脅迫罪とは?脅迫が成立する要件と逮捕の条件とは?
- 2024年7月9日
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脅迫罪が成立する要件
脅迫罪とは
脅迫罪とは「人の生命、身体、自由、名誉、財産に対する害悪を告知」したときに成立する犯罪です。
脅迫罪の対象になる「人」について
脅迫罪の対象になる「人」は相手本人か親族です。たとえば「お前を殺す」「お前の妻を傷つける」「お前の息子をさらう」などと告げると脅迫罪が成立します。
それ以外の第三者に対する害悪告知は脅迫罪になりません。たとえば「お前の友人を殺す」「お前の恋人を傷つける」と言っても脅迫罪は成立しません。
害悪告知の対象となる利益
脅迫罪が成立するためには、特定の利益に対する害悪告知が必要です。具体的には以下の5種類です。
生命
相手に対し「殺すぞ」「お前の子どもを殺すぞ」と告げるケースなどです。
身体
相手に対し「無事では済まさないぞ」「お前の妻も傷つけるぞ」などと告げるケースです。
自由
「このまま家に帰さないぞ」「誘拐するぞ」などと告げるケースです。
名誉
「お前の不倫を会社中に広めるぞ」「家族の恥を公表してやる」などと告げるケースです。
財産
「お前の財産をすべて奪ってやる」「家を燃やしてやる」などと告げるケースです。法律上、動物は物扱いとなるので、「ペットを殺すぞ、傷つけるぞ」と告げるのも財産に対する害悪告知となります。
上記以外の利益について脅しをかけても脅迫罪になりません。たとえば「言うことを聞いてくれないと自殺するぞ」などと言った場合や、何度も無言電話をかけて相手を気味悪がらせた場合などでは、相手や相手の親族に対する上記5種類の利益についての害悪告知になっていないので、脅迫罪は成立しません。
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法人に対する脅迫罪について
脅迫罪は、基本的に「個人」に向けられた犯罪です。法人に対して害悪を告知しても脅迫罪は成立しないと考えられてします。
たとえば法人に対し「その商品販売をやめないと嫌がらせをするぞ」と告げても法人に対する脅迫罪にはなりません。
ただし脅迫状を受けとった人や経営者に対する脅迫罪が成立する可能性はあると考えられています。
たとえば経営者向けに「その商品販売をやめないとお前の家族を殺す」と脅迫状を送った場合には、法人ではなく経営者本人に対する脅迫罪が成立します。
脅迫の方法
脅迫行為が行われる場合、特に方法は限定されませんが、以下のようなパターンが典型的です。
面談
相手と直接会って脅す方法です。数人で一人の被害者を取り囲んで脅すケースも多々あります。
手紙(脅迫状)
脅迫状を送りつけるケースです。匿名で脅迫するパターンもあります。
電話
電話をかけて相手を脅す方法です。ただし無言電話では脅迫罪になりません。
メール
メールに相手やその親族に害悪を告知する内容を書き入れて送信した場合にも脅迫罪となります。
ネット投稿
ネットの掲示板やSNS、各種サイトのコメント欄などに相手や相手の親族に対する害悪告知を書き入れた場合にも脅迫罪が成立します。
脅迫罪が成立するタイミング
脅迫罪が、「いつの時点で成立するのか」についても確認しておきましょう。
脅した時点で既遂になる
脅迫罪は「相手に対し、害悪を告知したとき」に成立します。つまり、面談や電話、手紙やメールなどで「脅した時点」で犯罪が既遂になります。
脅迫罪に「未遂罪」は存在しない
一般的に、刑罰には「未遂罪」が用意されているものもたくさんあります。たとえば殺人罪の場合、相手を殺そうとしてナイフで刺しても相手が死ななかったら「殺人未遂罪」です。
一方脅迫罪の場合、未遂罪がありません。脅迫罪は「害悪を告知」した時点で「既遂」になるからです。
害悪を告知した結果、相手が「畏怖(怖がること)」したかどうかは関係ありません。相手がまったく怖がらず平然としていても、外形的に害悪告知があれば脅迫罪が成立します。
人に対して感情にまかせて脅迫的な言葉を投げつけると、それだけで脅迫罪が既遂になってしまう可能性があるので注意が必要です。
脅迫罪の刑罰と量刑の相場
脅迫罪で逮捕されて有罪になったら刑罰を適用される可能性がありますが、その際、どのくらいの刑罰となるのでしょうか?
脅迫罪の刑罰
脅迫罪の刑罰は、刑法222条において「2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑」と定められています。人を脅すと、最大2年間刑務所に収監されて強制労働をさせられたり最高30万円のお金を払わされたりする可能性があるということです。
脅迫罪の量刑の相場
脅迫罪の実際の量刑の相場として、初犯の場合には罰金刑となるケースが多数です。ただし非常に悪質な場合や組織的に行われた犯罪の一端として行われた場合などには、初犯でも懲役刑が選択される可能性もあります。
また同種前科がある場合などには懲役刑が選択される可能性が高くなります。執行猶予中に再度罪を犯した場合には、実刑判決が下されます。
刑事事件では犯罪行為を繰り返していくとどんどん適用される刑罰が重くなっていくので、注意が必要です。
脅迫罪と強要罪、恐喝罪の違い
脅迫罪に関しては「強要罪」や「恐喝罪」と何が違うのか?と疑問を持たれる方も多いので、ご説明します。
強要罪とは
強要罪とは、人に対して害悪を告知することにより義務のない行為を無理矢理行わせる犯罪です。つまり、脅迫によって義務のないことをさせたら強要罪となります。
たとえば「土下座して謝らないと殺すぞ」「その商品販売をやめないと子どもを傷つけるぞ」「結婚してくれないならお前の家を燃やす」などと言い、相手が従ったら強要罪です。
脅迫罪と強要罪の違いは「義務のないことをさせたかどうか」です。単に脅しただけなら脅迫罪、無理矢理義務のないことをさせたら強要罪です。
また脅迫罪は害悪を告知した時点で成立するので未遂罪がありませんが、強要罪の場合には相手が命令に従わなかったら未遂になります。
恐喝罪とは
恐喝罪は、相手を脅迫して怖がらせお金(財物)を支払わせたときに成立する犯罪です。単に脅迫するだけではなく、その目的が「お金(財物)」に向けられていることが必要です。
たとえば「殴られたくなかったら金を払え」「秘密をばらされたくなければ100万円払え」「子どもを傷つけられたくなければ不動産をよこせ」などと告げ、相手が怖がってその言葉に従ったら恐喝罪となります。
恐喝罪の場合、相手が財物を交付しなかったら未遂罪になります。
強要罪や恐喝罪は脅迫罪よりも重罪
以上のように、強要罪は脅迫行為によって相手に対して何らかの義務のない行為を強制した場合、恐喝罪は脅迫行為によって相手に財物の交付を強制した場合に成立するので、脅迫罪を一歩進めた犯罪と言えます。
刑罰も、単なる脅迫罪より重くなっています。強要罪の刑罰は3年以下の懲役刑、恐喝罪の刑罰は10年以下の懲役刑です。
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脅迫罪で逮捕される2つのパターン
脅迫罪で逮捕される場合、どのような流れになるのか、典型的な2種類のパターンをご紹介します。
現行犯逮捕
1つ目は、被害者を脅迫したときにその場で取り押さえられて現行犯逮捕されるパターンです。たとえば相手と直接会って脅しているときに警察を呼ばれたり周囲の人に見とがめられて取り押さえられたりします。
脅迫罪で現行犯逮捕されるのは、喧嘩になったときや悪質な絡みに遭ったケースが多数です。たとえば被害者に対して腹を立てた加害者がナイフを持ちだして「それ以上反抗するなら刺すぞ」などと言うと、警察を呼ばれて現行犯逮捕される可能性が高くなります。
後日の通常逮捕
脅迫罪では、脅迫をした現場では発見されず後日逮捕される事例が多数です。多くが被害者による被害届をきっかけとして、警察が捜査を開始して犯人を見つけます。たとえ匿名で脅迫が行われていても犯人を突き止められて逮捕されます。
たとえば脅迫状や脅迫メールが送られてきたりネット上の投稿で脅されたりしたら、被害者は警察に被害届を提出します。
警察が被害届を受理して悪質な犯罪行為として捜査を開始すると、手紙の発送場所や利用されている紙や封筒、メールが送信されているドメインやIPアドレスなどを調べて犯人を特定します。そして逮捕状を取得し、犯人の自宅や会社などにやってきて逮捕状を示し、逮捕します。
後日の通常逮捕の場合、犯行から時間が経過しているため本人も「逮捕はされないだろう」と油断しているケースも多々あります。家族がいる方などの場合、妻や子どもの目の前でいきなり逮捕される可能性もあります。
脅迫罪、強要罪は「親告罪」ではない
脅迫罪は「親告罪」と思われているケースもありますが、違います。親告罪とは、被害者による刑事告訴がないと処罰されない犯罪です。
脅迫罪や強要罪、恐喝罪はすべて「親告罪」ではありません。被害者が告訴しなくても、犯罪行為が明らかになったら警察が自主的に動いて逮捕します。
脅迫罪の「公訴時効」とは
勢い余って他人に脅迫行為をしてしまっても、必ず逮捕されるとは限りません。被害者が被害届を提出しなかったり、提出されても捜査の手が及ばず時間が経過したりすると「公訴時効」が成立する可能性があります。
公訴時効とは、刑事事件の時効です。犯行が行われても、その後起訴されないまま一定期間が経過すると、被疑者が「もう起訴はされないだろう」と期待しますし、捜査側の怠慢も責められるべきですから、もはや起訴できなくなってしまうのです。
脅迫罪の公訴時効は「3年」です。相手を脅してから3年が経過すれば、その脅迫行為によって起訴されたり処罰されたりする可能性はなくなります。
脅迫罪で逮捕された場合の流れ
脅迫罪で逮捕されると、以下のような流れで刑事手続が進んで行きます。
送検される
逮捕されると、その後48時間以内に検察官のもとに身柄を送られます。
在宅か身柄か決まる
検察官の元に送られると、検察官は被疑者を在宅にして捜査するか(在宅捜査)、引き続いて勾留したまま捜査するか(身柄捜査)を決定します。
勾留する場合には裁判所に勾留請求をして、24時間以内に勾留決定を得る必要があります。在宅になった場合、被疑者は家に帰してもらえます。
取り調べやその他の捜査
勾留されて身柄捜査になったときの勾留期間は最長20日間です。その間に取り調べやその他の捜査が行われます。
在宅事件になった場合、特に期間はありません。被疑者は普段通り家で過ごせますが、その間にも警察や検察において捜査が進められます。捜査が最終段階になったら被疑者は検察官に呼び出されて検事調べを受けます。
処分決定
身柄事件で勾留が満期になったときや在宅事件で必要な捜査が終了したときには、検察官は被疑者を起訴するかどうかの処分決定をします。
起訴されたら裁判になり、被疑者は被告人として裁かれます。身柄捜査で不起訴になったらそのまま解放されますし、在宅捜査の場合には何も変わらず生活できます。
起訴される場合「略式起訴」と「通常起訴」があります。
略式起訴の場合
略式起訴されると、略式裁判という簡単な刑事裁判になります。略式裁判は、100万円以下の罰金刑が適用される場合に採用される書面上の裁判で、行われるのは被告人が罪を認めているケースに限られます。
略式裁判になった場合、勾留されていてもすぐに釈放してもらえます。罰金さえ払えばすべての手続きが終了します。在宅なら自宅に罰金の納付書が届くので、それを使って支払えば手続きが終わります。
脅迫罪でも初犯の場合には略式裁判となって罰金刑で済むケースが多数です。
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通常起訴の場合
通常起訴されると、原則的な通常の刑事裁判が開始されます。身柄拘束を受けていた場合には引きつづき「被告人勾留」に切り替わって留置場や拘置所に拘束され続けます。ただし起訴後は「保釈」が認められるので、保釈金を支払えば一時的に身柄を解放してもらえます。
通常起訴されたら実際に裁判所で審理が行われるので、被告人は必ず出頭しなければなりません。在宅の場合や保釈されている場合、自分で裁判所に行く必要があります。
出頭を拒絶すると保釈を取り消される可能性がありますし、在宅の場合には「勾引」という手続きによって無理矢理裁判所に連れて行かれることもあります。
判決
通常裁判ですべての審理が終わって結審すると、裁判官によって判決が言い渡されます。有罪判決が出たら前科がつきます。無罪判決であれば日常生活に戻ることができ、二度と同じ罪で追及されることはありません。
脅迫罪で逮捕!なるべく早く身柄を解放してもらうには
脅迫罪で逮捕されたとき、なるべく身柄を早期に解放してもらうには、以下のような対応が重要です。
在宅処分を目指す
まずは逮捕後勾留されないで「在宅捜査」にしてもらうことです。在宅捜査になれば、逮捕後3日以内に釈放されます。
在宅捜査にしてもらうには、「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」ないことを検察官に納得させる必要があります。そのためには逮捕直後から反省の態度を示し、被害者に謝罪して慰謝料の支払いを提示することなどが必要とされます。脅迫行為が軽微で家族による監督を期待できることなども重要な要素です。
被疑者1人では対応が難しいので、逮捕されたらすぐに弁護士を呼んで依頼しましょう。
不起訴処分を目指す
逮捕後勾留されるまでには3日間しかないので、その間に被害者と示談を成立させるのは困難なケースも多々あります。また脅迫行為がある程度重大な場合、いかに被疑者が反省の態度を示しても勾留される可能性が高くなります。
勾留されて身柄事件となったら,身柄を解放してもらうために不起訴処分を目指しましょう。不起訴になったら、刑事裁判にならないので即時に釈放してもらえますし前科もつきません。
不起訴処分の獲得には示談が重要となる
不起訴処分を獲得するには、やはり被害者との示談が非常に重要です。脅迫罪で初犯の場合には、被害者との示談が成立すると多くのケースで不起訴にしてもらえます。
また被疑者が反省していること、家族による監督が期待できること、再犯に及ばない可能性が高いことなど検察官にアピールしていくことも大切です。
こういった活動は弁護士でないと難しいので、逮捕されて不起訴処分を獲得するには早めに刑事弁護人を選任すべきです。
脅迫罪で刑事裁判に!刑罰を軽くしてもらう方法
以前にも脅迫罪や強要罪、恐喝罪などの犯罪で有罪判決を受けている場合など、起訴を避けにくいケースもあります。
いったん起訴されてしまったら、なるべく罪を軽くしてもらうことが重要です。懲役刑の実刑になると刑務所に行かなくてはならず不利益が大きすぎるので、執行猶予判決を目指しましょう。
執行猶予にしてもらうためにも、やはり重要なのは被害者との示談です。早急に被害者に謝罪して慰謝料を支払い、できる限り「嘆願書」も書いてもらいましょう。
嘆願書によって被害者から「刑を軽くして下さい」とお願いしてもらえたら、裁判官も軽い刑罰を適用しやすくなります。
脅迫罪で刑事裁判になった場合、有利な結果を獲得するには刑事弁護人の力が必須なので、必ず優秀な弁護士を探して弁護を依頼しましょう。
脅迫罪で逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう
脅迫罪で逮捕されたとき、あなたを守ってくれるのは弁護士です。弁護活動の開始は早ければ早いほど効果的です。
万一、あなたの大切な家族が脅迫罪の疑いで逮捕されたら、すぐに弁護士に相談して接見に行ってもらいましょう。
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