犯罪は何により定義されるのか~「刑法」や「特別刑法」などの法令~

逮捕

何をすると犯罪になり、刑罰を受けるのか?

何が犯罪になるのかは、実は非常に曖昧なのです。
一般的に犯罪だと思っても、それは警察に逮捕される行為ではなかったり、何気なく行ったりしたことが犯罪だと指摘される場合もあります。

そもそも「犯罪とは何か?」という問題は、突き詰めて考えると非常に難しいものです。

他人を殺したり傷つけたり、または他人のものを盗んだり壊したりするのは、明らかに犯罪だと言えるのですが、社会的な秩序を乱す行動でも、ゴミのポイ捨てや行列への割り込みなどは、道徳的には悪くても、犯罪とまでは言えないだろう、という考えもあります。

しかし、ポイ捨てであっても条例で禁止されていて、処罰が定められているものであれば、それは犯罪になります。

そのため、広い意味では社会的に有害な行為が犯罪と捉えられますが、狭い意味では刑罰が科せられる行為が犯罪とされています。

法令により、犯罪行為と刑罰は定められている

つまり、「刑事事件に発展するような犯罪とは何か?」という問いの答えは、「法令により刑事罰が定められている行為を行うこと」となります。

そして日本を始めとするほとんどの国では、ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令において、犯罪となる行為の内容と、その行為に対して科される刑罰をあらかじめ明確に規定しておかなければならないという原則があります。

これは「罪刑法定主義」という原則のひとつで、刑事事件はこの原則に則って手続きが行われます。

逆に言うと、法令がなければ犯罪はない、ということになります。

昔から伝わる慣習などで刑罰を受けることはなく、あくまでも法律や政令などで定められた、刑罰を伴う行為を行った時に、初めて処罰されるのです。

また、この「罪刑法定主義」には、慣習刑法の排除、遡及処罰の禁止、類推解釈の禁止、絶対的不定期刑の禁止などの原理があります。

普通に社会生活を送っている人の大半は、自分が罪を犯してしまう犯罪者になることは想像もしていないでしょう。

それは多くの場合には正解ですが、自分の生きている時代で、何が犯罪になるのかを完全に熟知している人は意外に少ないのです。

自分が行った行為が犯罪だと言われた時、法令に関する知識がないために反論できないということもあります。

そのような場合には、刑事事件であれ民事事件であれ、司法の専門家である弁護士に相談するべきだと言えます。

犯罪とは、普遍的なものではない?

一般的に犯罪とは、社会や他人に迷惑をかける行為であり、盗むな、壊すな、殺すなといった昔からの普遍的なものが基本にはなっています。

しかし時代の移り変わりによって、そうした分かりやすい犯罪行為の他にも、さまざまな行為が、犯罪行為であるとされるようになりました。

1987(昭和62)年の刑法改正においては、電磁的記録不正作出及び供用罪(161条の2)、電子計算機損壊等業務妨害罪(234条の2)、電子計算機使用詐欺罪(246条の2)が新設され、2001(平成13)年の同法改正では支払用カード電磁的記録に関する罪(18章の2)が新設されるなど、コンピュータ詐欺やクレジットカード悪用に対する新しい法律が制定されてきました。

また一方で、刑法などに基づいて犯罪者を逮捕する警察や検察の運用態度によっても、犯罪であるかどうかが変化することがあります。

たとえば、昭和の時代であればそれほど厳しく取り締まられることがなかった、夜の盛り場における客引き行為は、現在は風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)や各自治体が制定する迷惑防止条例の厳密な適用により、警察官に現場を押さえられると逮捕されることが増えています。

また若い人は知らないでしょうが、昭和の一時期には、酔っ払っていなければよいという法解釈で、酒気帯び運転に罰則が適用されない時代もありました。

このように、社会規範という考えで犯罪を考えれば、そんなに簡単に変わるものではありませんが、法令が定めるものを犯罪とするとなると、時代の変化によって変わっていくものだと言えます。

「刑法」は、刑事事件の犯罪を定める基本

どういう行為をすれば犯罪になるか、ということを定めた最も基本的な法律は「刑法」です。

「刑法」は、日本の主要な法典である六法(憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法および刑事訴訟法)のひとつで、わが国に限らず、法律によって国を治める法治国家であれば、どこの国でもある法律です。

「刑法」は総論と各論で構成されていて、第一編が「総則」、第二編が「罪」となっています。

第一編の「総則」には、犯罪が成立するための要件と、刑罰を科す時の基準が定められており、第二編の「罪」には、殺人罪を始めとするそれぞれの犯罪が成立するための要件と、犯罪に対する刑罰の内容が記載されています。

例えば、「総則」にあたる刑法第1条には以下のように法律の適用範囲が、「罪」にあたる第199条には罪名や刑罰が具体的に定められています。

刑法

(国内犯)

第一条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。

(殺人)

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
「刑法」で定められた犯罪行為は、○○罪と呼ばれます。たとえば人を殺してしまったら、第199条に基づき「殺人罪」、盗みを働いたら、第235条に基づき「窃盗罪」という罪に問われるのです。

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

「刑法」が定められている理由と目的は?

それでは、「刑法」などの法令がなぜ定められているのか、その理由と目的を考えてみましょう。

それは、もし「刑法」がなかったら、ということを考えると分かりやすいと思います。

犯罪を定めている「刑法」がなければ、暴力や略奪などを法律で取り締まることができず、自分にとって悪いことをした人は、私的に罰することが必要となってきます。

そうすると社会の秩序が保たれなくなり、文字通り無法地帯となってしまうでしょう。

さまざまな見方や見解がありますが、法学的に考えると「刑法」には、規制的機能、社会秩序維持機能、自由保障機能などがあるとされています。

規制的機能とは、「刑法」によって犯罪行為を定め、刑罰を規定することにより、人々の行動を規制しているという役割です。

社会秩序維持機能とは、「刑法」によって一定の行為を禁止することで、人々の法益、いわゆる法律によってもたらされる利益を守っているという機能です。

そして自由保障機能とは、「刑法」に定められている犯罪行為以外の行為は、罰されることなく自由に行えるということであり、また罪を犯してしまった人に対しても、「刑法」に定められた以外の罰を受けなくてよい、という人権保護の側面があるというものです。

例えば人の物を盗んでしまったからといって、元の保有者から殴る蹴るの刑罰を受ける必要はないということです。

「憲法」にも定められている刑罰の規定

「刑法」などで国家が定めた罪でも、警察や検察が持つ刑罰権なしに、私的に制裁を与えることは「憲法」によって禁止されています。

憲法

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

個人または集団で私的な制裁を行うことは私刑と呼ばれ、かつてはリンチなどが社会問題になっていましたが、現在ではネットいじめ、メディア・リンチなどが私刑に相当するのではないかという見方があります。

これらの行為はまだ法整備されていない部分もありますが、被害に遭ったと感じるならば、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

犯罪の定義は「刑法」以外も~「特別刑法」など~

現在の日本の「刑法」は、1907(明治40)年に制定されたもので、改正を繰り返してはいるものの、時代の変化により同法の犯罪類型にそぐわない犯罪も出てきています。

そのため、社会情勢に合わせて、「刑法」以外にも新たな法律が制定されています。

「刑法」以外で刑事罰が定められている法律を「特別刑法」と呼びます。

「特別刑法」で定められている犯罪は?

時代の変化に合わせて制定され、特定の犯罪を対象とした法令が多いため、「特別刑法」はその名称を見ただけでも、定められている犯罪がどういうものかが分かります。

代表的な「特別刑法」は次の通りです。

  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
  • 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律
  • 航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法)
  • 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(公害罪法)
  • 爆発物取締罰則
  • 決闘ニ関スル件
  • 人質による強要行為等の処罰に関する法律
  • サリン等による人身被害の防止に関する法律
  • 盗犯等の防止及び処分に関する法律
  • 売春防止法
  • 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
  • 軽犯罪法
  • 覚せい剤取締法
  • 麻薬及び向精神薬取締法
  • 銃砲刀剣類所持等取締法
  • 爆発物取締罰則
  • 火炎びんの使用等の処罰に関する法律
  • 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律
  • 破壊活動防止法
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

以上のような法律に加え、自治体が制定する青少年保護育成条例や淫行条例(淫行処罰規定)も、「特別刑法」と捉えられることがあります。

これらの「特別刑法」に規定されている罪を犯した場合、「刑法」のように「○○罪」とは呼ばれず、「○○法違反」と呼ばれる傾向にあります。

「刑法」とは関係ないと思われる法律にも刑罰がある

一般的には「刑法」や「特別刑法」とは別物と捉えられがちな、行政法規を守らせるための法律にも懲役、禁錮、罰金などの刑罰が規定されているものがあり、以下のような法律は、「特別刑法」と同じ扱いをされることがあります。

  • 道路交通法
  • 所得税法
  • 法人税法
  • 公職選挙法
  • 国家公務員法
  • 地方公務員法

一般の人にも馴染みが深い「道路交通法」には、重大事故を起こした場合などに適用される条文には、刑事罰が定められています。

一方、軽微な交通違反などの処罰として科される反則金は罰金とは違うため、前科がつくような刑事事件とはなりません。

刑罰が定められた法律に違反したら「犯罪」

「刑法」あるいは「特別刑法」に抵触すれば犯罪ということになります。

そして実際に罪を犯してしまった場合も、罪を犯していると警察に疑われてしまった場合も、同じ手続きで処分が決まりますが、逮捕、捜査、起訴、裁判も含めた刑事手続きの規則を定めたのが「刑事訴訟法」です。

以上のように、刑罰が定められた法律に違反したら「犯罪」ということになりますが、法律が複雑に絡み合うため、どのような刑罰が妥当なのかは、法律に詳しい専門家でないとなかなか判断はできません。

もし自身が法律の問題に直面してしまったら、経験を積んだ弁護士に相談してみるのが得策です。

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