拘置所に収容されるさまざまな人々~被疑者・受刑者・死刑囚なども~
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拘置所に収容されるさまざまな人々
拘置所とは法務省管轄の刑事施設で、全国に8カ所(東京拘置所、立川拘置所、名古屋拘置所、京都拘置所、大阪拘置所、神戸拘置所、広島拘置所、福岡拘置所)あり、加えて刑務所・少年刑務所・拘置所の所轄として拘置支所が全国に103カ所あります。
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しかし一般的に、拘置所はどのような施設かはあまり知られていないでしょう。
東京拘置所という言葉をニュースで聞くことはあっても、どのような人が収容されているのかを知っている人はごく少数で、法律の専門家や刑事事件に詳しい人、あるいは実際に収容された経験がある人しか、誰が収容されているのかを知らないのではないでしょうか。
原則としては未決拘禁者が収容される
原則として、拘置所には刑事事件の手続きにおいて、まだ裁判で判決を受けて刑が確定していなくて、かつ身柄の拘束が必要とされる未決拘禁者が収容されます。
そしてこの未決拘禁者の他に、刑事事件の裁判において死刑判決が下された死刑囚を収容することも大きな役割で、死刑執行施設が札幌と仙台の拘置支所、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の各拘置所に備え付けられています。
一方で、拘置所には刑事事件の手続き上、被疑者や受刑者などの、刑事手続きにおいて身柄を拘束されているすべての段階の人々が収容されているのが特徴です。
通常は起訴されてから、留置場を出て拘置所へと移る
刑事事件の被疑者として逮捕されてしまい、警察と検察での逮捕の期限が満了し勾留が決定されたら、原則としては拘置所に移送されるべきなのですが、現実的には警察の留置場で引き続き身柄の拘束を受け、検察によって起訴されてからようやく拘置所に移されます。
このような普通の手続きを経て拘置所に収容される人以外のケースを、ここでは紹介します。
逮捕されすぐ拘置所に収容される被疑者
警察が被疑者を逮捕した場合は、そのまま警察の管轄である留置場で身柄を拘束するのですが、逮捕の権限があるのは警察だけではないことから、逮捕後すぐに拘置所に送られる被疑者がいます。
要するに、警察以外の捜査機関が逮捕した被疑者は、直接拘置所に収容されるのです。これは、警察と法務省という所属官庁の違いから、警察の留置所を使えないため、法務省管轄の拘置所に直接収容されるというものです。
警察以外に逮捕された場合はすぐ拘置所へ
刑法や特別刑法など、刑事罰が規定されている法令を犯した人は、普通ならば警察が逮捕するのですが、逮捕権を持った職業の人は他にもいることはあまり知られていません。
代表的なものは法務省の特別機関である検察庁に属する検事で、正式には検察官と呼ばれます。また、厚生労働省に属する麻薬取締官も逮捕権を持っているため、職務上で被疑者を警察と同じように逮捕することもあります。
その場合、警察とは所属官庁が違うため、事前に了解を得ていない限りは警察の留置場を使うことができないのです。そもそも留置場は、法令で認められているとはいえ代用監獄であり、本来ならば拘置所は逮捕した被疑者を、勾留が決まれば収容することを想定しているものです。
警察以外の捜査機関が逮捕した被疑者は、留置場を経ずに拘置所に身柄を拘束されるため、拘置所には被疑者もいるということになるのです。
拘置所に留められる既決囚
拘置所は原則的に未決拘禁者が収容される施設ですが、裁判において実刑判決が下された後も、当面の間は拘置所で身柄を拘束されることがあります。
裁判が結審し、有罪となり懲役刑が科されたとしても、刑務所へ直行することはない、といった手続き上の問題が理由となります。また、検察による起訴を受けてから保釈制度を利用して、一時的に日常生活に戻れていたとしても、裁判で実刑の有罪判決が下されれば、法廷内で身柄が拘束されます。
その場合も、いきなり刑務所へ連行されるわけではなく、まずは拘置所へ収容されます。
判決が確定するまで拘置所に収容
裁判で有罪判決が下された既決囚が拘置所に留められる主な理由は2つです。
被告人が判決に不服がある場合、控訴や上告が可能とされる期間が14日間あるため、裁判の判決が確定するのは判決日の翌日から14日後になります。判決に不服がある場合はこの期間中に控訴や上告の手続きを行うのですが、本当の意味で判決が確定するまで刑事手続きは進めることはできませんので、その間は拘置所に収容されることになるのです。
もし保釈制度を利用して拘置所の外に出ていた被告人が有罪判決を受け、控訴をするつもりであれば、判決日当日にすぐ保釈申請を再度申し込み、裁判所に認められれば保釈金を納めたうえで、拘置所に移送される前に裁判所で釈放されることもあります。
もう1つの理由は、どの刑務所に収監されるかを選考する期間があるということです。
判決が確定して被告人の呼び名が受刑者に変わっても、すぐに拘置所から刑務所へ移送されることは手続き上ありません。拘置所内での待遇は未決囚から既決囚に変わり、受刑者と同じ扱いになりますが、どの刑務所へ収監されるかという選考は、既決囚になった時点から始まるのです。
移送先の刑務所が決まるまでは、通常1~2週間と言われていますが、受入側の刑務所の調整もあり、それ以上待たされることも珍しくないようです。
拘置所で刑務に服する受刑者
拘置所には、刑務として所内の業務に携わる受刑者もいます。
拘置所には、裁判で実刑判決が下れて刑務所へ移送されるのを待つ既決囚のほか、本来ならば刑務所にいるはずの受刑者も収容されていて、拘置所において刑務を行っているのです。
受刑者が未決拘禁者の雑務を担う
懲役刑とは、刑務所に受刑者を収監し、刑務作業を行わせるものです。
受刑者の自由を奪うだけではなく、矯正という名の強制労働により苦痛を与えることにより、再犯の防止や生活態度の改善を促すだけではなく、釈放後にスムーズに一般社会に戻れるような職業訓練として、刑務作業は捉えられています。
刑務所では、受刑者の食事や洗濯、あるいは日用品や書籍の購入手続きといった、受刑者の生活に関わる日常雑務の多くは、刑務所の職員である刑務官ではなく、受刑者が行っています。拘置所でも同じ制度が用いられているのですが、原則として拘置所に収容されるのは未決拘禁者であり、刑務作業を科することはできません。
そのため、拘置所で身柄を拘束されている人たちの食事を作る仕事や、身の回りの雑務は、受刑者が刑務として行うことになっています。この刑務は、刑事施設である拘置所内をある程度自由に動き回れるため、希望する受刑者がそのままこの刑務を行うことはできません。
懲役の受刑者の中でも、収監中に問題は一切起こさず、品行方正で成績の良い人でなければ任せてもらえないと言われています。
拘置所には死刑囚も収容されている
刑事事件の裁判で死刑を宣告され、刑が確定した死刑囚は、刑務所ではなく拘置所に収容されています。
この事実は一般的にはあまり知られていませんが、凶悪事件が相次いだ際に報道で目にした人はいるかもしれません。
死刑囚は刑の執行が行われるまでは未決囚
日本の刑事事件の刑罰では最も重い刑である死刑を宣告されていた人が、刑務所には収監されずに拘置所に収容されているのには、明確な理由があります。
死刑というのは生命刑で、受刑者の生命を奪うときが刑の執行という認識があります。つまり、刑を執行される前の死刑囚は、まだ未決囚だという扱いになるのです。
刑務所は与えられた刑罰を執行する刑事施設であるため、死刑囚は使用できないという考え方です。死刑を執行する刑場は特定の拘置所に設置されており、実際に刑の執行が行われています。
拘置所に面会に行くには?
以上のように、拘置所には捜査機関などに身柄を拘束されるすべての人々が収容される場所となります。
拘置所には逮捕されたばかりの被疑者から、裁判を終えて死刑判決を受けた死刑囚まで、およそ刑事手続きを行う上で考えられる全種類の人がいることになります。そのため、面会に行く相手が被疑者なのか、受刑者なのか、死刑囚なのかでルールが違い、また施設によっても差があるようです。
事前に法務省のホームページ(http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse16-03.html)などで住所と電話番号を確認し、誰が面会に行けるのか、どのような手続きが必要なのかを確認した方が良いでしょう。
なお、面会の予約はできないため、遠方の拘置所を訪れる場合は注意が必要です。
弁護士に依頼すると面会もスムーズ
面会時間は基本的に30分程度となり、面会室の混み具合によって左右されることがあるようです。
また面会者は1度に3名までとされ、面会中の会話は刑務官が記録し、事件に関する詳しい情報の会話は認められず、証拠隠滅のおそれがあるとして刑務官によって面会が中断あるいは打ち切られる場合があります。
面会に行きたい旨を弁護士に依頼し、いつどこに行けば良いのか、また話す内容について注意することがないかを確認しておけば、スムーズに進むことが期待されます。刑事事件に強く経験を積んだ弁護士ならば、的確なアドバイスをくれることでしょう。
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