留置場(留置所)での生活に制限が多いのはなぜ?~徹底される自殺防止対策~

自殺

逮捕されて留置場(留置所)に入るまで

刑事事件の被疑者として逮捕されると、まず自由に移動したり、外部への連絡をしたりすることが禁止されます。携帯電話やスマートフォンは、たいていの場合は証拠品として押収されてしまい、誰とも連絡が取れなくなり、これらの通信機器は処分が決まって釈放されるまで警察が預かることになるのです。

原則として事件が発生した所轄の警察署へと連行され、まず写真撮影と指紋採取が行われます。そしてDNA鑑定や強制採尿などの科学的捜査を要求されることがありますが、特別な令状が必要となるため、それがない場合に応じるかどうかは、後に弁護士と相談してからにするのがお勧めです。

しかし自分にまったく身に覚えのない罪で逮捕された場合、身の潔白を証明するためにすべての検査に応じるのも有効な手段となります。

最初の取調べが行われる

状況によって順序が変わる場合がありますが、基本的には写真撮影と指紋採取が終わった後に最初の取調べが行われます。最初に警察がつかんでいる刑事事件の容疑内容が明かされることになりますが、認めるにしても認めないにしても、自分の記憶だけを頼りに応じることが肝心です。

曖昧な返事をしたり、覚えていないことをやったと認めてしまったりしたら、供述調書にその内容が記され、後の裁判に重要な証拠として提出されてしまいます。すべての供述を拒否することも可能ですが、できることならば弁護士に相談してから取調べに応じるという姿勢を示すことをお勧めします。

留置場の居室へ収容される

最初の取調べが終了した後、警察署に設置されている留置場の居室へ収容されます。そして短くても2日間、長ければ23日間は留置場で過ごすことになってしまうのです。

別の真犯人が出てきたり、弁護士の活躍で被害者との示談を早急に取り付けて被害届を取り下げたりしない場合は、たいていのケースでこの期限いっぱいは留置場生活が続きます。

先の見えない、自分がどういう状況で何を調べられているのかもはっきりしない生活が始まってしまいますが、唯一頼りになる弁護士にアドバイスを求め、自身の先行きを知り対応した方が良いでしょう。

留置場(留置所)での生活環境は?

留置場は施設によって差がありますが、原則として成人男性、少年、女性はそれぞれ居室が完全に分けられています。少年や女性は警察署によれば対応できる施設がないため、事件が発生した最寄りの警察から、きちんと施設が備えられている所へと移送されることになります。

留置場で収容者が生活する部屋は居室と呼ばれ、基本的には雑居と言われる定員6名ほどの部屋となります。社会的に影響の大きい事件の場合や、有名人であった場合には独居と呼ばれる定員1名の居室に入れられることがありますが、ごく少数と考えて良いでしょう。

古い留置場の施設では、居室が円形に並べられ真ん中に監視台があるような配置になっていますが、新しい施設では収容者のお互いの顔が見られないように、ホテルの部屋のように通路を挟んで居室が並び、座った状態では向かい側が見えないようにアクリル板が取り付けられている所もあります。

プライバシーに配慮した形で、時代の変化とともに留置場の施設も近代化が実現していますが、決して快適とは言えないレベルの居室です。

日課に従い規則正しい生活

新たに留置場に収容された人は、日課の時間割を告知されます。施設によって時間帯は違いますが、朝7:00に起床し、8:00に朝食、8:30から運動、12:00から昼食、そして18:00に夕食、21:00には就寝といった形です。

入浴も可能ですが、夏場でも週に2~3回、冬場では週に1度といった留置場があります。そのため、収容者が差し入れて欲しい最優先のものは衣類だとも言われています。

着替えを持っていない場合はもちろん留置場で配給されるのですが、新品ということはほとんどなく、たいていは以前収容されていた人が残していったもので、洗濯はしてあるものの気持ちの良いものではないでしょう。神経質な人には、それだけで辛い生活になります。

被疑者や被告人の家族や友人・知人は、面会で差し入れをすることができ、衣類が最も喜ばれるのですが、私服を着ることができるとはいえ、そこには次に述べるような厳しい制限がありますので注意しましょう。

特筆されるのは衣類制限の厳しさ

留置場に収容されているのは、主に警察が刑事事件の犯人であるという容疑を掛けている被疑者と、検事が起訴して裁判を控える被告人です。しかし現行犯として逮捕されていても、犯行を自供して罪を認めていても、また容疑を否認していても、刑事手続き上は推定無罪の人です。

つまり被疑者や被告人の段階では、有罪判決が下された受刑者ではないため、留置場内では私服で過ごすことが可能なのですが、留置場内で着用することができる衣類には厳しい制限があります。都道府県や施設によって規則は違いますが、以下に一例を紹介します。

ひもやボタンが付いた衣類は禁止!

留置場で着用する衣類では、まずネクタイやベルト、靴紐など、紐状のものはすべて取り外さなければいけません。加えて、紐状の物が付いた衣類、例えば紐付きのパーカーや、ファスナーの付いたズボンも着用禁止とされています。

それらの条件をクリアする衣類は、必然的にTシャツやトレーナー、あるいは紐の付いていないジャージやスウェットの上下というものに限られてしまいます。留置場での場面が描かれたテレビや映画では、よくスウェットの上下で被疑者が登場しますが、まさにその通りなのです。

これらの衣類が禁止されている理由は、紐の付いた衣類を許すと、紐の部分を使って首を吊り自殺を図るおそれがあるから、ということのようです。ボタンも同じく、過去にボタンを飲み込んで自殺を図った者がいたからと言われています。

ファスナーに関しては、ファスナーで自殺を図った者がいたかどうかはわかりませんが、金属製のファスナーをノコギリ代わりに鉄格子の破壊を試みた者が過去にいたという噂が囁かれています。

このように、留置場内では基本的に私服で過ごせますが、服を差入れる場合も差入れてもらう場合にも、以上のチェックに引っ掛からない服を選ばなくてはいけません。

そもそも、紐を掛ける場所がない

映画やドラマで描かれる留置場は、10㎝間隔ほどの鉄格子が張られた部屋で、鉄格子の隙間から登場人物が顔を覗かせていることがあります。しかし本物の留置場では、鉄格子には目の細かい金網がビッシリと貼られているのです。

金網の目はボールペン1本がようやく差し込める程度の大きさで、映画やドラマでここまでリアルに再現したら俳優の顔がすごく見辛くなってしまうほどです。この金網は自殺防止のためと言われています。

紐の付いた衣類が全面的に禁止されている他に、タオルハンカチよりも大きい通常の長さのタオルも居室内への持込ができません。それでも着ている衣類を破り、シャツやズボンを首に巻きつける事は可能ですが、留置場の居室内での首吊り自殺を防ぐ対策として、紐状の布を引っ掛けることができる場所をなくしてしまい、天井も真っ平らです。

鉄格子に金網が貼られているのはそのせいで、細い穴に通すことができる布では首を吊るために体重を掛けただけで切れてしまうでしょう。居室内にはドアのついたトイレがある所もありますが、ドアの形は四角ではなく上の部分が斜めになっていて、ドアの天辺に何も掛けられないようになっています。

個室のトイレでも、便座に腰掛けるとちょうど上半身が丸見えになる高さにアクリル製の窓がついていて、トイレにこもって自殺を試みたり、悪事を働いたりすることを防ぐ仕組みになっています。

自殺防止が必要な理由~家族などがケアを~

規律正しい生活や厳しい衣類制限の他にも、留置場の管理官が定期的に留置場内を隅々まで巡回し、居室内で被疑者や被告人の様子を監視しています。

刑事施設の中でも、自殺防止に関してここまで徹底されている場所はないと思われるほどです。しかしここまで徹底した自殺防止対策を施しても、自殺を図る人は後を絶ちません。

罪の意識や絶望感が自殺へと追い込む

本当に逮捕されて留置場に収容される立場になってみないとその気持ちを推し量ることはできないのですが、罪を犯してしまった贖罪の念に加え、逮捕された後の人生に対する絶望感にさいなまれているのではないかとも考えられます。

留置場に収容された人の多くは、朝起きて今日も会社や学校に行き、普段通りの生活を送るはずだったものが、突然警察に逮捕され身柄を拘束されてしまっているわけです。そして写真を撮られ、指紋を採られ、取調べを受けるなど、あまりに非日常的な出来事の連続から始まります。

日本人の刑事事件に関する考え方は中世ヨーロッパ並みと言われ、逮捕されたら即犯罪者という認識が今でも根強く残っているのは確かです。そのような犯罪者となってしまった自分に思い悩み、まだ始まったばかりで先の見えない刑事手続きが続くことになると、発作的に自殺を図ってしまう人が多いのでしょう。

弁護士に相談し、できる限りの支援を

つい出来心で、あるいはカッとなって自分を抑えられず犯罪に手を染めてしまうことは、誰にでも起こる可能性があることです。

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった人の家族や友人・知人はその点を理解して、誰ひとり味方になってくれないと考えてしまう留置場で身柄の拘束を受けている人を、なるべく支援してあげることを考えましょう。しかしやみくもに面会したいと警察を訪れても、留置場内で使用できない差し入れを持っていっても無駄になってしまいます。

刑事事件に詳しい弁護士に相談し、いまその人はどういう状況にあるのかを知り、何をしてあげるのが最も効果的なのか、留置場の生活では何が必要なのかを知り、支援してあげることをお勧めします。

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