逮捕から勾留決定までの手続き~送検や勾留質問はどう行われるか~
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この記事で分かること
逮捕から勾留までの手続き
警察は、刑事事件の被疑者を逮捕し身柄を拘束してから48時間以内に、犯罪を立証するに足りる十分な証拠書類を揃えて、検察に送致しなくてはなりません。
証拠書類を揃えられずに逮捕から48時間を過ぎてしまうと、捜査が続いていたとしても原則として被疑者は釈放されなければならないのですが、警察が逮捕状を取った時点で十分な証拠は揃っているはずで、時間がオーバーしたから釈放ということは考えられないのが現状です。
警察から検察に被疑者の身柄が移されることを送検と呼びますが、被疑者の送検を受けた検察は、今度は24時間以内に起訴するか、あるいは不起訴で釈放するかの判断を行わなければなりません。建前上、検察は警察が捜査していた内容を知らないわけですから、警察から送られてきた証拠書類と被疑者への取調べだけで判断を行うことになるため、常識的に考えるとわずか24時間でその人が実際に罪を犯しているのかどうかを調べるのは無理でしょう。
しかし法令で逮捕の有効期限は警察の48時間と検察の24時間と定められているのです。刑事事件の手続きにおいて、起訴をするかどうかの判断は、捜査当局にとっても被疑者にとっても非常に重要なことです。そこで検察は裁判所に対して、勾留請求という手続きを行います。
勾留とは、捜査機関が被疑者を長期間にわたって拘束し、事件の調べを続けるという制度で期限は10日間、さらに10日間の延長を行うことも可能なため、被疑者の立場からすると、逮捕されてしまうと最長で23日間も身柄の拘束を受けてしまうことになります。
現実的に刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、逮捕の有効期限の72時間で釈放される、あるいは起訴されることはめったになく、必ずと言ってよいほど勾留を受けることになっています。
勾留が決まる前に行われる勾留質問
捜査当局がいくら長期の取調べが必要だと考えても、勝手に被疑者を長期にわたり拘束することはできません。
検察は被疑者をより長期間にわたる身柄の拘束となる勾留を行うため、裁判所に対して勾留請求を起こし、裁判所が勾留を行ってよいのかどうかの判断を下すことになっています。勾留請求を受けた裁判所は、検察から送られてきた請求と必要書類を確認するだけではなく、もう一方の当事者である被疑者の言い分を聞くための勾留質問を行います。
検察から裁判所に勾留請求が届いた後、裁判所は被疑者を裁判所に呼び出し、裁判官が被疑者に直接質問を行います。被疑者が質問を受けるのは法廷ではなく普通の部屋で、裁判官も法衣ではなくスーツなどを着用しているため、何も知らないで裁判所に連れてこられた被疑者は、相手が裁判官だと気づくことがない場合もあるようです。
そして裁判所や裁判官によって状況は違いますが、勾留質問は裁判官の自己紹介から始まり、黙秘権の説明が行われます。続いて逮捕の被疑事実が読み上げられ、犯罪の内容を説明し、検察が勾留を求める理由が明かされた後、裁判官は「この事実について、言いたいことはありますか?」と被疑者に聞きます。
被疑者はその事実を全面的に認めるのか、一部は認めるけれども違う点がある、あるいは全面的に認めないのかなどの言い分を答えることになりますが、勾留質問はこれだけで終了です。被疑者の答えに対して裁判官が意見を述べることはなく、質問された内容や被疑者の発言内容は、勾留質問調書にまとめられます。
勾留請求が却下されることはある?
建前としては、検察が勾留請求をすると裁判官が勾留質問で被疑者の言い分も聞き、公平に判断を行うという制度になっていますが、ほとんどの勾留請求は認められてしまうのが現実です。
被疑者が逮捕された直後に私選弁護士が弁護活動を行い、被害者との間に示談が成立した場合には、まれに勾留請求が却下されることはありますが、よほどのことがない限り、継続した捜査が必要だと判断されて勾留が認められてしまうのです。
特に、被疑者が逮捕にかかる容疑内容を否認していたり、一部でも認めていなかったりする場合には、勾留が認められることは確実です。
勾留質問に気づかないことがある?
刑事事件の発生件数が都市部に比べて少ない地方都市では、検事が送検を受けて被疑者に対して行う検事調べは午前中に行われ、午後からは裁判所で勾留質問が行われます。こうした刑事手続きを円滑に進めるためなのか、日本全国ほとんどの地域にある地方検察庁と地方裁判所は徒歩で行き来できるほどの距離にあります。
検事調べが終わった被疑者は、自身に対する勾留請求が裁判所に送られていることも知らされず、裁判所の同行室に連行されて順番待ちをする事になります。やがて自分の番になると裁判官と書記官のいる部屋へと連行され、警察の取調べや検察調べで聞かれたことと、ほぼ同じ内容の質問をされるのです。
勾留質問を行うのは裁判官なのですが、前述の通り場所は法廷ではありませんし、法衣姿ではなく普通のスーツを着ている人に質問されるのですから、被疑者には相手が裁判官だということも、いま自分が受けているのが勾留質問であることにも気づれないうちに手続きが完了してしまうこともあると言われています。
勾留質問の後、勾留が認められるかどうかが決められるのですが、裁判官が直接被疑者に伝えることもあるようですが、同行室で勾留決定を知らせる書類が渡されるだけのことが多いようです。
都市部における刑事手続きは忍耐が必要?
検事調べから勾留質問は、地方都市では1日で終わることが多いのですが、毎日数百件の事件が送検されてくる都市部では、2日に分けて行われるのが普通となっています。
送検された当日、地検で丸一日かけて検事調べが行われ、いったん留置場に戻った翌日、今度は裁判所で一日を過ごすことになるのです。検事による取調べや勾留質問の時間が都市部の方が長いということはありませんし、手続きに必要な時間は地方も都市部も変わりはないのですが、都市部の場合は同行室で待たされる時間が長いのです。
留置場内で身柄の拘束を受けているのも辛いのですが、都市部では2日連続で検察や裁判所に呼び出され、一日中狭くて無駄話も一切許されない同行室で、自分の順番が来るまで待たされるのが一番キツいという被疑者もいて、人それぞれですが留置場の方が楽なのかもしれません。
刑事事件の手続きは、知っておいて損はない
刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、以上のような刑事手続きが事務的に進められるわけですが、まったく予備知識のない人にとっては、知らない間に自分の身柄が警察から検事に送検され、勾留質問のために裁判所に連行され、訳が分からないうちに、いとも簡単に勾留決定がなされてしまうと感じるかもしれません。
起訴される前の逮捕や勾留を受けている期間は、ただ取調べを受けて留置場生活が続くだけであり、どこに調べられても同じと感じることもあるでしょう。しかし送検や勾留請求などのタイミングで、やり方次第では身柄が解放されることもあり得ますので、刑事事件の手続きの基本的な知識と、弁護士とのやりとりの方法などは、一般常識として持っていて損はありません。
勾留請求は必ず認められる?
逮捕に続いて被疑者の身柄拘束継続する勾留は、検察からの請求で裁判所がその正当性を検討するというのが刑事手続きの流れですが、実際には裁判官が勾留請求を即時に却下するということはめったにありません。
逮捕容疑を一部でも否認しているような被疑者の場合は、ほぼ100%で勾留は決定されてしまいますし、容疑を認めている被疑者ですらよほど無理な逮捕でない限り、裁判官は検察の請求通り勾留を認めると思っておいた方がよいでしょう。
近年、弁護士の努力が実を結び勾留質問の時点で勾留が却下されることもあるそうですが、それは逮捕直後から依頼した私選弁護人が素早く立ち回っているおかげだと言えるでしょう。
勾留を取り消す方法がある
刑事事件に強く腕のよい弁護士と早く出会えれば、必要以上の身柄拘束を免れることができるかもしれません。裁判所が勾留請求を認め、勾留が決まってしまっても、勾留理由開示請求、勾留決定に関する準抗告、勾留取消請求、勾留執行停止の申立、在宅捜査への切り替えなどの方法で、身柄の釈放を実現する方法はあるのです。
これらの方法は、起訴前に身柄の拘束が解かれて自宅に戻れるものですが、あくまで勾留を取り消したり一時的に執行を停止したりするもので、留置場から解放されて自分の家に戻ることができますが、事件の手続きそのものが終わったわけではありません。
警察と検察による事件捜査は続き、必要があれば警察や検察から呼出しを受けて出頭する必要があります。ただし、留置場や拘置所で身柄を拘束されたままでいるのと、自宅に戻って自由な生活を送りながら捜査を続けられるのとでは、社会生活への復帰という意味で大きな違いがあります。
被疑者自身の力だけでは勾留を取り消すことは極めて難しいため、弁護士の力を借りて一日でも早い社会復帰を目指しましょう。
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