裁判所で行われる「勾留質問」の手続き~勾留が決まるとできること~

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勾留前に裁判所で行う手続き~「勾留質問」とは

刑事事件の被疑者として逮捕されると、まずは警察の留置場で最長48時間の身柄拘束を受け、捜査官による取調べが行われた後に検察に身柄が送られ、ここで最長24時間の拘束を受けることになります。この場合、本来ならば警察の留置場から検察の拘置所へと移されるはずなのですが、現状は拘置所の数が足りていないため、ほとんどの場合は留置場に留め置かれてしまいます。

検察は本来ならば逮捕の時間制限である24時間以内に起訴、あるいは不起訴の判断を行い、起訴するなら裁判所に刑事裁判を提訴するか、不起訴処分として被疑者を釈放しなければなりません。しかし明らかに当該事件の被疑者が罪を犯しているという証拠があり、本人もそれを全面的に認めているような簡単なケースでもない限り、24時間という短時間で起訴・不起訴を決めることはできないと言えます。

そのため、検察は被疑者をより長期間にわたり拘束するため、「勾留請求」を裁判所に対して起こし、これが認められてしまえば被疑者は10日間の勾留を受け、留置場または拘置所で身柄を拘束され続けてしまいます。一方で「勾留請求」を受けた裁判所は、検察の請求だけではなく、被疑者の言い分を聞くために「勾留質問」を行います。

「勾留質問」では何を聞かれるのか?

検察から裁判所に対して「勾留請求」が行われた後、裁判所は被疑者を裁判所に呼び出します。被疑者が留置場から手錠に腰縄姿で護送車に乗せられて裁判所に移送され、裁判官が被疑者に直接質問を行うのが「勾留質問」という刑事事件の手続きです。

被疑者が質問を受けるのは裁判所の法廷ではなく、普通の部屋となっていて、裁判官も法衣ではなくスーツなどを着用しているため、何も知らないで裁判所に連れてこられた被疑者にとっては、相手が裁判官でこれから重要な質問が行われることを想像し難い状況と言えるでしょう。裁判所や裁判官によって「勾留質問」を受ける状況は違いますが、裁判官の自己紹介から始まり、黙秘権の説明が行われます。

続いて逮捕にかかる被疑事実が読み上げられ、犯罪の内容を説明することで、検察が勾留を求める理由が明かされます。裁判官は「この事実について、言いたいことはありますか?」と聞いてくるので、その事実を全面的に認めるのか、一部は認めるけれども違う点があるとか、全面的に認めないのかなどの言い分を答えるだけで「勾留質問」は終了です。被疑者の答えに対して、裁判官が何かを述べることはありません。また、ここで質問された内容や被疑者の発言で「勾留質問調書」が作成されます。

「勾留質問」における裁判官は淡々と事件の内容になどについて述べるだけですが、その内容はその後の刑事事件手続きにおいて非常に重要となりますので、真摯に対応することが必要です。そして「勾留請求」が認められたのかどうかは、裁判官が「勾留質問」の場ですぐに伝えるか、あるいは待合室で待っている間に刑務官が知らせてくれるのかのどちらかです。この後、勾留決定の書類が被疑者に交付されます。

「勾留請求」が却下されることはあるのか?

建前上は、検察が「勾留請求」を行うと裁判官が「勾留質問」で被疑者の言い分も聞き、公平に判断を行うことになっていますが、現実的にはほとんどの「勾留請求」は認められてしまいます。

逮捕直後に私選弁護士が即座に弁護活動を行い、被害者との間に示談が成立したなどの理由で、まれに「勾留請求」が却下されることはあるようですが、その他の場合は継続した捜査が必要だと判断され、勾留が認められてしまいます。

特に被疑者が逮捕にかかる容疑を否認していたり、一部でも認めていなかったりする場合は、勾留が認められることが確実だと考えるべきでしょう。

国選弁護人の申請ができる

勾留が決定する前に裁判所に呼び出されて「勾留質問」を受けた際に、裁判官から重要な事項が告げられます。これは、国選弁護人を選定することが可能だということです。

この手続きは刑事訴訟法第207条に、上記の「勾留質問」と共に定められています。

刑事訴訟法

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
○2 前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨を告げ、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に対しては、貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
○3 前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たっては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
○4 第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たっては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
○5 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

同条第2項によると、検察から「勾留請求」を受けた裁判官は、被疑事件を告げる「勾留質問」に際し、被疑者が弁護士を選任できることを伝え、私選弁護人に依頼するだけの資力がない人に対しては、国選弁護人の選任が可能であることを説明しなければならないと定められています。

国選弁護制度による国選弁護人とは?

国選弁護制度とは、資力に乏しいために私費で弁護人を雇えない被疑者に代わって、国が弁護士をつける制度のことです。

かつては、国選弁護人は起訴されて被告人となった後でしか申請できませんでしたが、2006年の刑事訴訟法改正により、予想される刑罰が死刑か無期懲役、あるいは刑期が3年を超える懲役刑になりうる被疑者であれば、被疑者の段階で国選弁護人に弁護活動を依頼することができるようになっています。

また2016年の刑事訴訟法改正により刑罰の枠が取り払われ、すべての刑事事件で勾留されている被疑者に対して国選弁護制度の利用が可能となり、この被疑者国選弁護制度の拡充は2018年6月までに開始される予定です。

一方で国選弁護人は、あくまでも私選弁護士を私費で雇えない人が対象で、国選弁護人を申請する場合には、自らの資産を申告しなければなりません。国選弁護人申請は「勾留質問」が終わった直後、同じ裁判官に申請書を書いて提出しますが、資産状況次第で国選弁護人に依頼できるかどうかが決まるのです。

被疑者は身柄を拘束されていますので、資産状況の詳細まで申告することはできませんが、だいたい預貯金の残高がいくらくらいあって、自家用車などすぐに現金化できる可処分資産はどのくらいかということを書き添えます。一般的には国選弁護人の申請が認められるのは資産が50万円以下だとも言われ、それ以上の資産がある場合には申請しても却下される可能性が高いと考えられます。

国選弁護人を依頼するのは、損か得か?

国選弁護人に弁護を依頼すると損か得かというのは、ケースバイケースで一概には言えません。確かに国選弁護制度では、弁護費用を国が負担してくれる制度で、裁判を争うための金銭的な負担は減りますが、その弁護士を雇っているのは国になりますので、紹介してくれた弁護士が気に入らないからと言って、国選でついた弁護士を解任することはできません。

どんな弁護士が自分の弁護人になるかは運次第であり、そのうえ実入りの少ない国選の仕事に対してやる気のない弁護士が多いという噂もあります。また裁判で敗訴し有罪となった場合には、国が負担した弁護費用は裁判費用として国から請求される可能性もあるのです。

本当に裁判費用を請求されたとしても、交渉次第で減額や免除も可能だと考えられますが、弁護費用は国が負担するという国選弁護人のメリットも完全ではありません。弁護士費用を捻出するあてがまったくない場合を除き、私選弁護人を選んだ方がいいのかもしれません。

逮捕事実を外部に連絡

「勾留質問」を終えて勾留が決定されると、裁判所は1カ所に限り、被疑者が逮捕されて身柄が拘束されていることを伝えなければなりません。被疑者は裁判所からのこの通知を拒むこともできますが、逮捕というのは突然のことで、身柄が拘束されてしまえば被疑者自身が電話を掛けたりすることはできません。被疑者の家族や友人・知人は、被疑者が突然失踪してしまったと思われることもよくあり、心配になって警察に捜索願を出したところ、最寄りの警察署の留置場にいたということも実際にあるわけです。

このようなトラブルを回避するため、被疑者が逮捕されて留置場に身柄が拘束され、勾留が決定したことを裁判所が電話で外部に連絡するのです。電話連絡の際に重要なのは、連絡先の電話番号を覚えていないといけないということで、裁判所はわざわざ連絡先の電話番号を調べてはくれません。

近年、家族や友人・知人の電話番号は携帯電話やスマートフォンの電話帳にすべて記録させ、自宅の電話番号さえも正確に思い出せない人がいます。すると自分が逮捕された事実を知らせたくても、電話をかけることすらできないので、これは逮捕された場合のために、だけということではありませんが、1カ所くらいは連絡先を暗記しておくことが大切です。

連絡は弁護士に依頼した方が良い

裁判所が指定された連絡先に勾留の事実を伝える際、「こちらは××裁判所です。〇〇〇〇さんは、逮捕されて△△警察署の留置場に身柄を拘束されています」という事実だけを役所仕事丸出しの口調で連絡してきます。

逮捕事実を知らない場合は、その連絡先で一騒動起きてしまいます。そのため、裁判所に連絡を依頼するのではなく、弁護士を雇って連絡を頼み、今後の対応策も含めて、しっかりと伝えてくれるように対処する方が良いでしょう。

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