口座売買は犯罪!逮捕のリスク、捕まる確率と売ってしまった場合の対処法
- 2024年9月30日
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- 犯罪の種類
- 刑事事件弁護士相談広場
この記事では、口座売買で成立する犯罪や逮捕される可能性、口座売買をしてしまった場合に取るべき対処法などについて、わかりやすく解説していきます。
近年、SNSなどで「あなたの口座を高額で買い取ります」「口座を売るだけで簡単にお小遣い稼ぎができる」「#裏バイト #闇バイト」などの投稿を見かけるようになりました。
お金に困っている方にとって、これらの投稿は非常に魅力的に見えるかもしれません。実際、安易に口座情報を第三者に渡してしまう方も多いです。
しかし、口座売買は犯罪行為に加担する悪質な行為です。場合によっては、口座を売却した人にも犯罪が成立し、刑事罰を受ける恐れがあります。
口座売買とは
口座売買とは、「売主がすでに持っている口座」や「新しく開設した口座」を第三者に売却する行為のことです。
預金通帳やキャッシュカード、暗証番号等の口座情報を買主に渡すことで、買主は売主名義の口座を自由に使えるようになります。
口座売買の勧誘方法はさまざまですが、最近ではSNSやインターネット経由で口座の売主を探すケースが多発しています。
お金に困っている方や手軽なアルバイトを探している学生は、SNSで情報を得ようとする可能性が高いからです。
口座開設にはそれほど手間がかからないにも関わらず、簡単なやり取りだけで数万円の報酬を得られるのが、口座売買の怖いところです。自分がした行為の重大性について深く考えることなく、口座売買の勧誘に応じてしまうケースは年々増加しているのです。
売られた口座は特殊詐欺など犯罪収益の受け皿に
口座売買で売却された口座は、振り込め詐欺などの特殊詐欺において、受取口座として利用される可能性が高いです。自分名義の口座を使って犯罪行為を行うと身元がバレやすいので、他人名義の口座を使って捜査機関からの追求を免れようと考えるのです。
特殊詐欺だけでなく、闇金や強盗などのさまざまな犯罪で被害者から奪い取った金銭を保管しておくには、他人名義の口座が安心です。口座売買のアルバイト等で売主が見つかれば、使い捨て感覚で口座を利用できます。口座から足がつきにくいのも、被害者にとってはメリットが大きいといえるでしょう。
また、特殊詐欺などを行う犯罪グループに、他人名義の口座を売却するいわゆる「道具屋」も存在しています。
このように、口座売買によって売却された口座は、犯罪収益を隠し持っておく”金庫”として使われる可能性が非常に高いのです。
闇金利用が口座売買の引き金に
気の迷いで闇金を利用してしまったことがきっかけとなり、口座売買に手を染めてしまうケースもあります。
闇金業者は、法外な利息の支払いを利用者に要求してくるので、期日までに全額の支払いができない場合が多いです。
全額の返済が終わるまでは違法な取り立てが続くケースが多いですが、中には利息の支払いに代わり口座売買を持ちかけられるケースもあります。
闇金側は当然犯罪に利用するとは言わず、「口座を売却すれば利息の支払いを免除する」「口座情報をくれれば簡単に5万円が手に入る」などと甘い言葉を巧みに使って、口座の売却を迫ってきます。
また、融資をするための審査という名目で、口座情報の提供を迫ってくるケースもあるでしょう。
口座売買で手に入れた口座は、闇金業者が違法貸付で得た収益を隠す場所として使ったり、特殊詐欺を行う犯罪グループ等に売却される可能性が高いです。
闇金を1度でも利用すると、お金に困っていると認識されて口座売買のアルバイトを執拗に迫られるケースもあります。闇金は犯罪業者であり、さまざまな違法業者と通じている可能性が高いので、くれぐれも近づかないようにしてください。
口座売買で捕まる?逮捕される確率は?
自身の口座を第三者に売却してしまった場合、逮捕されるのではないかと不安に思う方も多いでしょう。
売却された口座は高確率で犯罪に利用されます。その場合、口座の売主も詐欺罪や犯罪収益移転防止法違反などの罪に問われる可能性があります。
売却された口座が犯罪に使われるとは知らなかったとしても、売主に犯罪が成立する可能性があることを頭に入れておく必要があります。
捕まる確率は相当高い
口座売買で実際に逮捕・起訴までされるかは検察官次第ですが、少なくとも逮捕される可能性は極めて高いといえます。
売却された口座が犯罪収益に関わる使い方をされた場合、捜査機関の捜査はまず口座の名義人に及びます。
捜査が口座を買い取った業者や闇金業者にまで辿り着いたとしても、口座の売主が犯罪行為に加担している事実には変わりがありません。
口座の売却行為が、詐欺罪に該当もしくは犯罪収益移転防止法に違反する場合には、口座の買主である犯罪グループが逮捕されるか否かに関わらず、口座の売主が逮捕される可能性があるのです。
また、お金に困っている利用者に対して、闇金業者が複数の金融機関に口座開設を持ちかける場合があります。口座開設1件ごとに報酬がもらえるので、安易に口座売買に応じてしまいがちです。
しかし、第三者に使用させる目的で開設された口座が複数にのぼる場合、警察もその分悪質な犯罪だと認識しやすくなるので、逮捕される可能性も格段に上がるといえるでしょう。
口座売買で逮捕された場合の実例
口座売買で実際に逮捕されたケースを3つご紹介します。
口座売買を行い逮捕、その後勤務先である自衛隊から懲戒処分を受けたケース
自衛隊に勤務する21歳の男性は、自分が使うと嘘をついて銀行口座を開設し、報酬を得る目的で見知らぬ第三者に当該口座情報を譲り渡しました。その後、詐欺罪や犯罪収益移転防止法違反などの疑いで逮捕・起訴されています。
口座の売買は軽いアルバイト感覚で行った行為ではあるものの、自衛隊員としてふさわしくない行為であるとして、20日間の懲戒処分を受けています。
なお、男性は深く反省しており、今後、依願退職をする予定であるということです。
参照:陸上自衛隊 銀行口座不正開設の陸士長を停職20日の懲戒処分|NHK 青森県のニュース
口座情報を第三者に売買したとして2度に渡り逮捕されたケース
第三者に利用させる目的で銀行口座を開設し、キャッシュカードや暗証番号を第三者に有償で譲り渡したとして、無職の36歳男性が逮捕されました。
売買された口座は特殊詐欺事件で使用されており、男性の行為は詐欺罪もしくは犯罪収益移転防止法違反に該当する可能性があるとされています。
男性は数か月前にも口座売買で逮捕されており、今回で2度目の逮捕ということになりました。
参照:他人に使わせる目的で口座開設、パスワードなど売り渡す 詐欺と犯罪収益移転防止法違反の疑いで新潟妙高市の男を再逮捕|新潟日報デジタルプラス
投資詐欺の加害者に口座を売却した名義人に、詐欺被害の一部の賠償が認められたケース
被害者(女性・70代)は、ネット広告から有名投資家を名乗る人物とLINEで繋がり、投資の名目で10口座に合計4,500万円を振り込みました。
しかし、いつまで経っても配当がないばかりか、さらなる振込みを依頼されたことから不審に思い、弁護士に相談しました。弁護士が調査をした結果、そこで初めて詐欺被害であることに気づいたケースです。
弁護士は、弁護士法に基づく弁護士会照会等を使い口座名義人の特定を進め、10口座の名義人らに対して4,500万円を超える損害賠償請求訴訟を提起しました。
口座名義人の1人は、訴訟の中で「不眠症やうつ病を患い生活保護を受給していて、どうしても生活に困っていたので口座を見知らぬ人に売却してしまった。売却した口座が詐欺行為に使われるとは知らなかった」などと釈明をしています。
しかし、裁判所は「口座の売却によって詐欺の実現を容易にした」として、10口座全ての名義人に対して詐欺被害のうち一部の賠償を命じました。
他にも同種の裁判で、「詐欺全体を手助けした」として、口座の名義人に対して被害額全額の賠償が認められたケースもあります。
参照:著名人かたるSNS投資詐欺、口座売却した名義人に賠償命令相次ぐ…「犯行に加担した」と認定も|読売新聞オンライン
口座売買で成立する犯罪
口座売買で成立する可能性のある主な犯罪は、次の2つです。
仮にこの2つの犯罪が成立しなかったとしても、特殊詐欺グループや闇金業者の犯罪収益の預けどころとして使用されることで、自分とは関わりのない犯罪に巻き込まれる可能性もあります。
「犯罪行為に使われるとは知らなかった」「犯罪行為には加担していない」と釈明しても、犯罪グループと関係のある人物として逮捕・起訴される可能性は十分にあるので、くれぐれも気をつけてください。
犯罪収益移転防止法違反
第三者に使用させる目的で銀行口座を開設し、キャッシュカードや暗証番号等の口座情報を第三者に有償で譲り渡した場合には、犯罪収益移転防止法違反の罪に問われる可能性があります。
犯罪収益移転防止法は、組織的犯罪グループや反社会的勢力などの資金源や収益移転のルートを断つことで、犯罪の抑止をすることを目的とした法律です。
口座売買で取引された口座は、特殊詐欺などで得られた犯罪収益の受け皿として使用されるケースが非常に多いです。これらの犯罪行為は、口座情報から自身の個人情報が漏れないように、関係のない第三者の口座を使って行われます。
口座を第三者に売却する行為自体が処罰の対象
犯罪収益移転防止法では、口座を第三者に売却する行為自体を処罰対象としています。口座情報を犯罪者に譲り渡すことがなくなれば、犯罪グループが資金移転をすることが困難になり、いずれ犯罪行為を行うことができなくなるからです。
犯罪収益移転防止法で処罰対象とされている口座売買は、以下の通りです(犯罪収益移転防止法28条2項・4項)。
- 「他人になりすまして銀行などから役務の提供を受ける目的または第三者にこれをさせる目的」を相手方が有することを知りながら、その者に対して預貯金通帳やキャッシュカードなどを提供すること
- 通常の商取引や金融取引として行われるなどの正当な理由がないのに、有償で預貯金通帳やキャッシュカードなどを提供すること」
- 上記行為をするよう人を勧誘し、または広告その他これに類似する方法により人を誘引すること
元々は自身が使用するために開設した口座でも、詐欺業者等から勧誘を受けて有償で口座情報を譲り渡した場合には、犯罪収益移転防止法違反に当たる可能性があります。
また、口座売買をするよう家族や友人を誘った場合にも、同法の処罰対象となる可能性があります。
なお、犯罪収益移転防止法の趣旨を徹底するために、銀行口座を開設する際には、金融機関は本人特定事項や取引目的などを確認することが法律上義務付けられています。
犯罪収益移転防止法違反に対する罰則
犯罪収益移転防止法違反の罰則は、次の通りです(犯罪収益移転防止法28条)。
口座売買(同法同条1項・2項)
1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)
口座売買を勧誘し、または広告その他これに類似する方法により人を誘引した場合(同法同条4項)
1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)
口座売買を生業として行っている場合(同法同条3項)
3年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)
口座売った者・買った者だけではなく、口座売買の勧誘を行った者も、同じ罰則が定められています。それを生業・業務として行っていた場合は罰則がさらに重くなります。
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詐欺罪
第三者に口座を使用させる目的を隠して銀行口座を開設した場合、銀行に対する詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺罪は、他人を騙して財物を交付させることにより成立する犯罪です(刑法246条1項)。
口座売買のために新たに口座を開設する場合、銀行に口座開設の目的を聞かれた時に嘘をつくことになります。正直に「口座を第三者に売却するため」と答えては、口座を開設できないからです。
虚偽による口座開設が詐欺罪に問われる可能性
「給与の振込み口座として使用するため」「生活費の決済口座として使用するため」など伝える目的はさまざまですが、銀行に対して嘘の目的を伝え、通帳やキャッシュカードなどの財物を交付させることになります。つまり、口座開設の状況次第では、刑法上の詐欺罪に該当し刑事責任を問われる可能性があるのです。
なお、詐欺罪については未遂も処罰される点にも注意が必要です。たとえば、銀行の窓口で口座開設の手続きをしている最中に、担当者が不審に思って手続きを中断した場合でも、詐欺未遂罪として逮捕される可能性があります。
また、売却した口座が特殊詐欺に利用されることを認識していた場合には、特殊詐欺の共犯として、別途詐欺被害者に対する詐欺罪が成立する可能性もあります。
詐欺罪に対する罰則
詐欺罪に対する罰則は「10年以下の懲役刑」です(刑法246条1項)。
懲役刑の期間も長く罰金刑の定めもないことから、犯罪収益移転防止法違反の罰則と比べるとかなり重い罰則になっていることがわかります。
なお、執行猶予付きの判決を獲得するためには、「3年以下の懲役刑の言い渡しを受けたとき」である必要があります。つまり詐欺罪で起訴され3年を超える懲役刑が妥当だと判断された場合、執行猶予なしの実刑判決が下されることになります。
執行猶予付き判決を得られなかった場合には、基本的に刑期を満了するまで日常生活に戻ることができません。そのため、口座売買で逮捕された場合には、早い段階から適切な弁護士活動を行うことが重要になるでしょう。
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口座売買で逮捕されるまでの流れ
口座売買から警察に逮捕されるまでの大まかな流れは、次の通りです。
口座を使えなくなる
口座を第三者に売買したことが捜査機関に発覚した場合、もしくは実際に売買した口座が特殊詐欺などの犯罪に使われた場合、その口座は凍結され使えなくなります。
口座が凍結されると、預金の引き出しや預け入れなど、口座上で行う取引き全てを行うことができなくなります。
ATMでエラーになり口座凍結の可能性に気づく
口座凍結に最初に気付くのは、ATM利用時であるパターンが多いです。たとえば、コンビニのATMでお金を引き出そうと思っても、「このカードはお取り扱いできません」などとエラーメッセージが表示されます。
この表示だけでは口座凍結を断定できず、単にカードの磁気不良やATMの故障などの可能性も考えられるでしょう。ただし、残高照会や預け入れすらできない場合には、何らかの理由で口座自体が利用できなくなっている可能性が高いです。
口座凍結や口座差し押さえに身に覚えがないのであれば、現在口座がどのような状態になっているのかを銀行に問い合わせてみるのが良いでしょう。
金融機関から問い合わせが来る
口座売買が疑われ口座凍結が行われると、金融機関から本人宛に問い合わせが来る場合があります。問い合わせの内容は、口座が犯罪行為に使われていないかを確認する内容です。
確認すると言っても、口座凍結が行われている以上、口座が犯罪に使われていることはほぼ確定的であるケースがほとんどです。口座の名義人が犯罪行為に関わりのある人物であるかの裏付けを取るために、電話をしてきます。
金融機関からの質問に拒否したからと言って、すぐに逮捕される訳ではありません。しかし、問い合わせが来る時点では、すでに金融機関から警察に対して連絡が行っている可能性が高いです。
口座売買はしていないと嘘をついたとしても、捜査機関からの捜査を免れることはできないでしょう。
金融機関から口座凍結の通知が来る
口座凍結が確定すると、金融機関から口座を凍結した旨の連絡が届きます。
心当たりがなければ口座凍結を解除する手続きを取ることもできますが、口座売買が疑われている状況であれば、捜査機関の捜査が終わるまでは口座凍結が解除されることはありません。
口座が凍結されている以上、その口座を使えないのはもちろんですが、口座開設や当該金融機関の他の口座も使用できなくなる可能性が高いことを頭に入れておきましょう。
警察から連絡が来る
金融機関から口座凍結に関する連絡がくる前後で、警察から口座名義人に対して連絡が来る場合があります。
警察から連絡が来るということは、口座が犯罪に使用されたか、口座売買によって犯罪収益移転防止法違反や詐欺罪の成立が疑われている証拠です。
電話に出なかったとしても、警察からの追求を免れることはできません。意図的に折り返しをせずにいると、逃亡の恐れや証拠隠滅の可能性が疑われて逮捕される可能性もあります。
「お金に困って口座売買を行ってしまったものの、犯罪行為には加担していない」と正直に話せば、逮捕を免れる可能性もあります。警察からの連絡は無視せず、真摯に対応することを心がけましょう。
いきなり逮捕されるケースも
必ずしも警察から連絡が来る訳ではなく、いきなり逮捕される可能性があることも頭に入れておきましょう。
特に「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が認められる場合には、逮捕状が発布されて事前予告なしで逮捕される可能性が高いです。
たとえば、以下に該当するケースでは、犯罪収益移転防止法違反もしくは詐欺罪の容疑で逮捕される可能性があるといえます。
- 住所不定、無職、職業不詳など、逃亡する恐れがある場合
- 前科、前歴がある場合(過去に口座凍結をされた経験がある場合など)
- 警察からの連絡を無視したり、任意の出頭要請や事情聴取に応じない場合
- 口座売買以外にも、特殊詐欺などの組織的犯罪への関与が疑われる場合
- 口座の買主と共犯である可能性が高い場合
- 第三者に口座売買の勧誘をしている事実が発覚した場合
- 売買した口座が特殊詐欺事件で実際に使われた場合(特に事件の被害額が大きい場合)
- 特殊詐欺事件等の被害者の処罰感情が強い場合 など
これをすると逮捕されるとケースを断定することはできませんが、口座売買の悪質性が高いと判断されるケースでは、事前連絡なしで逮捕される可能性があることも頭に入れておきましょう。
最大23日間の逮捕・勾留を受ける
口座売買をして警察に逮捕された場合、最大で23日間身柄を身柄を拘束される可能性があります。
犯罪収益移転防止法違反もしくは詐欺罪の容疑で逮捕されると、まずは口座売買について警察から取調べを受けます。
警察は逮捕から48時間以内に事件と被疑者の身柄を検察に送致(送検)する必要があるため、時間内に口座売買が犯罪行為に該当するかの証拠を集めることになります。
送検されると、検察官による取調べが実施されます。検察官は24時間以内に勾留するかどうかの判断を下す必要があります。口座売買が犯罪行為に該当する可能性が高いのであれば、原則10日間の勾留で起訴するかどうかを決定します。10日間で口座売買の犯罪性につき判断できない場合には、さらに10日間の勾留延長が認められる場合もあります。
逮捕から送検されるまでは、外部との接触は絶たれ、家族や友人と連絡は取ることはできません。後述するように、長期間にわたり会社や学校を休むことで、解雇や退学処分を受ける恐れもあります。
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起訴された場合、前科がつくおそれ
警察・検察官の取調べの内容や捜査活動で得られた証拠などから総合的に判断し、口座売買が犯罪に該当すると判断された場合には、検察官は起訴を決定します。
起訴されると刑事裁判にかけられることになりますが、日本の刑事裁判では起訴されると高確率で有罪判決が下されます。
有罪判決が出ると前科がついてしまうので、今後の人生の影響を最小限にするためには、不起訴処分を獲得することが重要になります。
口座売買は特殊詐欺など犯罪の温床になっているケースが多いので、対応せずに手続きに身を任せていると起訴され有罪判決が出る可能性が高いです。
口座売買をしてしまった場合には、なるべく早めに弁護士に相談することをおすすめします。
口座売買をすることのデメリットとリスク
口座売買をすることのデメリットやリスクは、次の通りです。
- 逮捕・勾留される
- 振り込め詐欺などの犯罪で口座を使われる
- 身に覚えのない犯罪についての責任を問われる
- 口座売買したことが職場や学校にバレると解雇・退学の可能性
- 売買した口座と同じ名義の口座を使えなくなる
- 一生、銀行口座を作成できなくなる可能性
- 凍結された口座内の預金は犯罪被害者への補償として分配される
逮捕・勾留される
口座を第三者に売却したことが警察にバレると、長期間に渡り身柄を拘束されます。逮捕から起訴までで最大23日間、起訴されるとそこからさらに数か月もの間身柄を拘束されます。
身体拘束期間が長期化すると、厳しい取調べや留置所生活にストレスが溜まり、心身に影響を来たす可能性があります。
また、仮に釈放もしくは不起訴処分になったとしても、長期間会社や学校を休むことになるので、日常生活を取り戻すのに時間がかかる可能性があります。
振り込め詐欺などの犯罪で口座を使われる
口座売買で売却された口座は、振り込め詐欺などの犯罪で、犯罪収益を確保する口座として使われる可能性が高いです。自分にその気がなかったとしても、犯罪行為の共犯者になってしまう可能性があるのです。
また、口座情報を売り渡すことで、犯罪者グループに個人情報が漏れてしまう危険性もあります。
氏名・住所・口座情報などの個人情報から勤務先や学校がバレると、新たな口座開設を要求されたり、特殊詐欺の片棒を担ぐよう強要される恐れがあります。「指示通りにしないと周囲に犯罪者であることをバラす」などと脅迫されると、断りきれずに犯罪行為に手を染めてしまうことにもなりかねません。
口座売買を複数回行ったり、特殊詐欺の共犯者として行動した場合、刑事裁判で有罪判決を受けて社会復帰できない状況に追い込まれてしまう場合もあるでしょう。
身に覚えのない犯罪についての責任を問われる
口座売買を行った場合、身に覚えのない犯罪行為の共犯者としての責任を問われる可能性があります。
軽いアルバイト感覚で口座を売却した場合、その口座が犯罪行為に使われるとまでは考えていないケースも多いでしょう。
しかし、第三者に売却した口座が特殊詐欺などの犯罪行為に使われている場合には、詐欺事件の共犯者としての責任を問われる可能性はゼロではありません。
「口座を売却したことによって詐欺行為の実現を容易にした」と判断されれば、それだけで詐欺被害の賠償命令が下されるケースも珍しくないのです。
口座売買したことが職場や学校にバレると解雇・退学の可能性
口座売買という犯罪行為をしたことが職場や学校にバレると、何らかの処分が下される可能性が高いです。
口座売買で逮捕・勾留されると、長期間に渡り身柄を拘束される恐れがあります。たとえ、自分から逮捕されたことを話さなかったとしても、長期間仕事や学校を休んでいることから、逮捕の事実を隠し通すのは難しいといえます。
さらに、職場の同僚や学校の友人と一緒に口座売買を行っていた場合、捜査活動の一貫で職場や学校に連絡が行く場合もあります。
就業規則や校則によっては、解雇や退学の可能性もあるでしょう。解雇や退学になると、転職活動が上手くいかなくなる恐れや、学歴に傷がつき就職活動が上手くいかなくなる可能性もあります。仕事がクビになることで、収入がなくなり生活が困窮したり、結婚生活が破綻する恐れもあります。
売買した口座と同じ名義の口座を使えなくなる
口座を売却したことが捜査機関に発覚した場合や、売却した口座が犯罪行為に使われた場合には、口座が凍結され口座上の取引が全てできなくなります。その場合、たとえ自分が犯罪行為に加担していなかったとしても、売主名義の口座は全て使えなくなる可能性が高いです。口座売買で口座が凍結されている以上、売主名義の他口座も、犯罪収益の受け皿になっている可能性を否定できないからです。
また、警察から口座凍結の依頼があった場合や、口座が犯罪に利用されたと疑うに足りる相当の理由がある場合には、口座凍結をした金融機関は他の金融機関に情報を提供する場合があります。
その場合、他の金融機関の口座が凍結されるだけでなく、各金融機関とのカードローン契約やキャッシング契約、住宅ローン契約なども全て強制的解約になる恐れがあります。
強制解約になると残債債務額を一括で請求され、分割返済等の話し合いが不調に終われば、強制的に財産を差し押さえられてしまう恐れもあるでしょう。
一生、銀行口座を作成できなくなる可能性
1度でも犯罪を疑われ口座を凍結されると、今後2度と同じ金融機関で口座開設ができなくなる可能性が高いでしょう。
口座売買を理由に口座凍結された人はブラックリスト扱いとされ、同じ名義人で口座を作成しようとしても、この犯罪歴を根拠に口座開設を拒絶されるケースが多いためです。
実際は金融機関ごとに対応は異なりますが、基本的には口座凍結後、一定期間が経過した段階で強制解約になることがほとんどです。
凍結された口座内の預金は犯罪被害者への補償として分配される
口座売買で売却された口座内の預金は、基本的に犯罪被害者への補償として分配されます。
第三者に売買された口座は犯罪行為に使われることがほとんどです。その口座内の預金は、被害者から騙し取った金銭に当たるので、被害者に分配されることになるのです。
ここで、口座の売主は犯罪行為に加担しておらず、口座内の預金は全て口座売主の財産だった場合もあるでしょう。
この場合でも、口座が犯罪収益の移転に使われていたと判断された場合には、売主の預金も含む預金全額が差し押さえの対象になる可能性があります。
口座売買してしまった場合に取るべき対処法
もし安易に口座売買をしてしまった場合には、取り返しがつかなくなる前に次の対処法を取ってください。
金融機関に口座停止の連絡をする
第三者に口座を売買してしまった場合には、できる限り早急に金融機関に口座停止の連絡をしてください。
たとえ犯罪グループに口座を譲り渡してしまったとしても、口座が犯罪に利用されることを阻止すれば、犯罪行為に加担していないことを証明できます。
また、犯罪の拡大を阻止したということで、逮捕や刑罰を受ける可能性を減らせる可能性もあります。口座の利用が停止されれば、その口座を使った犯罪行為もできなくなるので、口座の売主を処罰する必要性も低くなるでしょう。
警察に出頭し自首する
口座売買は犯罪行為です。金融機関への連絡だけでなく、警察に対し自首することも検討しましょう。
口座売買が警察にバレたり、売り渡した口座が犯罪に使われる前に自首すれば、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがないと判断され、逮捕・起訴されずに済む可能性が高まります。
仮に起訴されてしまったとしても、自首して自分の罪を認めていれば、重い刑罰を受ける恐れも低くなります。
口座凍結された場合、口座凍結解除の手続きをする
口座売買を疑われ口座が凍結されてしまった場合には、口座凍結解除の手続きを取ることも検討しましょう。
もし身に覚えのない口座凍結であれば、事情を丁寧に説明することで口座凍結を解除してもらえる可能性があります。また、自分が犯罪行為には関わっていないことを証明する証拠を、口座凍結解除の手続きの中で提出すれば、逮捕される可能性も低くできるでしょう。
ただし、基本的には犯罪行為との関与を疑われて口座を凍結されている以上、口座名義人からの解除申請で口座が使えるようになるケースは少ないです。
たとえ、口座名義人が犯罪行為に関与していないことがわかっても、捜査上の理由で口座を凍結したままにするケースも多いからです。
口座凍結の解除を進めるのであれば、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談する
口座売買で逮捕されたり重い刑事罰を受けることを避けるには、なるべく早めに刑事事件に強い弁護士に相談するのが良いでしょう。
弁護士であれば、口座売買で犯罪行為に加担する意思はなかったことを法的主張に転換することで、依頼者の利益が最大になるようサポートしてくれます。
「口座売買くらいで逮捕されることはないだろう」と甘く見ていると、あっという間に逮捕・起訴されてしまい、前科がついてしまう可能性もあります。
精神的なサポートも含めて、口座売買をしてしまったらなるべく早めに弁護士に相談するようにしましょう。
口座売買を弁護士に相談するメリット
口座売買を弁護士に相談するメリットは、次の通りです。
刑事事件に強い弁護士なら、口座売買で逮捕されることを防げる可能性があります。
今後の人生に悪影響を与えないためにも、なるべく早めに弁護士に相談することをおすすめします。
警察への自主や対応のアドバイスがもらえる
刑事事件に精通した弁護士であれば、警察への自主や各種対応について適切なアドバイスをもらえます。
口座売買を行ってしまった場合、警察に反省していることを示す意味で、自首は有効な手段になるでしょう。
ただし、全てのケースで必ずしも自首した方が言い訳ではなく、公訴時効等まで考慮したうえで自首すべきかを判断すべきだといえます。
また、刑事手続きに精通している弁護士なら、今後の見通しや取調べに対する適切な対応方法についてもアドバイスをもらえます。捜査機関による違法な取調べが行われにくくなるのも、弁護士に依頼する大きなメリットの1つだといえるでしょう。
刑事処分が最小になるよう動いてくれる
口座売買で弁護士に依頼すれば、依頼者の刑事処分が最小になるような弁護活動をしてくれます。
弁護士であれば、犯罪行為に加担する故意がなかったことや行為に悪質性がないことなどを主張することで、逮捕・起訴されないよう警察に働きかけることができます。
もし逮捕されてしまった場合には、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがないことなどを具体的に主張することで、早期釈放を実現できる可能性も高いです。
また、口座名義人が直接被害者と示談をしようとしても、処罰感情が強い場合にはそもそも連絡を取ることすら困難であることが多いです。示談がスムーズに済めば不起訴処分になる確率も高くなるので、弁護士に対応を依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
債務整理でトラブルが解決する可能性も
経済的に困っていることを理由に、軽い気持ちで口座売買を行ってしまう方も多いです。弁護士に相談すれば、口座売買に対する刑事事件の対応だけでなく、経済的な困窮を脱するためのサポートをしてもらえます。
対処法は人によってさまざまですが、借金が理由で生活が苦しいのであれば、債務整理を活用して借金問題を解決することも視野に入れましょう。債務整理には、任意整理・自己破産・個人再生の3つがありますが、弁護士であれば依頼者の状況に合った手続きを提案することができます。
また、状況によっては生活保護制度や生活福祉資金貸付制度などの公的支援制度を紹介したり、家計を安定させるためのアドバイスをもらえる場合もあるでしょう。
弁護士に相談すれば口座売買を行ってしまった原因にも対処できるので、今後同じ過ちを繰り返しにくくなります。
まとめ
口座売買を単なるアルバイト感覚で行う方も多いですが、第三者に口座情報を引き渡す行為は犯罪行為であることをしっかり認識する必要があります。
もし安易な気持ちで口座売買を行ってしまった場合には、すぐに口座を停止する手続きを取り、弁護士に相談して今後の対応について適切なアドバイスをもらいましょう。弁護士なら、今後の見通しや警察に逮捕された場合の対処法などについて的確に判断できます。
まだ大丈夫だろうと安易に考え対応を先延ばしにしていると、売却した口座が犯罪行為に使われてしまい、場合によっては犯罪者グループとの共犯者として逮捕される恐れもあります。最悪の場合、有罪判決を受けて前科がついてしまう可能性もあるので、口座売買をしてしまったらできる限り早く弁護士に相談するようにしましょう。
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