被疑者はどういう態度でいるべき?~重要なのは意見を変えないこと~

真剣な瞳の男性

逮捕後、いきなり非日常が始まる

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまう可能性は誰にでもあります。実際に罪を犯していて、もしかしたら逮捕されるかもしれないと覚悟を決めている場合はまだしも、中にはまったく予期していない行動が罪に問われたり、あるいはまったく身に覚えのない罪で逮捕されたりすることもあるのです。

刑事事件の被疑者として警察が逮捕状を請求し、裁判所が交付した後、ある日の早朝にいきなり数名の捜査員が自宅を訪れ、逮捕状を見せられて手錠を掛けられて腰縄を打たれるのです。警察施設に連行され、何の説明もなく刑事事件の手続きが進められ、取調室で警察の捜査官から厳しい取調べを受けるといった経験をすることになります。まるでテレビドラマか映画のような非日常と言える出来事の連続に、誰しもパニックとなり思考停止してしまうことでしょう。

一連の刑事事件の手続きについてある程度知識を持っている人であれば、身柄の拘束がどのくらい続くのかという事は理解できますので、それを受け入れる覚悟があれば、冷静に対処できるかもしれません。しかしほとんどの人は刑事事件の手続きなど虚構の世界のことで、いつまで自分が留置場に入れられているのか、取調べはいつまで続くのか、そしてつい昨日まで何事もなく送っていた社会生活はどうなるのか、まったく分からないことだらけでしょう。

万が一、刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった場合の対処方法と持つべき心がまえについて、以下で説明することくらいは、一般的な知識として最低限身に着けておきたいものです。

逮捕された場合、取調べは何日間続くのか?

逮捕されて身柄を拘束されてしまった場合、最も不安になるのは自分が有罪になるのかどうか、あるいは実刑判決を受けてしまうのかどうかといったことではなく、留置場での取調べがいつまで続くのか、ということでしょう。

社会人として普通に仕事をしていた人ならば、いきなり自分が何の連絡もできずに社会から隔離されてしまうのは耐え難い苦痛となります。その場合でも、逮捕や勾留にはきちんと期限が定められていることを知っていれば、ある程度は落ち着いて対応ができるのではないでしょうか。

警察が被疑者を逮捕するということは、人の自由を奪うことですから、法令によって明確にその期限が定められていて、よほどのことがない限り、その期限が過ぎると被疑者は釈放されなければならないのです。その期限は、例外はありますがほとんどのケースで警察と検察とで合わせて合計23日間となります。

まず逮捕状を取り逮捕を執行した警察の拘束期限は最大2日間(48時間)で、この間に証拠などを揃えて検察に事件を引き渡す送検という手続きをします。検察に身柄を移された後、1日間(24時間)以内に検察は被疑者を起訴するかどうかを決定しなければならず、ここまでがいわゆる逮捕の有効期限と言われる3日間(72時間)となるのです。

本来ならばこの3日間で手続きを済ませてしまわなければならないのですが、たいていの場合は検察が裁判所に勾留請求を行い、原則として10日間、勾留延長によってさらに10日間の、最長20日間の勾留を受けることになってしまいます。

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、以上のように最長で23日間もの長期にわたる身柄の拘束を受け、事件についての取調べが行われることになります。

家族や友人・知人はどうすればいいのか?

刑事手続きにおける逮捕は、逃亡や証拠隠滅を防ぐために被疑者の自由を奪い、身柄を拘束する行為です。そのため、ただ被疑者を留置場などの刑事施設に入れておくだけではなく、刑事手続きを進めるために、連日事件の担当捜査官が被疑者を取調べるのです。

その人が被疑者として逮捕された事実を知っていれば対応が可能な場合もありますが、知らない場合はいきなりこつ然と姿を消した家族や友人・知人が心配になり、警察に捜索願を出して逮捕の事実を知るということもあるそうです。逮捕の事実を知り、身柄が拘束されている警察署に行っても、逮捕後すぐの2~3日間はたとえ家族であっても面会は許されず、その人がどういう状態であるのかも分かりません。

この際、唯一頼りになるのは、原則としていつでも被疑者と会うことができる弁護士です。被疑者自らが弁護士を依頼することもできますが、もし被疑者の家族や友人・知人が知っている弁護士がいれば、すぐに相談して対応方法のアドバイスを受けましょう。

刑事事件の手続きは時間との勝負となりますから、少しでも早く、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

主張は曲げず、態度や意見を変えないこと

被疑者になってしまった人には、大別して2つのパターンがあります。警察などの捜査機関が見込んだ通り、本当に逮捕容疑通りの罪を犯してしまった人と、まったくその犯罪とは関係のない人です。犯罪とは無関係の人が、罪がないのに逮捕されてしまい罰せられてしまうことは、冤罪と呼ばれる無実の罪です。

いずれの場合でも、刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、取調べなどの刑事手続きの中で大切になってくることは、「主張を曲げずにブレないこと」です。

自分が知る真実に基づいて供述すること

もし警察が考える容疑通りの罪を犯している場合、最初から素直に罪を認め、反省の気持ちを示すのも、後に科せられる処罰を軽くするために役立つことは間違いありません。つい出来心で、あるいはついカッとなって、事件を起こしてしまうことは、誰にでもあることです。しかしその罪を認めたとしても、捜査員が余罪を追求してくることがあります。

たとえば万引きで逮捕されてしまった場合、必ず聞かれるのは「他にもやっているだろう?」という質問です。本当に他にも犯した罪がある場合には、素直にその事実を認めて自白するのも選択肢のひとつとしてありますが、警察の追求をそのまま受け入れ続け、何でもかんでもやりましたと供述してしまうと、同じ所轄内で発生している他の窃盗事件の犯人に仕立て上げられてしまう可能性もあるのです。

警察は、その所轄内で起きている未解決事件を減らすことも業務のひとつで、業務遂行の流れとして被疑者と関係あるかないかは分からないけれども、余罪への関与を疑って取調べを行う可能性もあるのです。実際には事件当日のアリバイの有無など、起訴を行うために必要な裏取り捜査を行いますが、被疑者が犯行可能な状況だと見定められてしまうと、被疑者自身がやっていない事件の罪を問われる可能性もゼロではないのです。

被疑者自身に心当たりのある容疑で逮捕されたとしても、自分自身で確実に覚えている罪だけを認めることが重要で、捜査の中で言われるがまま自白してしまうと、事件を大きなものにしてしまうおそれがあります。不確実な記憶に基づいて証言してしまうと、それが後の裁判で不利に働いてしまうこともありますので、確実に自分の記憶にある、真実と考えることだけを供述するようにすべきです。

黙秘権を行使するのは本当に難しい

刑事事件の被疑者には、自分が言いたくないことは供述しなくてもよいという黙秘権が認められており、取調べの前には必ず捜査員から告知されることになっています。下手に口を開いて余計な罪を背負ったり、実際の罪よりも重い量刑を科せられる可能性があったりするのならば、いっそのこと何も言わない方がよいと考え、「一切の供述を拒否します」と宣言するのもひとつの方法です。

しかし、取調べを行う警察や検察の捜査員もプロですから、なかなか数日間にわたる取調べで何も言わないというのは難しいこととされています。しばらく黙秘を続け、ある日いきなり喋り出すのも、反省の念という意味では逆効果になり、捜査員の印象を悪くしかねません。

もし事件について何も話したくないというのであれば、弁護士に相談し、対応方法のアドバイスを受けることをお勧めします。弁護士という味方がいれば、黙秘権の行使もよりスムーズに進むでしょう。

やっていない罪は、絶対に認めないこと!

日本では、一般の方が思っている以上に冤罪事件が発生し、報道されて世間が知ることになるのはほんの一部です。最も顕著なのは痴漢冤罪で、加害者にその気がなくても被害者が痴漢されたと考えた時点で犯罪化してしまう可能性があるのです。

確かに最初から痴漢をするつもりで犯行を重ねる人も少なからず実在しますが、そうした本当の罪人たちでも逮捕されてすぐに発する言葉は「俺はやっていない」となりますので、痴漢事件の冤罪を主張するのは極めて困難と言えます。

本当に痴漢をしていた犯人は素直に罪を認めるべきですが、そうではない濡れ衣だった場合はどうすればいいでしょう?

「認めれば帰れる」に惑わされないこと

つい出来心からの犯罪として罪を認めて反省の意思を示せば、社会生活へすぐに復帰できるのは事実かもしれません。初犯であれば、そのまま冤罪であっても罪を被って略式手続きで刑事手続きを済ませれば、逮捕された当日か、遅くとも3日以内には日常生活へと戻れるのです。

しかしやってもいない罪で有罪となり、前科者としてその後の人生を過ごしていくのは想像以上に辛いもので、事あるごとに後悔の念にかられることでしょう。身に覚えのない冤罪は絶対に認めないと決心し、最初から一切罪を認めてはいけません。

警察の立場からすると、痴漢事件のような日常頻繁に起こりうる犯罪については、あまり大きな事件にはしたくないという考えもあり、被疑者には素直に罪を認めてもらい、略式起訴で済ませたいというのが本音かもしれません。

そのため被疑者が容疑事実を否認した場合、家族や会社への影響を説かれ、「罪を認めればすぐに釈放される」と示唆してくるなど、何かしらの形で懐柔や脅しとも言える取調べを受ける可能性もあります。

しかしここで一度でも罪を認めてしまえば、後に否認したとして、誰も信じてくれません。裁判にまで進んだとしても、裁判官の心証は悪くなるでしょう。被疑者にとって最も重要なのは、供述に一貫性を持たせてブレないことで、認めていた罪を途中で否認することと言われています。

刑事ドラマのようなことは起こらない

裁判所の法廷を舞台にしたドラマなどでは、公判でいきなり被告人が供述を翻して無罪を主張し、それが認められて無罪を勝ち取るなどといったパターンがありますが、実際の司法の世界において、自供した被疑者や被告人が、その後無罪を主張するのは無駄な行いと言えるのです。

むしろ度々供述を変えるような被疑者あるいは被告人の言うことは、信用できないという評価になってしまいます。本当は容疑をかけられている罪を犯していたのに、当初は否認していた被疑者が警察や検察の取調べによって本当のことを話し始めて自供することは普通にあることです。これは罪を認めることによって科せられる刑罰を怖れて、嘘をついていただけと判断されますが、逆に認めていた罪を否認し始めるのは、刑罰が怖くて嘘をつき始めたと解釈されるのです。

刑事事件の被疑者になってしまった場合、必要以上に不利な立場に追い込まれないために、絶対に真実を曲げてはいけないのです。しっかりと自分の意思を貫き、真実だけを主張していれば、刑事手続きの中で唯一の味方である弁護士が適切な対応方法を導き出してくれるでしょう。

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