略式処分|略式起訴や略式命令。有罪だが早期に社会復帰できる?

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刑事事件においては、逮捕され起訴されてしまえば裁判に進みます。長期間にわたり勾留されることになり、社会生活への復帰が非常に難しくなります。しかし事件の内容や、被疑者が罪を認める略式の処分を受け、早期に身柄が解かれるという方法もあります。

「略式手続」で短期の決着を図る略式処分

刑事事件の手続きは、基本的には被疑者が起訴されて裁判にかけられ、有罪もしくは無罪の判決が下り、有罪となれば量刑が言い渡されます。

しかし世の中で起こっている全ての刑事事件を、このような裁判で審理するとしたら、裁判所はパンクしてしまいます。

そのため、刑事手続きには「略式手続」という略式の処分があります。

「略式手続」というのは文字通り、裁判という手続きを省略した手続きという意味で、冤罪防止のために、本来なら必ず行われなければならない公開裁判をしないで、書類手続きだけで判決から刑の執行までが決められるものです。

以上のような表現をすると、裁判所の都合で楽に刑事手続きを進めているだけだと感じる人がいるかもしれません。

しかし実際には「略式手続」の数は多く、楽なのは裁判所や検事側だけでなく、刑事事件の被疑者にもメリットがある制度です。

この「略式手続」について詳しく見ていきましょう。

略式処分に関係する法令と用語

「略式手続」は、刑事訴訟法に次のように定められています。

刑事訴訟法

第四百六十一条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

第四百六十一条の二 検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。

○2 被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

第四百六十二条 略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。

○2 前項の書面には、前条第二項の書面を添附しなければならない。

刑事訴訟法には以上のよう定められていますが、まず「略式手続」とは、検察官が請求し、簡易裁判所が公判手続きによらないで罰金または科料を科す手続きのことです。この際、検察官が「略式手続」を請求することは「略式起訴」あるいは「略式請求」と呼ばれます。

そして「略式手続」においては、簡易裁判所が有罪の判決を下して罰金や科料を科しますが、これは「略式命令」と呼ばれます。また、この一連の手続きが「略式裁判」と呼ばれることもあります。

刑事事件はそんなにたくさん起こっている?

「略式手続」の数が多い理由として、裁判所がパンクする、あるいは被疑者を収容する施設がないため、というようなことがよく言われますが、本当なのでしょうか?

平成29年警察白書によると、平成28年の刑法犯総数における認知件数は996,120件、検挙件数は337,066件、検挙人員は226,376人となっています。

単純に計算すると、全国で1日に犯罪は2,700件以上発生し、620人ほどが検挙されていることになります。

それほど多くないと感じるかもしれませんが、1人の被疑者が逮捕され、勾留されたとすれば起訴までに最長で23日間、起訴後に裁判が行われるまで約1カ月は拘束されます。

それを考慮すると、警察当局の留置施設が不足する、といった理由も頷けます。

「略式手続」が行われるための条件がある

短期間で刑事事件の決着を図り、裁判所にも被疑者にもメリットがある「略式手続」ですが、どのような状況でも行われるわけではありません。

どのような場合に、「略式手続」が行われるのか見てみましょう。

「略式手続」のための3つの条件

「略式手続」で刑事事件の手続きを進めるためには、以下に示す3つの条件を満たす必要があります。

簡易裁判所が管轄する事件であること

一般的に刑事事件は地方裁判所で裁判が行われますが、軽微な事件は簡易裁判所の管轄となります。

この場合に限り「略式手続」」を行うことができます。

100万円以下の罰金や科料に相当する事件であること

「略式手続」は、100万円以下の罰金や科料に相当する事件であることが条件となります。

懲役刑、禁錮刑、死刑に相当する事件については「略式手続」を適用することはできません。

被疑者が容疑を完全に認め、「略式手続」に異議がないこと

被疑者の同意がない限り、「略式手続」は行われません。

「被疑者の同意」が非常に重要!

被疑者にとって、「略式手続」に応じるか否かは、刑事事件手続きにおいて非常に重要な分かれ目となります。

「略式手続」は手続きも簡単で、短期間で決着が着き、早期の社会復帰が可能となるものです。しかし「略式手続」を受け入れるということは、同時に下される「略式命令」に応じるということであり、有罪だと認めてしまうことになるのです。

この手続きは、社会復帰をちらつかせて罪を認めさせるという、被疑者の冤罪を生む可能性を高めるものでもあります。

いわゆる「罪を認めたら帰してやる」という世界です。たとえ軽い刑罰であっても「前科」はすぐに消えません。

弁護士とよく相談し、もし「略式手続」を受け入れたくないという結論に至ったならば、異議を申し立てれば正式な裁判に移行します。

「略式手続」のメリット

「略式手続」の最大のメリットは、刑事事件の手続き時間の短さです。

タイミング次第では事件が発生した当日に全ての手続きが終ってしまうこともあります。そのような場合には、被疑者は留置場に入れられることもない、あるいは入れられてもせいぜい数時間となるケースもあります。

「略式手続」の進み方

具体的には、刑事事件の被疑者として警察に逮捕された直後に被疑者自身が罪を認め、なおかつ「略式手続」行うことが認められる軽微な犯罪の場合、警察は直ちに被疑者を検察に送検します。

検察の検事は被疑者に対して、一般的な公開の裁判なしで有罪判決が下ること、いわゆる「略式裁判」に異存がないことを確認し、被疑者が納得すれば、すぐに「略式起訴」が行われ裁判所へと身柄が移されます。

そして裁判所は、起訴された被告人に対して、直ちに有罪判決を言い渡します。この場合の量刑は罰金刑となります。

罰金刑を言い渡された被告人は、その場でお金を持っていれば罰金を支払い、なければ金融機関で支払うための納付書をもらって身柄は解放されることになります。

こうした一連の手続きが役所でよく見られる窓口巡りのような手順で次々と行われ、当該刑事事件の逮捕が平日の朝だとしたら、その日のうちに事件の手続き全てが終わるのです。

「略式手続」で得られるもの

刑事事件における「略式手続」で被疑者(被告人)が得られるものは時間です。

刑罰の重さ関しては、もしかしたら正式な裁判を行えば軽くなる可能性もありますし、もしかしたら無罪になるかもしれません。

その代わり、早期の社会復帰が見込めるものなのです。しかし一方で、刑事事件の被疑者として逮捕されたのが昼間、あるいは夜だった場合には、検察や裁判所へ移送されるのが翌日になり、一晩くらいは留置場に拘束されてしまうこともあります。

事件の内容にもよりますが、「略式手続」であれば、遅くても逮捕から3日目には刑事事件の手続きは終了してしまうので、勾留されてしまう事はあまりありません。

早期に社会復帰はできますが、会社員や学生の場合、1日でも無断欠勤や欠席があれば、理由は何かと問われることでしょう。

会社や学校が大切なのは理解できますが、犯してもいない罪を認めさせられる、あるいは罪は犯したけれどもそこまでやったと認めたくない、というような場合には、簡単に「略式手続」を受け入れることは避け、弁護士に相談しきっちりと裁判を行うべきでしょう。

「略式手続」に応じる際は熟考を!

「略式手続」は、被疑者が罪を認めていることが大前提です。

痴漢を疑われて現行犯逮捕されてしまっても、被疑者自身にまったく心当たりがない場合は、「略式手続」に異議を唱え、正式な公開裁判を求めるべきです。しかし突然心当たりがない事件の被疑者として逮捕されてしまった時にも、早く警察から出られるという甘い言葉に乗って、犯してもいない罪を認めてしまうということもあるようです。

しかし、前科がつくということを忘れてはいけません。

個人情報の保護が厳しくなった時代ですから、普通の生活をしている限りは前科があっても不自由はないでしょう。しかし特定の職業では前科があると就職ができないものもあり、海外に渡航する際にはビザの取得の障害になることもあります。

刑事事件の終わらせ方としてはもっとも簡単で早期の社旗復帰が見込まれる「略式手続」ですが、そのメリットとデメリットをしっかり考えて、受け入れるか拒否するかを決めましょう。

被疑者自身で判断ができない場合は、弁護士に相談を仰ぎ、最善の方法を取るようにするべきです。

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