弁護士費用を払えない人のための制度~国選弁護人の選任について~

国選

刑事事件の被疑者・被告人と弁護人(弁護士)

刑事事件の手続きには、弁護人(弁護士)が必要不可欠な存在です。被疑者・被告人が弁護人を選任するのはあくまでも自由ですから、弁護人不在で刑事事件の手続きを進め、裁判に臨むことも不可能ではありません。

非常に少ないケースですが、地方裁判所や簡易裁判所での裁判においては、1%程度は弁護人のついていない裁判も行われています。しかしこれらの裁判は、被告人が元弁護士であるとか、法律に関して詳しい知見を持ち、弁護士に依頼するくらいなら自分でやった方が良いと考える人たちと考えられます。

また事件によっては弁護人がいないと裁判ができないものもありますし、特に裁判においては被告人が全面的に罪を認め、争う点が何もないケースでなければ裁判所も弁護人なしの裁判は認めない傾向にあります。

弁護士選任は被疑者・被告人の権利

刑事手続きを進めるうえで、警察や検察などの捜査機関、あるいは裁判所が法律の専門家であることに対し、被疑者・被告人は法律に関する知識がほとんどないと言えます。

そうした不利をなくし、公正な刑事事件手続きが行われるようにするため、被告人には弁護人を選任することができ、これは憲法第37条に裁判を受ける権利とともに規定されている国民の権利なのです。

憲法
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

さらに、裁判において死刑や無期懲役、あるいは3年を超える懲役刑や禁錮刑が言い渡される可能性がある事件は、必要的弁護事件と呼ばれ、これらの事件は弁護人がいなければ裁判を開くことすら許されていません。

そしてまだ起訴されていない被疑者に対しても、刑事訴訟法第30条に弁護人を選任できる旨が定められています。

刑事訴訟法

第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
2 被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

同条には被疑者・被告人以外でも、家族などでも弁護人を選任することが規定されていますので、留置場に身柄を拘束されて、何をして良いのか分からないと思われる被疑者の代わりに弁護士に手続きを依頼することは何の問題もないことを理解しておきましょう。

弁護人と弁護士

刑事事件の手続きを説明する際に、弁護人と弁護士という言葉が混同されて使用されていますが、手続きや弁護を依頼する際には、特に区別を意識する必要はありません。

正確に言えば法律上の言葉の違いで、刑事裁判において被告人の弁護を行うのが弁護人であり、原則として弁護人は弁護士の資格を持っている者に限られます。

民事裁判では代理人と呼ばれ、刑事事件で言うところの弁護人は手続き上に登場しません。

国選弁護制度とは?

ここまで説明してきた通り、刑事事件の被疑者・被告人にとって弁護人は必要不可欠な存在なのですが、弁護人に手続きを依頼するためには弁護士を雇う費用が必要となります。ただでさえ逮捕され勾留を続けられて仕事ができない状況で、経済的な理由で弁護人を雇えない場合も当然あるでしょう。

このような場合に、上記の憲法第37条に定められた権利を行使できるように、国が弁護士費用を負担して、弁護人を選任してくれる制度が国選弁護制度なのです。

国選弁護制度利用の条件は?

国が弁護士費用を肩代わりしてくれるのなら、私費で弁護人を選任することはせず、誰もが国選弁護人を依頼するところですが、国選弁護制度には利用の条件があります。

まず、私選弁護人のなり手がいないケースです。私費で弁護活動を依頼する私選弁護人を雇おうと思っても、誰も弁護人を引き受けてくれないことがあります。

例えば引き起こした事件があまりに凶悪すぎるとか、社会的に影響が大きすぎる弁護を引き受ける弁護士がいないというケースです。しかし費用の点で折り合いがつかないという理由ならまだしも、誰も弁護を引き受けてくれないという事件はごく希です。

重要なのはもうひとつの条件で、上記の必要的弁護事件を除く任意的弁護事件において、資産が50万円以下でないと、国選弁護人の依頼ができないということです。銀行など金融機関の預貯金、そして車や不動産などの可処分財産の合計が50万円以下でないと、国選弁護制度の利用ができないのです。

50万円の資産をどう確認する?

国選弁護制度利用の条件のポイントは、50万円のお金をすぐに工面できるかどうかではなく、資産が50万円あるかどうか、ということです。

この資産に関する情報は自己申告で、国選弁護人の選任を要求する際、裁判所宛てに資力申告書という書類を提出しますが、そこには自分の預貯金残高や可処分財産のリストを書くのです。しかし裁判所は、資力申告書に書かれた内容の真偽を調査する専門の部署を持っていませんし、申告する被疑者・被告人は身柄を拘束されているため、正確な資産を報告するのは難しいのです。

この刑事手続きの現場では、資力申告書に多少間違いがあっても、それが50万円に達していなければ、国選弁護人は選任してもらえるかもしれません。ただし、国選弁護制度を利用したいがばかりに嘘を書いて発覚してしまうと、虚偽申告の罪に問われる可能性があります。

そこまでして国選弁護人を選任する意味はありませんので、資力申告書は事実に則した内容を書くことをお勧めします。そして、上記のいずれかの条件が当てはまれば、国選弁護制度を利用することが可能となり、国が国選弁護人を選任してくれます。

国選弁護人依頼のタイミング

国選弁護人は、かつて起訴された後の被告人しか選任できませんでした。これは国選弁護人の選任を定めた上記の憲法37条などに、国選弁護人を選任できる立場の者を被告人と限定しているため、起訴される前の被疑者は対象外だという判断がなされていたためです。

しかし実際の刑事事件手続きにおいて、弁護人のアドバイスが最も必要な時期は起訴前なのです。起訴された後に弁護人が登場しても、すでに警察や検察によって取り返しのつかない内容の調書ができあがってしまっていては、ろくな弁護活動もできません。

そこで、逮捕直後に被疑者の力となる当番弁護士制度と同様に、日本弁護士連合会などが政府に働きかけ、2006年から起訴前でも国選弁護人を選任できる被疑者国選弁護制度、通称被疑者国選がスタートしたのです。

被疑者国選を利用できるのは、勾留決定の時

被疑者が被疑者国選を選任できるのは、逮捕後に検察が勾留請求をし、被疑者が裁判所に呼ばれて勾留質問を受けるときです。

勾留質問が終わり、勾留が認められてしまう状況になると、その場で裁判官が被疑者に「国選弁護人を申請しますか?」と聞いてきますので、その意思があれば資力申告書などの必要書類を書いて国選弁護人を選任してもらいます。

つまり、逮捕されて身柄を拘束され、検察に送検されて検事から最初の取調べを受ける時点では、まだ国選弁護人は呼べませんので、この時点では当番弁護士の制度を利用することが望まれます。

被疑者国選の制度は2006年に始まりましたが、当初は被疑者の容疑事実が殺人、あるいは予想される刑罰が無期懲役もしくは最高刑が懲役3年を超える罪という、比較的重罪だった場合に限られていました。

しかし2016年の法改正により勾留される被疑者すべてに対し国選弁護制度が利用可と定められ、2018年より施行されています。

被告人国選は、すべての被告人に弁護人を選任させるため

一方、前述したような必要的弁護事件と呼ばれるケースでは起訴された時点でまだ弁護人が決まっていない場合は、すぐさま国選弁護人が選任されます。これは必要的弁護事件の場合、被告人に弁護人が選任されていないと裁判自体が開けないからです。

必要的弁護事件ではない事件の容疑で起訴された被告人の場合は、被告人本人が希望すれば、起訴された後に国選弁護人を選任することが可能になりますが、この場合は被疑者国選の時と同様に資力申告書などの書類を提出しなければなりません。

国選弁護人を選任した場合のメリットとデメリット

国選弁護制度を利用し、国選弁護人に弁護活動を依頼することの最大のメリットは費用がかからないことです。自分で探し出した私選弁護人では、弁護士にもよりますが、接見に来てもらうだけでも費用がかかり、着手金や報酬金がかかってしまいますので、被疑者・被告人にはかなりの負担になってしまいます。

また日頃弁護士に縁がなく、どうして探せば良いのか、どういう基準で探せば良いのかが分からない人も多いでしょう。このような人にとって、基準さえ満たしていれば国選弁護人は無料で利用できる有り難い制度です。

国選弁護人は運任せの側面がある

無料で利用できるため、国選弁護制度は資力の少ない人にとってまっとうな裁判を受けるために必要な制度なのですが、弁護士を選ぶという点で見ると、運任せの側面が強い制度となっています。

例えば、国が選ぶわけですから弁護士の選り好みはできず、選ばれた弁護士が必ずしも刑事事件に強い人ではない、という可能性があります。刑事事件の裁判は経験が物を言う世界ですから、この点を割りきるかどうかは重要となります。

また弁護士にとっても国選の案件は報酬が安いと言われており、親身に対応してもらえるかどうかも不安ですし、弁護士選びに重要な弁護士と依頼主の相性が合うかどうかを計り知ることもできません。

資力がなくてどうしても国選弁護制度を利用せざるを得ない場合は非常に助かる制度なのですが、事件の内容や状況によると必ずしもお勧めできるというわけではありません。さまざまな制度を比較し、被疑者・被告人が最も有利に手続きを進められる弁護士を選ぶことをお勧めします。

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