恐喝罪で捕まったら弁護士に相談、示談交渉のポイントと慰謝料の相場

恐喝する男性

恐喝罪は詐欺罪と同じ交付罪で、法定刑も同じ最高で懲役10年です。暴行・脅迫を手段にする点においては強盗罪との近接性もあると言えます。そうした恐喝罪の性質、概要から、示談交渉のポイントなどを中心に説明します。

恐喝事件で身近な人が逮捕された場合

恐喝は俗に「カツアゲ=喝上げ」と呼ばれ、素行の悪い者が行う犯罪の代表格といったとらえられ方をすることが多いでしょう。恐喝罪とはどういう罪で、逮捕されたらどうなるのでしょうか?

恐喝罪とは?

恐喝罪とは暴力や脅迫で相手の金銭や財産を脅し取る犯罪で、法定刑は10年以下の懲役です。罰金刑はありません。なお、恐喝の際、暴行して相手をケガさせてしまった場合には、恐喝罪と傷害罪(刑法204条)の両方が成立し、そのうちの最も重い刑で処断されます。傷害罪は最高で懲役15年なので、傷害罪で処断されることになります。

交付行為は比較的緩やかに解釈

詐欺罪における交付行為は、欺罔(騙す行為)により錯誤に陥った被害者が、被害者の意思で財物を交付し(恐喝されて自分の財物を差し出すこと)、恐喝をした人物に占有が移転することを言いますが、恐喝罪ではそれほど厳密には考えられていません。被喝取者(恐喝され、財物を交付した者)による提供はもちろん、黙示の交付行為でもいいとされています。

身柄拘束された本人と外部との連絡

逮捕された被疑者については、電話やメール等で外部と連絡を取ることはできません。また、家族との接見(面会)が認められない場合があります。ただし、弁護士との接見については認められます。

家族との接見、逮捕直後は原則不可

家族との接見は逮捕から勾留されるまでの間は、原則として認められません。接見できるのは勾留されてからです。検察官が被疑者を留置する必要があると判断する時は、裁判所に勾留請求し、認められれば被疑者は勾留されます。勾留決定がされた後、家族は接見できますが逃亡し、又は罪証を隠滅すると疑いがあるときは、接見禁止にすることができます。なお、弁護士は勾留時はもちろん勾留前も接見できます。

弁護人の接見は憲法上認められた権利

弁護人依頼権は憲法34条前段で保障されている重要な権利です。逮捕された被疑者にとって、唯一の味方とも言えるのが弁護士です。弁護人や弁護人になろうとする者とは、立会人なくして接見し、または書類若しくは物の授受をすることができます(39条1項)。

特に重要な初回の接見

弁護人の接見の中でも、特に初回の接見については弁護人を選任したり、取調べにあたり助言をもらえる最初の機会ですので重要です。弁護士との接見については捜査機関も十分に配慮してもらえるシステムになっています。

恐喝事件の逮捕からの流れ

恐喝事件に限らず、逮捕され裁判が行われるまでの手続きは刑事訴訟法に規定されています。その手続きの中で釈放されたり、不起訴になったり、起訴されても保釈になったり、様々な状況が起こり得ます。ここではその流れを見てみましょう。

逮捕

逮捕には通常逮捕、現行犯逮捕、準現行犯逮捕、緊急逮捕の4種類があります。事前に令状請求して逮捕するのが通常逮捕、令状請求する時間がなく逮捕後に令状請求しなければならないのが緊急逮捕です。現行犯逮捕では令状は不要です。通常逮捕、緊急逮捕の逮捕権者は検察官、検察事務官または司法警察職員とされていますが、現行犯逮捕、準現行犯逮捕は私人(個人)も可能です。恐喝罪の場合、すべての種類の逮捕の可能性があります。

逮捕後の司法警察員による手続き

逮捕されると、司法警察員からは犯罪事実の要旨と弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられます。留置の必要がなければ直ちに釈放されますが、留置の必要があると判断されたときは身体の拘束から48時間以内に書類及び証拠物とともに検察官に送致する手続きがとられます。

弁解の機会と取調

司法警察員は被疑者の弁解を聞いて留置の必要性があるか判断します。つまり釈放する権限を有しているのは、司法警察員ということです。弁解は弁解録取書にまとめられ、裁判で不利な証拠となる可能性があります。弁解の機会に続いて取調が行われることが多いですが、その際には司法警察職員からは自己の意思に反して供述する必要がないことを告げられます。

微罪処分とは?

微罪処分とは、軽微な事件について検察官が司法警察員に対して送致義務を免除するものです。司法警察員は本来、事件を速やかに検察官へ送致しなければなりませんが、その例外の一つが微罪処分です。微罪処分は犯罪事実が極めて軽微で、検察官から送致の手続きの必要がないと予め指定されたものです。平成27年の刑法犯のうち微罪処分で処理された者は7万1496人で、全検挙人員23万9355人に占める割合は29.9%とおよそ3割です(平成28年犯罪白書より)。微罪処分の基準は非公表ですが、恐喝罪が微罪処分になる例はあまりないようです。

送検

逮捕され、司法警察員に留置の必要があると判断されたら被疑者は検察官に送致されます。

送検の意味

送検とは、被疑者の身柄を検察官に送ることではなく、事件そのものを検察官に送ることを指します。つまり書類及び証拠物とともに被疑者の身柄を送致することで、それにより事件が検察官の扱いになることを意味します。

タイムリミット48時間

検察官送致には時間制限があり、被疑者の身柄拘束から48時間以内に書類及び証拠物とともに送致の手続きをしなければなりません(203条1項後段)。手続きをすれば良く、被疑者の身柄が実際に検察に到着するのは身柄拘束から48時間を過ぎていても問題ありません。

検察官送致された時の収容施設

被疑者がどこで収容されるかは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に定められています。逮捕された場合は通常、警察の留置施設に収容されます。検察官送致を受け勾留される者は拘置所などの刑事施設に収容されますが、留置施設に収容される場合もあります。「現在では、特に被疑者の勾留については、留置施設(代用監獄)への収容が常態化している」(新・コンメンタール刑事訴訟法第2版p163=日本評論社)という指摘があることから、検察官送致と同時に拘置所などの刑事施設に移されるのは少数と考えていいでしょう。

勾留

検察官は送致された被疑者を受け取った時、留置の必要があると考えた場合は、裁判官に被疑者の勾留を請求します。裁判官が勾留決定をすれば、被疑者は勾留されます。

送致を受けた検察官の手続き

検察官は送致された被疑者を受け取った時は、弁解の機会を与え、留置の必要がないと判断すれば直ちに釈放することになります(205条1項前段)。逆に留置の必要があると考えた場合は、受け取った時から24時間以内、かつ、被疑者が身体を拘束されて(原則として逮捕の時)から72時間以内に裁判官に勾留を請求しなければなりません(同条1項後段、同条2項)。

裁判官による勾留決定

勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に対して被疑事件を告げ、勾留質問(被疑者の陳述を聞くこと)を行います。勾留の理由がある場合には速やかに勾留状を発しなければならず、勾留の理由がない時には釈放を命じ、必要があれば事実の取り調べをすることができます。

勾留期間と延長

勾留期間は10日です。勾留請求の日から10日以内に公訴を提起しない場合には直ちに被疑者を釈放しなければなりません(208条1項)。初日は時間にかかわりなく1日として計算されます。また、やむを得ない事由がある時は、10日を超えない範囲で期間の延長が認められます。合計で10日を超えないのであれば、延長の回数に制限はありません。

起訴

起訴は、検察官が裁判所に実体的審理と有罪判決を求める意思表示です。勾留延長される場合を除き、勾留請求の日から10日以内に起訴するか、しないかが決定されます。

検察官による起訴

起訴は検察官のみが行います。また、たとえ犯罪の証明が十分であっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により起訴しないこともできます(248条)。つまり起訴するかしないか、検察官が一切の権限を有しているわけです。

起訴された場合の被疑者の勾留

起訴された被疑者は被告人となります。被疑者の段階で勾留されていて被告人になった後も勾留する場合には、検察官が起訴状を提出すると自動的に勾留が継続されます。被告人の拘禁場所は刑事施設ですから、通常は起訴されると拘置所に移送になります。しかし、現実には拘置所の混雑などでスムーズにはいかず、その場合はしばらく留置場に勾留されることもあるようです

被告人になったことによる効果

被疑者が被告人になることで、捜査機関による接見指定はできなくなります。これは接見指定が「公訴の提起前に限り」行えると規定されているためです(39条3項)。もっとも被告人が余罪について起訴前勾留されている時は指定が可能です。

公判

検察官による起訴があると、公判が開かれることになります。

裁判所の手続き

裁判所は公訴の提起があった時は、遅滞することなく起訴状の謄本を被告人に送達しなければなりません。裁判長は公判期日を定め、検察官、弁護人に通知します。

弁護人選任権等の告知

裁判所は公訴の提起があったときは、被告人に弁護人を選任できる旨及び貧困その他の事由により弁護人を選任できない時は弁護人の選任を請求できる旨を知らせなければなりません。弁護人の選任の告知は逮捕時、勾留質問時にもされますが、ここでも行われます。

公判手続きは大きく分けて4つ

公判手続きは、冒頭手続き-証拠調べ-弁論-判決という流れになります。冒頭手続は、認定質問-検察官による起訴状の朗読-裁判長による権利告知(読み上げ)-被告人及び弁護人が事件について陳述という順番で行われます。裁判長による権利告知では、終始沈黙したり、個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨、また陳述した場合、それが自己に不利益な証拠になる可能性があることを読み上げられます。

恐喝事件における示談交渉のポイント

恐喝の容疑で逮捕、勾留された場合であっても、全件が起訴されるわけではありません。嫌疑が不十分だった場合はもちろんですが、嫌疑がはっきりしていても総合的な判断で検察官が起訴しないこともあります。起訴猶予となるか否かは、被害者との示談が成立しているかが大きなポイントを占めます。

被害者への謝罪が示談の基本

示談については刑事訴訟法、刑事訴訟規則、犯罪捜査規則等に規定がありません。しかし、司法警察員による微罪処分、検察官による起訴、起訴猶予を決定する場合において示談の成否が重要な役割を果たします。

示談の法的性質

刑事裁判は犯罪を犯した者に対して国家刑罰権を実現する裁判ですから、当事者の合意でその国家刑罰権を消滅させることはできず、示談にはそうした効力はありません。しかし、強姦罪等の親告罪の場合、示談が成立して告訴を取り下げることになれば検察は公訴提起ができなくなります。また、示談の成立により被害者感情が和らいだり、被疑者・被告人の反省、損害の金銭的な回復などから微罪処分、起訴猶予等になる可能性もありますし、有罪判決でも情状面での酌量が期待できます。

被害者への謝罪が重要

示談を成立させるためには被害者への謝罪は前提になります。平成12年に新設された被害者等の意見の陳述制度により、被害者が公判で被害に関する心情その他の意見の陳述ができるようになりました。被害者感情は量刑判断において大きなウエートを占め、被害者への謝罪は重要な要素となります。謝罪がなければ示談は成立しないでしょう。

恐喝罪での示談のポイント

恐喝罪では財産上の損害を補償することが示談交渉の前提と言っていいでしょう。暴行や脅迫を手段として用いているわけですから、精神的な損害に対する慰謝料なども支払うべきです。その上で強い反省の念を示すことが被害者の感情を和らげることになります。

身柄拘束からの解放の取り組み

依頼を受けた弁護人としては、身柄を拘束された被疑者・被告人を一刻も早く自由の身にすることを目指します。自由の身になると一口に言っても、一連の手続きの中で様々な方法が考えられます。

検察官に送致されずに釈放

逮捕後、自由の身になる最初のチャンスは検察官への送致がされずに釈放されるときです。司法警察員は留置の必要がないと判断すれば直ちに釈放しなければなりません。釈放に向けてすべきことは犯罪の嫌疑が薄いこと、定まった住所や定職があり逃亡のおそれがないこと、罪証隠滅ができないように現場付近に行かないことを約束するなどなので、自分は留置の必要性がないことを司法警察員に理解させることが大切です。

検察官送致後、留置の必要性がないと判断され釈放

被疑者が検察官に送致された後、検察官が留置の必要性がないと考えれば直ちに釈放されます(205条1項)。どのような場合に留置の必要性がないと判断されるかは、定まった住所がある、罪証隠滅ができないように関係者と接触しない、現場に近づかないことが約束されている、定職があり、身元を保証する者がいて逃亡のおそれがないなどが考えられます。

裁判官が勾留請求を却下して釈放

検察官から勾留請求が出されても、裁判官が勾留の理由がないと認める時は直ちに被疑者の釈放を命じなければなりません(207条5項)。そのため、勾留の理由がないことを裁判官に働きかけます。実際には検察官の勾留請求から、裁判官の勾留決定までは時間も少ないことから、同時期に働きかける場合が多いようです。なお、裁判官のした勾留決定に対しては準抗告が可能です。

起訴後勾留に対して保釈申請をする

起訴された場合は、保釈(88条以下)を請求します。保釈とは保釈保証金を納付して勾留の執行を停止し、拘束を解く制度です。起訴前勾留にはこの制度は適用されません。
保釈には必要的保釈と裁量的保釈の規定があり、過去に重罪で有罪判決を受けた、常習犯である、罪証を隠滅する疑いがある、被害者や証人、その親族などに危害を加えたり畏怖させたりする疑いがある、氏名又は住居が分からないに該当しない場合には必要的に保釈されることになります。仮にいずれかに該当する場合でも裁判所が適当と認めれば保釈されることはあります(90条)。

恐喝事件の弁護活動にかかる費用相場

弁護人が事件を担当することになると、解決のための費用がかかります。示談には金銭が必要になりますし、示談をする弁護士の費用も必要になります。

示談金

示談には金銭が必要になります。恐喝罪では、慰謝料を含めて損害に対する金銭的賠償をすることになります。

生じた損害は示談金で賠償を

恐喝罪における示談金としては、相手が傷害を負っていた場合は治療にかかった費用は実費として支払うべきです。また、交付された財物についても、その損害を賠償するのは当然です。

慰謝料は示談金の一部

実費以外にも慰謝料が必要です。手段として暴行・脅迫を用いているのですから、被害者の負った恐怖心、屈辱感など精神的損害を金銭で賠償する必要があります。その意味から慰謝料は示談金の一部であると言えます。

慰謝料の相場は?

恐喝事件と一口に言っても、その態様は様々です。暴行の程度、交付された財物などによっても違います。そうした事情を総合的に判断して、被害者が被疑者・被告人の処罰を望まないというレベルの金額が相場と言えるかもしれません。

弁護士費用

示談をするには弁護士の力が必要です。被疑者の親族が被害者と示談交渉をしようと思っても、被害者は自分の住所など連絡先を知られたくないと考える場合が多く、困難が予想されます。弁護士に依頼するのが示談を成立させるには早道と言えそうです。

相談料

弁護士への相談料は、最近は初回無料としていることが多いようです。2回目以降は1回5000円程度が相場と言えます。

接見費用

被疑者・被告人との接見の場合、事務所から勾留場所まで行く必要があります。また、身柄拘束を解くための行動は、司法警察員、検察官、裁判官の手続きに時間制限がある以上、迅速に行う必要があります。そのため費用としても勾留場所との距離にもよりますが1回3万円前後はかかるのが普通です。

着手金

弁護士が事件を担当する場合、依頼人は着手金を支払うことになります。刑事事件では自白している事件であれば事実関係を争うことがありませんが、否認事件では不起訴や無罪判決を取る必要があり、事実関係からして争うことになります。そのため、否認事件は一般的には高くなります。弁護士にもよりますが、通常の自白事件なら20〜30万円程度、否認事件なら30〜50万円程度でしょう。

自白事件の成功報酬

自白事件であっても弁護士の活動によって起訴猶予、略式命令(恐喝罪は懲役刑のみなので略式命令になることはありません)、執行猶予付き判決、保釈許可決定、勾留に対する準抗告が認められるなどで被疑者・被告人にとって利益になることがあります。その場合には成功報酬を支払うことになります。事件や弁護士にもよりますが起訴猶予や微罪処分が10〜30万円程度、それ以外は20万円以下が相場と言えるのではないでしょうか。示談が成功した場合や、求刑より言い渡された刑が軽い場合にも成功報酬は必要となるのが普通です。執行猶予については平成28年6月から始まった刑の一部執行猶予制度も成功報酬が必要と考えた方がいいでしょう。

否認事件の成功報酬

否認事件では無罪判決を得ることが可能です。その場合には事実関係を争い、時間と手間をかけて争いますから、当然、成功報酬は高く設定されます。30〜50万円程度は必要でしょう。もちろん自白事件でも無罪判決の可能性はあります(ウソの自白をした場合等)し、自白事件の方が無罪判決の獲得は難しいですから、少なくとも否認事件での無罪判決と同程度の成功報酬は必要になります。なお、否認事件でも不起訴、執行猶予付き判決などでの成功報酬は必要になると考えるべきでしょう。

実費

弁護士が活動にあたって実際に経費としてかけた分は依頼人に請求されます。接見するための交通費や、通常の通信費などです。

日当

出頭したり、出張したりした際の日当が必要になります。概ね1回で3万円前後でしょう。また着手金を支払わずに、実際にかかった日数、時間によって支払額を決定する「タイムチャージ」という方式で支払う方法もあります。着手金で一律に支払うのではなく、かかった時間だけ支払うというものですが、大きな事件になると日数がかかり着手金方式より多く支払わなければならないということも考えられます。

恐喝事件も刑事事件は時間が勝負!

刑事事件は警察-検察-裁判所と時間をかけずに手続きが進んでいきます。それに対して不服の申し立てをしなければ、起訴-有罪へと近づいていくと言っても過言ではありません。早期の対策こそが重要です。

逮捕から72時間以内の弁護活動が重要な理由

通常の事件処理では逮捕から72時間以内に勾留請求がされます。そこに至る前に解放に向けて努力することが被疑者の身体の解放に向けては重要です。

72時間が持つ意味

逮捕から72時間以内に、司法警察員による検察官送致、検察官による勾留請求が行われます。被疑者の身体の解放に向けてそれぞれの手続きの中で行うべきことは異なります。適切な時期に適切な方法で解放に向けて動かないと、手続きだけが進んでいき身体の拘束からの解放がそれだけ遅れます。勾留決定されてしまうと10日間、身柄の拘束が続くことになりますから、その前の逮捕から72時間以内に勾留決定されないようにすることが重要です。

勾留決定への準抗告の持つ危険性

逮捕から72時間を過ぎて勾留決定がされても、準抗告で争えます。準抗告に対する裁判をするのは原則として裁判官が所属する裁判所ですから、裁判資料は捜査機関から裁判所に送られてその間、事実上、捜査ができない状況になります。そのため、勾留の延長(208条2項)の理由とされやすいという指摘もあります。勾留の理由に疑問があれば準抗告して争うのも、最決平成26年11月17日のような例(前出の京都市内の地下鉄の事件)がありますから、ためらうべきではないと思われます。もっともその可能性が低い状況で準抗告をする時は、勾留の延長というリスクを計算しながら行うべきでしょう。

最大23日間の拘束・・社会生活に大ダメージ

恐喝事件で逮捕された場合、起訴されるまでに最大で23日間、拘束される可能性があります。半月以上、社会から隔絶されることでの影響は極めて大きいと言えるでしょう。

23日間の拘束の内訳

逮捕されると最大で23日間、身柄を拘束されるということは、様々な媒体で目にすることがあると思います。中途半端な数字ですが、どのような根拠で23日なのでしょうか。1月1日午前10時に逮捕された場合で考えてみましょう。

  • 1月1日10:00逮捕
  • 1月3日10:00司法警察員が48時間以内に検察官への送致の手続きを行う
  • 1月4日10:00送致されてから24時間以内、身柄拘束から72時間以内に検察官が勾留請求
  • 1月13日終了まで勾留は最大10日間、この日までに勾留期間延長の請求
  • 1月14日00:00勾留期間延長開始
  • 1月23日終了まで勾留の延長は最大10日間

このように1月1日の逮捕から1月23日が終わるまで23日間、身柄を拘束される可能性があります。起訴されれば、さらに勾留は続きます。

最大23日間の拘束による影響

ある日、突然逮捕され最終的に起訴されずに釈放されたとしても、23日間、身柄を拘束されることの影響は甚大でしょう。特に会社勤めをしている場合には会社に直接連絡できなければ、無断欠勤を23日間続けることになります。家族や弁護士を通じて会社に連絡したとしても、23日間、有給休暇をもらえる保証はありませんし、会社としては犯罪を犯したかもしれない人を置いておきにくいでしょう。

起訴された場合の有罪確率は99.9%

日本の司法では起訴された場合、ほとんどが有罪になっています。

無罪判決はわずかに70人

平成27年度に地裁で7万4111人、簡裁で7951人が判決を受けましたが、無罪判決は地裁70人、簡裁6人でした(平成27年度司法統計)。無罪判決以外はすべて有罪判決ではありませんが(公訴棄却、免訴、管轄違い等の判決もあり)、有罪確率は例年およそ99.9%です。米国では否認事件の無罪率は15%前後と言われますが、大きな違いがあります。

弁護士への迅速な依頼が問題解決のカギ

上記のように日本の司法制度では「起訴されたら、ほぼ間違いなく有罪」と言っていい状況です。前科をつけたくないと考えた場合、起訴されないように示談を成立させるなどの対策が重要になります。そのためには逮捕された場合にはすぐに弁護士を依頼し、身柄拘束からの解放や起訴されないための活動(示談等)を行うことが必要になるでしょう。

恐喝罪での逮捕による人生への影響

刑事事件で逮捕されると、人生は大きく変わります。会社勤めをしていれば解雇の可能性が高くなりますし、その後の就職活動にも影響を与えるのは必至です。私生活でも結婚などで悪影響が出ても不思議はありません。

恐喝罪の刑罰、罰金刑はなし

恐喝罪(刑法249条)の法定刑は10年以下の懲役です。罰金刑はありません。

恐喝罪の刑罰

恐喝罪は最高で懲役10年というのは詐欺罪と同じです。ただし恐喝罪の場合は相手が傷害を負った場合に傷害罪もつくので懲役15年の可能性があります。もっとも、そのような長期の懲役が科されるような重度の傷害であれば、仮に外見的に交付行為があってもその実態は奪取と判断されて強盗致傷罪(刑法240条=無期又は6年以上の懲役)となる可能性が強いかもしれません。

処断刑の決定方法

処断刑とは量刑のひとつで、①再犯加重、②法律上の減軽、③併合罪の加重、④酌量減軽の順に従って法定刑に加重・減軽をします。初犯で、心神耗弱などの減軽事由がなく、また、併合する犯罪もない場合は、④酌量減軽だけが問題になります。

酌量減軽の内容

酌量減軽は「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる」というものです。犯罪の情状とは「犯罪行為自体に直接関係のある事情に限らず、犯人の年齢・境遇・前科、犯罪後の事情その他諸般の情状を意味する」(最大判昭和23年2月6日)とされていますから、被害者との示談が成立しているか否かは、情状に大きな影響を与えると言えるでしょう。

逮捕による仕事への影響

逮捕されることで真っ先に影響が出るのは仕事です。特に出勤途中に逮捕された場合等、家族が逮捕の事実を知らない場合は深刻です。

逮捕で無断欠勤になる?

逮捕された場合、被疑者は電話やメール等、外部との連絡手段を失います。捜査員によっては電話で家族に逮捕の事実を知らせてくれる場合もあるようですが、そのようなことは義務とされているわけではありません。仮に共犯の存在が疑われる事件であれば、警察が家族に電話をすることで逮捕された事実を教えることになってしまい、共犯者による罪証隠滅や逃亡が行われかねませんから、連絡することはありません。そのため被疑者は会社にも家族にも連絡できない失踪と同様の状態になることもあり、無断欠勤を余儀なくされる可能性があります。

身柄拘束が続いた場合

警察から連絡がない場合に家族が逮捕を知るのは、被疑者が弁護士と接見し、弁護士を通じて連絡を取ることによる場合が多いのではないでしょうか。それができなければ会社や家族にとって「失踪」と同様の状態が続くことになります。仮に弁護士から家族に連絡が入り、会社に伝えて有給休暇が認められれば少なくとも給与の面では損失はありませんが、それが認められる保証はありません。会社にすれば起訴され、その後も勾留が続く可能性を考えるでしょうし、有罪なら解雇もありうると考えるでしょう。そうした状況ですから被疑者は会社の戦力とみなされなくなる可能性を考えないといけません。

推定無罪の原則は会社に通用するとは限らない

刑事事件の大原則に「推定無罪の原則」があります。被疑者・被告人はもとより無罪を推定される地位にあるということです。しかし、会社において同僚や上司が「実はこの人は犯罪を犯したのではないか」と考えることまで禁止できるわけではありません。いつ会社に戻ってくるのか分からない、有罪になれば解雇されるかもしれない等を考えれば、重要な仕事を頼まなくなるのが普通です。

恐喝罪の家族への影響

被疑者の逮捕で精神的に大きなショックを受けるのは家族でしょう。身内が逮捕されるという事態は、配偶者、親兄弟、子供に与える影響は甚大です。

家族の行方が分からない

出勤途上に逮捕された場合など、家族は逮捕された事実を知ることができません。

失踪か、事故か、自殺か

家族にすれば、会社から「今日は家を出ましたか?出勤していませんが」という電話で父親(や息子等)が会社に行ってないことを知るという状況が起こり得ます。事故に巻き込まれたのか、自殺したのか、突然の出来事にパニックに陥るかもしれません。

弁護士からの連絡でまたパニック

そのうち警察か、もしくは接見した弁護士からの連絡で逮捕の事実を知ることになるでしょう。犯罪とは無縁の存在だった家族にとって「身内が犯罪者に」という思いから、またしてもパニックになると思われます。

ご近所に知られたくないが

家族が逮捕されたことは当然、付き合いのあるご近所には知られたくないでしょうが、バレてしまうことはありそうです。

報道で公になることも

家族にも逮捕の事実はなかなか分かりませんから、ご近所に知られることは少ないと思われますが、そうでもありません。恐喝事件でも被害の程度が深刻であったり、加害者が公務員や有名企業の社員であったりした場合にはテレビやネット、新聞などで事件として報じられる可能性が高く、そのような場合には、すぐに知られてしまいます。

事件で自宅を捜索される可能性も

また、報道がなくても、捜査機関は捜査のため必要があれば令状をとって家宅捜索をすることもあります。そうなれば大勢の捜査員が自宅に入ってくるためご近所の知るところになってしまいます。身内が逮捕された、自宅を捜索されたという事実をご近所に知られれば、家族としてはまともに外を歩くのもはばかられる状況となるでしょう。

恐喝罪の結婚・人間関係への影響

逮捕という前歴は結婚や、周囲の人間関係にも大きな影響を及ぼします。

結婚への影響

結婚(婚姻)は両性の合意のみに基づいて成立しますが、親や周囲の意見も影響するでしょう。そうなると逮捕の影響は結婚にも及んでくる可能性があります。

当人でも、親でも逮捕は結婚に悪影響

婚姻当事者が「逮捕された人とは結婚したくない」と思うことがあるかもしれません。それは当人の考えですから仕方がないことでしょう。しかし、当人はそれを知りながらも結婚したいと願った時に、その親が「逮捕歴のある人とは結婚してほしくない」と言い出すことは十分に考えられます。あるいは結婚相手の父親が恐喝罪で逮捕歴があると知られた時に、「親同士も付き合いがあるから、結婚してほしくない。逮捕歴のある人の子も逮捕されるような性格かもしれないから、やめてほしい」と言われることもあり得ます。特に恐喝罪は暴力団とのつながりをイメージさせる犯罪なので、なおさらです。結婚は親を含めて一生の付き合いですから、慎重さを求めるのが普通の親の考えでしょう。

調べられ、知られてしまうことも

当人や親の逮捕歴は、そう簡単に他人に知られることはありません。前科前歴はみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益であると最高裁も判示しています(最判昭和56年4月14日)。そのため、第三者が公的機関からそのような事実を知ることはほとんどあり得ません。しかし、今でも結婚前に相手の身上調査をする場合もあり、民間の調査会社を使って近所の聞き込みをすることはあり、そのような場合に隠していた逮捕歴が明らかになってしまうことがあります。そのような調査の是非はともかく、そうした調査によってせっかくの結婚が破談になる可能性は否定できないでしょう。

前歴を隠していたことが離婚の原因となるか

仮に逮捕されたことを隠して結婚し、その後、発覚した場合は離婚の原因となるでしょうか。協議離婚は可能でしょう。裁判上の離婚の場合は、そのような前歴や、それを隠していたことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に相当するか否かという問題になります。一度だけの軽微な事件であれば離婚原因とするのは難しいかもしれませんが、可能性が全くないとは言えないでしょう。

人間関係への影響

逮捕歴は結婚だけでなく、人間関係にも影響を及ぼすことは考えられます。

友人との信頼関係

それまで親しかった人間が逮捕後、よそよそしくなることはあるかもしれません。スピード違反で反則金を支払ったレベルならよくある話と言えるでしょうが、身柄を拘束されるのであれば、遵法精神に欠ける人間とみなされることは覚悟しないといけないでしょう。

その他の影響

逮捕によって人生に影響が出る場合は他にも考えられます。

就職への影響

以前は就職活動で履歴書を提出する際には「賞罰」という欄があり、前科前歴はそこに記すようになっていました。最近はプライバシーの保護を重視し、そのような欄がない履歴書が一般的です。しかし、金融機関など職務の遂行上、遵法精神のある職員を求めている業種では任意の形をとって、前科前歴を聞いてくることがあると言われます。虚偽を述べれば後で内定取消しになるのは確実です。その意味では逮捕歴は就職活動に大きな影響を与えるでしょう。

旅行への影響

アメリカに旅行に行く場合、日本人は90日以内の観光であればビザは不要です。しかし、逮捕歴があると、査証免除プログラムを利用しての渡航はできなくなります。ビザを申請して、領事による面接を受けることを義務付けられます。

恐喝罪で刑事事件に強い弁護士に依頼するメリット

恐喝罪を含めて刑事事件では弁護士がつくことで様々なメリットがあります。

示談交渉による問題解決

身柄の拘束を解くため、あるいは量刑判断などで示談が成立しているかどうかは大きなポイントになります。

示談で起訴を免れる場合も

刑法、刑事訴訟法、刑事訴訟規則には「示談」という単語はありません。そもそも刑事上の責任は個人間の交渉で排除できませんから、当事者の合意で有罪を無罪にすることはできません。あくまでも示談の結果によって訴訟法上の効果が出たり、裁判所の量刑判断に影響が出たりするだけです。しかし、検察官が起訴するかどうかの判断において示談が成立していれば被害者がもう処罰を望んでおらず、損害の賠償も済んでいると判断しますから、公判請求の必要は無いとして起訴猶予にする可能性はあります。特に恐喝罪では、交付された財物の損害について賠償していれば、少なくとも経済的な損害は回復したとみなせます。

示談で量刑判断も変わる

起訴された場合でも、裁判所は量刑判断においては情状面を考慮しますから、示談の成否は大きく影響します。示談を拒否して厳しい処罰感情を明らかにすれば、厳しい量刑が出やすいでしょう。逆に示談が成立していれば被害者は厳しい処分は望んでいないと判断され、厳しくない量刑となる可能性はあります。

外部への連絡・説明

逮捕され、身柄を拘束されている被疑者は外部との連絡を取る手段を持っていません。そこで弁護士が重要な役割を果たすことになります。

外部連絡は弁護士のみ可能

逮捕されると被疑者は外部と電話やメールなど、一切の連絡手段を使うことができなくなります。家族についても、勾留されるまでは原則として接見できません。そのような状況で被疑者と連絡を取れるのは弁護士だけです。被疑者の状態を家族や会社に性格に伝えることができ、外部との唯一の窓口として機能します。

手続きの見通しなど説明が可能

家族や会社の関係者が突然の逮捕で、どのような手続きが進むのかも分からない状況の中、弁護士は刑事訴訟法、刑事訴訟規則に基づく手続きの流れを熟知していますから、その後のことを予測することができます。身柄の拘束を解くためにどのタイミングで何をすればいいか、家族や会社はどう協力すべきか、適切にアドバイスをして被疑者とその関係者のために力になることができます。

処罰の軽減、回避につながる弁護活動

弁護士は身柄の拘束を早く解くこと、処罰を軽減、回避するための活動を行います。

示談交渉

弁護士が行う活動で最も重要なのが示談交渉でしょう。恐喝罪であれば被害者に謝罪し、損害を賠償することで被害者感情をやわらげ、起訴猶予や即決裁判で執行猶予付き判決を受け事件を終結させることで被疑者の期待に応えることができます。仮に起訴されても示談が成立していれば量刑面での減軽や、実刑判決のところが執行猶予付きになることも期待できます。

早期の依頼で解放へ様々な活動が可能

弁護士は恐喝容疑で逮捕された直後に依頼を受けた場合、依頼主を検察官送致をしないように司法警察員に働きかけたり、送致されても検察官に勾留請求をしないように働きかけたりすることが期待できます。勾留されても準抗告したり、起訴されても保釈を申請したり、身柄の拘束からの解放に全力を尽くすでしょう。それによって処罰の回避や、自由の身になることなどが期待されます。

以上のように逮捕から判決に至るまで、弁護士の果たす役割は非常に大きいものがあります。刑事事件では被疑者は外部との連絡を断たれ、身柄拘束のための活動や外部との連絡ができるのは弁護士だけです。特に逮捕後、72時間で手続きは大きく進みますから、迅速な対応が必要となります。家族や友人が逮捕された時には、すぐに弁護士に相談、依頼をすべきでしょう。

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