取調べの記録の供述調書~事実と違えば絶対に署名、捺印はしない!

捺印

被疑者の取調べが行われている時、捜査官はメモを取るなどして供述の内容を記録し、一区切りついたらパソコンで文章を作成する。これが供述調書と呼ばれるもので、刑事事件の手続きの上で重要な書類となる。ただし、被疑者の署名、捺印がなければ効力はない。

「供述調書」とは?

刑事事件において、被疑者への取調べにおける手続き上の目的は、裁判で重要な証拠になる「供述調書」を作成することと言っても良いでしょう。

被疑者の立場からみれば、その「供述調書」が作成される取調室において、しっかりと対応しておく必要があります。

何故ならば、「供述調書」は裁判において最も重要な証拠として裁判で取り上げられるからです。

「供述調書」の法的根拠

被疑者が取調べにおいて供述した記録である「供述調書」の法的根拠は、刑事訴訟法第198条に定められています。

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

○2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

この刑事訴訟法第198条3項にあるように、捜査官が「供述を調書に記録することができる」と定められているのが「供述調書」です。

そして、3項以外に定められている条文でも、被疑者にとって知っておくべき大切な規定がなされていますので、覚えておいて損はないでしょう。

基本的には、逮捕とセットとなる取調べと「供述調書」作成

刑事事件の被疑者となってしまい逮捕された場合には、警察あるいは検察による取調べに応じなければならないと定められています。

この際、取調べが行われるのは、原則としては警察による逮捕後の48時間、検察に送られてからの24時間、勾留が認められた場合の10日間、さらに勾留延長がなされた場合の10日間となり、最長で23日間となります。

この間、被疑者は捜査当局による取調べに応じなければならず、これは「取調べの受忍義務」と呼ばれます。

被疑者の供述は調書に記録されますが、この調書が「供述調書」です。

被疑者には黙秘権または供述拒否権がある

被疑者が捜査官による取調べを受ける際には、あらかじめ自己の意思に反する供述をする必要がないことを告げられます。

これは、上記の刑事訴訟法第198条2項、および憲法第38条にも規定されているものです。

憲法

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

被疑者の立場から見ると、これらの条文を知っている場合と、知らない場合では大違いです。

捜査官の取調べにおいて、答えたくないことは答えなくても良いと理解しているだけで、逮捕後の不安な気持ちを和らげることができるでしょう。

そして、黙秘権や供述拒否権を行使し続けるのか、あるいは供述を行うのかの判断は、刑事事件に詳しい弁護士のアドバイスをもらうことをお勧めします。

「供述調書」は非常に重要な証拠

逮捕後の取調べにおいて作成される「供述調書」は、非常に重要な証拠となります。

犯罪事実を被疑者が認めるということは、いわゆる「自白」であり、刑事事件の事実認定において重要視されるものです。

刑事事件の被疑者として逮捕され、取調べを受けて「供述調書」が作成される時の対応は、非常に慎重なものが求められます。

記載されている供述内容の確認や、最後に行う「署名」「捺印」の判断は軽々しく応じず、一言一句間違いを逃さないという態度で臨むことが大切です。

「供述調書」は、こうして作成される

捜査官が作成する際に「これは非常に重要な文章だから、注意して確認するように」などという注意はしてくれません。

「供述調書」が後にいかに重要となってくるかは、事前に知っておかないと、取り返しがつかないことになってしまいます。

以上に述べたように、非常に重要な調書である「供述調書」はどのように作成されるのかを見ていきます。

単なる取調べの記録ではない

捜査官は取調べにおいて、被疑者に事件に関する事実についての質問をします。

その被疑者の供述から「供述調書」を作るわけですが、その場ですぐに被疑者の話を書類にしていくわけではありません。

事件に至るまでの被疑者の行動や、犯行の具体的な方法など、いくつかのテーマに分けて取調べを行い、ひとしきり質問が終わると、捜査官はノートパソコンを開き、文章の作成を始めるのが一般的なようです。

そしてその文章は、「私(被疑者)は、〇〇の件で取調べを受けています。事件当日に起こったことをお話します…」「私は、事件当時、〇〇の店でビールを飲み…」「私は、殴ってしまった人と面識はありません」というふうに、被疑者が第一人称で語ったような文章になります。

後述しますが、これは警察が作ったシナリオを、被疑者の証言という体裁で文章化したものになるのです。

そのシナリオを全面的に認めてしまうのは、被疑者が警察のシナリオ通りに「自白」したということになってしまいます。

簡単に「供述調書」の内容を認め、「署名」や「捺印」をすることは絶対に避けましょう。

否認あるいは黙秘をした場合は、不自然な文章になる

容疑者が罪を認めている場合、あるいは大筋では認めるものの細かい修正を行った場合は、被疑者が第一人称で語ったような文章になります。

しかし、取調べにおいて被疑者には自身に不利益となる質問には答えない、または完全に否認をする場合、そして完全に黙秘を貫く場合もあるでしょう。

そのような場合、「供述調書」はどうなるのでしょう?

さすがに完全黙秘の場合には「供述調書」は作成しようがありませんが、否認している場合、文章は次のような問答形式になるようです。

捜査官「あなたは、〇〇年〇〇月〇〇日、〇〇にいたのか?」

被疑者「いませんでした」

捜査官「そこであなたを見たという人がいるのだが」

被疑者「分かりません」

先に述べた通り、「供述調書」は警察のシナリオを被疑者に語らせようとしたものですから、シナリオ通りにいかない部分は、いきなり問答形式の文章になるのです。

なぜ「私は〇〇にはおらず、〇〇を見た記憶もありません」という文章にしないのかというと、それを文章化すると、被疑者の否認部分を捜査官が認めたという形になってしまうためだと考えられます。

内容に関係なく、すべての「供述調書」への「署名」や「捺印」を拒否するという方法もありますが、それだけ検事が起訴を諦めることはないでしょう。

黙秘権を貫くと決意した場合は、弁護士とよく相談して、手続きを進める必要があります。

「供述調書」への「署名」「捺印」は慎重に!

以上のように、「供述調書」というものは、一見すると被疑者の自白に見えますが、実は捜査官の主観で書かれたシナリオ作文のようなものなのです。

取調べでの質疑応答の中で、実際に被疑者の話したセリフを利用し、警察や検察が思い描いているシナリオをはめ込んだものが「供述調書」であり、必ずしも真実が書かれているとは言えないのです。

そのため、捜査機関が勝手に「供述調書」を作り上げてしまうことを避けるため、作成された文章は印刷をし、被疑者に閲覧または読み聞かせを行い、誤りがないと認めた後でないと、被疑者の「署名」「捺印」を求めてはいけないという決まりがあります。

時間をかけて、読み聞かせと閲覧に対応

取調べの結果作成された「供述調書」は、後の改ざんを防止するために、その場で印刷され、閲覧または読み聞かせという作業が行われます。

できあがった「供述著書」を捜査官が声に出して被疑者に読み聞かせるのが多いようですが、さらに慎重な捜査官であれば被疑者に「供述調書」を手渡して熟読するように勧めてくるようです。

容疑を否認している場合はもちろんですが、基本的に容疑を認めている場合でも、必要以上に心証を悪くして罪を重くしようとするような警察や検察の意図が働いていることがあります。

身に覚えのない行為まで捏造され書き加えられることは、かつての密室での取調べでは普通に行われていたものです。

違法な取調べが問題になり社会問題化したことから、現在では少なくなったと思われますが、「供述調書」の読み聞かせには全神経を研ぎ澄ませて臨みましょう。

少しでも事実と異なる点、納得のいかない点、おかしいと感じた点があれば、遠慮なく指摘して修正を求めることが必要です。

捜査官は日頃から「供述調書」を作り慣れているとはいえ、文章を作成するプロではないため、誤字脱字の一つひとつまで修正をしてもらう心構えでいる方が良いでしょう。

完全に納得できるまで、「署名」「捺印」はしない!

被疑者が「供述調書」の内容に間違いがないと納得した場合、最後のページに署名と拇印を押し、ページごとの改ざんができないように、すべてのページの右端に拇印を押します。

しかしこの「署名」「捺印」は義務ではありません。

内容が気に入らなければ、全面的に訂正させることもできるのです。

「供述調書」に「署名」「捺印」をするということは、記載されている内容に間違いはないと被疑者自身が認めた証拠になってしまいます。

例えば、ある日時・時間にある場所にいたという事実が「供述調書」に書かれていた場合に、「〇〇〇をするために〇〇にいました」「〇〇〇ができるかもしれないと思い〇〇にいました」「たまたま〇〇にいました」では、後に裁判に進んだ場合の裁判官の印象はまったく違ったものになります。

「供述調書」は、記載されている内容の一言一句、すべて納得するまで「署名」「捺印」をしてはいけません。

また、どのような状況でその供述が引き出されたのか、本当に「署名」「捺印」をしても良いのかどうかが不安な場合には、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

被疑者自身に不利となる「供述調書」を認めてしまったら、後から取り返しがつきません。

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