名誉毀損とは?罪になるケースと訴えられた場合の対処方法
- 2024年7月9日
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名誉毀損罪になるケースはどのような場合で、どうやって対処するべきなのでしょうか?
このページでは、名誉毀損罪とは何か、名誉毀損罪が成立するケース、慰謝料請求の流れなどについて解説しています。
名誉毀損とは
名誉毀損とはある人物の評判を下げる行為を言います。自分の言動によって他人の社会的な評価を下げてしまうと名誉毀損罪が成立することになり、処罰される可能性もあります。
現代では、インターネットが普及し、TwitterやFacebookなどのSNSなどを利用したり、YouTubeなどの動画投稿サイトへ投稿したりすることで、個人レベルでも広く情報を発信できるようになっています。
このような背景もあり、自身の言動が名誉毀損罪にならないように配慮することが大切です。
ただしこの罪は親告罪であるため、他人の社会的な評価を下げることをしていたとしてもその本人が告訴をしなければ処罰はされません。
関係のない第三者がいくら通報をしてもそれだけでは処罰することはできないのです。
ある特定の人物の社会的評価の保護が目的
またこの犯罪類型を刑法が設けているのはある特定の人物の社会的評価を保護するということが目的で、名誉感情に関しては保護法益とされておらず単に嫌な気持ちにさせるような言動などでは成立しません。
そこで、赤ちゃんや法人などは名誉感情を持たないものの、社会的評価は観念できるため、これらに対して成立し得るということになります。
また、名誉を毀損したとして訴えられなくても、別の罪として処罰される可能性、民法上の不法行為などを理由に提訴される可能性などもあります。
2022年7月から侮辱罪が厳罰化。名誉毀損でなくても罪に問われる可能性
なお、2022年7月7日の法改正により、侮辱罪が厳罰化されました。
侮辱罪と名誉毀損罪は、性質の似た罪にあたり、ネットの書き込み等に対して、名誉毀損罪にあたらなかったと判断された場合でも、侮辱罪として罪を問われるケースも多々発生することが想定されます。
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掲示板・SNS上で増加するインターネット上の名誉毀損
インターネットの利用率が高まるとともに様々なサービスが提供されるようになり、SNSや掲示板のように自分の言葉を世界中の人に発信することも簡単にできます。
非常に便利で有用ではありますが、名誉を傷つけることも簡単にできてしまうという面もあります。
SNSの代表例であるTwitterは一般に広く使われ、つぶやくように言葉を発信でき、手軽に利用することができるサービスです。
Twitterは自分の名前や顔を隠してサービスを利用できます。
現実に面と向かって言えないようなことでもTwitterなら軽い気持ちで言えてしまうため、名誉毀損罪になるとは全く考えていなかったとしても、犯罪として成立してしまうことをつぶやいてしまうこともあるのです。
たとえば、「○○さんは借金をしていつまでも返していない。」といったことを発信してしまうと、借金をしているという情報によりその特定の人物の評価を下げることに繋がりかねません。
また「あの店の店長は元犯罪者だから行かないほうがいい。」といった犯罪歴を公表することも社会的評価に関わります。
「○○さんのあの顔は整形で手に入れたものだ。」という整形の事実も社会的評価を下げる表現と判断される可能性があるため注意しなくてはなりません。
このほか特定の人物を指して「不倫をしている」「詐欺で儲けている」といったことを公表する行為、さらにSNS特有の問題として「なりすまし」によって名誉が侵害される事例もあります。
名誉毀損罪の構成要件
名誉を傷つけ、その行為が犯罪として成立するには、刑法で定められているその構成要件に該当しなければなりません。
構成要件とは条文前半部分にある行為の概要を指します。名誉毀損の罪に関しては刑法第230条に規定が設けられています。
刑法第230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
条文を見る限り、事実が真実であるかを問わず、公然と事実を摘示して人の名誉を侵害すればここでの構成要件に該当するということが分かります。
ただし何を「公然」というのか、「事実」とはどのようなことをいうのか、といった具体的な文言の解釈を知っておかなければ犯罪になるかどうかの判断はできません。
以下で詳しく見ていきましょう。
公然と事実を適示する
名誉毀損罪が成立するには、まず「公然」と「事実を摘示」していなければなりません。
ここで問題となる「公然」とは、不特定多数または多数人が認識しうる状態のことを言います。
つまり社会的評価を下げかねない他人の悪口を言ったとしても、その様態がひそひそ話であり広がっていく可能性がなければ公然性がなく、名誉毀損の罪にはならないということです。
しかし広まる可能性があれば公然性が認められるため、実際にはその場で誰も聞いていなかったとしても、ショッピングモールの中心など公共の場で大声を出して話すと名誉毀損罪が成立します。
次に「事実の摘示」ですが、これは対象となる人物の評価に繋がるような、ある程度の具体性を備えた情報であると解されます。
そのため単に「ばか」や「あほ」と言っただけでは事実の摘示があったとは言えず犯罪として成立しません。
ただしその内容が公知のものであるかどうかは問われませんので、すでに知られていることであったとしても事実を摘示していれば構成要件に該当します。
そして現実に名誉が侵害されている必要もないため、損害が生じていなくても成立します。
人の名誉を毀損する
名誉毀損罪が成立するには上の要件に加え、さらに「人の名誉を毀損」するということが必要です。
ペットなどは含まれませんが、名誉を傷つけられたという感情を持っている必要はないため、前述のように法人に関しては成立します。
同様に赤ちゃんにおいても成立することはあります。
ただし、名誉を侵害した者が誰であるのか特定される必要はあります。
そのため、単に不特定の集団に対しては成立しません。たとえば「○○県民は・・」「最近の若者は・・」という表現では要件を満たすことにはなりません。
事実の有無は問わない
摘示した事実がたとえ本当のことであったとしても罪になり得ます。
特定の人物に対し前科者であるという事実を公表することもしてはいけません。
個人の社会的な評価を下げるには摘示された事実が嘘であるかは関係がないからです。
本当のことだから言ってもいいだろう、とは考えないようにしましょう。
名誉毀損罪が成立しないケース
どのような行為が名誉毀損の罪にあたるのか説明してきましたが、上の構成要件に該当する場合でも、以下のケースにあてはまれば罪に問われません。
いくつか名誉毀損罪が成立しないケースもあるので見ていきましょう。
死者の名誉を真実で毀損する場合
死者の名誉毀損罪については刑法第230条2項に定められていますので、その条文を見てみましょう。
刑法第230条2項
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
死者に対する名誉の侵害の場合、摘示した事実が嘘である場合に限って罰するとあります。
本当のことであれば、たとえその内容が名誉を傷つけるものであったとしても罪には問われません。その点で、通常の名誉毀損罪とは異なる点になります。
公共の利害に関する真実を公益目的で摘示する場合
刑法第230条の2には、公共の利害に関する場合の特例が設けられています。
第230条の2
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
前条第1項とは、すでに説明した基本的な構成要件が定められている条文を指します。
そして第230条の2第1項によれば、公表する事実が公共の利害に関わり、公益のために公表するのであり、さらにその内容が真実であることを証明すれば罪にはなりません。
犯罪に関する真実を公益目的で摘示する場合
刑法第230条の2第2項では犯罪に関してさらに言及しています。
刑法第230条の2第2項
前項の規定の適用については公訴が提起されるに至っていない人の犯罪に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
公表する情報が犯罪に関するものであれば、第1項に比べて処罰がされにくく設定してあります。
公益のために公表するのであり、内容も真実であることが求められているのは同じです。
しかし公共の利害に関わることまでは求められません。公的に利害が絡んでいることが明白であるからです。
つまり、テレビや新聞などで被疑者の情報を報道してもいいということです。
公務員等に関する真実の摘示する場合
最後に刑法第230条の2第3項ですが、こちらは公務員に関係するものです。
刑法第230条の2第3項
前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
この場合、真実でさえあればよく、公益目的であることや公共の利害に関するという証明などは必要なくなります。
ここまでの各ケースをまとめると処罰されないためには、
- 一般的には「事実の公共性」「目的の公益性」「真実の証明」が必要
- 犯罪事実では「目的の公益性」「真実の証明」が必要
- 公務員等では「真実の証明」が必要
となります。
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名誉毀損してきた相手を訴えることは可能?
名誉毀損行為によって、自分の社会的評価を下げられたとして訴えることは可能です。
そしてその場合、刑事手続として告訴し処罰を求めること及び損害賠償を請求するために民事裁判を提起することが可能です。
名誉毀損罪は親告罪ですので、被害者本人が、加害者を処罰してほしいと求めることが必要です。
この罪の場合、最大3年の懲役もしくは禁錮、50万円の罰金に処することを求められます。
損害賠償を受けるにはまず示談交渉
ただし、刑事裁判では被害者と加害者が対立するという構図ではなく、公の立場である検察官と加害者である被告人が対立する形になり、罰金で徴収されたお金が被害者に振り込まれるようなこともありません。
実際に損害が生じており賠償をしてもらうには民事裁判を起こすなどの方法を採らなければなりません。
そしてその場合、わざわざ裁判を起こす必要性はなく、まずは示談交渉などを図ることになるでしょう。
当事者間で損害賠償の合意さえあれば裁判所を挟むことなく解決できます。
示談で和解できない場合は裁判へ
ただしどちらかが金額等に納得ができず、いつまでも和解できない場合には最終手段として裁判所を利用することになるでしょう。
実際に名誉が傷つけられたことをきっかけに裁判により損害賠償請求が認容された判決がいくつもあります。
Twitter上で誹謗中傷をされたとして慰謝料を請求、30万円の慰謝料および訴訟費用として3万円の損害賠償が認められた例があります。
慰謝料とは損害賠償の一種で、精神的な損害を被った場合に請求することになります。名誉毀損であれば実害が目に見えて発生していないことがほとんどですので、慰謝料という形で請求することが多くなるでしょう。
名誉毀損の損害賠償請求額の相場は10~50万円
名誉毀損における損害賠償請求額は、一般的には10万円から50万円と言われています。
事業に関して被害を受けた場合にはその損害の規模が比較的大きくなりますので相場としてもより大きく、50万円から100万円ほどと考えられています。
実際には具体的な行為の内容や被害の大きさなどを考慮して算定され、100万円以上となることもあり得ます。
名誉毀損による慰謝料請求の流れ
1:証拠の保存
名誉毀損で慰謝料を請求するためには、できるだけその証拠を残すことが重要になってきます。
たとえばネット上での誹謗中傷であれば、その書き込み内容をスクリーンショットなどでしっかりと保存しておきましょう。
スクリーンショットなどをしておかないと、その投稿が削除されてしまい証拠を集めるのが難しくなってしまうことも考えられます。
2:削除依頼
名誉毀損がネット上で行われたのであれば、証拠を残したあとに削除依頼を出しましょう。
さらに拡散されるのを防止し、自らの損害を少しでも小さくすることができます。
SNSであればその運営へ、掲示板などであればサイトの管理人に削除依頼を出します。
運営や管理者が削除依頼に対応してくれない場合には、仮処分を裁判所に申し立てる等の行動を起こした方がいいでしょう。その具体的な方法は弁護士などに相談しましょう。
3:書き込み主を特定
ネット上での名誉毀損では、書き込んだ人物を特定できるかどうかが一番の問題となるでしょう。
Facebookのように実名で書き込まれているのであればすぐに特定できますが、Twitterや掲示板への書き込みではその者が誰なのか分かりません。
そこで、Twitterで誹謗中傷などを受けその者を特定したいと考えるのであれば、
- 運営に投稿者のIPアドレス開示請求(応じてもらえなければ裁判所に仮処分を申立て)
- IPアドレスからプロバイダの特定
- プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求をする(応じてもらえなければ裁判所に申立て)
- 犯人の特定
という流れに沿って行動を起こします。
4:請求
名誉毀損で慰謝料の請求をする場合、基本的にはまず示談から始めることが多いです。
示談交渉は加害者と直接交渉をすることになりますので、柔軟に話し合いを進めることができ、裁判のように長い期間を要しないため、迅速な解決が図れます。
当事者当方にメリットがあると言えるでしょう。
交渉をスムーズに成立させ、適切な金額で示談を成立させるためにも弁護士をつけておくことが望ましいです。
示談が成立しない場合には裁判所に損害賠償請求の申立てを行い、審判を求めることになります。
まとめ
名誉毀損罪で刑事告訴されたら弁護士に相談
これまでの流れとは別に、自分が名誉毀損罪に問われた場合を考えてみましょう。
軽い気持ちでネット上に誹謗中傷を書き込み、これを削除せずに放置していると、身元を特定されて慰謝料を請求される可能性や、被害者以外から嫌がらせを受ける可能性、職場での評価を下げてしまうことや家族にまで迷惑をかけてしまうリスクを負います。
さらに刑事告訴されてしまうと、最悪懲役の実刑を科せられ刑務所での生活を強いられます。また、投稿を削除したとしても拡散されており、スクリーンショットなどがSNS上に残っている場合や、動画などで取り上げられて動画上に投稿が残っているような可能性もあります。
そこで、できるだけこうしたリスクを避けるためにも弁護士に助けてもらうようにしましょう。
告訴された場合だけでなく、民事上の責任追及に対しても対応してくれます。
どちらの場合でも示談が重要になってきますが、この示談を成立させるためにも弁護士の存在は非常に大きいです。
示談を成立させれば民事裁判を申し立てられる心配はなくなり、さらに刑事裁判においても不起訴処分が得られる可能性は高くなります。
しかし加害者が直接話し合いを持ちかけてもこれに応じてくれないことがありますので、弁護士を介してこれを行うのが成立のために必要です。
弁護士に依頼・相談をすることで、さまざまな面においてサポートが受けられますので、刑事告訴された場合や、それ以前の段階においてもまずは弁護士に相談しておくことをおすすめします。
弁護士にはそれぞれで多少なりとも得意分野がありますので、弁護士に相談する際には刑事事件を中心に取り扱っている弁護士を選んで相談をするようにしましょう。
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