勾留とは?逮捕には期限があり身柄拘束を継続するための手続き

拘留

逮捕の期限は72時間

逮捕には警察での48時間と検察での24時間、合計72時間という期限があります。このリミットまでに検察が起訴できなかったら、刑事事件の被疑者はすぐに釈放を求める権利があるのです。

現実的に検察は24時間以内に調べを終えるわけはなく、引き続き被疑者の身柄を拘束して捜査や取調べを進めるために、勾留という手段を使ってより長期間にわたり被疑者の自由を奪うのです。

本項では、逮捕や勾留の手続きやそれぞれの期限について説明します。

警察に与えられたリミットは48時間

逮捕とは、憲法で保障されている人の自由を奪う強制処分となり、警察や検察の都合で際限なくその自由を奪うことには問題があるため、逮捕による身柄拘束にはタイムリミットが設けられています。

まず、警察におけるリミットは、下記の刑事訴訟法第203条1項に規定されている通り、48時間となります。

刑事訴訟法

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

要するに、司法警察員(警察)は被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に、犯罪を立証するに十分な書類や証拠を揃え、検察官に送致(送検)しなければならないのです。刑事事件の書類作成などの手続きに時間がかかってしまい、48時間のタイムリミットを超えてしまった場合には、たとえ捜査途中であっても被疑者を釈放しなければならないのが原則です。

一般的なイメージで、警察に逆らったままだといつまでも留置場に入れておかれるのではないかと考えがちですが、警察は逮捕してから48時間以内に犯行の証拠や書類を揃えて検察に送らなければならないのです。そのため、逮捕時に宣告された逮捕時刻から48時間を過ぎても留置場に留め置かれることになれば、不当な身柄拘束だと騒ぎだしても許されることになります。

しかし現在の警察がそんな初歩的なミスをする事はまずありえません。通常逮捕ならば、事前の捜査で十分な書類や証拠を準備し、計画を立てて被疑者の逮捕に向かいますので、取調べ段階でよほどのことが起こらない限り、警察の逮捕による身柄拘束が48時間を超えることはないでしょう。

逮捕された被疑者が容疑を否認し、完全黙秘をして供述調書を1本も作らせないという抵抗をしても、警察が作り出したシナリオだけで検察へ事件を送ることは可能なのです。

検察のリミットはわずか24時間

逮捕の手続きにおけるタイムリミットは、検察にも設けられています。

下記の刑事訴訟法第205条に定められているように、検察は警察から送検を受けてから24時間以内に、起訴・不起訴の判断をしなければなりません。

刑事訴訟法

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取ったときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○3 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

同条には、逮捕により被疑者の身柄が警察や検察に拘束される合計時間が72時間を超えてはならないとも規定されています。

この期限内に公訴の提起を行わない際には、被疑者を釈放しなければならないとも定められていますが、逮捕された被疑者が、たとえ起訴されなくても72時間で釈放されることはめったにありません。検察には勾留という手段が残っているのです。

検察が行う勾留とは

検察は、警察より送検されてきた事件に関し、より長時間の取調べが必要である、あるいは追加の捜査を行わなければならないと判断した場合には、裁判所に勾留請求を行い、より長い期間にわたり容疑者の身柄を拘束しようとします。特に、被疑者が犯罪の事実を、あるいは一部分でも否認している場合には、必ずと言ってよいほど身柄拘束の期間は勾留請求により延ばされてしまいます。

そのため、多くの被疑者は逮捕されて72時間を過ぎても、留置場に身柄を拘束されたまま警察や検察の取調べを受けますが、逮捕以後に続く身柄拘束が勾留です。これでは何のために逮捕にタイムリミットがあるのか分かりませんが、勾留請求が行われそうな雰囲気になってきたら、弁護士と十分に相談したうえで対応策を決めた方が良いでしょう。

なお、勾留については刑事訴訟法第207条に定められています。

刑事訴訟法

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
○5 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
(第1項、第5項のみ抜粋)

なぜ勾留が行われるのか?

現実的な問題として、警察から事件が送検されてきて24時間以内に起訴して裁判にかける、あるいは不起訴処分として無罪釈放するかを決めるのは、かなり無茶な話です。24時間かけて捜査や取調べをしても、集められている証拠には限界がありますし、検察の検察官が抱えている事件は、警察の捜査官が担当している事件よりもはるかに多いのです。

だからといって安直に起訴を決定するわけには行かず、不起訴処分で真犯人を逃がす事になることも避けなければならないので、起訴・不起訴の判断は、よほど単純で明確な事件でなければ24時間では無理だと考えられます。このような理由から、一般的な刑事事件の手続きにおいて、起訴・不起訴の判断は逮捕の期限である72時間以内ではできないのです。

勾留により、裁判での有罪率が高くなる?

被疑者の身柄を引続き拘束し、警察や検察が捜査や取調べを続けるのが勾留ですが、刑事手続きは必ず被疑者の身柄を拘束しなければならないというルールはありません。逮捕は被疑者が逃亡したり、証拠隠滅を図ったりする可能性が高いと判断した警察や検察の捜査機関が裁判所に許可をもらうものです。

仮に逮捕の期限が過ぎたとしても、被疑者を釈放しなければならないというだけで、事件捜査は、そのまま継続させることも可能なのです。一方で、被疑者の身柄を拘束したまま捜査を続けるメリットは、いつでも被疑者の取調べができる、警察や検察が作った事件のシナリオを立証するための時間が稼げるといったものでしょう。

ここで十分な捜査や取調べを行い、検察が確実に有罪だと判断できる、要するに、裁判で有罪判決を導き出せると考えた時に初めて、起訴するのです。そのため、日本の刑事裁判における有罪率は99%を超えているのだという見方もあります。

被疑者としては、特に理由もなくただ取調べが続くだけの長期にわたる勾留を受け続ける必要はないので、後述するさまざまな方法と弁護士との連携によって、早期の決着や社会復帰を求めたいものです。

勾留の期限は原則20日間

勾留は刑事施設に閉じ込めて自由を奪う点で、被疑者としては逮捕の状態と何ら変わるものではありませんが、検察は被疑者を勾留したい場合は、逮捕とは別に裁判所の許可が必要となります。

同じ身柄拘束でも逮捕とは別の刑事手続きとなり、収容される施設も本来ならば拘置所へと移るはずなのですが、現実的には拘置所の数が足りておらず、ほとんどの場合は留置場でそのまま被疑者の身柄拘束が続けられています。

なお、勾留の期限については、刑事訴訟法第208条に定められています。

刑事訴訟法

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

以上の通り、裁判所が勾留を認めると10日間、やむをえない事情がある時にはさらに10日間、合計20日間の身柄拘束が行われることになってしまいます。

弁護士に相談し、早期の身柄解放を目指そう

刑事事件の被疑者は逮捕の72時間、勾留の20日間を合わせて、最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性があります。しかし捜査に時間がかかるとか、被疑者が罪を認めていないという、捜査機関側の理由だけで、長期の拘束を受けてしまうことは受け入れられません。原則としては、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、逮捕や勾留を受ける必要はなく、即座に被疑者の身柄は解放されなければならないのです。

弁護士に相談し、「準抗告」や「勾留理由開示の請求」、「勾留の取り消し請求」といった手段を取れば、身柄の解放が実現される場合があります。逮捕されて4日目以降は、必ず弁護士の力を借りるべきだと言えるでしょう。

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