逮捕された刑事事件被疑者の連行先は?~警察署、留置場(留置所)などの施設~

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逮捕されたら、まず警察署に連行

テレビドラマや映画のシーンで、逮捕状を突きつけられて逮捕される場合、たいていはその場で手錠を打たれ、捜査員にパトカーに乗せられた次のシーンは、取調室で取調官に詰問されているということが多くあります。

フィクションでそこまで詳細に逮捕の場面を描く必要もないと思われますが、実際にはこの間にさまざまな手続きがあり、初めて逮捕されてしまった被疑者にとっては、この先に何が待っていて、どこまで連行されていくのか、不安でいっぱいではないかと思われます。

本項では、刑事事件の被疑者として逮捕された場合、どこに連行されてどういった手続きが待っているのかを説明します。逮捕状を持った捜査員が自宅を訪れ、そのまま逮捕された場合には、原則的には連行される先は警察署となります。

どこの警察署に連行されるのか?

被疑者が連行される先は、被疑者が居住する住所を管轄する警察署だとは限りません。原則として、その被疑事実の事件が発生した場所の警察署となり、捜査本部が置かれている場合は、そこに連行されるのです。

逮捕とは、刑事事件の被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、当人の身柄を強制的に拘束しておくことですが、ここは捕まえる側の事情で、収容する刑事施設が決まってくることになります。

被疑者自身が住んでいる住居の近くで起きた事件ならば、自宅に近い警察署に連行される可能性が高いと考えられますが、事件が他の場所で起こっていた場合には、必ずしも自宅近くの警察署とは限らないのです。

本人はともかく、被疑者の家族や友人・知人にとっては、どこで起きたのか分からない事件で逮捕されているのですから、どこに連行されていくのか不安になるでしょう。実は逮捕状に、まず収容される刑事施設が記載されているのですが、本人以外はそこまで確認する余裕はないと考えられます。

そういった場合は、逮捕に訪れた捜査員に聞くか、その余裕がなければ捜査員が引き上げたらすぐに最寄りの警察署を訪れるか連絡をするかして、逮捕された者の氏名などを伝えて連行先を教えてもらいましょう。

行き先が分かればすぐに面会に行きたいのは分かりますが、逮捕されてから最初の数日間は家族や友人であっても、面会は難しいのが現実です。いつでも面会する権利がある弁護士を通じて、聞きたいことや思いを伝えてもらうのが良いでしょう。

事件発生が遠方でも、そこまで連行される

被疑者が連行される警察署は、事件の起きた場所、あるいは捜査本部が置かれていれば、その警察署となりますから、逮捕された場所と事件の発生場所が離れていても、当然それらの警察署まで連行されることになります。

捜査本部とは、重要あるいは特異な事件が発生した際に、警察などが捜査能力を統合的に発揮させるため、警察本部や所轄の警察署に臨時に組織する機関を指します。捜査本部が置かれない事件においては、その事件を担当する捜査官が所属する警察署に連行されます。

例えば出張先や旅行先で起こした事件で逮捕される場合は、その先の警察署に連行されることになり、遠方であっても捜査本部のある警察署に飛行機や電車を使って連行されることになります。また事件を起こした場所から被疑者が逃亡している場合でも、潜伏先を警察が知ることになり、逮捕状を持って逮捕された場合には、その事件が発生した場所に連れ戻されるのです。

事件発生が複数、または特定できない場合は?

刑事事件が単独で、発生場所が1カ所であった場合は、その場所を管轄する、あるいは捜査本部が置かれている警察署に被疑者は連行されるわけですが、事件が複数回にわたり、違う場所で発生していた時はどうなるのでしょうか?

そして近年多発しているインターネットを利用した犯罪の場合は、被疑者の住居が犯罪の発生した場所とも言えず、また被害者は全国にわたっているケースが多いため、事件が発生した場所は特定できないのが普通です。

以上のような場合は、これもまた捕まえる側の都合で、逮捕後に連行される場所が変わってきます。

基本的には、担当捜査員がいる警察署に連行される

事件が複数個所で発生したもので、県境を越えるような場合は、捜査本部が置かれている場合はその警察署へ、設置されていない場合は担当捜査員がいる警察署へ連行されます。

かつては県境を越えた刑事事件の捜査は、各都道府県の警察の縄張り争いが激しく、捜査がスムーズに行われないといったこともありましたが、現在では捜査における協力体制が確立され、障壁はないとされています。

広域で発生した重要犯罪においては、広域重要事件の指定がなされ、社会的に影響の大きい凶悪犯罪に対しては、各地の警察が協力して捜査を行うことになっています。

インターネットを利用した犯罪は、警視庁への連行が多い

近年はインターネット犯罪が多発し、日本全国から被害届が出されて、警視庁の捜査官が事件を捜査したら、被疑者は九州にいたということも珍しくありません。このような場合、警視庁の捜査官は九州まで行って被疑者を逮捕し、被疑者は東京の警視庁まで連行されることになります。

現在では全国各地の警察にサイバー犯罪対策室のようなものが設けられていますので、捜査員が実際に逮捕状を取って逮捕に向かうのは、どこの警察署の捜査員かは分からなくなってきています。

留置場(留置所)など施設の都合で変わることも

刑事事件の被疑者が逮捕後に連行される先は、以上で説明したように捜査する側の都合で決められますが、警察施設の都合で変わることもあります。基本的には事件が発生した住所を管轄する、あるいは捜査員が所属する警察署に連行されるのですが、それ以外の警察署が連行先となることもあります。

それは、被疑者の身柄を拘束する刑事施設である留置場(留置所)の施設の問題があるからです。

さまざまな理由で、他の警察署に連行されることも

被疑者はまず警察署の留置場に入れられますが、すべての警察署が女性用や未成年用の収容スペースを持っていないのです。そのため、被疑者が女性や未成年者であった場合、事件の起きた場所から最も近い、それらの施設を持った警察署へと連行されます。

しかし一概に専用施設がある警察署に連行されるとも言えず、地方によっては性別の関係なく、少年でもすべて受け入れるという警察署もあると言われています。未成年の場合は一人部屋に収容し、他の部屋からは見えないようにアコーディオンカーテンでなど間仕切りをする仕様になっている留置場も実在するようです。

そして、被疑者として逮捕され警察署に連行された後、たまたま事件を担当している所轄署の留置場が満員だった場合も、そこから最も近い警察署へ連行されることもあります。

警察署にある留置場の収容人数は、たいてい20~30人程度で、東京都内では通常10名以上の被疑者や被告人が勾留されていると言われています。そこに週末酒場で喧嘩をしたり、薬物の不法所持で複数人の被疑者が連行されてきたりすると、あっという間に留置場は満員になってしまうのです。

事件の発生は事前に予測できるものではなく、十分な留置場の数を想定できないのが実情のようです。

複数犯の場合、基本的には別の警察署に連行される

事件が単独の被疑者によって起こされたものではなく、複数の者により行われた場合、それぞれ違う警察署に連行されます。留置場内で共犯者同士が口裏を合わせたりしないように、別々の警察署に分散して身柄を拘束するのです。

まったく自由がなく、監視の目も厳しい留置場内で口裏合わせなど可能なのかと思われる方もいるかもしれませんが、それは実は比較的簡単にできてしまいます。確かに留置場内は、常に看守を担当する警察官が目を光らせていますが、被疑者同士の会話は不可能ではないのです。拘置所や刑務所とは違い、留置場は意外と収容者同士の情報交換は楽だと言われています。

以上のような、事件を捜査し逮捕を行う警察署側の都合で、逮捕された後には事件の発生した所轄署ではなく、それに近い警察署、あるいは地方からはるばる警視庁まで連行されることもあるのです。

逮捕後の取調べにおいては、被疑者が所轄署に連行されて行うパターンと、捜査員が被疑者のいる警察署まで出かけるといったこともありますが、これはケース・バイ・ケースで、どちらの方法で取調べが行われるかは定められていません。

どのようにして警察署に連行されるのか?

最後に、通常逮捕が行われた際、どのようにして警察署まで連行されるのかを説明します。被疑者が居住する場所で逮捕された場合は、たいていは複数人の捜査員が訪れ、物々しい感じではありますが、連行されるのは覆面パトカーか警察のバンといった、目立たない車両が利用されます。

現行犯逮捕では赤色灯を灯したパトカーという場合がありますが、通常逮捕ではなるべく近隣の迷惑にならないように、また被疑者のプライバシーにも配慮した方法で連行されていくのです。捜査本部がある、あるいは担当する捜査員が所属する警察署が、被疑者の居所の遠方であった場合、自動車移動が難しい距離であれば、公共交通機関を使うのが一般的です。

九州で逮捕されて警視庁まで連行される場合、飛行機を使うことになりますが、万が一逮捕し損ねたりした場合も想定しているのか、座席を予約しておくことはありません。被疑者を逮捕した後、はじめて航空券を手配するようです。

航空会社には事情を説明し、被疑者と捜査員は一般のゲートを通らず、一般客が飛行機に搭乗する前に一番後ろの席に乗り込み、到着した後は、最後にこっそりと降りるわけです。このような場合には、48時間という警察の逮捕期限が問題になってきます。

そのため、被疑者の居所ではまず任意同行を求め、連行が終わって警察署に到着してから逮捕状を突きつけ逮捕を行い、そこから48時間の逮捕期間が始まるということになります。任意同行に応じないという方法もありますが、たいていの場合は捜索令状も携えて捜査員は乗り込んできますので、犯罪に身に覚えのある場合は、素直に応じるべきでしょう。

時間的には余裕があるわけですから、弁護士への依頼を手早く済ませておいた方が良いかもしれません。

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