暴行罪は初犯でも逮捕される?懲役年数、罰金の相場と解決方法

パンチする男

暴行罪における初犯と前科者の違い

初犯とは過去に罪を犯した経歴のない者のことを指します。
特にここでは、暴行罪に関する初犯かどうかに言及し、過去に暴行罪で処罰されたことがない者が逮捕されるのか、また刑罰についても紹介していきます。
逆に、このページでいう前科者とは過去に他人を暴行し罰せられた者とします。

まず、同じ暴行の行為をしたにもかかわらず初犯だからといって、暴行罪ではなくなるということはなく、前科者・初犯いずれも暴行罪の範囲内で処罰されることに違いはありません。
そして、逮捕についても、初犯かどうかが逮捕・不逮捕の評価基準にはほとんどなりません。ただし、まったく考慮されないわけではなく、逮捕をするかどうか、判断材料の一つとしては考慮されます。

暴行罪の判断で初犯である事実は加害者に有利に働く

全体的な傾向として、初犯であるという事実は加害者に有利に働きます。この傾向は与えられる罰の内容やその前段階の起訴・不起訴の判断にも現れます。

暴行罪になるような行為をしたとしても即座に有罪となるわけではありません。
事件を捜査した上で検察官が起訴処分または不起訴処分等の決定をし、起訴処分になった場合に刑事裁判が始まり、そこで被告人(加害者)の有罪無罪や処罰の内容が審理されます。
不起訴となれば前科が付くこともなく、罰を与えられることもありません。暴行罪の初犯であれば不起訴処分を得ることができる可能性も十分にあります。

また刑罰について、その内容は一定の範囲を設けて定められており、その範囲内で事件の事情を考慮して具体的に決められます。
そしてその際に初犯かどうかが関係してきます。結局のところ、暴行の罪に問われるのが初めての者は、そうでない者と比べて逮捕や起訴をされる確率は低くなり、有罪となった場合の刑罰も軽くなる確率が高くなります。

暴行罪について

暴行罪は刑法第208条にその規定があります。

208条
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

ここでは、この条文をかみ砕いて理解し、どんな場合に暴行罪となるのか説明していきます。

何が「暴行」に該当するか

当たり前のことですが、暴行罪になる者は「暴行」を加えた者です。
ただし、この「暴行」が具体的にどのような行為を対象としているのか知っておかないと、意外な行為が罪に該当し罰せられることもあり得ます。

この「暴行」という言葉について専門的な言い方をすると、「他人の身体に対して不法に有形力を行使すること」となります。
要は身体に対して殴るといった物理的な作用を及ぼすことを言います。蹴ったり突いたり、押したりすることも十分暴行になり得ます。

こうした殴る・蹴るなどの行為は暴行にあたるだろうと理解しやすいかと思いますが、直接ダメージに繋がらない胸倉を掴むといったことも暴行に含まれることがありますので注意が必要です。
判例では、人の衣服を引っ張った行為や人に塩を振りかけた行為などもここで言う暴行にあたると評価されています。

一方、暴行にあたる行為でもそれを意図して行ったのでなければ罰せられません。
暴行罪の成立には「故意」が必要だからです。人を殴るつもりで殴ったのでなければこの罪にはあたりません。

そのため間違って手や足が当たってしまったというだけで処罰されるということは基本的にはありません。
ただし、結果的に人を殴ることになってしまっても構わないと考えていた場合には故意が認められ、処罰の対象となります。
そう考えれば、周囲に多くの人がいる中で拳を振り回し、特段誰かを殴ろうという意図がなかったとしても、当たっても構わないと思うもしくはそう評価されうる状況であれば罰せられる余地はあるということになります。

暴行罪の刑罰は?

暴行罪について法律で定められている刑罰は、2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、科料のいずれかです。

懲役刑は刑務所での生活を強いられそこで所定の作業をする義務が課せられるという刑罰です。上記の中では最も重い罰となります。
ただし最大でも2年間と上限が設けられており、明記はされていないものの下限については1か月以上と決まっています。
懲役刑が言い渡され実刑となれば、どんなに短くても1か月は刑務所に入らなければなりません。

罰金刑と科料はいずれもお金を支払わなければならないという内容の刑です。
罰金と科料は1万円を境に区分され、1万円以上の金銭徴収だと罰金刑、1000円から1万円未満なら科料ということになります。
そのため、単純に科料は罰金刑に比べて軽い刑であると言えるでしょう。

拘留は、懲役刑よりも短い期間刑事施設に入る内容の刑のことです。ただし、懲役刑と違ってその期間中作業をする義務が科せられず、ただ身柄を拘束されるだけになります。

暴行罪「未遂」は罰せられない

ちなみに暴行罪では未遂を処罰する規定がないため、人を殴る意思を持って実際に殴りかかっても、失敗して殴ることができなかった場合には罰せられません。

故意なく怪我などをさせてしまった場合は過失傷害罪

前述のように、故意なく暴行した場合も罪に問われませんが、傷害(怪我など)という結果を生じてしまった場合には過失傷害罪という別の犯罪に該当してしまいます。
ここでの「傷害」については、失神させることや嘔吐を起こさせたことなども含まれ、一般的に怪我と呼ばれるものよりもその範囲は広いです。

暴行罪の罰金の相場

暴行罪での罰金刑は最大でも30万円です。
懲役刑も予定されていますが暴行事件での多くは、特に初犯の場合、罰金刑で済むことがほとんどです。金額は1万円から30万円という範囲の中で決められます。

相場については一概に言えるものではありませんが、初犯であれば上限である30万円が科せられる可能性は低く、数万円から10万円程度に収まることが考えられます。

示談金が罰金を越えるケースも

ただし、被害者と示談を行う場合にはこの金額を超えることも珍しくありません。
場合によっては50万円以上、さらに加害者の立場や経済力などに応じて100万円以上になることもあります。
そうすると有罪となり罰金刑が科せられたほうが支払う金額は少なくて済みますが、示談成立によって不起訴獲得ができれば前科が付かないというメリットがあります。

暴行罪の時効

時効として定められた期間を経過すれば罪を問われることはなくなります。
暴行罪では犯行を終えてから3年が時効として設定されており、具体的には、この期間を経過することによって検察官が起訴できなくなるため処罰される可能性はなくなります。

この時効は暴行罪という犯罪に着目したものですが、この事件をきっかけに民事上の請求をされることもありますので、こちらの時効についても知っておく必要があるでしょう。

損害賠償請求権は損害と加害者を知った時点から3年

上の時効は公訴ができなくなるというもので、罰せられるかどうかが問題になりますが、民事上の時効は被害者個人との関係において慰謝料を含む損害賠償の請求ができるかどうかという問題になります。

こちらの時効についても期間は3年ですが、3年を計算する起算点は被害者が損害と加害者を知った時点となるため、必ずしも公訴時効と一致するわけではありません。ただし損害賠償請求の権利は犯行から20年を超えて行使することはできません。

暴行罪はどんな場合に逮捕される?

人を暴行したとしても、必ず逮捕されるとは限りません。
そこで、以下ではどんな場合に逮捕されてしまうのか、逮捕されるとどうなってしまうのか、そして初犯の場合にも逮捕されるのかどうか説明していきます。

逮捕にもさまざまなパターンがある

警察官でも自由に人を逮捕できるわけではありません。

通常逮捕

原則は警察側から裁判官へ逮捕状の請求をし、司法審査を経て、許可が下りれば逮捕状が発付され逮捕をする権利を得ます。

これは、「令状主義」という考え方に従った手続のうちの一つで、逮捕のような人権侵害になりかねない行為を簡単に行わせないために採られています。家宅捜索などその他強制力を伴うような行為には事前に令状を持っていなければなりません。

このように、原則通りの逮捕状をもって逮捕するケースを通常逮捕と呼びます。
事件発生後被害届や告訴・告発等を捜査機関(警察など)が受けることで捜査が始まり、加害者の特定後、身体を拘束していなければ逃亡もしくは証拠を隠してしまうと判断されてしまったときには逮捕状の発付後自宅などに警察がやってきて逮捕されることになります。
そのため、事件当日からは数日・数週間、または数か月の期間が空くことがあります。

現行犯逮捕

一方、暴行の現場で逮捕されるケースを現行犯逮捕と呼びます。
令状主義の例外と言えますがこれは、まさに目の前で犯罪が行われており、誤認逮捕の可能性が低いなどの理由により身柄拘束が許されているものです。
しかも、これは警察官だけでなく、私人の誰でもできることです。
今まさに暴行をしている、または暴行をし終わった直後であれば、殴った相手や周囲の目撃者に現行犯逮捕される可能性があります。

暴行罪の初犯の場合、逮捕はされる?

初犯における逮捕可能性はどうなるのでしょうか。これは上で紹介した逮捕のパターンにもよります。
結論から言えば、通常逮捕のケースだと逮捕の可能性は低くなり、現行犯逮捕のケースだと初犯も前科者もほとんど関係ないと考えられます。

その理由は、通常逮捕の場合には加害者のことを事前に調べられ前科があるかどうか分かるものの、現行犯逮捕だと加害者に前科があるかどうか知り得ないからです。

逮捕の要件は本来逃走可能性や証拠隠滅可能性によるはずですが、これらの判断は機械的に行われるものではなく、実際は事件の重大性や行為の悪質性、事件の背景など、様々な状況等が考慮されます。
大きな事件であれば重く罰せられるから犯人が逃げようとする可能性は高くなるというふうに考えられることもあります。

前科があるということも少なからず不利に働き、反省していない、また繰り返す、といった心証を与えかねません。
前科があるという理由だけで逮捕することは許されませんが、確率で言えば逮捕の可能性は高くなると言えるのです。

現行犯逮捕の場合、前科の有無は無関係に逮捕される

これに対し現行犯では、特に警察官の目前で行われた暴行であれば前科など関係なく逮捕される可能性は高いです。しかしながら暴行罪の範疇で事を考えれば、相手は怪我をしていないことが前提になりますのでそれほど重大な事件であることは少ないと思われ、その場ですぐに釈放されるということもあり得るでしょう。

逮捕されるとどうなるか

逮捕後はまず警察署へ連行され、留置所で収監されます。自宅に帰されることはなく取調べを受けます。

ここでは最大48時間、その後は検察に送致され最大24時間拘束され、その間に検察官が勾留の有無を決定します。
勾留が始まると最大20日間もの間身柄拘束が継続されます。検察官はその間に起訴するかどうかの判断を下します。さらに起訴が決まればその後は月単位での勾留となり禁錮刑に匹敵する身柄拘束を受ける可能性も出てきます。

裁判で有罪判決を受けるまでは無罪の推定を受けているため被疑者・被告人であっても犯罪者とは異なります。
そのため継続して身柄拘束をする必要がなければいつでも釈放される可能性はあります。捜査に協力的な態度を取っており釈放後も取り調べに応じてくれるかどうか、逃走しないかどうか、証拠を隠さないかどうかといったことを考慮した上で判断されます。

釈放してもらうため、自分で適切な対応を探ることも大切ですが、最も効果的かつ早期に釈放されるためには弁護士のサポートを受けることが重要でしょう。

暴行罪初犯で前科を付けずに解決するには弁護士へ

暴行事件で起訴されると有罪率は99.9%!不起訴獲得がカギ

暴行罪初犯で逮捕された場合には、前科を付けずに解決できる可能性は十分にあります。

ただし、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%となっており、起訴をされて刑事裁判まで進んでしまうと有罪になってしまう確率が高くなるため、前科をつけないためには不起訴獲得を獲得することが重要になります。

そのため、加害者側がまずすべきことは弁護士に相談することです。

暴行事件の示談は弁護士への相談が最適

示談を成立させるにも、また逮捕されている場合に釈放を得るためにも弁護士の協力が非常に有効的です。
特に不起訴のためには被害者との示談成立が効果的で、早めに被害者とコンタクトを取り示談金の支払によって許してもらうことが大切です。

しかし暴行罪という犯罪の内容から考えれば、被害者は自分を殴ってきた者に会いたいと思わないのが普通で、会おうと伝えることで恐怖心を与えてしまうかもしれません。
そのため、弁護士に相談・依頼をして代理で示談してもらわなければ示談を成立させるどころか、そもそも連絡を取ることすら難しいです。

このような事情がありますので、暴行事件で逮捕された場合に前科をつけることなく解決するためには、弁護士の協力を得るという方法が最適と言えるでしょう。

また、弁護士に相談するときには「刑事事件に強い弁護士」をしっかりとチョイスすることが重要になります。

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