逮捕された後、起訴前に身柄を解放する方法②~勾留決定に対する準抗告~

準抗告

逮捕後の勾留を解くいくつかの方法

刑事事件の被疑者として逮捕されて3日間の期限が過ぎると、通常のケースであればそのまま被疑者は勾留されてしまいます。

検察が逮捕期間のうちに捜査は終了せず、引き続き取調べなどを行いたいと裁判所に対して勾留請求を行い、裁判所が認めると10日間の勾留となり、被疑者は留置場や拘置所で身柄の拘束を受け続けるのです。

そして10日間の勾留満期を迎えると、検察は勾留延長の請求を再び裁判所に起こし、これもまた認められてさらに10日間の勾留を受けることになるのです。

本来ならば、勾留の満期は最長10日間という基準であり、この期間中でも捜査が順調に進み、被疑者の身柄を拘束しておく必要がなくなれば、勾留3日目でも5日目でも釈放するべきなのです。しかし現実的には、勾留満期日まで被疑者は勾留されるケースがほとんどです。

捜査をしている警察や検察は、その間裁判に勝てる十分な証拠を集めたり、起訴するかどうかの判断をゆっくりと行ったりすることができるかもしれませんが、罪を犯したとはいえある日いきなり社会から隔絶され、長期間にわたり自由を奪われている被疑者としては、少しでも早く身柄拘束からの解放を実現したいところです。

いずれも裁判所に対する手続きとなる

刑事訴訟法などの法令には、勾留期間中であっても身柄の拘束を解かせる方法がいくつか規定されています。

勾留による身柄拘束を解く主な方法には下記のようなものがあります。

  • 勾留理由開示請求
  • 勾留決定に対する準抗告
  • 勾留取消請求
  • 勾留執行停止の申立

勾留を認めた裁判所に対して行う手続きという点ではすべて同じなのですが、被疑者が置かれた状況や捜査の進展状況を鑑みて、適切で効果的な方法を選ぶ必要があります。

「勾留理由開示請求」は、正当な理由がないままに被疑者が身柄を拘束されている可能性がある場合に行い、勾留を認めた理由を明らかにさせて、裁判所に勾留の可否を考え直させる方法です。明らかに不当な勾留による身柄拘束だと考えられる場合、裁判所に異議を申し立てたい場合などには、勾留決定に不服申し立てを行う「勾留決定に対する準抗告」という方法があります。

「勾留取消請求」や「勾留執行停止の申立」は、当該事件の手続きの進展度合いや被疑者の置かれている状況次第で用いる手続きです。これらはいずれも一般人の知識だけでは判断がつかないと考えられますので、弁護士に適切なアドバイスを求め、より身柄拘束からの解放が実現できそうな方法を取ることをお勧めします。

本項では、「勾留決定に対する準抗告」について説明します。

「抗告」とは?

「勾留決定に対する準抗告」の説明に入る前に、そもそも「抗告」や「準抗告」が何を意味しているものか確認しておきましょう。

抗告」とは司法制度における不服申立ての一種で、裁判所が行った決定または命令に対して、その裁判所の上級裁判所に行う申立て、あるいは申立てにより開始される裁判所における審理や判断の手続を指します。この「抗告」には「通常抗告」、「再抗告」、「許可抗告」、「特別抗告」など、そして「準抗告」があります。

通常抗告」とは、刑事訴訟において、原則として裁判所が行った決定に対して行う「抗告」となります。

即時抗告」とは、刑事訴訟においては、裁判の告知を受けた日から3日の不変期間内にしなければならない抗告です。一般的に「即時抗告」は原決定や命令を迅速に確定させる必要がある場合に定められるもので、執行停止の効力があります。

再抗告」とは、抗告裁判所の決定に対する再度の抗告ですが、刑事訴訟においては「再抗告」は認められておらず、民事訴訟のみに用いられるものです。

許可抗告」は、高等裁判所の決定や命令に対する抗告のうち、法令の解釈に関する重要な事項を含むとして高等裁判所に対して抗告の許可を求めて行うものですが、これも民事訴訟のみに許されているものです。

特別抗告」とは、法令で不服の申立てができない決定や命令に対し、当該裁判に憲法解釈の誤りや憲法違反があるという理由で、最高裁判所に判断を求める抗告を指します。刑事訴訟においては判例違反も「特別抗告」の理由となります。

手続きの方法や可能かどうかの判断は弁護士に確認することをお勧めしますが、「抗告」とは、簡単に言えば裁判所の決定に対する不服申立てであることは理解しておいてください。

「準抗告」とは?

準抗告」とは、刑事事件の手続きにおいて、裁判所または捜査機関が行った処分、例えば勾留や保釈、押収などに関して、裁判所の決定に不服がある場合に行うもので、法令上では下記の刑事訴訟法第429条に定められているものです。

刑事訴訟法

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
○2 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

裁判所の決定や命令に不服がある人は、簡易裁判所の裁判官に対しては地方裁判所に、その他の裁判官に対してはその裁判官所属の裁判所に、決定や命令の取り消しまたは変更を請求することが認められていて、それが「準抗告」と呼ばれる制度です。

「準抗告」は、上級裁判所に救済を求める上訴ではありませんから、裁判所の決定に対する「抗告」とは区別されますが、実質的な内容は上訴と同じ機能を持っているため、手続きにおいては「抗告」の手続きが準用されます。

「勾留決定に対する準抗告」とは?

刑事事件において、被疑者の勾留を決定しているのは裁判所です。つまり、裁判所が勾留の決定を覆して検察に対する勾留許可を取り消せば、3日間の逮捕期限が過ぎていれば被疑者の身柄拘束は解かれないといけないのです。

「勾留決定に対する準抗告」とは、被疑者側が勾留を許可した裁判所に対して「この勾留は不当だ!」という不服申立てをする手続きになります。別項で紹介している「勾留理由開示請求」は、裁判所に対して勾留した理由を聞くだけの手続きですが、この「勾留決定に対する準抗告」は、裁判所の決定自体の正当性を問うものです。

前述の通り、「準抗告」とは裁判所の決定に不服があるときに行われるものですから、他にも差し押さえなど裁判所が下した決定に対して「○○に対する準抗告」と呼ぶのです。ただし、刑事事件の手続き上で行われるものは「勾留決定に対する準抗告」が圧倒的に多いため、単に「準抗告」といえば「勾留決定に対する準抗告」を指すのが一般的になっています。

どのような時に「勾留決定に対する準抗告」を行うのか?

裁判所の決定に対して不服がある場合に「準抗告」を行うのですが、何でもかんでも不服があるからと言って申立てをするわけにはいきません。

他の勾留を解く手続きと同じように、勾留を認める要件を満たしていないのに、もしくは十分に精査を行っていないと考えられるような時に、「勾留決定に対する準抗告」を行うべきなのです。刑事事件の手続きにおいて、警察や検察が被疑者を逮捕して勾留するのは、住所不定であったり、また逃亡や証拠隠滅をしたりすることを防ぐためです。

しかしよほどの重罪でない限り、勾留を決定する時点で既に捜査がすべて終了し、事件の状況や判例によって裁判で下される判決の見通しもついている状態であれば、その時点から隠滅すべき証拠もなく、また家族や仕事をかなぐり捨て、人生を棒に振ってまで逃亡することは考えにくいのが普通なのです。

加えて早期に被害者との示談が成立し、被害者の処罰意識がなくなったとしたら、勾留を行う要件はもはやなくなっていると考えて良いでしょう。一方で裁判所は「被疑者が自殺するかもしれない」、「被害者に会いに行く可能性がある」、「公判に出てこないかもしれない」などの表向きだけの理由で、本当にこれらの可能性がかるかどうかを精査したのかどうかも疑わしい状態で勾留を決定することがあります。

このような状況であれば、「勾留決定に対する準抗告」を行うべきなのです。「勾留決定に対する準抗告」の具体的な手続きは被疑者が雇った弁護士が行います。「準抗告申立書」の書類を作成し、簡易裁判所あるいは地方裁判所など、被疑者の勾留を決定した裁判官が所属する裁判所に対し、勾留期間中に提出します。

「準抗告申立書」の内容を、裁判所の勾留を決定したのとは別の裁判官が検討した結果、勾留は不当だと判断すれば被疑者は勾留を解かれることになります。

「準抗告」が成功するケースは増えている

かつては、「勾留決定に対する準抗告」の申立てを行い、実際に勾留の不当性が認められて被疑者が釈放されるケースというのはごく少数にとどまっていました。しかし近年、最高裁判所が勾留請求を却下したという決定もあり、被疑者の言い分に対してしっかりと耳を傾ける裁判官が増えてきているようです。

平成28年度の司法統計によると、上記刑事訴訟法429条に関する「準抗告」が行われた件数が10,868件であったのに対し、「準抗告」による原裁判または原処分の取消しまたは変更が認められたのは2,115件に上ります。

申立てを行うことも含め、まだハードルが高い面はありますが、実に20%近い「準抗告」が認められているという事実は頭に入れておいた方が良いでしょう。

弁護士の経験がモノを言う「準抗告」

近年ようやく「勾留決定に対する準抗告」を行うべきであるという風潮が高まっていますが、まだ「準抗告」の経験をした弁護士は少なく、一般的にはまだ難しい手続きであるという認識も残っています。

「勾留決定に対する準抗告」の申立書は、勾留が可能となる要件を否定するための詳細にわたる記述を行わなければならず、被疑者や関係者の陳述書や、弁護士が行った調査の報告書や資料などを、要件に合わせた形で準備しなくてはなりません。

可能であれば「準抗告」を行った経験がある弁護士に依頼するのがベストですが、そうでなくても熱意を持って対応してくれる弁護士を探し、早期の社会復帰を目指してみましょう。

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