恐喝や恐喝未遂で逮捕される?どのような時に成立するか?
- 2024年7月9日
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恐喝罪の成立要件
そもそも恐喝罪はどのようなことをしたときに成立するのか、まずは刑法の条文をみてみましょう。
恐喝罪の条文
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
恐喝罪の成立要件
以下では恐喝罪の個別の成立要件を確認していきます。
暴行や脅迫
恐喝罪は、加害者が被害者に対して「暴行や脅迫」を加えることにより、お金などの財物を交付させる犯罪です。
手段として「暴行・脅迫」が使われている必要があります。相手をだました場合やこっそりとった場合には恐喝罪になりません。
相手を畏怖させる
恐喝罪が成立するには、被害者が畏怖したことが必要です。畏怖とは怖がることです。加害者が被害者を脅しても、被害者が怖がらなかったら恐喝罪になりません。
財物を交付させる(処分行為)
恐喝罪が既遂になるには、被害者が加害者へと「財物」を交付する必要があります。
財物とは、価値のあるもののことです。典型的なものは「お金」ですが、それに限らず不動産や車、貴金属などの価値のあるものを交付させた場合には恐喝罪が成立します。
また直接財産を交付させた場合に限らず、暴行や脅迫によって土地に抵当権を設定させたり債務免除させたりした場合にも、恐喝罪が成立する可能性があります。
利益の移転と損害発生
恐喝罪が成立するには、最終的に被害者から加害者へと利益が移転する必要があります。被害者が加害者にお金を払って加害者へと利益が移り、被害者に「お金」という損害が発生したときに恐喝罪が既遂となります。
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正当な権利行使でも恐喝になる可能性がある
恐喝罪について、一般でよく誤解されていることがあります。一般の人は「借金を取り立てるためなら少々脅してもかまわない」などと考えているケースが多数です。
しかし恐喝罪は、「正当な権利行使」でも成立します。つまり、貸したお金を返してもらうためや、交通事故や不倫の慰謝料を請求するときでも、暴行や脅迫の手段を使って取り立てると恐喝罪になる可能性があります。
たとえば、相手が誠意を見せないからといって相手を殴ったり監禁して「払うまで帰さない」と告げたり「払わないとおまえの家族を傷つける」などといって脅して無理に慰謝料を払わせたりしたら、恐喝罪の責任を問われる可能性があります。
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恐喝罪には未遂犯がある
恐喝罪についてもう一つ知っておくべきことがあります。それは「恐喝罪には未遂犯がある」ことです。未遂犯とは、犯罪の実行に着手した以上、たとえ結果として失敗しても罰せられる犯罪です。
未遂犯の場合、裁判官の裁量によって刑罰を減刑してもらえる可能性はありますが、犯罪自体は成立するので逮捕もされますし裁判になって懲役刑が適用される可能性もあります。
「相手がお金を払わなかったから犯罪は成立しない」といういいわけは通用しないので、注意しましょう。
恐喝罪と他の犯罪の違い
恐喝罪は、被害者に暴行・脅迫を加えて財物を交付させる犯罪です。脅迫罪、強盗罪と似た部分があるので、混同しないようにこれらの罪との違いを確認しましょう。
脅迫罪との違い
脅迫罪は「相手を脅迫したとき」に成立する犯罪です。相手に財物を交付させる必要はありません。
また脅迫罪の「脅迫」は、恐喝罪の「脅迫」よりもかなり限定されたものです。脅迫罪の脅迫は、「相手または相手の親族」についての、以下の「5種類のうちいずれかの害悪」を加えることを告知したときに成立します。
- 生命
- 身体
- 名誉
- 財産
- 自由
たとえば「おまえの恋人や友人を傷つけるぞ」といっても脅迫罪にはなりません。恋人や友人は「親族」ではないからです。また上記の5つに関係のない威圧などの脅しも脅迫罪にはなりません。
一方恐喝罪であればこうした制限がないので、相手の恋人や友人を傷つけるという脅しや「なめてんのか!」と言って威圧的に迫った場合などにも成立する可能性があります。
強盗罪との違い
強盗罪は、相手に対して暴行や脅迫を加え、反抗を抑圧して財物を奪い取る犯罪です。恐喝罪と同じように「暴行・脅迫」を加えることによって利益を移転させるものですが、両者は何が違うのでしょうか?
大きな違いは「被害者の反抗が抑圧されるかどうか」です。強盗罪は、暴行・脅迫によって被害者の反抗が抑圧され、被害者が抵抗不能になっているのに乗じて金品等を奪い取る犯罪です。被害者が反抗できる状態であれば、強盗罪にはなりません。
一方恐喝罪は、暴行・脅迫を加えるとはいっても被害者の反抗は完全に抑圧されません。被害者は抵抗しようと思えば抵抗できるけれども、恐ろしいので自らお金などの財物を差し出し、財産的利益が加害者へと移転します。
強盗罪と恐喝罪の違いについては「被害者の反抗が抑圧されたら強盗罪」「抑圧されなかったら恐喝罪」と理解しておくとわかりやすくなるでしょう。
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恐喝罪の刑罰と量刑の相場
恐喝罪の刑罰
恐喝罪の刑罰は、10年以下の懲役刑です。罰金刑はなく、刑事裁判で有罪となったら「必ず懲役刑」が適用されます。執行猶予がつかなければ、刑務所で服役しなければなりません。
恐喝罪の量刑の相場
恐喝罪が成立した場合の量刑の相場は、ケースによって異なるので分けてみていきましょう。
初犯で犯罪が軽微なとき、被害者が許しているとき
初犯で被害額が小さく犯罪が軽微な場合には、不起訴にしてもらえる可能性もあります。被害者と示談ができて被害弁償を終えていると、さらに不起訴になる可能性が高くなります。
被害額が大きいとき、示談ができていないとき
恐喝罪でも被害額が大きいと、情状が悪くなって起訴される可能性が高くなります。被害者と示談ができていなければなおさら情状が悪くなり、処分が重くなります。
起訴されたときの刑罰の内容は、被害額や被害者と示談できているかどうかによって異なります。被害額が数百万円以上などになっていると、初犯でも実刑になる可能性が高くなります。
一方被害額が数十万円程度で判決前に被害弁償を終えたケースなどでは、起訴されても執行猶予をつけてもらえる可能性があります。
前科があるとき
どのような犯罪にもいえることですが、前科があると情状が悪くなります。恐喝罪のケースでも、同じような財産犯を繰り返していると処分を重くされます。被害額が大きくなくても起訴されて実刑判決を下される可能性も出てきます。
恐喝罪は、親告罪ではない
犯罪には「親告罪」があります。親告罪とは、被害者による刑事告訴がないと処罰されない犯罪です。器物損壊罪や名誉毀損罪などは、親告罪とされています。
恐喝罪は親告罪ではありません。被害者が刑事告訴をしなくても、捜査機関に犯行が発覚したら捜査が開始され、逮捕される可能性があります。多くのケースでは、被害者が後日に「被害届」を提出することによって犯行が発覚し、逮捕に至っています。
恐喝罪では、後日逮捕される可能性は高い
恐喝罪で逮捕される場合「現行犯逮捕」と「後日逮捕(通常逮捕)」の2種類があります。
現行犯逮捕されるケース
現行犯逮捕とは、犯罪を犯しているその場で逮捕されることです。恐喝罪の場合、犯人が被害者を脅してお金を払わせようとしているところを人にみられて取り押さえられた場合などに現行犯逮捕が成立します。
ただし恐喝行為は、人目につかない場所や時間に行われることが多いので、現行犯逮捕される事例はそう多くはありません。
後日逮捕されるケース
恐喝罪は、後日逮捕されやすい犯罪です。後日逮捕とは、犯行を犯したその場ではなく、数日、数週間、数か月などの後日に逮捕されることです。
恐喝罪の被害者と加害者は顔見知りであることも珍しくありませんし、恐喝が行われたときに被害者が加害者を確認するケースも多々あります。そこで、被害者が加害者を特定して被害届を出すと、比較的容易に加害者が捜査線上に浮かび上がって逮捕につながります。
人を脅してお金やその他の財物を交付させた場合、その場では逮捕されなくても、後日突然自宅に警察がやってきて逮捕される可能性があり、注意が必要です。
恐喝罪の公訴時効
恐喝行為を行っても、一定期間捜査の手が及ばなかったらそのまま逮捕されずにすむ可能性があります。刑事事件には「公訴時効」が適用されるからです。
公訴時効制度は、犯行後一定期間の経過により、被疑者を起訴できなくなる制度です。公訴時効を過ぎると、たとえ恐喝行為を行っていたとしても、もはや起訴されて有罪になる可能性がなくなります。
恐喝罪の公訴時効の期間は7年です。被害者からお金を脅し取った場合でも、その後7年間逮捕されずに逃げ続けたら、もはや逮捕される可能性がなくなります。
ただし実際には7年間も逃亡生活を続けるのは困難です。その間、目立ったことは何もできませんし人生の貴重な期間が無駄になります。逃げ続けるよりもきちんと対応して処分を軽くしてもらう方が有意義です。
恐喝罪で逮捕されない方法
誰かに暴行や脅迫を加えてお金などを払わせてしまった場合、恐喝罪で逮捕されないためにはどのように対応するとよいのでしょうか?
被害者との示談が最も有効
早めに示談するのが一番よい方法です。示談が成立すると、被害者は警察に被害届を出したり刑事告訴したりしないものだからです。警察の方も、民事的な賠償が済んでいて被害者が許しているにもかかわらず、被疑者を恐喝罪で逮捕することは通常ありません。逮捕前に示談を成立させれば、逮捕される可能性はほとんどなくなると言ってよいでしょう。
示談の方法と示談金の金額
恐喝罪の場合、相手にケガでもさせない限り、基本的には交付させた財産を返還すれば被害弁償が完了します。相手に払わせたお金や奪い取ったものをそのまま持っているなら、早めに返還して示談に応じてもらいましょう。
一方、相手から払わせたお金や物を使ってしまったり物を転売してしまったりしてそのまま返せない場合などには、被害品の時価で弁償金を支払います。
ただし恐喝罪の場合、被害者が暴行や脅迫を受けて恐怖を感じるなどして、「精神的な苦痛を受けた」と言われる可能性があります。そこでケースによってはそういった精神的被害に対する慰謝料を上乗せして払わねばならないこともあります。
恐喝罪の示談において、具体的に損害額をいくらと評価しいくらを支払うのかについては、示談交渉の際に双方の話し合いで決定します。合意ができたら「示談書(合意書、和解書)」を2通作成し、被害者と加害者のそれぞれが署名押印して1通ずつ持ち合います。
示談が成立した後、支払いが遅れると被害者から不信感をもたれて被害届を出されてしまうおそれもあるので、早期に支払いを済ませてしまいましょう。
恐喝罪で逮捕された後の流れ
恐喝罪で逮捕されたら、その後どのような流れで刑事手続きが進んでいくのか、みていきましょう。
48時間以内に検察官の元へ送られる
逮捕されると、その後48時間以内に検察官の元へと身柄が送られます。
24時間以内に勾留決定される
検察官の元へ送られたら、検察官の判断で裁判官へと「勾留請求」されます。裁判官が勾留決定をすると、被疑者の身柄は引き続き警察の留置場で勾留され続けます。このように勾留されたまま捜査が行われることを「身柄捜査、身柄事件」といいます。
一方検察官が交流を不要と判断した場合や裁判官が勾留決定しなかった場合には、被疑者の身柄は解放されて、被疑者が在宅のまま捜査が続けられます。この場合の刑事手続きを「在宅捜査、在宅事件」といいます。
以下では先に、身柄事件の場合の流れを説明します。
最大20日間身柄拘束される
勾留された場合、基本的に10日間警察の留置場で身柄拘束され、その間は警察から取り調べを受けます。捜査が10日で終了しない場合には、さらに10日勾留期間が延長されて取り調べが継続されます。
起訴か不起訴か決定される
勾留期間が満期になったら、検察官によって起訴か不起訴かが決定されます。起訴されたら通常の刑事裁判となり、法廷で審理が開かれます。有罪になったら懲役刑が適用されるので、執行猶予がつかない限りは刑務所に行く必要があります。
在宅捜査になった場合の流れ
在宅捜査になった場合、被疑者は自宅で普段通りに過ごすことが可能ですが、その間も捜査は進められます。捜査が終了した時点で被疑者は検察庁に呼び出され、検事調べを受けます。
検事調べが終了したら検察官が起訴か不起訴かを決定します。起訴された場合、被告人には審理への出頭義務があるので、期日が開かれるときには必ず法廷に行かなければなりません。欠席していると勾引されて無理矢理裁判所に連れて行かれます。
判決が出たとき、有罪で執行猶予がつかなかったら刑務所に収監されます。
恐喝罪で逮捕されたときの対処方法
恐喝罪で逮捕されたとき、なるべく不利益を小さくするにはどうしたらよいのか、ご説明します。
不起訴を目指す
恐喝罪で逮捕されたら、まずは不起訴を目指しましょう。不起訴となれば、刑事裁判にならないので懲役刑を適用される可能性は0になるからです。また前科がつくこともありません。
被害者と示談する
不起訴にしてもらうには、処分決定前に被害者と示談することが重要です。そのためには、被害者に連絡を入れて謝罪を行い、示談金の支払いを提案して話し合いを進める必要があります。
逮捕されている被疑者が自分で話を進めるのはほとんど不可能ですので、刑事弁護人に依頼しましょう。
弁護人が対応すると、被害者も安心して示談に応じやすいものです。また被害者が示談金の金額に納得しにくい場合などにも弁護士が被疑者の経済事情などに応じて被害者を説得し、示談金を調整することも可能です。
被害者と示談して不起訴処分を勝ち取るため、早めに弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
反省の態度を示す
恐喝罪でなるべく処分を軽くしてもらうには、反省の態度を示すことも大切です。
被害者を脅したり暴行を加えたりしてお金を払わせておきながら、「何が悪いのか」いう不遜な態度をとっていたら「また同じことを繰り返すのではないか?」と思われてしまいます。
取り調べを受ける際などには、しっかり反省して「今後は二度と同じ過ちを繰り返すまい」と決意していることを伝えましょう。
家族にも協力してもらう
ご家族のいる方の場合、家族に協力してもらうのも一つです。家族による監督を期待できる場合には、比較的早期に身柄を解放してもらいやすくなりますし、処分も軽くなりやすいからです。
弁護士を通じて身元引受書を提出するなどして早期釈放や不起訴処分を目指しましょう。
恐喝罪で逮捕されたら、弁護士に依頼しよう
恐喝罪で逮捕されたとき、被疑者が自分一人でできることはきわめて限られています。家族の協力を得るとしても、捜査機関に対処するには刑事弁護人による助けが必要です。
こうした被疑者の防御に関する対応は、早く開始すればするほどその後の展開が有利になるものです。恐喝罪で逮捕されたら、すぐに刑事弁護に積極的な取り組みを進めている弁護士を探して刑事弁護を依頼しましょう。
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