迷惑防止条例違反に弁護士が行う対応は?

対応する弁護士

迷惑防止条例の内容

実は、条例というのは法律とは異なります。刑法などの法律で違反行為が定められている場合、全国共通で適用されることになり、日本国内のどこでその行為をしても同じように処罰されます。これに対して条例は、地域特性が組み込まれ、都道府県ごとにその内容が異なります。そのためある地域では禁止とされている行為でも別の地域では禁止されていないため処罰されないということがあり得ます。

しかし、実際のところ都道府県ごとで施行されている条例にそれほど大きな違いはありません。「迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)」はこうした条例のひとつですが、違反行為および罰則規定はほとんどの都道府県で大まかには同じように定められています。

また、条例は、社会情勢や人々の生活の変化に応じて臨機応変に改正がなされるというのも特徴です。近年ではインターネットの利用率が上昇していることもあり、SNS等で発生するトラブルが多くなっています。これに対してインターネット上での行為についても取り締まりを強化するなどの対策も取られるようになってきています。

迷惑防止条例については、たとえば沖縄県ではかつて「つきまとい行為」は恋愛感情に基づく場合に規制対象になると定められていましたが、恋愛感情がなくても違反行為にあたるよう規制範囲を広げられています。この内容は2019年3月より施行が予定されています。他にも、東京都の迷惑防止条例の改正では2018年7月より盗撮行為の規制場所が拡大されています。

このページでは、迷惑防止条例における代表的な違反行為およびその罰則規定について紹介していきます。迷惑防止条例では様々な行為が違反行為として規定されており、また、行為の程度がひどいと迷惑防止条例のみではなく、刑法による処罰を受ける可能性なども出てきます。

痴漢行為

迷惑防止条例違反となる行為の代表例の1つが痴漢行為をした場合です。痴漢行為を行った場合は、刑法の強制わいせつ罪だけではなく、迷惑防止条例違反に該当することがあります。東京都の場合、その根拠は第5条第1項にあります。

東京都条例では、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない」とされており、痴漢行為にあたるのは「次に掲げるもの」のうち「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」です。

公共の場所や乗物とは、駅や電車内のことです。実際これらの場所では人が密集する機会が多いため痴漢行為がされる確率が高くなっています。具体的には、手で下半身を撫でまわす、身体や股間を執拗に押しつけるといった行為が該当します。

そして、これらのような痴漢行為をした場合の罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。ただし常習であれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。痴漢では程度によって迷惑防止条例の範囲を超えて処罰されることもあります。犯行がエスカレートした場合には刑法の強制わいせつ罪に該当することもあります。

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盗撮行為

盗撮行為も痴漢行為と同様に迷惑防止条例違反に該当する行為の1つです。痴漢と同じく東京都の条例を例に挙げますが、こちらも第5条第1項に規定があります。盗撮行為は第2号にあたります。

東京都迷惑防止条例

第5条第1項
「次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

この条文によると、電車内や学校、家の中、トイレや風呂場など、様々な場所で行われる盗撮行為について規制がかけられています。盗撮の場合の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められており、痴漢行為よりも重く処罰されるようになっています。

また盗撮行為を行う際、その手段が刑法にひっかかることがあります。家の中にいる人を盗撮するため敷地内に侵入した場合だと刑法の住居侵入罪にあたる可能性があります。カメラを設置するのに物を壊してしまうと同じく刑法の器物損壊罪などに問われることもあるでしょう。

その他の迷惑防止条例違反の行為

痴漢や盗撮は迷惑防止条例違反の代表的な行為です。しかし、迷惑防止条例ではほかにも多数の行為が違反行為として定められています。のぞき行為やつきまとい行為、待ち伏せ行為なども処罰される可能性があります。

細かい部分は各都道府県で違いがありますので、住んでいる場所の条例を確認してみるといいでしょう。また、迷惑防止条例違反をしている可能性があると思われる方は、早期の対応が重要ですので、できるだけ早く弁護士に相談するようにしましょう。

迷惑防止条例違反に対する弁護士の対応

迷惑防止条例違反で逮捕されるとどうなるか

迷惑防止条例違反を犯してしまった場合、弁護士に相談することでどのような対応を取ってくれるのでしょうか。まずは逮捕後の流れを簡単に説明していきます。

迷惑防止条例で規制されている行為をしてしまった場合、その場で逮捕されるパターンと、後日逮捕されるパターンに分かれます。その場での逮捕は「現行犯逮捕」と呼ばれ、警察以外の者でもすることができます。

一方、犯行からしばらく経ってからの場合は「通常逮捕」と呼ばれ、逮捕をするには令状が求められるという原則通りの逮捕形式になります。犯行内容によってどちらのケースが多いのかは変わってきます。イメージがつくかとは思いますが、電車内で行われる痴漢や盗撮の場合には現行犯逮捕のケースが多いです。

迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されると警察で身柄が拘束され、取り調べや捜査を受けることになります。この期間は48時間以内と定められており、この期間内に検察に送検されることとなり、ここでは検察で24時間以内に勾留の請求をするかどうかが判断されます。勾留請求を検察官が裁判所に行い、裁判官が勾留を決定すると最大20日間もの間身柄が拘束されることになります。

さらに勾留期間中には検察が起訴・不起訴の判断を下すことになり、起訴が決定されると刑事裁判が行われることになります。そこでも無罪判決を得られれば前科がつくようなことはありませんが、実際のところ起訴されてしまうと有罪になる事例がほとんどで、起訴されると99.9%が有罪になるといわれています。このことは、法律の専門家でもある検察官が被疑者の有責性を十分に調査した結果起訴に至ったのだという背景があるためです。

その場で逮捕されなかったとしても後日捕まる可能性があるということや、逮捕後には段階的に捜査が進められ、勾留まで進むと長期間拘束されるということを覚えておきましょう。


検察官や裁判官に対して交渉を行う

逮捕後、弁護士を依頼するメリットには、釈放や不起訴にできる可能性を上げることができるという点があります。すでに逮捕されている場合、まずは釈放をしてもらえるよう努めることになるでしょう。逮捕後の48時間以内、送検後の24時間以内、そして勾留中のいずれの期間においても釈放のチャンスはあります。

基本的に疑いをかけられている状態でも証拠隠滅や逃走の恐れがなければ無理に拘束されることはなく、在宅での捜査も手段としては用意されています。条例違反を認めている場合でも同様に帰宅することが認められるケースがあります。

刑事事件に強い弁護士にできるだけ早めに相談することで、その分早く釈放されることが考えられます。弁護士は依頼を受ければ検察官、裁判官に対して交渉を持ち掛け、意見書の提出をするなど、依頼主が釈放されるよう対応をしてくれます。また、在宅での捜査に切り替えてもらえるよう、被疑者がどのように受け答えすべきかといったアドバイスもしてくれるでしょう。

勾留決定に対する不服申立を行う

対象が被疑者であったとしてもむやみに身体の自由を奪うことは許されません。そこで、勾留をするにはいくつかの要件が定められています。犯罪の嫌疑と、住所不定や罪証を隠滅する疑いがあるなど勾留をする特別の理由などが必要です。さらに、勾留が決定された場合でも、これに対して不服を申し立てることが可能です。

これを準抗告と言いますが、できるだけ勾留請求の却下をしてもらうためには弁護士に対応してもらう必要があります。法的な知識やそれまでの経験などを活かし、どのようにすれば釈放してもらえるのか最善と思われる方法で対処してくれます。

準抗告をしても当然に勾留請求が却下されるわけではありません。ほとんどの場合は釈放となりません。しかし、勾留却下率は年々上昇しています。近年では1割近くにまで上がっており、一部の地域では却下率が1割を越しています。そのため、弁護士に依頼した場合、準抗告をしてほしい旨を伝えて相談してみるのもいいでしょう。

被害者との示談を行う

迷惑防止条例では社会的法益を保護するのも目的とされていますが、実務上は起訴にあたり被害者の考えが反映されることが多いです。被害者との間で示談が成立していると起訴を免れることもできるかもしれません。

しかし、示談を成立させるためには本人やその身内が被害者に直接交渉を持ち掛けても成立しにくい傾向にあります。特に痴漢のような性被害を受けた者に対しては、第三者の立場でもある弁護士が間に立って話し合うことが大切です。また、痴漢などでは被害者との面識がないことがほとんどですので、弁護士でなければそもそも示談交渉のテーブルにつくことすら難しいという現実もあります。

示談交渉は経験がものをいいますので、弁護士によって示談の成功率が異なります。そのため、示談交渉の実績が豊富である、「刑事事件に強い弁護士」に依頼してみると良いでしょう。

迷惑防止条例違反の逮捕例

刑法で定められている犯罪行為に該当せず、迷惑防止条例違反にとどまる場合であってももちろん逮捕されることはあります。

たとえば、電車内で女性の臀部付近をなでたとして逮捕され、懲役刑の実刑が言い渡された例があります。この事件における加害者は過去にも痴漢行為をして罰金5万円、さらにのぞき見行為によって罰金50万円に処されていたということもあり、この事件では懲役刑に処されました。このように、実際に言い渡される処罰は具体的な状況を考慮した上で判断されます。

また盗撮行為における事例では、ショッピングセンター内で女性の臀部をズボン越しに撮影し続けたとして逮捕されたというものもあります。ズボンの上からの撮影ではありましたが、この行為が卑わいな言動にあたると判断され迷惑防止条例違反に該当することになっています。このように、条文に記載されているそのままの行為でなかったとしても、条例が適用される可能性もあります。このあたりは常識的な考えのもと、社会通念上、性的道義観念に反する行為であるかどうかを判断していかなければなりません。

迷惑防止条例違反の裁判例

痴漢行為によって、被告人が懲役8月に処されることとなった裁判を紹介します(平成14年 2月 4日 東京地裁)。

判決

被告人を懲役8月に処する。未決勾留日数中20日をその刑に算入する。 

犯罪事実

被告人は、常習として、平成13年11月13日午後4時33分ころから午後4時34分ころまでの間、千代田線霞ヶ関駅から日比谷駅の間を走行中の電車内において、乗客のA(当時18歳)に対し、右手で女性の左太ももを撫でるという行為をしました。公共の乗り物において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような卑わいな行為をした。

量刑の理由

この事件は、帰宅ラッシュが始まる前の混雑していない電車内において、着席していた被害者の隣に座り、被告人の右手、被害者の左太ももが隠れるように被告人のコートが掛かっていたことを利用して、被害者の太ももを触ったもので、狡猾な犯行と判断されました。被害者は、座席に着席して睡眠していて被害に遭ったものであり、何ら落ち度はなく、被害者の被告人に対する処罰感情が厳しく、示談は成立していませんでした。

また、被告人は平成9年以降、痴漢行為で3回罰金刑に処せられており、平成11年1月には懲役4月執行猶予3年の判決を受けていました。しかし、その猶予期間中の平成13年9月に再び痴漢行為を行い、その事件については被害者と示談ができたため不起訴になっていました。そこから、わずか2か月でこの痴漢行為に及んでおり、このような前科前歴からすると、被告人のこの種事案に対する衝動は極めて大きいものがあると推認するほかなく、再犯のおそれも否定できないと判断されました。
 
しかしながら、本件犯行の態様は、被害者の左太ももをなでたというもので、それ自体悪質であることは間違いないものの、痴漢行為の中ではさほど重くない態様で、被告人は、捜査途中から本件について自白し、公判廷においても、反省の態度を示すとともに、自らの中に潜む衝動と真摯に向き合う姿勢を強めていました。さらに、この事件によって仕事も信用も失うなど、社会的制裁を受けているうえに、弁護人を通じて50万円の贖罪寄付をしていました。

これらの事情を考慮した上で、被告人には懲役8月という判決が下されることとなりました。このように、常習性があるなどの場合には、迷惑防止条例違反であっても懲役の実刑判決が下されるケースもあります。刑法違反でないからといって軽視せずに、なるべく早く弁護士に相談するようにしましょう。

迷惑防止条例違反については弁護士に早期の相談を

弁護士は迷惑防止条例違反による逮捕前から逮捕後だけでなく、勾留されてからも釈放や不起訴のために様々な対応をしてくれます。また、起訴後の弁護も依頼することができます。起訴された場合には、できるだけ有罪とならないよう、または刑を軽くしてくれるようにも働きかけてくれるでしょう。弁護士に相談することで精神的な安心を得ることや、適切な対処をすることができるようになります。

もしその場で逮捕されていなかったとしても、後日逮捕されてしまうのではないかと不安が残るかもしれません。様々な状況に応じたアドバイスを得ることができます。弁護士には守秘義務がありますので、弁護士に伝えたことで通報されて逮捕されてしまうということもありません。まずは相談をしてみましょう。

弁護士を効果的に活用するためにも、できるだけ早期の相談をすると良いでしょう。そうすれば逮捕を避けることも、勾留を避けることもできるかもしれません。分からないことについてアドバイスも求められるなど、刑事事件全般についてサポートをしてくれます。弁護士にはそれぞれ得意な分野がありますので、迷惑防止条例違反については、刑事事件に強い弁護士に相談をすることをおすすめします。

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