公務員が逮捕されると仕事はクビ?公務員逮捕の実例と生活への影響

公務員が逮捕されると仕事はクビ?公務員逮捕の実例と生活への影響

公務員が逮捕された場合、仕事は「懲戒免職」になるのでしょうか?

実は逮捕されただけでは免職になりませんが、有罪判決を受けると職を解かれる可能性が充分にあります。免職までいかなくても「減給」や「停職」などの懲戒処分を受ける可能性があるので、注意しましょう。

今回は公務員が逮捕されたときの影響や対処方法について、解説します。

公務員が逮捕されると仕事を辞めさせられる?

そもそも公務員が逮捕されたら仕事を辞めさせられるのでしょうか?

実は「逮捕されただけ」で職を解かれる可能性はありません。逮捕されても「有罪」が確定するわけではないからです。誤認逮捕の可能性がある以上、いきなりの免職はありません。

公務員の有罪は欠格事由に該当し、免職になる可能性

ただし、逮捕後起訴されて「有罪判決」が出たら「免職」となる可能性があります。
公務員の場合「禁固以上の刑」が下されると「欠格事由」に該当するため、それ以上仕事を続けられないのです。
この欠格事由のルールは、地方公務員でも国家公務員でも同じです。

禁固以上の刑は、具体的に以下のような刑罰です。

  • 禁固
  • 懲役
  • 死刑

「執行猶予」がついても禁固や懲役刑となれば欠格事由に該当するので、職を解かれて「無職」となってしまいます。
一般の会社員の場合には、禁固以上の刑罰を受けても仕事を続けられるケースが多いので、それと比べると公務員は逮捕のリスクが高いといえるでしょう。

禁固以上の刑が下される犯罪とは

公務員の欠格事由となる「禁固以上の刑」が下される犯罪には、以下のようなものがあります。

交通事故、道路交通法違反

交通事故や飲酒運転などの道路交通法違反でも、悪質な場合には懲役刑や禁固刑が下される可能性があります。

詐欺、窃盗

詐欺や窃盗事件を起こすと、被害額が大きい場合などには懲役刑が下される可能性があります。

暴行、傷害

暴行や傷害事件でも悪質な場合や相手に大けがをさせた場合などには懲役刑が下される可能性があります。

横領

経理担当の公務員が公金を横領した場合などには懲役刑が下される可能性があります。

痴漢や盗撮などの性犯罪

痴漢や盗撮でも、悪質な場合や何度も繰り返している場合などには懲役刑が適用される可能性が高くなります。

収賄

収賄罪にも懲役刑が適用されます。
日頃は真面目に暮らしていても、ふとしたきっかけで巻き込まれる犯罪があります。公務員の方は一般の方以上に交通違反や性犯罪などにかかわらないよう、注意しましょう。

公務員の逮捕でよくあるケース

実際に公務員が逮捕されるケースとして、どういった事案が多いのでしょうか?具体例をみていきましょう。

建造物侵入で逮捕された事例

2020年8月2日、青森県職員の男性が女子トイレに侵入し「建造物侵入罪」で逮捕されました。男性は女子トイレ内でスマホを持ち出し、ドアの仕切りの下に差し入れて盗撮をしようとしていたようです。実名報道されました。

参考:青森市役所職員が女子トイレに侵入/建造物侵入容疑で男逮捕/青森(2020年8月)

飲酒運転、交通事故

2006年に、福岡市の職員が飲酒運転のうえ死亡事故を起こしました。この事件は大きな社会問題となり、飲酒運転厳罰化に拍車をかけるきっかけとなったものです。
飲酒運転や交通事故も公務員が起こしがちな犯罪です。特に交通事故は、故意でなくても起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。

参考:Wikipedia 福岡海の中道大橋飲酒運転事故

痴漢、盗撮、児童買春などの性犯罪

公務員が性犯罪を起こしてしまうケースも後を絶ちません。痴漢、盗撮、児童買春などが多くなっています。
特に児童買春は非常に重く処罰されるので、初犯でも懲役刑が適用されるリスクが高くなります。また公立学校の教員が未成年の教え子に手を出したら、刑罰は重くなくても懲戒免職される可能性が高いと考えましょう。
性犯罪で逮捕されると、免職にはならなくても、職場に戻ったときの周囲の目が冷ややかで、事実上仕事を続けるのが困難となりやすい問題もあります。

ホテルで女子高生にわいせつな行為 さいたま市職員を免職に 友人結婚式の帰りに飲酒運転事故の職員も/埼玉(2020年4月)

収賄

発注を担当する部署の方は、業者と癒着して談合などの不正を行うケースがあります。特に収賄罪が成立すると、懲役刑しかないので有罪になれば必ず欠格事由に該当し、職を失います。
前副町長に有罪判決 山形・大石田町の談合汚職 /山形(2020年7月)

公文書偽造、虚偽公文書作成

公務員の中には、日頃から公印を取り扱って公文書を作成できる立場の方がおられます。権限のない人が勝手に公文書を作成すると公文書偽造罪となりますし、虚偽の公文書を作成した場合には虚偽公文書作成罪が成立します。
新城市が公文書偽造の職員3人を停職、上司ら2人も処分/愛知(2024年1月)

横領

経理を担当している公務員の方が横領事件を起こすケースも多々あります。自分のFXや先物などの投資資金に充てるために長年公金を横領し続けたなどという悪質な事例もいくつもみられます。横領罪で懲役刑が適用されたら欠格事由に該当し、職を失うと考えましょう。
石垣市職員が166万円横領 「生活に困り」駐車場売上金を着服/沖縄(2020年8月)

欠格事由にならなくても懲戒処分を受ける可能性がある

公務員の場合、禁固刑や懲役刑による欠格事由に該当しなくても、「懲戒処分」によって免職される可能性があります。
懲戒処分とは、問題行動を起こした公務員に対し、ペナルティを与える制度です。

懲戒処分には以下の4種類があります。

戒告

文書などで正式に注意するペナルティです。単に注意を受けるだけなので業務に支障はでませんし普段の給与額にも影響しません。ただしボーナスの査定では最低ランクにされるので、成果を出しても低い金額しかもらえなくなります。

減給

給与が減額されるペナルティです。減給率や割合はケースによって異なり、たとえば「3か月間、10分の1の給与を減給」などとされます。またボーナスの査定では最低ランクとされ、成果を出しても低額な金額しか支給されません。

停職

出勤を停止されて自宅待機を強いられるペナルティです。停職中は給料もでません。またいったん停職処分を受けると、後に復帰したとしても出世が難しくなるなど不利益が及ぶ可能性が高くなります。

免職

もっとも厳しい懲戒処分です。公務員の地位が解かれ、職を失います。禁固以上の刑罰を受ければ「欠格事由」となって当然に免職になりますが、そうでなくても行政機関の裁量により、免職決定されるケースはあります。
たとえば以下のような場合、たとえ刑罰が軽く済んでも「懲戒処分」として免職される可能性が高くなると考えましょう。

  • 世間の注目を浴びるような重大な犯罪を犯して公務員の信用を失墜させた
  • 故意に秘密を漏えいした
  • 入札談合に関与した
  • 公文書の偽造、変造、虚偽公文書を作成した

公務員に多い「事実上職場に戻るのが難しくなるケース」

公務員が犯罪を犯して逮捕されても、罰金刑以下となった場合には欠格事由にならないので当然に免職されるわけではありません。
ただし事実上職場に戻るのが難しくなる例が多いので、注意が必要です。

職場に戻っても周りの目が冷ややかでいたたまれなくなるケースもあるでしょうし、官舎に住んでいる方などは近所の方からも敬遠されて家族も肩身の狭い思いをする可能性が高くなります。昇進も難しくなり、人事異動によって更迭や左遷されるケースもあるでしょう。結局はいたたまれなくなって辞めざるを得なくなるケースも多いので、「刑が軽かったから安心」とはいえません。

公務員が逮捕された場合の生活への影響

公務員が逮捕されると、生活にはどういった影響が及ぶのでしょうか?

実名報道による不利益を受ける

事件が起こって被疑者が逮捕されると、新聞やニュースなどで報道される可能性があります。このとき「被疑者の実名」を公表して行う報道を「実名報道」といいます。
実名報道するかどうかについては各メディアが判断しますが、一般的に公務員や社会的地位の高い人が事件を起こすと実名報道されやすくなっています。警察官や公立学校の教員、市役所の職員などは、痴漢をしただけで全国的に名前と年齢を公表されて報道される可能性が高いといえるでしょう。最近ではネットニュースで情報が拡散されるため、事件から何年も経過して人々の記憶から薄れても、ネット上に情報がいつまでも残ってしまうリスクがあります。

長期欠勤のリスク

逮捕後、引き続いて「勾留」され身柄拘束を受けると、20日以上の長期にわたって出勤できなくなるケースも少なくありません。無断欠勤が続くと懲戒処分の対象となる可能性があります。公務員には有給がたくさんあるので、消費しつつ欠勤を防ぎましょう。

自分や家族が嫌がらせを受ける

世間の人は「公務員には、まじめに国や自治体のためにはたらいてもらわないと困る」と考えているものです。自分たちの納めた税金から俸給を与えているのですから、当然です。それにもかかわらず、公務員が痴漢や横領、飲酒運転などの不祥事を起こしたら、国民が強い憤りを感じるのもやむを得ません。
公務員が逮捕されたら、さまざまな嫌がらせを受ける可能性があります。本人だけではなく妻(夫)や子どもまで誹謗中傷されて傷つけられるでしょう。

懲戒処分を受ける

公務員が逮捕され、有罪判決を受けたら何らかの懲戒処分は免れないと考えてください。たとえ罰金刑で済んだとしても、停職や減給などの処分が下されます。将来的な昇進も厳しくなり、公務員人生が一気に狂ってしまうリスクがあります。

再就職が難しくなる

もしも犯罪行為が原因で懲戒免職されたら、民間企業へ再就職しなければなりません。しかし求職先の企業へ過去の犯罪や免職を知られてしまったら、採用してもらえる可能性は一気に低下します。求職先には、以下のようなプロセスで犯罪を知られる可能性があります。

面接で前科の有無を聞かれる

面接の際、前科の有無を直接聞かれたら嘘をつくわけにはいきません。かといって正直に話すと不採用となる可能性が高くなるでしょう。

公務員を辞めた理由を聞かれる

なぜ公務員を辞めたのか聞かれたら、事件について触れざるを得ないでしょう。過去の犯罪を知られて不採用となる可能性が高まります。

実名報道された

実名報道されたら、ネットニュースにその情報が残ります。企業が実名検索したらすぐに事件を知られてしまうでしょう。
公務員としての再就職はさらに困難です。そもそも執行猶予期間中や刑期中は再就職できませんし、仮にその期間を終えたとしても採用してもらうのは極めて難しいでしょう。

公務員が逮捕された後の流れ

公務員が逮捕されると、以下のような流れで刑事手続が進みます。

逮捕後48時間以内に検察官へ送致される

逮捕されたら、48時間以内に検察官の元へと送致されます。

24時間以内勾留されるかどうか決定される

検察官が、「引き続き身柄拘束が必要」と判断したら勾留請求します。裁判所が勾留決定すれば身柄拘束が続きます。一方、「勾留が不要」と判断されれば釈放され、在宅のまま捜査が続けられます。

取り調べ

勾留期間は最長20日間です。その間、取り調べを受けたり実況見分に立ち会ったりします。

起訴、不起訴の決定

勾留期間が満期になると、検察官が起訴か不起訴かを決定します。起訴されれば刑事裁判になり、有罪判決が下されると前科がつきます。不起訴になったら刑事裁判にはならず、罪も確定しないので懲戒処分を受ける可能性は大きく低下します。

刑事裁判

刑事裁判には略式裁判と通常裁判があります。略式裁判になる場合、適用される刑罰は罰金刑以下となるので、公務員の欠格事由に該当する可能性はありません。一方、通常裁判になると禁固刑や懲役刑が適用される可能性が高くなるので、無罪判決を獲得しない限り当然免職されるリスクが高くなります。

逮捕された公務員がとるべき対処法

公務員が逮捕されたら、以下のような対応が必要です。

今後の流れや取り調べに対する対処方法を知る

逮捕された人が自分の身を守るには、刑事手続の流れや今後予想される展開、取り調べに対する対処方法などに関する知識が必要です。

そのためには、刑事手続に詳しい弁護士によるアドバイスが必須となるでしょう。すぐに当番弁護士や私選の弁護人を呼び、接見に来てもらって話をしてください。最低限の知識を得ていれば、取り調べ時に虚偽の自白をしてしまうなどの不利益を防止できます。

身柄拘束を解くための活動

公務員が逮捕されたら、一刻も早く身柄拘束を解く必要があります。警察の留置場で拘束を受け続けている限り、出勤もできず家族とも自由に連絡をとれません。社会活動が完全に停止され不利益が大きくなってしまいます。

  • 検察官に勾留決定しないようにはたらきかける
  • 勾留されたら準抗告や勾留取消処分の申立をして争う
  • 勾留執行停止を申し立てる

状況に応じて上記のような活動を進め、早期釈放を目指しましょう。勾留されている被疑者本人が自分で手続きするのはほとんど不可能なので、早めに刑事弁護人を選任して必要な対応をしてもらってください。

職場への対応

公務員が逮捕されてしばらく出勤できなくなったら、職場への対応が必要です。有給を消化するとしても、その連絡をしなければならないでしょう。
逮捕された事実を知られた場合、実名報道された場合などには、事件の内容や今後予想される展開、対応策などについての説明もしなければなりません。
家族が説明するのも不可能ではありませんが、適切に対応できないケースも少なくありません。混乱がさらに大きくなってしまうリスクも考えられます。

職場への対応は、刑事弁護人に任せるのが最善です。公務員の刑事弁護に精通した弁護人を選任し、適切に対応してもらえれば復職したときの不利益も小さくできてスムーズに戻っていけるでしょう。

家族との連絡

逮捕されると、外部とのコミュニケーションが遮断されます。携帯もネットも使えず、家族との接見すら制限されます。逮捕後勾留までの3日間は、家族とも一切面会できません。勾留期間に切り替わっても面会時間は10~20分程度で捜査官の立会があり、自由に話せる雰囲気ではありません。

家族と連絡をとるには刑事弁護人が必要です。弁護人は時間の制限もなく捜査官の立会もなしに自由に被疑者と接見できます。特に「接見禁止命令」が出たときには弁護人しか接見が認められなくなるので、早急に弁護士に依頼しましょう。

被害者との示談交渉

痴漢などの性犯罪や交通事故、暴行傷害、窃盗などの「被害者がいる事件」で逮捕されたら、早急に被害者との示談交渉を進める必要があります。

早期に示談が成立したら、不起訴処分にしてもらえる可能性が高くなるからです。不起訴になれば前科がつかないので、一切の懲戒処分を受けずに済むケースも多々あります。身柄拘束された状態で被害者に連絡を入れて示談するのは困難なので、早めに刑事弁護人を選任して示談を進めてもらいましょう。

不起訴を狙うには勾留満期になる前に示談を成立させる必要があるので、交渉は早期に開始しましょう。逮捕されたらすぐに刑事弁護人を選任し、被害者に連絡を入れて示談を進めてもらってください。

マスコミ対応

公務員が逮捕されると、実名報道されるケースも多く「マスコミ対応」が必要となります。とはいえ勾留されていたら自分で対応するのは困難ですし、在宅事件になっていても本人が一人で出ていって釈明するわけにもいかないでしょう。刑事弁護人に依頼し、不利益を最小限度にとどめる対応をしましょう。

公務員が逮捕されたら弁護士に相談を

公務員が逮捕されたとき、自分1人でできることは限られています。早急に弁護士を呼び、刑事弁護活動を開始してもらいましょう。このとき、なるべく「公務員の弁護に精通している弁護士」を選任すべきです。ネットで刑事弁護に詳しい弁護士を探し、早急に接見や弁護活動を依頼してあなたやご家族の利益を守りましょう。

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