勾留中に行われる検事調べの結果、起訴されるかどうかが決められる

検事

検事による取調べ、「検事調べ」とは

刑事事件の被疑者として逮捕され、勾留が決定されて身柄が拘束されている間、警察や検察による取調べを受けます。たいていの場合は警察の収容施設である留置場での生活となり、警察の担当捜査官から連日の取調べを受けます。

加えて、一般的にはイメージしにくいと思われますが、取調べを行うのは警察だけではなく、検察の検事からも取調べを受けることになります。取調べの内容にたいした差はありませんが、それぞれの目的が、警察の場合は立件に十分な証拠となる自白を得るためであるのに対して、検察の取調べは容疑者の嫌疑が起訴に相当するかどうかを判断するためのものとなるのです。

検察が裁判を起こすか、起こさないか、いわゆる起訴・不起訴を決めるために、被疑者に対して行う取調べを、「検事調べ」と呼んでいます。日本の刑事事件裁判では有罪率が99%を超えるとされていますが、この「検事調べ」によって刑事事件にふるいがかけられ、必ず有罪になるような事件のみを起訴するからだとも言われています。

要するに「検事調べ」において、起訴しても勝てない、有罪判決を得るのが難しいと検察が判断したら、その事件は不起訴処分となり、被疑者は晴れて無罪となるのです。

本項では、ある意味警察の取調べよりも重要な「検事調べ」について説明します。

検事とはどういう人なのか?

そもそも一般的に検事と呼ばれる職種は、どういう人なのかを簡単に整理しておきます。

検察庁に属する検察官には、現在は検事と副検事という官名がありますが、かつて検察官を検事と呼んでいたため、検事という名称が検察官の総称として残っているものです。検事は、現在では検察官という呼び名で法律も定められており、以下のように公訴についての取り決めも行われています。

刑事訴訟法

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。

第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

しかしながら現在でも検察官を検事と呼ぶことが多いため、本項でも検事という呼び名で書き進めていきます。

公訴権を持つのは検事のみ

上記の刑事訴訟法でも規定されている通り、日本では公訴権を持つのは検察官、いわゆる検事のみとなります。そのため、古いテレビドラマや映画でよく耳にする、警察官が「監獄に放り込んでやる」という台詞は、ある意味で嘘だということになります。

留置場が監獄であるという意味では正しいのですが、実際に裁判を起こし、有罪判決を受けさせたうえで刑務所に収監させるのは警察官にはできません。近年では検事が主役になるドラマも出てきて、事実考証もしっかり行われているものも多いですから、この辺を意識して観ると面白いかもしれません。

警察は逮捕ができても有罪にすることはできず、その役割は検察が担っているのです。一方で、検察には逮捕権もあります。特に社会的な影響の大きい政治家や有名人の事件については、検察が逮捕を行うことがよくあります。

「検事調べ」はどのように行われるか

刑事事件の被疑者は、逮捕された後に警察の留置場で最長48時間、その後送検されて24時間、検察による勾留請求が裁判所によって認められれば10~20日間は身柄を拘束されたままになります。

その間に検察の検事が、被疑者を起訴するか不起訴として釈放するかを決めるまでに、数回にわたり、被疑者の取調べを行いますが、これが「検事調べ」です。もちろん警察による取調べも並行して行われますので、勾留期間は同じような質問を繰り返し受ける、非常に辛い期間を過ごすことになってしまいます。

この「検事調べ」が、実際にどのような形で行われるのか確認してみましょう。

検察庁に呼び出され、ひたすら待つ

勾留期間であっても、現在は多くの場合に被疑者は警察の留置場で身柄を拘束されたままです。本来ならば送検された検察の施設である拘置所に移送されるべきなのですが、拘置所の数が足りないために、留置場に留め置かれるのが現状です。そのため、「検事調べ」を受ける被疑者は、検察庁まで呼び出され、検事による取調べを受けることになります。

再びテレビの話になりますが、検察庁に護送されるシーンがニュースで報道されるような、世間から注目を受けている重大事件でない限り、警察署から検察庁までは個別に護送されることはありません。一般的に被疑者は、検察や裁判所から呼び出された他施設の被疑者や被告人と護送バスで十把一絡げに連行されるのです。

留置場から検察庁への護送バスは朝に往路1便、夕方に復路1便であるのが普通で、検察や裁判所に呼び出された被疑者や被告人は、丸1日を検察庁や裁判所で拘束されることになります。急に呼び出された方はいい迷惑ですが、検察の検事にはその権限があり、自分の予定に合わせて被疑者や被告人を呼び出すのです。

取調べに対応する際に気をつけること

「検事調べ」に限らず、警察や検察の取調べに応じる際には、注意しておかなければならない点が多くあります。まずは、弁護士と打ち合わせしたことは、必ず守るということです。

逮捕直後はなかなか時間が取れませんが、勾留中であれば十分に弁護士と刑事手続きの進め方について相談する時間があります。刑事事件の被疑者は黙秘権がありますから、警察や検察に自分が不利になることを話す必要はないのですが、弁護士には包み隠さず事件に関わる事実を伝えることが大切です。

事件が冤罪であった場合にはもちろんですが、もし罪を犯してしまっていたとしても、弁護士は被疑者の味方となって、最善の策を考えてくれます。そして、度重なる取調べに疲れて警察や検察の言いなりになってしまうことのないように、しっかりと自分を保ち、真実を決して曲げるようなことを言うことのないようにしましょう。

警察や検察は、彼らが描いたシナリオ通りに事件のシナリオを描き、型にはめようとしてきますので、例えひとつの言葉でも違いがあるならば、供述調書に署名や押印をすることなく、書き直しを求めることが大切です。

とは言え、留置場生活が長引けば自分の記憶すら信じられなくなることがありますので、その際には弁護士が渡してくれる被疑者ノート(取調べの記録)を活用し、事の顛末を書き記していけば、記憶を呼び起こすことになりますし、弁護士と密に情報の共有が可能となります。

警察と検察の双方により取調べが行われる

刑事事件における手続きの建前は、事件を認知した警察が被疑者を特定した後は、事件を検察に送検することになっています。この送検時に被疑者が逮捕されていれば、身柄ごと事件の全権を検察に送る身柄送検になり、被疑者の身柄が拘束されていない在宅捜査であれば、書類だけを検察に送る書類送検になるわけです。

いずれにしても手続きの主導権は検察に移りますので、送検後は取調べも検事が全部行うべきなのですが、実際はそうではありません。送検後も検察の指揮により、引き続き被疑者の取調べのほとんどが警察の担当捜査官が行います。

これは刑事事件の件数に比べて、検事の数が足りないという事情があるからです。実際に刑事事件を担当している検事は、常時数十件の事件を抱えており、これらの事件の取調べを全部検事自らで行っていたら、勾留期間中に起訴・不起訴の判断することは不可能でしょう。

ただそれでも事件を捜査する上で、直接被疑者に聞いてみたい事があった場合、検事は被疑者を呼び出して「検事調べ」を行うのです。

「検事調べ」は通常3回程度

刑事事件の被疑者が送検され、起訴・不起訴が決定されるまでに行われる「検事調べ」は3回程度とされています。「検事調べ」は基本的に不定期なのですが、検事の判断以外にも、送検から起訴・不起訴の最終判断までに3回程度は行われるのが普通です。

この3回の「検事調べ」を、「初件」「中調べ」「最終調べ」と呼ぶことがあります。

初件」とは送検と同時に行われる「検事調べ」を指します。ほとんどの逮捕された被疑者は、「初件」を受けることになり、そしてこの時かなりの高い確率で検察は勾留請求を行い、裁判所に認められてしまいます。

中調べ」は、通常勾留期間の中間で行われます。警察による取調べ内容の確認が主な目的だと考えられますが、検事自身が直接被疑者に聞いてみたいことも、この時に質問されます。

最終調べ」は、勾留満期の少し前に行われます。被疑者を起訴するか、不起訴にとどめるかを検事が判断する、文字通り最終的な取調べになりますが、単純な事件で容疑が明白であれば、この「最終調べ」の際に検事自ら「あなたを起訴します」と被疑者に宣言することもあるようです。

刑事事件の行く先を決めるのは検事

日本では民事訴訟は誰でも起こせますが、前述の通り刑事裁判を起すことが許されているのは検事だけです。つまり、被疑者を逮捕した警察がいくら自信を持って犯人だと主張しても、担当検事が不起訴だと決めれば、その被疑者は釈放されてしまい、無罪となります。

逆に、警察が逮捕してはみたものの、捜査を進めるうちに罪を犯したという確証がなくなっても、検事が起訴相当と判断すれば起訴されてしまうのです。極論ですが、刑事事件の場合は裁判にまで発展するか、不起訴で無罪となり一般社会に戻れるかは、最終的に検事の胸先三寸だということになります。そのため、起訴前の取調べにおいて、最も気を引き締めてかかる必要があるのが「検事調べ」なのです。

「検事調べ」で検事から聞かれることは、基本的に警察で捜査官に聞かれる事とほとんど同じでしょう。しかし同じ質問に同じ事を答えても、受け止め方が違う可能性があり、警察が気づいていないことに気づくこともあるでしょう。

必要以上に緊張する必要はありませんが、「検事調べ」を受ける前に、弁護士と事前に想定問答などでシミュレーションをしっかりしておくことをお勧めします。

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