オレオレ詐欺とは~受け子は逮捕されやすい?犯罪の手口と罰則、逮捕された場合の対処法

オレオレ詐欺

オレオレ詐欺とは

オレオレ詐欺とは、電話やメールなどの手段でお金をだまし取る「振り込め詐欺」の一種です。

オレオレ詐欺の特徴的な点は、被害者にとって身近な人間になりすまし、詐欺行為を働くことです。

孫や子供といった親族のフリをして電話をかけ、「事故を起こして示談金が必要になった」「会社のお金を横領したので、補てんしないとクビになる」などと被害者をだまして、現金やキャッシュカードなどをだまし取ります。

オレオレ詐欺の現状

オレオレ詐欺は、被害者の家族を心配する気持ちを利用した悪質な詐欺です。電話やハガキ等で相手を信頼させ被害者の財産を盗み取ろうとする「特殊詐欺」という犯罪手口の類型のひとつに数えられています。

特に、高齢者がターゲットになることが多く、毎年多額の被害を出していることから社会問題化しています。

高齢者女性の被害が多発!特殊詐欺の中でも最も多いタイプの犯罪

警察庁が発表した「令和元年における特殊詐欺認知検挙状況等について」によると、令和元年のオレオレ詐欺による被害額は111.6億円。前年度より大幅に被害額は減少したものの、特殊詐欺全体の中ではもっとも多いタイプの犯罪となっています。

なお、被害者の実に85%近くが65歳以上の高齢女性であり、特に80歳前後の人で被害が多発している状況です。

若者が「加害者」として巻き込まれやすい犯罪という側面も

さらに、オレオレ詐欺は、若い世代にとっても深刻な影響を及ぼしかねない犯罪といえます。

本人がそれと知らないうちに詐欺の片棒を担がされる事例も珍しくないからです。実際、軽いバイト感覚で仕事を引き受けた大学生や高校生が逮捕されるケースも出ています。

その意味では、若者が「加害者側」として巻き込まれやすい犯罪の1つといえるかもしれません。

オレオレ詐欺の代表的な手口

オレオレ詐欺の代表的な手口は次のようなものです。

  1. 家族や警察官などになりすまして連絡してくる
  2. 様々な口実で「現金が必要」と被害者に思いこませる
  3. 現金やキャッシュカードをだまし取る

家族や警察官などになりすまして連絡してくる

まず、詐欺師がターゲットに電話をかけます。このとき、子供や孫といった被害者の親族になりすまし、電話をかけてくるのが一般的な手口です。

場合によっては、警察官や会社の上司、弁護士などを装うケースもあります。

様々な口実で「現金が必要」と被害者に思いこませる

その後、被害者を信用させた詐欺師グループは、「事故を起こして示談金が必要になった」「浮気相手を妊娠させたので、中絶費用が必要になった」など様々な口実により、被害者の不安をあおります。
そして、現金やキャッシュカード、あるいは個人情報(キャッシュカードの暗証番号など)を要求してきます。

現金やキャッシュカードをだまし取る

その後、詐欺師グループはだまされてしまった被害者に対し、指定した口座に現金を振り込ませる、指定した人物に現金やキャッシュカードを渡すように指示します。そして、最終的に、被害者から現金や口座の預貯金などをだまし取るのです。

実際にあったオレオレ詐欺の事例

オレオレ詐欺事件の手口は年々巧妙になっており、複数の詐欺師が登場する「劇場型」による被害が増えています。さらに、その時々の社会情勢に絡んだ詐欺も登場しています。

ここでは、実際のニュースなどで取り上げられたオレオレ詐欺事件の事例を紹介します。

複数の登場人物がいるケース

息子(孫)役、警官役、弁護士役、会社の上司役など複数の登場人物が絡む劇場型のオレオレ詐欺事件が増えています。

劇場型オレオレ詐欺の特徴は、複数の詐欺師がチームを組み、あらかじめ決められたストーリーに沿ってそれぞれの役を演じる点です。複数の人物が入れ替わり立ち替わり被害者に電話をかけ、被害者を徐々に信用させます。そして、被害者がすっかり詐欺師チームの話を信じ込んだところで、金銭をだまし取ろうとしてくるのです。

新型コロナウイルスを口実に使ったケース

新型コロナウイルスを口実に使ったオレオレ詐欺事件も登場しています。

息子などを名乗り、「コロナ関係の仕事をしていて大事な書類をなくした。指定した人物にお金を渡してほしい」などと偽り、お金をだまし取るケースです。

オレオレ詐欺事件の特徴

複数人が関わり、役割分担がはっきりしている

オレオレ詐欺事件は組織的な犯罪であり、複数の人間が事件に絡んでいるケースがほとんどです。また、それぞれの役割がはっきりしており、犯罪グループが主犯格を頂点としたピラミッド構造の組織になっているのも特徴といえます。

末端の共犯者ともなると、「良いバイトがある」とだまされたり、学校の先輩に誘われたりして、軽い気持ちで犯罪に荷担してしまうケースも多いようです。

オレオレ詐欺の主犯格・共犯者それぞれの役割は以下のとおりです。

主犯格

犯罪組織のピラミッドにおける頂点にいる人、すなわち犯罪において主導的な役割を果たす人です。暴力団関係者であることも多いといわれています。

捕まれば一番重い罪に問われる立場にありますが、犯罪の実行には直接関わらないので捕まりにくいというのが現状です。

犯罪計画の立案、共犯者への指示を主導

具体的な犯罪の計画を立案し、共犯への指示を主導します。

実際の犯罪は共犯者が行うため、主犯格が表に出てくることはまずありません。
主犯格の下には、被害者をだます役(掛け子)を始め、犯罪計画の実行を担う各種の共犯者がいます。

受け子

受け子は、「被害者から現金を受け取る役」です。実際に被害者と顔を合わせるなどの行動をしていることから、オレオレ詐欺に関わった人間の中でも逮捕されやすい立場にいる人です。

被害者から現金を受け取る

受け子は、被害者の自宅に行く、あるいは待ち合わせをするなどして被害者と会い、被害者から現金やキャッシュカードをだまし取ってきます。

振り込み詐欺グループの中では末端の共犯者にあたり、「書類を受け取ってほしい」などとだまされ、知らず知らずのうちに受け子になってしまうケースも報告されています。
ただし、オレオレ詐欺は悪質な犯罪であることもあり、「詐欺だとは知らなかった」という言い訳は通用しません。

特に、受け子は、被害者を直接だまして金銭を受け取っていることから、罪が重くなりやすい傾向があります。

出し子

出し子は被害者から振り込まれたお金を引き出し、それを主犯格に渡す役です。被害者と直接関わらないので、処分は比較的軽くなりやすいといわれています。

被害者から振り込まれたお金を引き出す

出し子は、ATMに行き、被害者から指定された口座に振り込まれた現金を引き出します。

口座から現金を引き出す現場を警察に押さえられ、逮捕されることが多いです。

振り込み詐欺グループの中では、末端の共犯者に該当します。

掛け子

掛け子は、被害者に電話をかける役です。首謀格と連絡を取りながら動くため、共犯者の中では比較的高い地位にあります。

被害者に電話をかける役

渡された名簿にしたがってターゲットに電話をかけ、指定した口座にお金を振り込ませるよう言葉巧みに誘導します。

被害者を直接だましているので、罪が重くなりやすいといわれています。

犯罪の全貌も知らずに荷担してしまう共犯者も

末端の共犯者となると、主犯格の顔や計画の全貌も知らないまま、詐欺事件に荷担してしまうケースも珍しくありません。
犯罪グループの末端にいる「受け子」や「出し子」を逮捕しても主犯格までたどりつけないケースも多く、詐欺グループと警察とのいたちごっこが続いています。

オレオレ詐欺で逮捕された場合の罪状・罰則は?

オレオレ詐欺は、組織犯罪である、社会問題化しているといった理由から、逮捕されると厳罰に処せられる可能性があります。

オレオレ詐欺で逮捕された場合、具体的には次のような罪に問われる可能性があります。

詐欺罪:1か月以上10年以下の懲役

人をだまし、それによって金銭等を手に入れたときに成立する犯罪です。

詐欺罪の法定刑は1か月以上10年以下の懲役のみ。罰金刑は存在しないため、執行猶予がつかない場合は刑務所への収監が確定します。

なお、オレオレ詐欺は厳罰に処せられる傾向があるため、初犯でも実刑になってしまうリスクが高いです。

組織的詐欺罪:1年以上20年以下の懲役

特別法で定められた犯罪で、組織的に詐欺行為を働いた場合に適用されます。法定刑は1年以上20年以下の懲役であり、通常の詐欺罪よりも重く罰せられます。

窃盗罪:1か月以上10年以下の懲役または50万円以下の罰金

人の財物を盗んだときに成立する犯罪です。他人の銀行口座から勝手に金銭を引き出すような行為が該当します。

法定刑は1か月以上10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

オレオレ詐欺グループの中でも「出し子」に適用される可能性がある罪名です。

オレオレ詐欺は未遂犯でも逮捕される

詐欺罪や組織的詐欺罪、窃盗罪には未遂犯の処罰規定があります。したがって、被害者が詐欺に気づき、実際には被害が出なかったときにも逮捕・処罰される可能性があります。

オレオレ詐欺での逮捕、刑の重さはどうやって決まる?

オレオレ詐欺は重い犯罪であり、初犯でも実刑になる可能性が高い罪です。

なお、実際の刑の重さについては、次のような要素が影響します。

  • 犯人グループの中での役割
  • 被害の大きさ
  • 反省の程度
  • 示談の有無

犯人グループの中での役割

犯人グループの中で、どのような役割を担っていたかは重要な判断要素になります。

犯罪計画の中心にいる主犯格は、特に重い刑が科される可能性が高いです。10年、20年といった長期の懲役刑を科されることも珍しくありません。

また、かけ子や受け子も被害者に対して直接詐欺行為をしているので、刑が重くなりやすい傾向があります。初犯でいきなり実刑になるおそれも否定できません。

一方、被害者と直接関わらない出し子はかけ子・受け子より責任は軽いとみなされ、その分罪も軽くなりやすいようです。軽く済めば執行猶予がつく可能性もあります。

被害の大きさ

被害額の大きさにも影響されます。被害総額が大きければ、それだけ刑も重くなる可能性が高いといえるでしょう。

ただし、オレオレ詐欺は、社会問題にもなっている悪質な犯罪です。それだけに、被害額に関係なく、刑が重くなる傾向があります。

反省の程度

本人の反省なども刑の重さに影響します。本人が反省していない場合は裁判官の心証も悪くなるため、刑も重くなりやすくなります。

示談の有無

被害者と示談をし、きちんと被害を弁償したかどうかも重要な要素です。

日本の刑事事件では被害者の処罰感情や被害の回復状況が重視されます。したがって、示談が成立すると、「被害者への謝罪や被害の弁償が済んだ」ということで、被告人にとって有利な判断がされやすくなるのです。

オレオレ詐欺で逮捕された後の流れ

オレオレ詐欺で逮捕された場合、逮捕後の流れは次のようになっています。

逮捕・勾留

逮捕・勾留され、取り調べのために身柄を最大23日間拘束されます。拘束期間が長引くと、仕事や学校にも行けなくなることから社会生活への悪影響も出やすくなります。

起訴

勾留期間の間に、被疑者を起訴するかどうかの判断が行われます。

刑事裁判

起訴が決まると刑事裁判にかけられます。日本の刑事裁判の有罪率は99%といわれており、起訴されれば無罪になる可能性はほとんどありません。

未成年がオレオレ詐欺で逮捕された後の流れ

オレオレ詐欺は未成年が「共犯者」として巻き込まれることも多い犯罪です。未成年が逮捕された場合、その後の刑事手続きの流れは成人の場合と若干異なります。

逮捕・勾留

逮捕・勾留され、取り調べを受けます。

家庭裁判所に送致

取り調べ後は、処分を決めるために家庭裁判所に送られます。

少年審判

審判開始が決まると、少年の処分を決めるための少年審判が開かれます。

保護処分

保護観察、少年院送致といった処分があてはまります。

不処分決定

成人における不起訴処分にあたるものです。保護処分をする必要性がなく、再び非行のおそれがない少年に下されます。

検察官送致(逆送)

事件の内容などから、大人と同じような刑事処分を受けさせるのが相当と判断される場合に下される処分です。
検察官送致が決まると事件が検察へ送られ、その後刑事裁判が開かれることになります。

身内がオレオレ詐欺で逮捕された場合にやるべきこと

オレオレ詐欺で身内が逮捕された場合、まず家族などの取るべき行動は次の2つです。

弁護士を依頼する

まずは弁護士を頼みましょう。逮捕後72時間は弁護士以外の人間との面会は禁止されています。本人の様子を知るためにも、弁護士のサポートが必要です。

被害者に被害弁償を行う

少しでも処分を軽くするために、被害者との示談交渉を行いましょう。もっともこのとき、加害者側が直接被害者と話し合おうとすると冷静な話し合いができない可能性もあります。

被害者の感情を逆撫でするリスクを避けるためにも、示談交渉をする際は弁護士に依頼するのがおすすめです。

オレオレ詐欺で逮捕された場合は弁護士に相談を

もし身内がオレオレ詐欺で逮捕されてしまったら、まずは弁護士にご相談ください。オレオレ詐欺は重い犯罪であるため、初犯でも実刑になってしまう可能性があります。

できるだけ軽い処分を獲得するためには、弁護士の存在が欠かせません。
本人の今後のスムーズな更生をサポートするためにも、まずは弁護士の助けをかりることをおすすめします。

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