身柄拘束からの解放を求める~起訴前の身柄解放で社会生活に復帰を!~
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この記事で分かること
刑事事件の被疑者となり勾留されてしまった場合、後の社会生活に及ぼすダメージは大きい。しかし弁護士に依頼することにより「勾留に対する準抗告」「勾留取り消し請求」「勾留の執行停止請求」など適切な手続きを行い、身柄解放を実現できる方法はある。
「身柄解放」とは?
刑事事件の被疑者となってしまった時、たいていの場合は、警察や検察により逮捕や勾留という形で自由を奪われます。
人の自由を奪うことは憲法違反になりますので、通常逮捕の場合に裁判所に認められた逮捕状が必要です。
逮捕状があると、逮捕に伴い許された拘束時間である、警察での48時間と検察での24時間、そして勾留請求が認められれば10日間、検察の勾留延長が認められればさらに10日間と、起訴までに実に23日間も被疑者の拘束が認められてしまうのです。
また、被疑者が上記の勾留期間中に起訴されてしまった場合、被疑者は被告人となり、その後の勾留期間は原則として2カ月です。
その後は判決が下るまで、1カ月ごとに更新されることになります。
勾留から身柄を解放するのが「身柄解放」
被疑者を起訴するための証拠を固め、起訴あるいは不起訴処分にするかという判断を、2日や3日でできるとは考えられません。
被疑者の身柄を拘束しない在宅捜査になった場合、送検から起訴を決定するまで数カ月を要することは珍しくない、といった実情もあります。被疑者に逃亡や証拠隠滅の可能性がなければ、被疑者は勾留されることなく解放されるべきなのです。
逮捕された被疑者は、警察の取調べを受け、検事調べを受け、勾留が決定されるまでの間でも、弁護士に相談する機会が与えられるとされています。しかし現実的には、なかなか連絡を取らせてもらえず、実際に罪を犯していようがいまいが、たった一人で国家権力と戦わなければならないのです。
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勾留が決定して初めて、当番弁護士にコンタクトができるといったケースも珍しくないようです。もちろんここで弁護士に相談しても良いのですが、被疑者の家族、友人や知人であれば、よほどの大罪を犯した被疑者でなければ、早期の社会復帰を望んでいるはずです。
刑事事件に強い弁護士に相談し、被疑者の助けになるよう積極的に動くことが望まれます。
「身柄解放」を実現するためには?
「勾留」の手続きに関しては、刑事訴訟法第60条に、以下の通り定められています。
刑事訴訟法
第60条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
要するに、被疑者の住所が明らかであり、証拠を隠滅する理由がなく、逃亡すると疑われなければ、「身柄解放」は可能だと考えられるのです。
被疑者または被告人が自ら「身柄解放」の手続きを行うことも可能ですが、勾留中に多くの書類を揃えるといった手続きをするのは現実的ではありません。
刑事事件に強い弁護士の力を借り、「身柄解放」を勝ち取りましょう。
「身柄解放」手続きとは?
「身柄解放」の手続きには、そのタイミングによっていくつかの方法があります。
身柄が拘束されている被疑者あるいは被告人の身柄を解放するための手続きは、主に以下の通りです。
- 勾留理由開示請求
- 勾留に対する準抗告
- 勾留取り消し請求
- 勾留の執行停止請求
- 保釈請求
これらの請求や手続きは、被疑者あるいは被告人自身で行うことも可能ですが、書式やタイミングなどが重要となり、法律に詳しくない一般人では難しいと思われます。
手続きは、刑事事件に強い弁護士に任せるべきでしょう。
起訴前に可能な「身柄解放」の手続き
本項では、被疑者が被告人となる前、いわゆる起訴前に可能な「身柄解放」の手続きを説明します。
勾留理由開示請求
「勾留理由開示請求」とは、裁判所に対して行う手続きで、文字通り被疑者を勾留した理由を公に問うものになります。
この「勾留理由開示請求」を行うと、裁判所は被疑者を法廷に呼び、勾留理由を伝えることになり、多くの場合に裁判官は「被疑者には罪を犯した疑いがあり、逃亡や証拠隠滅をする恐れがある」というような、勾留の理由を述べます。
「勾留理由開示請求」を行ったことによって、裁判所が勾留を取り消して釈放になるという事は滅多にありません。しかしこの手続きを踏んでおくと、法廷で被疑者や弁護人が意見を述べる機会が与えられるのです。
弁護人はともかく、被疑者自身は後に起訴されて被告人になった場合、自分の意見を言えるのは裁判の最後に1回与えられるだけです。
また「勾留理由開示請求」は、通常の公判と同じように、きちんと記録に残され、傍聴も可能となります。
無理な捜査や、証拠の捏造が疑われる警察や検察に対するけん制としても、後々有効となる布石になるでしょう。
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勾留に対する準抗告
「勾留に対する準抗告」は、勾留中に行う「身柄解放」の手続きで、最も有効とされているものです。
「準抗告」というのは、裁判所の決定に対する取り消しや変更を求めることで、勾留以外にも色々なケースに使われます。
そのため、勾留の決定を不服とした場合に、「勾留に対する準抗告」となるわけです。
きちんとした仕事に就いている社会人や、普通に学校に通っている学生が、罪を犯した疑いをかけられただけで、職場や学校を放棄して逃亡することは考えにくいでしょう。
しかし日本の刑事事件の手続きは、被疑者が逃亡し、証拠を隠滅することを前提にした流れとなっているのが現実です。
被疑者の弁護士が「被疑者が逃亡や証拠隠滅などをすることはない」という主張を軸に、勾留による身柄拘束がいかに不当な行為かという主張を書面で行います。
ただし「勾留に対する準抗告」は、「勾留理由開示請求」に比べれば「身柄解放」の実現率が高いというだけで、「準抗告」をすれば必ず短期間で身柄が解放されるとは限りません。
「準抗告」によって勾留の期限前に釈放されたとすれば、その手続きを行った弁護士は相当腕の利きだと言えるでしょう。
勾留を期日前に終わらせる手続き
「勾留に対する準抗告」以外で、実質的に勾留を期限以前に終わらせる手続きは「勾留取り消し請求」と「勾留の執行停止請求」です。
「勾留取り消し請求」は「準抗告」とよく似ていますが、手続きをするタイミングが違います。
勾留取り消し請求
「勾留取り消し請求」は当該刑事事件の捜査が進み、もはや被疑者が証拠隠滅したり逃亡したりしても意味はないので、身柄を解放して欲しいという主旨の訴えをする手続きです。
しかしこちらも「準抗告」と同様に、成功率はそれほど高くありません。
事件捜査の終盤に行う手続きとなりますので、申請中に勾留期限となってしまうことがあるのです。
勾留の執行停止請求
「勾留の執行停止請求」は、特殊なケースになります。
被疑者本人が入院しなければならないほどの病気や怪我をしている場合や、被疑者の家族が亡くなった場合など、勾留を一時的に停止してもらう措置です。
近年、警察は留置場において身柄拘束中の被疑者の健康には結構気を遣っています。
一方で、留置場内で容体が悪化したり、怪我したりした場合には、弁護士よりも早く対応しますので、被疑者が健康を損なったことで弁護士がこの理由で「勾留の執行停止請求」をすることはないと考えられます。
ただし2016年に、娘の結婚式に出席するため、勾留中の被疑者に対して勾留の執行停止が認められたケースがありました。
冠婚葬祭に際して勾留の執行停止請求が認められることは相当珍しく、あくまで執行停止となるため行事が済めば再び身柄は拘束されてしまいます。
とはいえ、こうした一時的な停止であっても、「身柄解放」を得る努力を怠らない弁護士もいるということを覚えておきましょう。
「身柄解放」が重要な理由
留置場などの刑事施設に閉じ込められてしまった被疑者、あるいは被告人が被る社会的なダメージは甚大です。
世の中から隔離され、世間の人は「あの人は犯罪者」という目で見るでしょう。
しかし無実の罪で逮捕されてしまった時には当然ですが、罪を犯してしまっても自身の行動を悔い改め、被害者に対する謝罪意識を持っていれば、よほどの大きな罪を犯した場合でない限り、早期に社会復帰して、それまでの人生を取り戻したいと思うのが普通です。
逮捕による最長で23日間の勾留を受けてしまうと、いきなり長期にわたり社会から消えてしまい、周囲の人からは犯罪者としか思われなくなり、社会復帰が非常に難しくなります。
弁護士は、まず「身柄解放」を目指す
弁護士は、まず逮捕されて勾留を受けている被疑者あるいは被告人の「身柄解放」を目指します。
刑事事件の弁護活動といえば、裁判での弁護や被害者との示談が重要だと思われがちです。
しかしそれらと同じくらい重要な仕事は、警察などの捜査機関によって身柄の自由を奪われてしまった被疑者あるいは被告人の自由を取り戻すことです。
可能であれば逮捕されると感付いた時に、あるいは逮捕直後に弁護士に手続きを依頼することをお勧めします。
有能な弁護士は、弁護人として契約した被疑者あるいは被告人の「身柄解放」を重要な仕事としてとらえ、事件の内容やタイミングを見計らって、有効な法的手続きをしてくれるでしょう。
勾留が取り消されるケースが増えている
上記の冠婚葬祭による勾留の一時停止もそうですが、人権派弁護士たちの活動を受け、近年、「勾留に対する準抗告」が認められるケースが増えてきています。
裁判所が決定した勾留が取り消されて「身柄解放」となる被疑者あるいは被告人が、少しずつ見られるようになってきたとも言われています。
また勾留請求を却下する裁判官もいます。
逮捕され、勾留され、留置場にい続けなければいけないと思うのは間違いです。
積極的に弁護士を利用し、「身柄解放」を勝ち取りましょう。
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