにはいませんでした」というような答えが記載されます。

一問一答形式は、被疑者が頑強に容疑を否認し、捜査官が思い通りの供述を引き出せないような場合に用いられる事が多く、たいていは前者の一人称で語ったような形式の調書がほとんどです。

被疑者が罪を認めているか否認しているかは、事件捜査や取調べの駆引きにも重要なファクターになりますので、「弁解録取書」の内容は、警察や検察にとって今後の方針を決めるモノだと言っていいでしょう。

逮捕後に作成される書類「身上調査書」の内容は?

逮捕後の最初の取調べで作成される「供述調書」には、「弁解録取書」のほか、「身上調査書」があります。

これらの「供述調書」はこの後いくつか作成される調書のひとつであり、事件の捜査官は「これから、弁解録取書を作ります」「身上調査書作成のために生い立ちを聞きます」などと、いちいち作成する調書の呼び名までは教えてくれません。

そのため、取調室で担当の捜査官からあれこれ質問され、最終的に作られる調書をみて初めて理解できるものなのです。

意外と重要な「身上調査書」の内容

「身上調査書」は、簡単に言えば調書形式で作る履歴書のようなモノです。

生まれた場所はどこで、どの学校に通い、どんな仕事をしてきたかといった、履歴書に書くような内容を供述形式で作る調書です。

ただの履歴書のように見えるこの「身上調査書」も、事件を捜査する上で警察や検察にとって重要な書類となります。

警察が捜査を進めるうえで、誰の証言を取るのか、交友範囲はどのようなものか、生活範囲はどこかなど、重要な手がかりを見つける鍵が潜んでいる可能性が高いのです、と考え、調査は行われます。

取調べ・調書作成時に取るべき態度は

実際に罪を犯したなら素直に応じるのがベター

取調べに素直に応じるか、黙秘するか?

テレビや映画でおなじみのシーンですが、捜査官は取調べを始める前に「あなたには黙秘権があります」と告げてきます。

自分に不利な証言は行わなくてよいということですが、実際に罪を犯している場合には、素直に取調べに応じた方がいいでしょう。

捜査官の心証が良くなることはもちろん、「供述調書」には反省の言葉が記載されることになるでしょうし、後の裁判においても、反省の色が見えるのか見えないのかは、量刑に差がつくことが考えられます。

納得できないなら黙秘・否定の意思をハッキリと

反面、身に覚えのない罪で逮捕されていたり、警察の言い分があまりにも自分に不利であったりした場合などには「黙秘します」「違います」「わかりません」と言い切ることが大切になってきます。

しかし、たいていの場合は初めて一人きりで取調室に入れられ、百戦錬磨の捜査官と向かい合うことから、思うような言葉が出てこないこともあるでしょう。

そのような場合には、弁護士の力を借りることを思い出しましょう。

取調べで嘘をついてもいいの?

本当は罪を犯しているのに、被疑者が嘘をついて容疑を否認した場合はどうなるのでしょうか。

被疑者自身が裁判で罪を認めれば、「弁解録取書」で嘘をついた件に関しては非難されるようなことは、表面上はあまりないかもしれません。

しかし、たとえ罪を認めることに対する恐怖心があったが故の嘘でも、警察や検察、そして裁判所は温情を持った判断をしてくれるとは限らないのです。

心証が悪くなるようなことは避けるべき

逆に「弁解録取書」で容疑を認めておいて、その後否認に転じると、警察も検察の検事も激怒することでしょう。

更に裁判所も「あなたの言う事は信用できない」と感じ、非常に心証が悪くなってしまうわけです。

本当はやっていないのに「弁解録取書」で罪を認めるという事は、誰かをかばっているとか、司法側の人間を納得させるだけの理由がなければ、ただ証言が不利に働くだけです。

罪を認めていた人間が、裁判の法廷で突如無罪を主張して、それが認められるなどという展開は、ドラマや漫画の世界でしかあり得ないのです。

逮捕容疑や内容に不同意の時、書類に署名拇印しないこと!

「供述調書」には、被疑者が署名拇印を行うことで初めて、その内容は後の裁判における重要な法的証拠となります。

日本の司法では、自白を重視する傾向にあるため、逮捕後に作成される「供述調書」の内容を認めたということは、そこに書かれた罪を認めたと同じことにされてしまうのです。

そのため、自分の身に覚えのない罪が書かれていた場合には、絶対に署名拇印をしないことが重要です。

一度認めてしまった内容は、その後に訂正することは非常に難しいということを知っておきましょう。

問題があれば、訂正を要求すること!

「供述調書」はパソコンで作成されますが、後の改ざんを防止するため必ず印刷を行い、被疑者の前で読み上げが行われます。

何も問題がなければ、印刷された「供述調書」に被疑者が署名拇印を行い、法的な証拠として取り扱われます。

ここで注意したいのは、間違っていることは、どんな些細なことでも訂正を求めておくことが重要だということです。

警察側は、その被疑者が罪を犯したに違いないという確証を持って逮捕を行います。

その警察の捜査官が作成する書類ですから、思い込みや事実誤認があったり、誘導的な文言が書かれている場合があったりするのです。

そのため、「供述調書」の一言一句を丁寧に確認し、誤字脱字まで訂正を求めるような態度で臨むことが大切です。

取調べでの冤罪・誤認を防ぐために覚えておきたいこと

冤罪や誤認を防ぐために覚えておきたいこと

もし身に覚えのない罪で逮捕されたのであれば、一切が事実と異なるとして署名拇印を拒否しましょう。

しかし黙秘権を行使して逮捕の有効期限である72時間を過ごすことはなかなか難しいことです。

取調官もプロですから、あの手この手で口を開かせようと、事件とは関係のないことで穏やかな話しやすい雰囲気を作ろうとしてきます。

「冤罪であるのになぜ最初は罪を認めてしまったのだろう」とニュースを聞いて感じることがありますが、それほどに逮捕後の取調べというものは精神的に追い詰められるものなのです。

一人で戦うのには限界があります。

もちろん自分が罪を犯しているのであれば素直に認めることも大切です。

しかし身に覚えのない罪や、どうしても警察側が誤った事実で「供述調書」を作成しようとしている場合には、第三者に相談するだけでもかなりの力添えになりますので、躊躇や遠慮をせずに、弁護士に連絡を取ることをお薦めします。

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