刑事事件における弁護士の役割~刑事裁判に勝つための弁護活動~

裁判準備中の弁護士

刑事事件における弁護士の役割

刑事事件の手続きにおいて、弁護人は法律の専門家として、そして唯一の被疑者・被告人の味方として活躍する、非常に重要な立場となります。被疑者を逮捕した警察や検察、そして言うまでもありませんが裁判所の裁判官も法律の専門家であり、刑事事件はその法律によって裁かれるのです。

いくら自分の信念や気持ちの強さを持ってしても、法律のことを知らない人間が、個人で刑事事件の最終的な手続きとなる裁判において勝訴する、あるいは有利な判決を引き出すのは不可能と言っても過言ではありません。

依頼すれば弁護士がしてくれることは?

被疑者・被告人、またはその家族や関係者が弁護士に依頼し、刑事事件の手続きにおいて動いてもらえることは多岐にわたります。

もちろん弁護士との契約内容にもより千差万別ですが、手続きの初期段階から列挙すると、被疑者との面会、家族との連絡、証拠集め、被害者との交渉、裁判官との接触、検察官との交渉と続き、起訴されて被告人となってしまったら、保釈の請求手続き、公判での弁護など、非常に多くの重要な役割を担ってくれるのです。

最近は日本の刑事裁判における有罪率が99%以上という言葉がテレビなどの影響で一人歩きし、弁護人がいてもいなくても裁判では有罪になるのではないかという考えを持つ人も多いのですが、それでも1%の可能性を求めるのは決して無駄ではなく、判決においてたとえ有罪であっても有利な判決を導き出すという大きな仕事を果たしてくれています。

弁護士を頼むと高額な費用がかかるのではないかという迷信めいた考えもありますが、金額として一見大きな金額に見えても、得られた結果に対する成果として考えれば、決して高いものではないとも言えます。

本項では、弁護士が果たす役割のうち、刑事事件手続きの最終段階である裁判に向けて何をしてくれるか、ということについて説明していきます。

刑事事件の裁判では弁護人が必要

ごく少数の例外を除き、刑事事件の裁判では弁護人の存在が必要です。

簡易裁判所や地方裁判所での第一審において、軽微な犯罪で被告人が警察や検察の言い分を全面的に認めて争点もなく、量刑も言われた通りで良いという判断をした時に、弁護人なしでも裁判が開廷され、そのまま有罪が確定し量刑を受け入れるというケースがありますが、割合は1%程度です。

ほとんどの刑事事件の裁判では、弁護人が被告人のために事前の準備を行い、裁判において無罪判決を得るため、たとえ有罪であってもなるべく有利な判決を引き出すために法廷で努力をするのです。

弁護人がいないと開廷されない裁判もある

たとえ被告人が弁護士は不要で、自分ひとりで戦うと言っても、必要的弁護事件と呼ばれる事件では、弁護人の存在なしでは裁判が開廷されない規定があります。必要的弁護事件とは、予想される量刑が死刑、または無期懲役か無期禁錮、3年を超える懲役刑か禁錮刑になる事件のことを指します。

この必要的弁護事件では、被告人自身が望む、望まないに関わらず、必ず弁護人をつけなければならず、以下の通り刑事訴訟法第289条に規定されています。

刑事訴訟法

第二百八十九条 死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
2 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなったとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
3 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

必要的弁護事件において、被告人が経済的な理由で弁護人を選定できない場合は、速やかに国が国選弁護制度を利用して国選弁護人を選任します。

弁護人なしの裁判は?

反面、必要的弁護事件ではない事件、たとえば迷惑防止条例違反で量刑が罰金または1年以下の懲役が見込まれる場合や、他人の私有地に侵入した住居侵入罪で量刑が罰金または3年以下の懲役が予想される場合など、量刑が最高でも3年を超えないとみられる時は、弁護人を選任しなくても裁判は開廷できます。

実際の裁判でも、簡易裁判所で公判が行われる被害が軽微な犯罪の場合は、希に弁護人なしで被告人が裁かれている裁判を見かけることがあります。しかしほとんどの刑事事件で、たとえ必要的弁護事件でなくても、弁護士が弁護人として選任されているのが普通と言って良いでしょう。

刑事事件の裁判で勝つために弁護人がすること

弁護人となった弁護士が、裁判で勝訴するため、あるいは少しでも被告人に有利な判決を導き出すために具体的に行うことは、裁判資料の作成、証拠・証人の確保、被害者との示談交渉、公判での弁護などになります。

契約内容や事件の状況によっては、裁判官との接触、検察官との交渉、保釈の請求手続きなども加わり、非常に多くの重要な役割を担ってくれます。

経験が問われる裁判資料の作成

裁判資料の作成とは、法廷で弁護人自身が読み上げる弁論の原稿や、裁判所に提出する書類を準備することです。起訴された直後から弁護人は被告人とよく話し合い、とことん無罪を主張するのか、執行猶予付き判決を狙うなど、判決の落とし所を明確にします。

そして狙い通りの判決が導き出されるように、法的知識と法廷テクニックを駆使し、過去の経験から最も有効と考えられる書類を作成します。

証拠・証人の確保に万全を期す

被告人が望む判決を得るためには、証拠や証人は大きな役割を果たします。その証拠や証人を集めるのも、裁判における弁護人の大きな仕事です。特に無罪を主張しているような場合、検察側の提示した起訴事実を根底から覆すような証拠や証人を見つけることが弁護人の腕の見せ所であると言えるでしょう。

執行猶予付き判決や減刑を狙った裁判においても証拠や証人の選び方は重要で、特に被告人が最初から罪を認めている量刑裁判の場合、弁護側が用意する証人は情状証人と呼ばれます。情状証人は裁判において被告人の良い人間性を主張し、判決が出た後の社会復帰を自分が助けるなど、更生方法まで具体的に証言する必要があります。

よく情状証人として弁護人が用意するのは、被告人の家族や友人、あるいは被告人が勤めていた会社の上司などになり、裁判に出廷できる証人の数には特に制限はありませんが、マスコミを賑わせるような重大事件の裁判でない限り、裁判所が出廷を認める情状証人の数は1人か2人となるようです。

この場合、誰を証人にするかという重要な選考をするのも弁護士の仕事となり、実際に選んだ証人に出廷をお願いするのも弁護人となります。裁判の法廷で証言をすることは、ほとんどの人が一生に一度も経験しないことであり、ほとんどは初めてのことでしょう。

腕の良い弁護士は証人に対して、法廷でどんな質問がされるか、またそれにどう答えれば最も有効なのかなどを、事前にシミュレーションして想定問答を作成し、模擬練習をしてくれることもあります。

非常に重要な被害者との示談交渉

刑事裁判の判決において、量刑を決める基準のひとつに被害者との示談が成立しているかどうか、という観点があります。

これは事件が発生して、被疑者が起訴されるか不起訴で済むかという段階でも、非常に重要な要素となり、事件発生後から弁護士が被害者と交渉したものの、結局示談がまとまらずに起訴されてしまったという例も珍しくはありません。そこで起訴されたからといって、被害者との示談交渉も決裂のまま放置してしまったら、今度は裁判で下される判決にも悪影響を与えてしまうのです。

刑事事件の手続きにおいて、一般的には起訴されてから第一回の公判が開かれるまでは2カ月程度必要となります。その間に被害者との話し合いを改めて進めて示談が成立すれば、裁判で被告人に有利な判決が出る可能性が高くなるため、腕のいい弁護士は、起訴前に示談交渉が上手くいかなかったからといって諦めることなく、交渉を続けます。

どうしても被害者との示談がまとまらない場合、被害者は許してはいないものの、被告人本人は大変反省しているという態度を示し、改悛の真情を表すための贖罪寄付を行う場合もあります。

家族や親族とのコミュニケーションも大切

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまい、起訴されてしまった被告人は、なかなか家族とも面会することもできないのが現実です。裁判の法廷において、傍聴に来て初めて家族は被告人となってしまった姿を見ることになることも少なくありません。

法廷において勝訴すること、あるいは量刑を軽くすることが弁護人の役割なのですが、何が起こっているのか、見通しはどうなのかを家族や親族に対し、懇切丁寧に説明するのも弁護人の役割だと考えても良いでしょう。

家族が逮捕されてしまった人の代わりに私選弁護人を選任した場合は特に、きちんと状況を説明してくれそうな弁護士を選ぶことをお勧めします。

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