「強盗罪」の定義~他人を脅迫し、または暴行して盗みを働く行為~

コンビニ強盗

「強盗罪」の定義は?

一般的に「強盗」という言葉で想像されるのは、銀行強盗やコンビニ強盗などで、覆面をかぶり凶器を持って金を出せと脅して金品を奪い取る、といったものですが、実際に法律ではどう規定されているか見てみましょう。

「強盗罪」は、刑法第36章の「窃盗及び強盗の罪」の中で、第236条に以下のように定められています。

刑法
(強盗)

第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

条文を読むと、「強盗罪」が成立した時の刑罰は5年以上の有期懲役のみと定められており、非常に厳しいものだということが分かります。また、金額の多い少ないに関わらず、他人の財物を強取した者が「強盗」であることも読み取れます。

この際の財物とは法律用語ですが、金銭だけではなく、価値を有する物品すべてを含むとされ、「強盗」ではあまり適用されることはないと考えられますが、電気のような無体物も対象となります。

また強取とは、暴行や脅迫により他人の反抗を抑圧することですので、被害者が怪我をしている、していないは関係なく、声だけで、あるいは凶器による威嚇だけでも「強盗罪」が成立する可能性があるのです。

非常に重い刑罰が科せられる

同じ盗みの犯罪でも、「強盗罪」は「窃盗罪」に比べて非常に重い刑罰が科せられる犯罪となります。

「窃盗罪」では被害額が巨額だったり、何度も犯行を繰り返したりする常習犯でなければ、いきなり懲役の実刑判決を受けることは少ないのですが、「強盗罪」となると初犯でもほぼ実刑が確実という重い刑罰となります。

条文だけを見ても、最低でも5年の懲役刑が科せられるということが分かります。

実際の裁判で執行猶予が勝ち取れる基準は懲役3年以下の犯罪となりますので、「強盗罪」の場合は、有罪判決になれば執行猶予がつく可能性は極めて少なく、初犯でも懲役刑が科せられる犯罪です。

しかし、被害者への弁済を早急に済ませて、示談を成立させた場合にのみ、執行猶予がつく可能性があるとされています。

「強盗」の罪を犯してしまった者の家族や親族、または友人・知人で、被告人を助けたいと考えるならば、いち早く弁護士に相談し、執行猶予を得る方策を検討してもらうべきでしょう。

「強盗」は何件くらい発生しているのか?

以上のような重罪となる「強盗」ですが、どれくらい発生しているのでしょうか?

平成29年版の犯罪白書によると、28年の「強盗」の認知件数は2,332件となっています。認知件数とは、警察が把握している件数のことで、「強盗」に限らず警察が検挙していない犯罪は統計の取りようがありませんので、このように表現されています。

近年の「強盗」の認知件数の推移を見ると、平成15年に昭和26年以降で最多の7,664件を記録した後は、一貫して減少傾向にあります。一方で検挙率は上昇を続け、平成28年は80.5%となっています。

ちなみに傷害事件の検挙率は80.4%、暴行事件は79.9%、脅迫事件は85.0%と、これらの事件は8割程度の犯人が捕まっていることになります。

しかし殺人事件の検挙率は100.7%(前年以前に発生した事件の検挙も含まれるために100%を超えている)であり、手を抜いていることはないと思われますが、被害者の生死が捜査体制に影響を与えていると言われても仕方ない数字になっているのが現状です。

「強盗」が絡む他の犯罪も重罪

「強盗」とは、先の述べたように、他人の財物を強取した者を示しますが、強取に失敗した、あるいは計画しただけでも、重い罪に問われる犯罪となります。

失敗したものを未遂、計画することを予備と言いますが、それぞれ刑法に罪名が規定されている、重い犯罪です。

「強盗罪」以外の「強盗」に関する罪名

「強盗罪」以外に、「強盗」に関連する犯罪は、刑法に以下のように規定されています。

刑法

(強盗予備)
第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

(昏酔強盗)
第二百三十九条 人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

(未遂罪)
第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。

(強盗予備)
第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

以上のように、「強盗」に関連する犯罪は、いずれも重い刑罰が科せられるものとなっています。

「強盗予備罪」とは、「強盗」をする目的で、凶器を購入し準備をしたり、情報を集めて計画をしたりした際に問われる罪で、実際に「強盗」の行為を起こさなかった場合にも成立するとされています。「強盗」の行為に及んだが、財物などを奪えずに終わったものは、「強盗未遂罪」となりますが、その場合でも「強盗罪」として起訴される可能性が高いものです。

「強盗予備罪」は2年以下の懲役が科される一方で、「強盗未遂罪」の場合は「罰する」とだけ規定されているため、程度や状況によれば、「強盗罪」と同程度の求刑がなされる可能性があります。

「事後強盗罪」とは、例えば最初は「窃盗」にあたる万引きなどであっても、追いかけてきた警備員などに暴力を働き逃走した場合には、「強盗罪」と同じ罪の重さとなるというものです。

「昏睡強盗罪」とは、薬物などで人を眠らせて、その間に財物を奪うことで、この昏睡させるという行為も暴行や脅迫と同じものだと捉えられ、「強盗罪」と同様の処罰を受けるものです。

「死刑」が科される可能性がある

「強盗」の行為により人を殺してしまった場合には、「死刑」が求刑される非常に重い罪となります。

「強盗致死傷」の罪は当然ながら「強盗罪」よりも重くなり、人を負傷させた時には無期懲役または6年以上の懲役、死亡させてしまった場合には「死刑」または無期懲役と、非常に厳しい刑罰が科されます。

「強盗・強制性交等及び同致死罪」についても同様に厳しい刑罰が規定されており、死亡させてしまった場合に「死刑」が求刑される罪状のひとつです。

「強盗」の典型例は?

社会情勢や時代によって犯罪も変化していきますが、現在の「強盗」はどのような形が多いのか見てみましょう。

平成29年度版の犯罪白書によると、28年の「強盗」認知件数は2,332件ですが、その34.8%が「侵入強盗」で、残り65.2%が「非侵入強盗」となっています。

「侵入強盗」のうち最も多いのがコンビニ強盗(全体の16.5%)で、住宅強盗(7.5%)、その他の店舗強盗(7.0%)と続き、昔の「強盗」の代表的イメージであった金融機関等は1.2%しかありません。

「非侵入強盗」で最も多いのは路上強盗で、全体の24.9%を占め、全体でも最も高い比率となっています。

そしてタクシー強盗(5.0%)、その他の自動車強盗(1.3%)、途中強盗(0.5%)と続きます。

途中強盗とは、財物を輸送中、あるいは銀行等に現金等を預けに行く途中または引き出して帰る途中の者から強取するものです。

コンビニ店員への脅迫、ひったくりなども「強盗」となる

「強盗罪」になる具体的な犯罪行為は、被害者から無理矢理財物を強取することですが、その行為は幅広く適用されてしまいます。

コンビニに刃物などの凶器を持ち込み、店員に「お金を出してください」と言った時点で「強盗罪」が成立する可能性があります。たとえどんなに丁寧な言葉を使ったとしても、凶器で相手を脅迫して財物を奪おうとすれば、それは「強盗」行為なのです。

また、本来は「窃盗罪」となるひったくりも、行為をなした際、被害者に怪我を負わせてしまうと、「強盗罪」が適用される可能性が高まります。バックなどを奪ったはずみに被害者を転倒させて負傷させれば、それは立派な「強盗」事件なのです。

万引きの現場を発見され、店員や客が追いかけてきた時、そのまま逃亡して後に逮捕された場合は「窃盗罪」ですが、追いかけてきた人ともみ合いになり相手に怪我を負わせれば「強盗罪」になる可能性が出てきます。

「強盗」と「窃盗」の違いは何か?

「窃盗罪」は、刑法第235条に、次のように規定されています。

刑法
(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

「強盗」も「窃盗」も人の財物を盗む行為ですが、これらの違いは「暴行または脅迫」が伴うかどうかです。万引きや空き巣といった「窃盗」は、被害者に気づかれずに財物を盗んだ時の罪です。

一般的には被害者が盗まれたことに気づくのは犯行が行われた後となるので、被害者が犯人から脅されたり、暴行を受けたりすることがなかった場合のものです。

「強盗」は加害者が被害者に対して言動や凶器などで脅迫し、被害者から強制的に財物を奪い取る行為です。また「窃盗」の行為を阻止するために被害者や第三者が犯人を捕まえようとした場合、犯人が相手に怪我を負わせた場合も、強盗罪が成立する可能性が高くなります。

「強盗」の刑罰の重さ

「窃盗罪」には万引きなどの比較的軽い犯罪も含まれるため、被疑者の身柄が拘束されない在宅捜査となるケースがあります。しかし容疑が「強盗罪」になってしまうと、ほぼ100%は逮捕された後に身柄が拘束されます。

逮捕後には勾留、そして勾留延長が行われることも多く、「強盗罪」で逮捕された場合には、3週間程度は留置場で身柄が拘束されることを覚悟する必要があります。事件の状況にもよりますが、「強盗罪」は犯罪の中でも重いものとして、厳しく捜査されることになるでしょう。

逮捕されてしまえば実刑が確実と言われる「強盗罪」ですが、専門家の力を借りて手続きを進めれば不起訴処分や減刑の可能性はあるため、弁護士に依頼することをお勧めします。

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