「逮捕」から「勾留」と続く刑事事件手続き~それぞれに期限がある~

リミット

「逮捕」の一連の手続きを理解する

「逮捕」という言葉を聞くと、警察官に手錠をかけられることを指していると理解している人が多いと思われます。しかし「逮捕」とは、「通常逮捕」においては逮捕状を示されて警察などの捜査機関に身柄を拘束されてから、検察に送検されて起訴されるかどうかが決められるまでの一連の手続きを指すのです。

そしてそれぞれの手続きには、法令により期限が定められており、警察や検察はそのタイムリミットまでに次の手続きに進めなければならないという決まりがあります。

このことを理解しておくと、万が一刑事事件の被疑者として「逮捕」されてしまった場合、あと何時間でどこに移される、何が決められるなどと自分で判断できることになり、いつまで取調べが続くのか、いつになったら警察施設から出られるのか分からない、といった不安を取り除くことができます。

通常ならばこのタイムリミットについては警察や検察が説明してくれることはないので、自分で知識を身に着けておくか、弁護士に尋ねるしかないのです。

「逮捕」の手続きを、期限とともに整理して説明していきます。

「逮捕」とはどこからどこまで?

「逮捕」とは、通常ならば憲法で保障されている移動の自由を制限し、強制的に警察などの捜査機関が被疑者の身柄を拘束することです。憲法ではさまざまな人権が保障され、自分の意思でいつでもどこにでも出かける事ができると定められています。

ただし刑事事件を起こし、刑事罰のある法令に違反した者にまで自由を保障してしまうと、同種の罪を犯し続けたり、刑罰から逃れるために逃亡したり、あるいは犯罪の証拠を隠滅したりする可能性があるのです。

そのため、警察などの捜査機関は裁判所の裁判官に逮捕状の請求を行い、認められれば逮捕状が発行され、逮捕状を携えた警察官が被疑者の居所に行き、身柄を拘束するのです。そして警察は取調べを行って証拠書類を揃え、被疑者の身柄を検察に送検し、検察は送られてきた書類等を精査し取調べを行い、起訴に相当するかどうかを判断します。

ここで起訴されれば事件は裁判所の法廷に移り、起訴されなければ不起訴処分となりますが、ここまでの一連の手続きの流れが「逮捕」とされるものです。よって、手錠をかけられることだけが「逮捕」ではなく、たいていの場合は数日にわたる、警察施設に連行されて身柄を拘束される期間が「逮捕」だと言えるでしょう。

「逮捕」時に時刻を告げるのには意味がある

罪を犯した疑いのある者は、期限付きで捜査機関に自由を奪われることになります。「逮捕」の始まりは、警察など逮捕権のある者が被疑者に向かって逮捕状を突きつけ、「○○容疑で逮捕する!○○時○○分!」と逮捕の時間を告げた瞬間となります。

その時点から被疑者は自由を奪われて身柄を拘束され、「逮捕」の期間が始まるので、この時に時刻を告げることは非常に重要なのです。そして以下の説明するそれぞれの手続きを、法令で定められた期限内に行い、事件を送っていくという流れになります。

一方で、窃盗や痴漢など明らかな犯罪行為を目撃した場合、一般人による「逮捕」(私人による「現行犯逮捕」)が認められていますが、この場合も被疑者の身柄が確保された時点が逮捕の始まりとなりますが、警察官のように「逮捕」の時刻を告げるようなことはしないため、手続きにおいての期限に問題が生じる可能性があります。

「逮捕」のタイムリミットは48時間+24時間

「逮捕」の終わりという言葉は一般的には使われませんが、刑事事件の手続きにおける「逮捕」に期限が設けられていて、その期限が到来すると「逮捕」は終了するということは、知らない方がほとんどだと思われます。

「逮捕」にまつわる時間の制限として、48時間と24時間、合計72時間という期限があることを覚えておきましょう。

このリミットを過ぎたらすぐに釈放されるわけではありませんが、万が一刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった場合にこの期限を知っていれば、取調べがいつまでも続けられることはないと、期限が来たら次の手続きに移るのでひと息つけるなど、少しは心の余裕が生まれるかもしれません。

警察に与えられたリミットは48時間

前述の通り「逮捕」というのは、憲法で保障されている自由をあえて奪う強制処分です。そのため、警察や検察の都合で際限なくその自由を奪ってしまっては問題がありますので、「逮捕」による身柄拘束にはタイムリミットが設けられています。

このリミットは、下記の刑事訴訟法第203条1項に規定されている通り、48時間となります。

刑事訴訟法

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

この規定によると、司法警察員(警察)は被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に、犯罪を立証するに十分な書類や証拠とともに、検察官に送致(送検)しなければならないとされています。つまり、刑事事件の書類作成などの手続きに時間を要し、48時間のタイムリミットを超えてしまった場合、当該事件の捜査途中であっても被疑者を釈放しなければならないのです。

ドラマや映画でよく目にする、警察の取調室で担当捜査官の刑事が「素直に自白しないと、いつまでだって留置場に入れたままにしてやる!」というのは、完全な嘘で脅しなのです。「逮捕」時に宣告された「逮捕」時刻から48時間を過ぎても検察に送られなければ「不当逮捕だ。すぐに釈放しろ!」と留置場の中で暴れ出しても許さることになります。

もっとも、現在の警察がそんな初歩的なミスをする事はまずありえず、事前の捜査段階で十分な書類や証拠を準備してから「逮捕」に向かうため、取調べにおいてよほどのことが起こらない限り48時間を超えることは考えられません。逮捕された被疑者が容疑を否認していようが、完全黙秘をして調書を1本も作らせないという抵抗をしようが、検察へ事件を送ることは可能なのです。

検察のリミットはわずか24時間

「逮捕」の手続きにおけるタイムリミットは、警察とは別に検察にも設けられています。

下記の刑事訴訟法第205条に規定されているように、検察は送検から24時間以内に、起訴するのか不起訴で釈放するかを決めなければなりません。

刑事訴訟法

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取ったときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○3 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
○4 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

同条には、被疑者の身柄が警察あるいは検察に拘束されている合計時間が72時間を超えてはならないとも規定されており、その期限内に公訴の提起を行わない際には、被疑者を釈放しなければならないとも定められています。当該被疑者が罪を認めていて、特に複雑な事件でない限り、「逮捕」された被疑者は72時間以内に手続きを終え、起訴されることになるのです。

以上が「逮捕」における原則的な手続きですが、問題は検察に「勾留」請求という手段が残っていることです。

検察は送検されてきた事件に関して、より長時間の取調べが必要、あるいは追加の捜査を行わなければならないと判断した場合には、裁判所に「勾留」請求を行ってより長い期間にわたり容疑者を拘束しようとします。特に、被疑者が犯罪の事実を否認している場合は、必ずと言ってよいほど身柄拘束の期間は延びてしまいます。

何のために「逮捕」にタイムリミットが設定されているのだということになりますが、「勾留」請求をされてしまった場合には、弁護士と十分に相談したうえで対応策を決めた方が良いでしょう。

「逮捕」期限で釈放されない場合

「逮捕」には原則として警察で48時間、検察で24時間、合計72時間のタイムリミットがあるということは以上で説明した通りですが、この期限が過ぎても釈放されないケースが往々としてあります。それは検察が「勾留」という刑事手続きに進むからです。

刑事事件の手続きでは、特に被疑者が罪を認めていない場合において、多くの者が引き続き留置場や拘置所で身柄を拘束され続けてしまうのです。

「逮捕」の次は「勾留」

「逮捕」の効力は72時間で終わりますが、その次は「勾留」という身柄の拘束が続きます。刑事施設に閉じ込めて自由を奪う点で、被疑者としては受けていることは同じなのですが、検察は被疑者を「勾留」したい場合、「逮捕」とは別に裁判所の許可が必要となります。

そのため、同じ身柄拘束でも「逮捕」とは別の刑事手続きとなります。「勾留」の請求は被疑者が「逮捕」により拘束されている72時間以内に行われなければならず、その目的は被疑者の公判への出頭を確実にするためと、証拠隠滅の防止とされています。

裁判所が「勾留」を認めると10日間、やむをえない事情がある時にはさらに10日間、合計20日間の身柄拘束が行われることになってしまいます。

弁護士に相談し、早期の身柄解放を

以上のように、刑事事件の被疑者は「逮捕」の72時間、「勾留」の20日間を合わせて、最長で23日間の身柄拘束を受けてしまう可能性があります。捜査に時間がかかるとか、被疑者が罪を認めていないという理由だけで、これだけ拘束が長期にわたってしまうことはとうてい受け入れられることではありません。

逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、たとえ「逮捕」されたとしても、被疑者の身柄は解放されなければならないのです。弁護士に相談し、「準抗告」や「勾留理由開示の請求」、「勾留の取り消し請求」といった手段により、身柄の解放を求めましょう。

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