保釈とは?認められる要件、申請方法、保釈金の金額相場や調達方法について

大金

保釈とは

保釈は罪を許してもらえる制度ではない

そもそも保釈制度とは何なのでしょうか?一般には「犯罪を犯した人がお金を払ったら釈放してもらえる制度」「お金で許してもらうこと」などと思われていることがあります。

しかし保釈は、お金で犯罪を許してもらえる制度ではありません。保釈されても罪は免除されませんし軽くもならないからです。

保釈は、刑事裁判になった被告人の身柄を仮に解放する制度です。「仮」なので違反行為や問題行為があったら保釈が取り消されますし、もちろん刑事裁判は続きます。判決が出て実刑になったら収監されて刑務所に行かねばなりません。

保釈が認められる理由

刑事裁判が終わっていないのに、どうして保釈によって被告人の身柄を仮に解放する必要があるのでしょうか?

それは被告人が受ける不利益が大きくなりすぎないようにするためです。被告人は犯罪を犯したと疑われていますが、まだ確定したわけではなく無罪である可能性もあります。また将来執行猶予がついたときなどには社会復帰して仕事に戻り、家族を養わなければならない立場の人もいます。それにもかかわらず勾留による身柄拘束期間が長くなりすぎると、会社をクビになったり自営業を廃業せざるを得なくなったりして、社会復帰しようにもできなくなってしまいます。

また裁判が始まると、基本的に取り調べは行われません。刑事裁判への出頭さえ確保できれば身柄を拘束しておく必要性は小さくなります。そこで刑事裁判が始まると、一定の要件を満たすことを条件に被告人に保釈を認めているのです。

保釈が認められるタイミング

刑事事件で保釈が認められるのは「起訴後」です。起訴前の被疑者段階では保釈制度の適用はありません。被疑者の場合、まだまだ取り調べが続いていますし証拠隠滅や逃走などの危険も高くなるからです。

一方起訴されたらその日に保釈申請することも可能ですし、スムーズに保釈申請の手続が通ったら、1~3日後には身柄を解放してもらえる可能性もあります。

保釈の要件~2種類の保釈について

次に保釈が認められるにはどういった要件が必要になるのか、みてみましょう。保釈には2種類があり、それぞれ要件が異なるので分けて解説します。

権利保釈

権利保釈は、被告人に当然に認められる保釈です。法律上一定の要件が定められており、その要件を満たせば裁判所は必ず保釈を認めなければなりません。権利保釈の要件は、以下の通りです。

氏名と住所が明らか

被告人の氏名が明らかで定まった住所があることが必要です。氏名不詳や住所不定の場合、保釈を認めると逃亡されたり行方不明になったりしてしまう可能性があるからです。

一定以上の重罪に該当しない

死刑、無期懲役、刑期の下限が1年以上の懲役や禁固刑の場合には、権利保釈は適用されません。このように重大犯罪を犯した人を保釈した場合、逃亡のおそれが大きく逃げた場合のリスクも高くなるからです。例としては殺人、強盗や放火強制性交等などの罪の場合、権利保釈できません。

過去に長期の懲役や禁固刑を受けていない

過去に長期10年以上の懲役刑・禁固刑が適用される重罪を犯した人は、今回重い刑罰を適用される可能性が高いので逃亡のおそれが大きいと考えられます。そこで権利保釈は許されません。たとえば窃盗罪や詐欺罪の前科がある場合、権利保釈は難しくなります。

常習性がないこと

窃盗罪などで同じ犯罪を繰り返している常習犯のケースでも罪が重くなる可能性が高く、保釈中に余罪の証拠隠滅を行うおそれもあるので権利保釈が認められません。具体的には法定刑の上限が3年以上の罪(窃盗罪や横領罪、詐欺罪、交通事故や名誉毀損など)を2回以上犯した場合にあてはまります。

証拠隠滅のおそれがない

被告人が反省していない、不合理に否認している、共犯者が多数あって捜査が終わっていないなどのケースでは、証拠隠滅のおそれが高いとして保釈が認められない可能性があります。

証人威迫のおそれがない

被害者やその他の関係者に対して脅迫、暴行などを行い威迫する可能性がある場合には、保釈は許されません。

上記の条件をすべて満たす場合、被告人に「権利」としての保釈が認められるので、裁判官が決定した保釈金を納付すれば身柄を解放してもらえます。

裁量保釈

実務的には権利保釈が認められる例は少なく、「裁量保釈」によって保釈されるケースが多数です。

裁量保釈とは、たとえ権利保釈の要件を満たさなくても、裁判官の裁量によって保釈を認めることです。裁量保釈の場合にも、もちろん保釈金の納付は必要です。たとえば被告人に前科があっても常習犯であっても、裁量保釈であれば身柄を解放してもらえる可能性があります。

権利保釈と際呂保釈の申請は同時にできます。権利保釈がダメだったときでも裁判官に裁量保釈を検討してもらい、保釈を認めてもらえる可能性があります。弁護人に保釈申請を依頼すると、通常は当然に両方を申請してもらえるので安心しましょう。

保釈の流れ

保釈申請をしてから身柄が解放されるまでの流れは、以下の通りです。

弁護人が保釈申請をする

まずは弁護人が裁判官へ保釈申請をするところから始まります。一般的には「保釈請求書」という書類を提出し、必要があれば資料を添付します。

裁判官が審査をする

保釈申請があると裁判官が保釈を認めるかどうかを審査します。裁判所にもよりますが、弁護人と裁判官が面談をして裁判官がその結果を参考にして決めるケースもよくあります。

裁判官が保釈決定をする

保釈を認める場合、裁判官は保釈決定をします。その際保釈保証金の金額と、保釈中の生活についての制限事項も決めます。保釈決定の内容は弁護人に告げられ、弁護人から被告人や家族に連絡があります。

保釈保証金を納付する

保釈してもらうには保釈決定があっただけでは足りず、実際に保釈保証金を裁判所に納付しなければなりません。保釈保証金は、現金で一括払いする必要があり、不足している場合には身柄が解放されませんし分割払いも不可能です。一般的には被告人や家族が弁護人にお金を預け、弁護人から裁判所に納付します。

速やかに身柄が解放される

保釈保証金の納付があると、裁判所から被告人の収監場所に速やかに連絡があり、被告人の身柄が解放されます。不便な場所の場合や荷物が多い場合など、家族に迎えに来てもらうことが多いです。

保釈の期間について

保釈が認められると、判決が出て処遇が決まるまでの間、身柄が解放されます。判決で罰金刑や執行猶予となった場合、そのまま外で生活し続けることが可能です。一方実刑判決が出ると、その場で保釈の効果がなくなり収監されます。控訴する場合、控訴審であらためて保釈申請する必要があります。

刑事裁判の判決が出るまでの期間は、一般的な認めの事件では1~2か月、否認事件なら8か月~1年くらいかかるケースもあります。このように保釈は「~か月」という期間ではなく「その裁判所での刑事裁判が終了するまで」続きます。

保釈中の制限事項について

保釈決定が行われるとき、裁判官から保釈中の生活についての制限が課されるケースがあります。どのようなことを制限されるのか、例をみていきます。

必ず刑事裁判に出頭すること

保釈されても必ず刑事裁判には出廷しなければなりません。決められた期日に裁判所に行かなかった場合、保釈を取り消される可能性があります。

被害者や関係者に弁護人を通じて以外一切接触しないこと

一般的に被害者や目撃者などの関係者には接触してはならないと定められるケースが多数です。証人威迫のおそれがあるためです。被害者などと連絡を取りたいときには弁護人を通じて接触します。

共犯者に接触しないこと

共犯事件では、共犯者との接触も禁じられます。口裏合わせなどによって証拠隠滅する可能性があるからです。

住所の変更禁止、変更するときには必ず連絡すること

住所不定であれば保釈が認められないことからもわかりますが、住所を変更するときには必ず裁判所に連絡しなければなりません。また住所変更を禁じられたり長期間の旅行を制限されたりするケースもあります。

保釈中の生活でよくある誤解

保釈中の生活では、誤解されていることがあるのでいくつかご紹介します。

仕事をしても良い

保釈中でも仕事はできます。むしろ職を失うなどの不利益を防止するために保釈が認められているので、積極的に仕事をしましょう。失業してしまった場合、就職活動をしてもかまいません。ただし裁判で実刑判決になったら仕事を続けられなくなるので、そのあたりの配慮は必要です。

短期なら旅行などに行っても良い

保釈中でも遊んではいけないことはありません。1泊2泊くらいであれば、家族などと旅行に行ってもかまいません。ただ3泊以上の長期旅行は禁止されることもあります。

また短期旅行であっても、突然音信不通になると「逃亡のおそれがある」として保釈取消事由になる可能性があるので、必ず弁護人に事前に連絡を入れ、いつでも携帯などで連絡を取れるようにしておきましょう。

保護観察官などはつかない

保釈と執行猶予は違います。保釈中は有罪判決を受けたわけではないので、保護観察官などによる監督を受けることはありません。

以上のように保釈中は、基本的に自由に生活できます。逃亡しない、証拠隠滅をしない、被害者や関係者を威迫しないなどの基本的なルールさえ守っていたら、逮捕前と同じように生活してもかまいません。どこまでの行動が許されるのか判断がつかない場合、刑事弁護人に相談してみるのが良いでしょう。

保釈取消事由について

権利保釈や裁量保釈が認められたとしても、保釈中に問題行動があれば裁判所は保釈を取り消す可能性があります。以下で保釈の取消事由をご紹介します。

  • 被告人が、理由がなく刑事裁判に出頭しないとき
  • 被告人が逃亡した、逃亡の疑いが強まったとき
  • 被告人が証拠隠滅した、証拠隠滅のおそれが強まったとき
  • 被告人が、被害者や事件関係者を威迫した、威迫しようとしているとき
  • 被告人が住所制限やその他の裁判所の定めた条件に違反したとき

被告人が上記のような問題行動によって保釈を取り消された場合、納付済の保釈保証金の一部や全部が没収される可能性があります。保釈保証金を借入によって調達している場合などには借金だけが残ってしまいますので、保釈中には逃亡を始めとした違反行為を絶対に行わないよう、注意が必要です。

保釈金の金額相場

保釈が認められるための保釈保証金の金額の相場はどのくらいになっているのでしょうか?保釈保証金の金額が決まる要素は、以下の通りです。

犯罪の性質、重さ

1つは問題となっている犯罪の性質や重さが考慮されます。重罪であれば保釈金は高額になりますし、経済犯の場合にも保釈金が高額になりやすいです。

保釈するリスク

たとえば前科があり余罪も多数で共犯者も存在するなど、保釈によって発生するリスクが高いケースでは、抑止のために高額な保釈保証金が決定されます。

被告人の経済事情

保釈保証金は、被告人が保釈中に問題行動を起こさないよう抑止するためのものです。被告人が金持ちの場合には多額の保釈金を払わせないと抑止できないので金額が上がります。被告人の経済事情も保証金の金額に大きな影響を及ぼします。

一般的な保釈保証金の相場

一般的なサラリーマンや自営業者、主婦や学生などによる暴行や窃盗、痴漢などの犯罪の場合、保釈保証金の相場は150~300万円程度です。安い場合で150万円、少し高くなると200万円、事案が複雑でかなり高くなった場合に300万円くらいのイメージです。

ニュースになって世間を騒がせるような有名人や富豪による経済事犯などでは、5億円や10億円といった億単位の保釈保証金が決定されて話題になる例もありますが、これらは本人が大金持ちだから普通とは比較にならないほど高額になっているのであり、非常に特殊な例です。

保釈保証金は全額戻ってくる

保釈保証金を納めるとき、そのお金が最終的にどうなるのか、返してもらえるのか気にされる方がとても多いです。

保釈保証金は基本的に全額戻ってきます。違反行為がなく刑事裁判を終了したら、どのような刑罰になっても全額返してもらえます。罰金刑や執行猶予などとなってそのまま社会内で生活できるケースではもちろんのこと、懲役刑や禁固刑で実刑判決となり、刑事施設に収監されても保釈保証金は戻ります。

ただし懲役や禁固で実刑になったにもかかわらず逃亡したり収監を拒絶したりすると、保釈保証金の一部や全部が没収されるおそれがあります。判決にはきちんと従いましょう。

保釈金の決まり方

保釈保証金の金額を決めるのは、保釈決定をした裁判所です。弁護人が保釈申請をすると裁判官が保釈すべきかどうかや保釈を認める際の条件などを検討しますが、このとき罪の内容や被告人の経済状況を考慮して保釈金額を決めます。

保釈金の金額にはだいたいの相場があるので、大きく外れた金額になることはありません。値切ったら安くしてもらえるというものではないので、決まった金額は必ず納めなければなりません。支払いができなければせっかく保釈が認められても、拘置所に収監されたままになってしまいます。

保釈金の調達方法

保釈金の金額は一般人にも払えないようなものではありませんが、ときには手持ち資金がまったくない方もおられます。保釈金をどのようにして調達すれば良いのか、以下で考えられる方法をご紹介していきます。

親族などにお願いする

周囲にお金の余裕があって事情をわかってくれそうな親族や友人知人などがいたら、相談してみましょう。

金融機関から借り入れる

金融機関から借り入れる方法がありますが、銀行などは「保釈のため」というとなかなかお金を貸してくれません。かといってカードローンやクレジットカードなどで借り入れをすると高額な利息がかさむので悩ましいところです。

たとえば保釈保証金のうち大部分は自分で用意できたけれど、あと10万円や20万円足りないのでカードローンで借りる、などであれば利用しても良いでしょう。全額カードローンで借りたい場合、弁護人とも相談して決めましょう。

保釈保証協会を利用する

日本保釈支援協会という社団法人では、保釈金専門で貸付(立て替え払い)をしています。利息に類似した「手数料」を取られるので基本的には借金と同じですが、どうしても保釈金を用意できないときには利用するのも良いでしょう。

まとめ

保釈申請は弁護士に相談を

保釈申請は被告人や家族だけでできるものではなく、刑事弁護人が必要です。身柄拘束が長引くと、不利益も大きくなっていきます。保釈申請をするときには、早めに弁護士に相談して保釈申請手続きを進めてもらいましょう。

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