労役とは?労役場における労役の日当はいくらか?
- 2024年7月16日
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労役場における「労役場留置」とは?
「労役場留置」とは、罰金や科料の判決が確定して相当金額の納付が命じられたものの、完納できない人に対して、裁判において定められた日当の金額が、罰金や科料の金額に達するまでの間、労役場に留置されて所定の作業を行うものです。
労役場とは、刑務所など刑事施設内において作業に従事させられる施設で、懲役刑を言い渡された受刑者が労役に服する場所と同様です。
「労役」の法的位置付け
「労役場留置」は、刑法第18条に規定されています。
(労役場留置)
第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
2 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。
条文の通り、罰金を完納できない人は1日以上2年以下にわたり、労役場に留置されて労役に服することになります。労働を命じられるのは刑務所の施設ですが、懲役刑の受刑者とは別の仕事場となりますので、一緒に働くということはないとされています。
「労役場留置」の日当と期間は罰金刑の判決が下される時に言い渡されますが、多くの場合は1日の留置は5,000円相当と換算されており、罰金が20万円の場合は40日間の「労役」が必要となります。
財産刑が自由刑に?
「労役場留置」が行われると、財産刑であった量刑が身体拘束を伴う自由刑に変わってしまいます。労役場に働きに行って罰金を分割で払うという感覚ではなく、労役場に留置されるということは、懲役刑の受刑者に関する規定が準用され、刑事施設における規則を遵守し秩序を守らなくてはなりません。
その点では罰金刑を、代わりに懲役刑で償うという意味合いの方が強いと言えるでしょう。罰金を納付するということで社会生活に戻ったものの、支払いが滞り、罰金を徴収する検察庁が資産差し押さえなどを行ったにもかかわらず完納できない場合に、「労役場留置」が命じられるのです。
「労役場留置」日当の計算方法は?
「労役場留置」の日当は、裁判において言い渡される罰金額で決まってきます。罰金を納付できない場合、労役場で労務に服して罰金を返済するような形になりますが、この場合は罰金の総額を日当で計算し、労役期間が言い渡されるのが通例です。多くの場合は、1日あたり5,000円で計算され、罰金が20万円だった場合は40日間の労役となります。
刑事事件で逮捕され、その後検察に起訴されて裁判で有罪になった場合、判決を読み上げる裁判官は、例えば「主文、被告人を罰金30万円に処する。罰金を完納する事が困難な場合は、金5,000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する」と、労役に関して説明を付け加えるのです。
ただこの日当5,000円はあくまでも一般的な相場で、日当金額は事件ごとに裁判官が決定するため、後述しますが罰金が多額な場合には少しおかしなことになってしまいます。
「労役場留置」の限度は2年間
刑事事件裁判の判決において、裁判所は有罪または無罪の判断のほか、有罪になった被告人に対する刑罰を言い渡しますが、罰金刑の場合は金額に加えて、労役をする場合の日当も決めます。この場合に問題になってくるのは、上記の刑法第18条に定められた労役期間の上限です。
「労役場留置」の期限は、科料の場合は1日以上30日以下、罰金の場合は1日以上2年以下、科料と罰金が併科された場合は1日以上3年以下となっています。この期限内に罰金を完済できるように調整して、裁判官が日当を決定しているわけですが、罰金が高額になってきた場合には、一般的には理解できない異常な状態になります。
日当が10万円になるケースも!?
比較的軽微な刑事事件において言い渡される罰金刑は数十万円程度であることが多く、裁判官が決める「労役場留置」の日当も5,000円としても問題はありません。例えば罰金が30万円だった場合は、60日間の労役となります。しかしこの日当5,000円は、法令で定められた日当ではないのです。
たとえば脱税で逮捕された場合、その脱税額が500万円を超えると、脱税額と同額の罰金が申し渡されるケースがあります。すると500万円の罰金を日当5,000円の労役で完済しようとすると、1,000日も必要となり、労役の留置上限を超えてしまいます。このような巨額な脱税をしていれば、差し押さえるべき資産もあるはずだと考えますが、しかし実際には資産がある人は借金があったりして、本当に罰金が完納できないこともあるのです。
以上のようなケースを想定し、「労役場留置」の日当は、留置期間の上限に達する前に完済できるように計算して裁判官が決定しています。実際には労役期間を上限一杯まで使い切ることはありませんが、裁判官の裁量によっては日当10万円などという判決も十分にあり得るのです。
ただし、そのような場合でも日当10万円に相当する過酷な労働を強いられるわけではなく、労役場で行う労役は日当に関係なく、他の作業者と一緒に軽作業に服するだけなのです。その時たまたま労役場が受注していた仕事が振り分けられるだけで、日当に見合った仕事をさせられるという事はありません。
罰金の代わりに、「労役場留置」を望む?
以上のような奇妙な日当計算のせいではないと思いますが、近年は罰金を支払わないで、代わりに労役を希望する人が急増しているようです。その理由は、犯罪の厳罰化で罰金の金額が増加傾向にあること、そして労働に関する社会情勢の変化があると考えられます。
道路交通法違反の刑罰は度重なる改正ごとに厳しくなってきており、過失運転致死傷罪では罰金の最高金額が100万円と非常に高額となっています。飲酒運転で事故を起こして被害者が亡くなってしまうなど、よほど悪質な罪でない限り、いきなり初犯で罰金100万円を申し渡されるケースは少ないと考えられますが、それでも数十万円程度の罰金を科せられる可能性はあるのです。交通事故は予測できるものではなく、いきなり多額の罰金を科せられ、家計が苦しく預貯金が少ない人にとってみれば、罰金の金額を工面するよりも労役で働いて償うという選択肢もありなのかもしれません。
また最近は働き方の多様化が進み、派遣労働やフリーで働いている場合には、あながち罰金を「労役場留置」で支払うのは悪いものではないでしょう。一定の期間、労役場で身柄が拘束されて、一般社会との繋がりが断たれても困らない人にとっては、「労役場留置」が選択肢となっていることも事実でしょう。
非常に厳しい懲役刑を望む?
「労役場留置」にて科される作業は楽でも、刑務所生活となり待遇は懲役刑と同じです。また、作業内容と日当が一致しないという点をメリットと捉える向きもあるでしょう。労役で行う仕事は、基本的に留置されている部屋から出なくても済むような軽作業ばかりで、労役に服する人が拘置所や刑務所に収容されている被告人や受刑者たちとは極力接触しないようにも配慮されています。
しかし労役の期間中は、自身が留置されている部屋にずっとカンヅメ状態で、一応刑務所と同じように、運動という名目で外に出る時間もあるようですが、その1日の行動パターンは懲役刑と同じなのです。
「労役場留置」からは脱するべき
刑事事件を起こして逮捕されて起訴されてしまったものの、せっかく罰金刑で済んだのですから、たとえ一時期罰金が払えなくて「労役場留置」の処分を受けてしまったとしても、1日でも早く一般社会に戻って働いて、あらゆる方策を巡らせて罰金を納付するようにした方が、後の人生に良い方向へと作用するのではないでしょうか。
「労役場留置」は、罰金を完納すれば普通の生活へと戻れます。労役に従事した分は清算され、残っている罰金額を支払えば労役から解放されます。家族や友人・知人に借金をするのは心苦しいかもしれませんが、裁判の際にお世話になった弁護士に相談するなどして、次善策のアドバイスをもらうことをお勧めします。
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