刑事事件の被疑者が逮捕されないケース

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刑事事件の被疑者が逮捕されないケースがある

刑事事件の手続きにおいて、警察などの捜査機関が被疑者の身柄を拘束する逮捕は必ずしも必須のものではありません。

罪を犯したと疑われる被疑者を逮捕することは、刑事事件においてある意味象徴的なものですが、実は逮捕されることなく手続きが進むことも多く、その後の処分や起訴、裁判といった流れは、逮捕されるかどうかが問題ではなく、被疑者がどこにいようと同じように進められるのです。

なぜ逮捕が行われるのか?

刑事事件の被疑者を逮捕する際には、現行犯逮捕などの場合を除き、裁判所が発行する逮捕状が必要となり、警察などの捜査機関は申請の理由として、「被疑者には逃亡のおそれがある」、「被疑者が証拠隠滅する可能性がある」ということを挙げます。

この手続きは、刑事訴訟法第199条の第1項に定められています。

刑事訴訟法

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

この条文を読み解くと、警察や検察に被疑者が罪を犯した考える相当な理由があって、被疑者に逃亡の恐れがある、あるいは証拠隠滅の可能性の可能性がある、という理由で逮捕状を請求し、それを裁判官が正当だと認めれば逮捕状は発行されるのです。

しかし、大掛かりな詐欺事件や共犯者のいる組織的な犯罪の容疑ならともかく、規定されているように比較的軽微な罰金や科料という刑罰で済むような犯罪において、逮捕という自由を奪われる強制処分を受ける必要はないと言えるのです。

もし刑事事件の被疑者として逮捕されるような事態に遭ってしまった場合には、いち早く弁護士を手配してその後の対応を任せた方が良いでしょう。

逮捕されない場合、在宅捜査・書類送検に進むケースが多い

刑事事件における逮捕の手続きは、まず警察が被疑者の身柄を拘束し留置場に留め置き取調べを行った後、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察へ引き渡す送検を行います。
そして検察は24時間以内に起訴するか、不起訴にするかを決めますが、たいていの場合は勾留請求を行い、最長23日間にわたって被疑者の身柄は拘束されたままになります。

しかし、日本国内で発生したすべての刑事事件において、必ず被疑者が逮捕されるというわけではありません。
身柄の拘束は行わないで、被疑者が在宅のまま事件の捜査を行う在宅捜査、あるいは書類だけを警察から検察へ送致する書類送検という手続きもあります。

特に交通事故などの場合は、在宅捜査から書類送検となることも多く、逮捕を伴わない刑事事件の手続きは比較的多く行われています。

在宅捜査

刑事事件の被疑者が、一般社会で生活を送ったまま捜査を受けるのが在宅捜査と呼ばれるものです。

被疑者が死亡しているケースを除き、警察が刑事事件の犯人と考える被疑者の身柄を拘束しないで捜査をするということに疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、意外と珍しくなく、多くの事件で在宅捜査は行われています。

在宅捜査では、文字通り被疑者の身柄を拘束しないまま刑事手続きが進められます。

在宅捜査となるケース

警察や検察が、刑事事件の被疑者を在宅捜査にする理由はさまざまです。

本来、刑事事件の被疑者を逮捕して身柄を拘束する目的は、前述の通り被疑者が逃亡したり、証拠隠滅をしたりするのを防ぐことです。
そのため、著名人である政治家や芸能人などの場合は、顔が知られているため逃亡は不可能という理由で、逮捕をしないケースがあるようです。

ただしこの場合は、被疑者が本気で逃亡を考えれば、有名人であろうがなかろうが行方をくらます事は可能ですから、近年では有名人だからという理由で逮捕を控えるケースは減ってきていると言われています。

あまり知られていませんが、警察官や元警察官が軽犯罪などを犯した場合も在宅捜査になることが多くなるようです。

確かに警察官や元警察官といえば、個人データは確実に警察が持っていますし、身元は間違いなく明らかであり、本人が逃亡しても無駄だということが分かっていますので、在宅捜査になるのも理解できます。

在宅捜査のメリットとデメリット

刑事事件の被疑者が在宅捜査を受けるメリットは、基本的に事件以前の普段通りの生活が可能だということが挙げられ、学校に通うこともできますし、会社にも行くことが可能です。

しかし学校や会社では、刑事事件の被疑者となっていることが知られてしまうと、退学になったり、会社ならば解雇されたりする可能性はあります。

これは日本の社会風潮の問題で、被疑者は決して有罪が確定したわけではなく、犯罪者ではないのです。
冤罪の可能性や、罪状が間違っている場合もあるということが周知されることを期待したいところです。

もうひとつのメリットとして、被害者との示談交渉が進められることがあります。

被害者と示談が成立しているかどうかは、後の裁判に非常に大きな要素となるため、弁護士と相談して、不起訴となることを目指して、あるいは少しでも罪が軽くなるように被害者との交渉を進めるべきでしょう。

在宅捜査の場合でも、被疑者が被害者に会うのはNG

しかしこの際注意しなければならないのは、いくら謝罪の念があったとしても、決して被疑者自身で被害者に会いに行ってはいけないということです。

被害者に対する脅迫が疑われたり、証拠隠滅の意図があるのではないかと考えられたりするので、自らの立場をわきまえて弁護士に交渉に臨んでもらうことが重要です。
逮捕され身柄を拘束された場合と比べた在宅捜査のデメリットはあまりありませんが、逮捕や勾留にある手続きの期限が定められていないことでしょう。

警察や検察の捜査の期限となる公訴時効まで刑事手続きは続くことになります。
その間たびたび取調べのために警察や検察に呼び出されることになり、場合によってはいきなり逮捕されることもあります。

長期間にわたり逮捕や起訴に怯えていなければならないという苦痛が伴うことになります。

交通事故の場合は在宅捜査が多い

一般人が在宅捜査を受けるケースで最も多いのが、交通事故の加害者となってしまった場合です。

交通事故の訴訟に関しては民事がクローズアップされがちですが、事故によって器物を壊してしまったり、被害者に怪我を負わせたり、最悪のケースでは死亡させてしまった場合などには、刑事事件としての手続きも行われます。

しかし交通事故の加害者として逮捕されるのは、事故が重大なものであったり、被疑者が死亡してしまったりした場合などに限られ、加害者(被疑者)に逃亡のおそれや証拠隠滅を防ぐという意味合いもありますが、罪の意識に苛まれた加害者が自殺してしまうのを防ぐ目的もあると考えられています。

交通事故で逮捕され、身柄を拘束されたままで刑事手続きが進められるるのは以上のような特殊なケースに限られ、交通事故の大半は在宅捜査になると見込まれます。

書類送検

書類送検という言葉は、テレビニュースや新聞でもよく見聞きします。

刑事事件の被疑者の身柄を拘束しない、いわゆる逮捕をしない状態で、事件を送致することを書類送検と呼びます。
逮捕されないまま捜査が行われ、身柄も検察に送られることなく、事件の捜査書類だけが検察に送られるのです。

この場合、前述の在宅捜査と同じく、逮捕をしないわけですから、警察での48時間、検察での24時間、勾留の10日間のような時間的制約はありません。

書類送検が行われるケース

書類送検が行われるのには、大きく分けて2つの理由があります。

まずは、被疑者がすでに死亡している場合です。警察や検察が刑事事件を捜査した結果、被疑者がすでに死亡していた場合、本人の身柄を拘束することは当然できませんので、必然的に書類送検のみとなります。具体的なケースとしては無理心中の首謀者、あるいは交通事故で事故の原因を作った加害者が事故で死亡した場合などです。

もうひとつの理由は、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合です。この場合は逮捕の要件を満たしていませんので、逮捕は行われずに捜査が行われ、警察から検察に書類だけが送検されるのです。

書類送検は無罪か有罪か?

これはあまり一般的に理解されていないのですが、書類送検されたからといって有罪だと決まったわけではありません。

検察に事件の書類が送られた後、検察は起訴するか不起訴にするかを判断します。起訴された場合は、後に行われる裁判によって、無罪か有罪かが判断されることになります。

一方で起訴されなかったら無罪であり、前科はつきませんが、捜査対象となってしまった記録は前歴として残ることになります。

その他、逮捕されないケース

軽犯罪の場合

一般的に軽犯罪と呼ばれるような事件においても、被疑者の身元が明らかで、逃亡のおそれがないと判断されれば、逮捕は行われず在宅捜査になったり、逮捕はされても直後に身柄が解放されたりすることがあります。

痴漢行為

近年よく話題になる電車内での痴漢行為においても、強制わいせつ罪や暴行罪など身体に危害を加える内容でなければ、一時的な身柄確保はあったとしても逮捕にまで至るケースは少ないとい言われています。
被疑者が会社に勤めるサラリーマンであれば、仕事や家庭をすべて捨てて逃亡することは考えにくいためです。

痴漢行為の場合、犯行を否認していると身柄が解放されにくいと言われていますが、弁護士の協力を得ることで送検前に釈放してもらえるケースもあります。

まとめ

逮捕されなくても被疑者は弁護士に相談を

在宅捜査においては、逮捕はされていなくても被疑者は捜査に従わなければなりません。

被疑者の疑いが晴れたわけではなく、逮捕されて身柄が拘束されていないというだけで、被疑者は被疑者のままですから、警察や検察は事件の捜査の一環として被疑者の取調べを行います。
在宅捜査での取調べは、警察や検察から呼び出される出頭要請があり、警察や検察まで出向かなければなりません。

こうした取り調べは、基本的には任意の取調べとなります。そのため、警察だと多少の気遣いがあり、取調べを仕事の終わった夜にしてくれるなど融通が利くと言われていますが、検察は平日の昼間に検事の都合で呼び出されることが多いようです。

ただし、被疑者を逮捕できるほど確たる証拠がなく仕方なく在宅捜査にしている場合もあります。
そうした状況の場合、逮捕できる証拠を自白させるために連日呼び出しをかけたり、朝早くから深夜まで取調べが行われるなど、警察や検察が意図して負担をかけてくる可能性も否定はできません。

警察や検察から納得行かない形での出頭要請をされている場合は、弁護士に相談して対応を検討するのが良いでしょう。

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