取調べを受ける時の心得(2)~納得できない調書に署名はしない!~

供述調書の作成

逮捕後の取調べ内容は調書に記録される

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったらそのまま警察署に連行されますが、そのまま留置場に放り込まれてしまうことは滅多にありません。留置場に入れられる前に、被疑者には写真撮影や指紋採取などの手続きが行われ、たいていの場合は続いて非常に大切な最初の取調べが行われます。

この際、警察や検察の捜査官は被疑者の供述内容をメモに取り、その内容をパソコンで改めて書類の作成を始めます。捜査官が作成するこの書類は「員面調書(司法警察員面前調書)」と正式には呼ばれますが、普通は単に「調書」や「供述調書」と言われるものです。

逮捕直後に作成されるこの書類は、被疑者の供述を後の裁判に証拠として提出するためのものであり、非常に重要な書類となることを覚えておきましょう。

「弁解録取書」という調書とは?

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまうと、たいていの場合は逮捕期間である72時間で釈放されることはありません。以降は最長20日間の勾留期間に入るのですが、その間に行われる取調べで被疑者から聞き取ったことを、捜査官は「供述調書」に記録します。

「供述調書」には決まった形式があるわけではないようですが、被疑者が話した内容を、捜査官がパソコンを使ってまとめる形で作成されます。そして逮捕直後の警察での取調べにおいてはまず、「弁解録取書」と「身上調査書」という2つの重要な「供述調書」が作成されます。

弁解録取書」は通称「弁録(ベンロク)」と呼ばれ、逮捕容疑に関する被疑者の主張を明らかにするものとなります。この「弁解録取書」は、被疑者が罪を認めている場合と、否認している場合で書き方が違い、容疑を最初から認めているのであれば、「いつ、どこで、罪を犯してしまいました。大変反省しています」と、事件のあらましを語った後に自分の罪を認めて反省しているというような内容になります。

具体的には、供述した人物(被疑者)の氏名、生年月日、住所、電話番号、職業などの情報から、事件発生の日付、時間、場所、内容などが一人称で書かれます。文章は「私は、…」から始まり、傷害事件ならば逮捕の要因となる行為を事細かに記載し、事件当時の状況が被疑者の語るような体裁を取って書かれます。

一方で、被疑者が逮捕容疑を否認している場合には、「そんな事をした覚えはありません」と、事件の内容に関する容疑を完全否定する文面になるはずですが、書き方は一人称ではなく、捜査官との一問一答形式になるのが常です。

例えば、「あなたは、○○月○○日に○○にいたのか?」という問いに、被疑者は「いいえ、その時間にそこにはいませんでした」と答えた、などと記載されます。

このような一問一答形式は、被疑者が頑なに容疑を否定し、捜査官が思い通りの供述を引き出せない場合に用いられますが、たいていは罪を認めてしまうことが多いので、一人称で語ったような形式の調書がほとんどです。

被疑者が罪を認めているか否認しているかは事件捜査や取調べの駆け引きに重要な要素になりますので、「弁解録取書」は、警察や検察にとって今後の方針を決める重要な書類と言ってよいでしょう。

「身上調査書」という調書もある

最初の取調べでは、被疑者の出生地や学歴・職歴を簡単に綴った履歴書のような調書も作成され、これは「身上調査書」と呼ばれています。刑事手続きに関わる警察の捜査官をはじめ、検察の担当検事、あるいは裁判になった場合は裁判官といった者が、「被疑者はどんな人物か?」を知るための調書になります。

「身上調査書」は、簡単に言えば調書形式で作る履歴書のようなものですが、事件を捜査する上で警察や検察、そして裁判官にとって非常に重要な書類です。警察や検察が捜査を進めるうえで、誰の証言を取るか、交友範囲はどのようなものか、生活範囲はどこかなど、重要な手がかりを見つける鍵が潜んでいる可能性が高いと考えるためです。

これらの「供述調書」は、この後いくつか作成される調書のひとつであり、事件の捜査官は「これから、弁解録取書を作ります」「身上調査書作成のために生い立ちを聞きます」など、作成する調書の内容までは教えてくれないため、最終的に署名拇印を求められる時に調書を見て初めて理解できるものとなります。

供述調書は警察や検察の捜査官が作成

供述調書」は概ね、被疑者が一人称で語った内容を捜査官が書き留めた文体で作成されていますが、取調べにおいて被疑者が語ったことがそのまま記録されるわけではないことに注意が必要です。

取調べにおいては、捜査官が被疑者に証拠を提示したりしながら、事件の内容を問いただしていき、適当なところで取調べの内容を被疑者が自ら語った形にして作文するのです。

手順通りに作成されているか確認する

捜査官が勝手に作文するものですから、被疑者の主張を言葉でうまく伝えられない場合には、誤った内容で調書が作成されてしまうことがあります。また調書の作成は、以下の刑事訴訟法で定められた手順により行われなければならず、もし違法な作成方法があったならば、必ず弁護士に報告するようにしましょう。

警察が逮捕状を取って被疑者を逮捕した後、「供述調書」を作成することの法的根拠は、下記の刑事訴訟法第198条および203条に規定されています。

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

○2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

これらの条文を覚えている人は少ないと思いますが、知識として持っていれば、もし万が一身に覚えのない罪で逮捕されてしまった場合に非常に有用ですので、一読して頭の片隅に入れておくことをお勧めします。

捜査官に対してイライラしないように

「供述調書」は捜査官がパソコンで作成し、プリントアウトして被疑者に読み聞かせ、あるいは読ませて確認をするのですが、中には事件内容とは関係ない間違いがあるとも言われています。単なる誤字脱字を始め、意味が通っていない文章など、事実誤認につながる可能性もあるのです。全面的に罪を認めている場合でも、調書の内容によっては後の裁判で罪が重くなってしまうことも考えられますので、入念に確認を行うことが大切です。

上記の条文にもあるように、被疑者の求めで書き直し、あるいは補足に応じないことは違法ですので、主張が伝わらないことにイライラせず、根気強く事実を主張し納得できる調書を作らせるようにしましょう。

納得いかない供述調書への署名拇印は拒否!

万が一刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、罪への意識から警察などの捜査員の言いなりになってしまい、何でも言われた通りに応じてしまうことがあるかもしれません。しかしそこで気をつけなければいけないことは、捜査員が作成する調書への署名は、全面的に調書への「同意の証」として重要な証拠に採用されてしまうという点です。

もし罪を犯していたとしても、やってもいないことの責を負う必要はなく、量刑が無駄に増えてしまうことは避けなければなりません。調書の内容に間違いがあったり、事実と違うことが書かれていたりすれば、署名拇印を拒否することが認められていることを覚えておきましょう。

調書は必ず印刷され、読み聞かせが行われる

昔は捜査員が作成する調書は、手書きで行われていましたが、現在ではすべてパソコンでデータとして作られています。データはいくらでも改ざんが可能なため、不正を防止するために取調べによって作成された調書は、被疑者の目の前で必ず印刷されることになっています。

印刷された調書は、捜査官が自ら読み上げて被疑者に内容を聞かせる読み聞かせが行われ、たいていの場合はその調書を被疑者に手渡し、自身に内容を確認させます。確認が終了すると、抜き取り改ざんを防止するために、捜査官は被疑者に調書の各ページに署名して拇印を押すように要求してくるのです。この際、内容に間違いや事実と違う点があれば、署名拇印を拒否できます。

取調べの冒頭に、上記の刑事訴訟法198条に規定されているように、捜査官は黙秘権の告知を必ず行いますが、調書への署名拇印は義務ではないことには同様の義務がないため、誰も拒否していいということを教えてくれません。そのため捜査官からは、印刷された調書への著名拇印をあたかも義務のように求めてくる場合があるようです。

しかし調書は捜査官が、取調べをしている被疑者が罪を犯したという前提で作成するもので、被疑者が証言していないことや事実以上の悪意を持って犯行を行ったかのような表現を書き込むというおそれがあります。

読み聞かせを受けた上で被疑者自身が調書を読めば、事実と違うことには気づくはずですが、被疑者が訂正を要求しても完全な嘘でもない限りは、なにかしらの理由をつけて、そのまま署名拇印を求めてくる可能性さえあるのです。ここで言われるがままに署名拇印を行ってしまうと、調書に書かれたことはすべて事実だと被疑者自身が認めたことになってしまいます。

どんなに細かい事でも、極端な話では誤字脱字も、事実と異なることがあれば調書の書き直しを要求することが重要で、訂正が認められない場合は署名拇印を断固拒否しましょう。

弁護士に確認し、慎重な態度で取調べに臨もう

調書への署名拇印に関しては、上記の刑事訴訟法198条の4項および5項に、「被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない」「…署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない」と規定されています。

取調べに対する対応の方法は弁護士と相談し、調書への署名拇印を行うのが正しいのかどうか、逐一アドバイスを受けることも大切になってきます。決して捜査員の言いなりにならず、自分が信じる真実だけを語り、記録に残すようにするべきでしょう。

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