刑事裁判の終わり方~判決後14日で刑が確定し手続きは終了する~
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日本の裁判所は三審制
裁判所の仕事は、個人間の法律的な紛争である民事事件を解決したり、刑事事件において罪を犯した疑いがある人が有罪か無罪かを判断したりして、国民の権利を守り生活の平穏と安全を保つことです。裁判の当事者は被害者と加害者(被告人)で、たいていの場合は双方が弁護士を伴って裁判所に出向きます。
その裁判所は、取り扱う事件の性質や事件の重大さによって、いくつかの種類に分かれており、もし下された判決に納得がいかなければ、被害者でも加害者でも原則として2回の上訴ができることになっており、これを三審制と呼びます。
そのため、ひとつの裁判において判決が下されたとしても、最高裁判所でない限りその判決は最終的な確定とはならないのです。
裁判所の種類について
取り扱う刑事事件の内容や重大さにより、それぞれの法廷が開かれる裁判所は違います。
裁判所は、「最高裁判所」(東京)、「高等裁判所」(本庁8、支部6、知的財産高等裁判所1)、「地方裁判所」(本庁50、支部203)、「家庭裁判所」(本庁50、支部203、出張所77)、「簡易裁判所」(438庁)と、4つの種類に分かれます。
日本の裁判制度は、正しい裁判を実現するための三審制が採用されているため、第一審、第二審、第三審と、一部例外はありますが原則として3回までの審理が行われる仕組みとなっています。例えば地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所のいずれかで第一審、高等裁判所で第二審、最高裁判所で第三審が行われるといった形です。
刑事事件の裁判における上訴の手順
「判決に不服があるため上訴する」という言葉は、現実世界のニュースや新聞でも、ドラマや映画でもよく見聞きする言葉です。しかし実際にどういう手順で行われていて、そのニュースがどういう意味を持つのかを明確に理解している人は少ないのではないでしょうか。
最初の裁判、いわゆる第一審の判決に不服があった時には、より上級の裁判所へ裁判のやり直しを求めることを上訴と言います。上訴には2種類あり、簡易裁判所や地方裁判所から上級の高等裁判所へ上訴することを「控訴」、高等裁判所から上級の最高裁判所へ上訴することを「上告」と呼んでいます。
「控訴」と「上告」という言葉は、それだけでどの裁判所から上訴されたのかが分かり、その上訴がどういう意味を持つのかが分かるのです。そして上訴して行われる裁判は、それぞれ「控訴審」、「上告審」と呼ばれます。ちなみに、よく聞く「再審」という言葉は、一度確定した判決に対して改めて裁判を求める際に使われるものです。
上訴は判決に少しでも不満があれば、被害者でも加害者でも可能となりますので、たとえば懲役1年の実刑判決を下されたけれども、もっと短くして欲しいという量刑不当の理由でも問題はないのです。ただし裁判自体を最初からやり直すことになるため、費用もかかり、よほど新たな証拠や証言が出てこない限り、判決を変えさせるのは難しいと考えられます。
目の前の裁判に、弁護士と十分に相談をしたうえで挑むことをお勧めします。
上訴には期限が定められている
ひとつの裁判で判決が下され、その内容が不服であるために上訴をする際には、14日間という期限以内に手続きを行う必要があります。上訴が可能な期限は、刑事事件の公判の最後、裁判官が判決を言い渡した後に告知されます。
裁判官は「この判決に不服がある場合は、判決が言い渡された翌日から14日以内に控訴(または上告)手続きをしてください」と必ず告げることになっていますので、聞いていない、知らなかったという言い訳は通用しません。
量刑の確定は、上訴期限の14日後となる
つまり、判決日の翌日から14日以内に、上訴の手続きをしなければ、その裁判所で言い渡された刑が確定するのです。裁判で判決が下されてすぐに刑罰が確定するのではなく、14日後に確定するというのは、こういう上訴の制度があるからです。
この14日後という計算方法は、土日祝日も含んでカウントされますので、上訴する意思がある場合は素早く手続きをする必要があります。上訴手続きは、その判決を行った裁判所に対して、控訴ならば「控訴申立書」を提出することで手続きが始まります。
弁護人の選任や具体的な裁判資料の準備は、書類が受理されてからでも可能です。一方で、無罪判決など被告人側にとって判決に不服がなくても、検察側も上訴できることから、14日という期限が過ぎて判決が確定するまでの間、被告人はただ待つしかないという状態になります。
「上告」は非常に難しい
「控訴審」の判決に不服があれば、裁判の当事者は最高裁判所への「上告」ができることになっていますが、「上告」は原則として、憲法違反や判例違反があることが必要とされています。
要するに、下された判決に憲法違反または憲法の解釈に誤りがあることや、「控訴審」が最高裁判所の判例と相反する判決を下した場合、また最高裁判所の判例がない場合には大審院の判例などと相反する判断が下されたこと、などの要件が必要なのです。
ニュースや新聞などの裁判における記事で「上告棄却」という言葉をよく見聞きしますが、厳しい条件があることを思い知らされます。
判決確定後、刑が執行される
第一審あるいは第二審の判決が下されてから14日が経過すると、それらの裁判の判決が確定します。
判決において禁錮や懲役の実刑を言い渡された被告人は、この裁判期間を拘置所で過ごしているわけですが、保釈で自宅などに戻っていた場合でも、禁錮や懲役の実刑判決が下されると、法廷で身柄が拘束されて拘置所に連行されますので、社会生活には戻れなくなります。
一方で、高等裁判所での「控訴審」の判決で実刑が下されると、その日は家に帰れますが、後日検察庁まで出頭して拘置所に連行されるというパターンもあるようですが、どちらにしても実際に刑務所へ行くのは、拘置所内で適正検査などを受けた後になります。
居住地に近い刑務所ではない
刑務所は日本全国47都道府県にそれぞれ最低1カ所はありましたが、現在奈良県に刑務所はありません。
そして被告人の居住地、あるいは事件が起こった場所に近い刑務所に入れられるというわけではなく、初犯か再犯か、刑期が長いか短いかなど、収容する受刑者の犯罪傾向や刑期によってクラス分けされていて、刑が確定するとそのクラスに合わせて適当な刑務所が選ばれ、その刑務所で服役するのです。
また女性刑務所や少年刑務所、医療刑務所のように、受刑者の属性によって刑務所が選ばれることもありますが、女性刑務所は現在満杯状態で入れないという問題も起こっているようです。受刑者の人権を守るため、日本の刑務所の居心地は比較的よいとされていますが、よければよいで、出たがらない受刑者が多く出てしまうという事態を招いているという指摘もあります。
罰金刑の場合は、検察庁が徴収する
刑事裁判の有罪判決には必ず刑務所に行く刑罰ばかりではなく罰金刑があります。
あまり知られていませんが、裁判で確定した刑罰を執行するのも検察庁の仕事で、罰金刑の場合に罰金を徴収するのは検察庁であり、罰金の支払いができない人は、身柄を拘束されて、拘置所や刑務所内にある労役場で、日当5,000円換算で強制的に労務に服することを求められることがあります。
以上のように、刑事事件で有罪判決を下された人たちは刑罰を受け、その後は社会復帰することになります。有罪判決が確定したということは、前科がついたということになりますが、現在では個人情報保護が進んでいることもあり、前科は昔ほど社会生活に影響を及ぼさないとされています。
刑罰を受けたことによって罪のペナルティは果たしたという考え方が近代司法ですから、家族や友人・知人としては暖かく支えてあげたいものです。
弁護士との契約はどうなる?
弁護士は裁判ごとの契約となり、弁護人を務めた弁護士の契約期間は、裁判ごとで終了することに注意が必要です。
法廷で判決が下った瞬間、急いで書類を整理して帰ろうとするような事務的な弁護士はめったにいませんが、「控訴」や「上告」をして法廷闘争を継続する場合、弁護士とは再度契約しなければならないことは忘れないようにしましょう。もちろん担当した弁護士が気に入らなければ、別の弁護士に依頼しても問題ありません。
弁護士の選び方はたくさんありますが、民事や刑事、あるいは窃盗、痴漢といった特定のジャンルに強い弁護士を選ぶのもひとつの方法です。しかし最も重要視するべきものは、相性であるとよく言われます。事件について、あるいは自分のことはすべてさらけ出すことが求められますので、信頼の置ける相性のよい弁護士を探すことは、よい裁判結果につながるでしょう。
初回相談は無料といった弁護士事務所も増えてきていますので、じっくりと比較検討して最適な弁護士を選びましょう。
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