起訴後でも身柄解放を実現し社会に戻る方法がある~保釈制度とは?~

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逮捕後の勾留から起訴後の勾留へ

刑事事件の被疑者として逮捕され、検察が勾留請求を行い裁判所が認めてしまうと、真犯人が現れるなどの特殊なケースを除いて、起訴前に身柄の拘束が解かれることは、現実的にはほとんどありません。

そして逮捕を含めた最長23日間の勾留期間が過ぎて被疑者が起訴されてしまうと、次は起訴後勾留として、裁判の第一審が開かれるまで身柄が拘束されてしまうのが一般的です。

起訴されてしまうと刑事事件の被疑者は被告人と呼び名が変わりますが、被告人の立場からすると、罪を償う意思はありながらも無罪判決や執行猶予付き判決を得て普通の生活に戻るため、一日でも早く身柄の解放を実現して社会に戻りたいものです。

勾留を解くためのいくつかの方法

刑事事件の被告人(被疑者)が逮捕され勾留が始まってしまうと、何もしないとたいていはそれぞれの勾留期限が満期になり、裁判の判決が下されるまで自宅に戻ることができないのが現状です。

最悪の場合は、有罪判決で出された懲役刑に服した後に釈放されるまで一般社会に戻れないということになります。しかし制度上では、刑事訴訟法などの法令に定められたルールにおいて、勾留を取り消して身柄の解放を実現させ、自宅に戻る方法があることを知っておきましょう。

その方法は、被告人(被疑者)が置かれている立場や状況によって選択しなければいけませんが、起訴前の時点で代表的なものは「勾留理由開示請求」、「勾留決定に関する準抗告」、「勾留取消請求」の3つで、起訴後は「保釈請求」となります。

本項では、起訴後の釈放を実現する「保釈請求」について詳しく説明します。

「保釈」とは?

刑事事件の被疑者が起訴されて被告人になっても、在宅捜査ではなく逮捕されて勾留を受け、身柄の拘束をされている場合は、原則として逃亡や証拠隠滅のおそれ、があると判断されているのが普通です。

従って、起訴されたとしても今度は起訴後勾留という名目で、引き続き身柄の拘束が行われてしまいます。そして通常は、起訴から第一回の公判が始まるまでは約2カ月かかりますから、その間はずっと拘置所(留置場)で生活を送らなければならないのです。

被告人が罪状を全面的に認め、量刑を待つだけの裁判であっても、即決裁判が認められる場合を除いては、公判は最低でも2回は開廷されますので、裁判が始まっても早くて1~2週間、通常ならば1カ月はかかります。

そして罪状を一部でも否認し、法廷において審理が行われ原告側と争われる裁判になると、判決が下されるまで数カ月~1年以上かかってしまいます。この間ずっと拘置所にいて身柄を拘束され続けてしまうと、たとえ被告人が望む判決になったとしても、社会復帰が難しくなり、不利益を被ってしまうことになります。

近代司法の思想では、裁判で判決が確定するまで被告人(被疑者)は推定無罪ですから、身柄を長期にわたり拘束しておくのは人権的に問題があります。そのため、保釈金の納付などを条件として、勾留の効力は残ったままですがその執行を停止し、被告人の身柄を解く「保釈制度」が設けられているのです。

「保釈」が認められればいったんは一般社会には戻れますが、事件が終わったわけではありません。しかし、留置場や拘置所で身柄を拘束されたまま裁判の手続きを進めるのとでは、その立場は雲泥の差です。

「保釈」は三種類に分かれる

簡単に言えば、「保釈」とは起訴後に保釈金を納付して身柄の解放を実現するものですが、刑事訴訟法の第89条~91条にそれら要件が定められている条文に基づき、三種類に分かれます。

刑事訴訟法

第八十九条 保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

第89条に定められている「釈放」は「必要的保釈」と呼ばれ、起訴された際に保釈が不許可となる事由がない時に認められるものです。

第90条に定められているものは「職権保釈」と呼ばれ、裁判所が適当と認める時に行われる「釈放」です。

第91条の規定は、不当に長い拘禁と勾留を取り消すものです。

この他にも、被告人は誰でも「保釈」の申請ができるため、要件が満たされる状況で行うものを「権利保釈」、被告人が要件を満たしていない場合でも、裁判所の裁量で認めることを「裁量保釈」と呼ぶことがあります。

いずれの場合においても、保釈金の支払いは必要となります。

保釈金はいくらで返還してもらえるのか?

誤解されている人が多いと思いますが、まず保釈金をいくら支払っても、逮捕後の勾留期間においては「保釈」は行われません。

よく著名人が逮捕され、多額の保釈金を支払って身柄の解放を実現するといったイメージがありますが、あくまでも起訴後のことであり、たくさんお金を払ったから留置場や拘置所から出られるというものではありません。

そして金額ですが、被告人の経済力と想定される判決の重さという要素から、裁判所がその度に決めるものです。著名人の保釈金が多額になるのは、それだけ経済力があるという理解で良いでしょう。一般人の場合は、年収の半分前後と言われており、相場は150万円~300万円といったところで、これだけの金額を棒に振ってまで逃走しないであろう金額になっています。

そして判決において想定される量刑の重さも保釈金を決定する要素となり、当然ながら刑が重くなると考えられる場合は高く、軽い刑と見込まれる場合は安くなります。これらの保釈金は現金で一括払いが基本となっており、身柄解放の代わりに一時的に国に預ける性質のお金ですから、その後裁判所が行う法廷に出頭すれば預けた保釈金は戻ってきます。

また、被告人の経済状態を勘案して金額が決定されるとはいえ、逮捕された後に大金を準備するのは大変です。そのような場合は、弁護士を通じて日本保釈支援協会の保釈保証金立替システムなどを利用するのも良いでしょう。

「保釈」を実現するための手続きと条件

裁判が終わっていないとはいえ、判決が出るまで一般社会に戻れるという「保釈制度」のメリットは大きいものです。

裁判に出廷する以外に、事件によっては行動の制限を受ける場合がありますが、基本的には逮捕前と同じように会社や学校に行く事ができますし、弁護士と裁判の打ち合わせも、留置場や拘置所で身柄を拘束されている状態よりも自由にできるのです。

「保釈」の申請方法は?

「保釈制度」に基づく「保釈申請」の方法は次の通りで、基本的に「保釈」の申請は弁護士が行います。「保釈」には身元引受人が必要となるため、家族などから書面の提出も必要となりますが、保釈中に被告人が問題を起こしても身元引受人は責任を問われません。

申請は基礎を受けたその日から可能で、弁護士を通して申請書を提出すると、翌日には「保釈」を許可するか、却下されるかの判断が行われます。「保釈」が許可されると、保釈金の金額と保釈中の制限事項が伝えられ、保釈金を納めれば保釈となります。

「保釈」が認められないケースは?

上記の刑事訴訟法第89条に定められているように、「保釈」が認められないケースもありますので、事前に弁護士と相談し、手続きを進めるかどうかを判断する必要があります。

予想される刑罰が死刑や無期懲役など極めて重い罪を犯している場合、過去に同じ罪や重い懲役を受けている累犯者である場合、逃亡や証拠隠滅を計る可能性が高い場合、氏名や住所が不明確で身柄を解放すると行方不明になる可能性がある場合、などでは認められないと考えられます。

重罪者や累犯者は明白なのですが、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるという理由は、軽い罪でも適用されてしまい、「保釈」が実現しないことが珍しくありません。

特に痴漢事件などでは、被告人が被害者と接触して脅し、証人質問で証言させないようにするのではないかという危惧も持たれてしまいます。また被告人が完全黙秘を続け、名前や住所が確定されていない場合も、釈放したら行方不明になる可能性が高く、公判に呼び出すことすらできないので、当然「保釈」の許可は下りません。

「保釈」を確実にするため、弁護士に相談

「保釈」の申請は何度でも可能です。一度「保釈」の申請をして却下されても、諦めずに何度も申請し続けると、いずれ「保釈」が認められることもよくあります。

例えば痴漢事件のケースでは、公判で証人質問が終われば証拠隠滅の心配がなくなりますので、それまで却下され続けた「保釈」申請が通ることがあるのです。そのため、何度でも粘り強く、被告人の身になって申請を出してくれる弁護士を選ぶことも重要です。

裁判官によって傾向が違う

また、裁判官は一人ひとりが独自の決定権を持っています。裁判官によって同じ書類を見ても、同じ証言を聞いても、裁判における判断は違うものですし、「保釈」申請を受けても却下する裁判官もいれば、許可する裁判官もいるのです。

同じ法令によって裁かれるのに、裁判官によって下される決定が違うのは問題だと感じる人もいるかもしれませんが、これが現実なのです。一般人には見分けをつけるのが難しいのですが、弁護士などの専門家は裁判官の傾向を知っていますので、適切なアドバイスをもらうようにしましょう。

「保釈」を受け、社会生活を送りながら公判を受けるのは、身柄が拘束され続けている場合に比べ、自由度はもちろん社会的に受けるダメージを最小限に抑えることができることは疑いようのない事実です。

一度「保釈」申請を却下されたとしても諦めず、弁護士と相談しながらタイミングや状況を見極め、何度でもトライすることが肝心なのです。

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