痴漢事件での示談、実際に弁護士が行う交渉の内容は?

示談書

痴漢事件の示談をするために最初にするべきこと

痴漢で逮捕された場合には、最大20日間の勾留など、長期間の身体拘束をされる可能性があります。拘束が長期間になると、職場や学校などの今までの社会生活に与える影響も大きくなりますので、痴漢で逮捕された場合に優先して目指すことは、身体拘束から解放されるようにすることです。

逮捕された後に身柄解放を目指すにあたって、最も重要な要素の1つになるのは、被害者女性との示談が成立しているかどうかという点になります。被害者女性との交渉であれば自分でもできると感じられる方もいるかもしれませんが、通常の痴漢事件では、被害者女性との交渉は弁護士への依頼が必要になります。そのため、痴漢で逮捕された場合には、最初に弁護士へ相談をすることが重要になります。

痴漢事件の示談交渉は弁護士への依頼が必要

痴漢事件で逮捕される場合、強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反のいずれかで逮捕されることになりますが、両者ともに性犯罪であることに変わりません。先程、痴漢で逮捕された場合、示談を成立させるためには弁護士への相談が必要となると説明しましたが、その理由は、性犯罪についての案件では、被害者女性との交渉を加害者本人が行うことはほとんどの場合不可能であると考えられるからです。

ここでは、なぜ加害者側が自身で被害者女性との示談交渉を進めることがほぼ不可能で、弁護士へ相談する必要があるかについて解説します。

痴漢被害者の連絡先の取得が困難

特殊な事情がない限り、痴漢事件の場合、被害者女性と加害者男性の面識はなく、痴漢事件で初めて話すことがほとんどです。車内や駅のホームで被害者女性に現行犯逮捕された後、そのまま警察署で身柄拘束をされていることになると思いますので、被害者の連絡先を知りようがありません。

それでは、警察官や検察官に対して、示談交渉のために被害者女性の連絡先を教えて欲しい旨を加害者本人が直接申し出た場合はどうでしょうか?最近は特に、個人情報の取扱いに関して厳格な運用がされていますし、痴漢という性犯罪であるということも考えると、痴漢の被害にあった女性の個人情報を、痴漢加害者の男性に対して開示するということは確実にあり得ません。また、警察などから被害者女性に開示してよいか確認があった場合でも、被害者女性が承諾する可能性はかなり低いと言えるでしょう。

痴漢被害者を怒らせてしまう可能性がある

痴漢事件には性犯罪という性質がある以上、被害者女性が、加害者男性と直接会っての謝罪をそもそも求めていない場合も多くあります。痴漢の被害を受けた女性は、加害者男性の顔を見ることや、顔を見られることに対して、純粋に嫌悪感を覚える場合もあります。また、被害者女性が未成年だった場合など、被害者の両親が激怒しているケースもあります。

仮に被害者女性の連絡先を得ていたとしても、上で説明したような状況であると思われる被害者女性側に対して、加害者男性が直接訪問して謝罪の意向を示すことで、火に油を注ぐことになり、話がかえってこじれてしまう場合もあります。

弁護士が行う痴漢事件の示談交渉の流れ

弁護士であれば、被害者女性との示談交渉のために、連絡先を教えて欲しいという旨を警察官・検察官に伝えることはできます。しかし、この場合でも、すぐにその場で被害者女性の個人情報が弁護士側に開示されるわけではありません。

被害者女性に対して、「加害者男性側の弁護士が直接謝罪に伺いたいと言っており、被害者女性の連絡先を教えても問題はないか?」というように、連絡先開示をしても問題ないかしっかりと確認されるのです。もちろん、「弁護士であれば問題ない」と、そのまますんなりと承諾する被害者の方もいますが、完全に被害者の方の意向が最優先されることになるため、当然断られることも充分にあり得ます。

開示するとしても、「電話番号のみで住所は教えられない」「こちらから連絡するので、弁護士の連絡先を教えて欲しい」などというように、多種多様な状況が生まれます。つまり、示談交渉が始まる前の、被害者女性の連絡先を取得する段階で、かなりの難関をクリアしなければならないということです。ここでは、無事に被害者女性側の連絡先を入手できた場合に、その後の示談交渉が一般的にどのように進んでいくのかについて解説します。

痴漢被害者への謝罪文の送付

弁護士が被害者の連絡先を取得したからといって、必ずしもすぐに直接の示談交渉がスタートするわけではありません。まずは痴漢行為についての謝罪文を送付する場合があります。謝罪文の内容としては、反省をしている旨、示談を望んでいる旨、今後の再発防止策などになります。

謝罪文の内容を見て、示談交渉を開始してもいいと、被害者女性側の了承が得られてはじめて示談交渉がスタートすることになります。つまり、場合によっては被害者女性の連絡先を知ることができても、示談交渉を直接することもできないケースも充分に考えられます。

ちなみに、謝罪文は弁護士が作成することもありますし、加害者男性の自筆書面を同封することもあります。相手側への反省の態度の示し方として、何が適切であるかは被害者女性の状況などを踏まえてケースバイケースで判断する必要がありますが、一般的には自筆の反省文が同封される場合が多くなります。

示談金額の交渉

謝罪文などを送るなどして被害者女性の承諾を得られると、ようやく示談交渉が開始します。示談交渉にあたってはどちらが先に金額を提示するかについて決まりはありませんが、通常は加害者側からの金額提示をすることが多いです。1回目の提示金額で被害者女性側に納得してもらえれば、その段階で示談成立となりますが、そのようなケースは非常に稀で、何度も金額のすりあわせ作業が行われた上で、示談金が決まることになります。もちろん、話し合いが一向にまとまらないこともありえます。

示談金の相場は、下の表のようになっており、強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反のどちらかによって金額に差が出てきます。加害者男性の社会的地位などによっても金額は変動しますが、一般的に100万以下でまとまることが多くなっています。

強制わいせつ罪 10万から100万円
迷惑防止条例違反 10万から50万円

示談金の支払い方法

示談金の金額などについて合意が得られれば、被害者女性に合意した金額を支払うことになります。一般的には銀行振り込みとなることが多いですが、加害者男性側の弁護士が直接出向いて手渡しすることもあります。また、ついつい軽く考えてしまう方も多いところですが、示談金の支払いは一括払いでなければならないのか、分割払いでも可能なのか、あるいは、頭金を一定額支払った残りを分割にするのかなど、具体的な支払方法は、全て示談交渉の段階で決定することになります。

被害者女性側が一括払いを求めているにもかかわらず、一括払いは難しいということになると、示談は成立していないということになります。被害者女性側としては、事件が長引くことを嫌ったり、今後支払いが続くか不安に思ったりする方が多いので、一般的には一括払いが選択されます。さらに、ここまでで同意したことを示談書という形でまとめて、署名・捺印を行います。示談書の内容や、示談書のテンプレートについては、後ほど詳しく説明します。

示談金支払いが完了して示談成立

ここまでで示談金や支払い方法について合意がされて、示談書の作成もされましたが、示談交渉はこれだけでは、まだ不十分です。示談内容について合意をして、その合意に従って金銭の支払いを完了してはじめて、検察官の判断に影響を与えることになります。

示談の合意をしたとしても、実際に示談金が支払われるかどうか検察官には定かではありません。もしかすると、示談金を支払わないままでいるかもしれないと、検察官に疑念をもたれてしまう可能性もあります。銀行振り込みをしたのであれば明細書等が残るはずですので、そのような示談金を支払った証拠を提出できる状況でなければいけません。

示談交渉においては、どのような形で合意を取り付けるか、どのような金額で納得してもらうか、どれだけ早くに示談をまとめることができるのか、全て弁護士の腕次第ということになります。そのため、どの弁護士を選ぶかが非常に重要になります。弁護士によって、得意な分野に差がありますので、痴漢事件に強い弁護士に相談をするようにしましょう。

痴漢事件の示談書に記載する内容

示談書にはここまでの内容を全て記載する必要があります。具体的には、下記の5つになります。

  1. 自らの犯行を認め、深く謝罪していること。
  2. 再発防止策
  3. 示談金額
  4. 示談金の支払い方法
  5. 支払期限

もちろん、これに加えて、題名、氏名、年月日などを記載して、書面としての体裁を整えます。しかし、これ以外にも記載しなければいけない事項が複数点残っています。ここでは、その他の記載事項を順を追って説明していきます。

清算条項

清算条項という言葉だけでは内容がイメージできないと思いますが、要は「示談が成立したので、ここで決めたこと以上の支払いをすることはありません」という旨を明記するということです。

被害者女性側にとっても加害者男性側にとっても、この示談で全て終わりであるということを確約しておく必要があります。これがなければ、いつまでも蒸し返すことが可能になってしまい、示談をする意味があまり無くなってしまうからです。個人的に請求することもないし、この件で民事訴訟を提起することもない、ということなどを記載します。

接触禁止条項

接触禁止事項については言葉の通りですが、加害者男性が二度と被害者女性と接触しない、万が一偶然見かけたとしても話しかけずにすぐに立ち去る、などの内容が記載されます。これは被害者女性のための条項で、より具体的に内容が記載されることもあります。「今後一切〇〇駅を使用しない」「今後の通勤は電車を使わず車で行う」「〇〇線は今後使わない」などというのが典型的なパターンになります。

宥恕(ゆうじょ)条項

この宥恕条項が加害者男性の身柄拘束を解くために一番大切な条項になります。宥恕条項とは、既に被害者女性が今回の痴漢事件を許しており、加害者男性の刑事処罰を望んでいないという意思があるということを示す条項です。もちろん、示談書だけでそのようなニュアンスは伝わりますが、何のために示談をまとめたのかを加害者男性の立場になって考えると、これは確実に明記しておかなければならない内容になってきます。

守秘義務条項

守秘義務条項とは、被害者女性も加害者男性も、今回の痴漢事件について今後一切口外しないという旨の約束です。これは、お互いの名誉のために記載される条項になります。

痴漢事件の示談書テンプレート

示談交渉について弁護士へ依頼している場合には、示談書も弁護士が作成しますが、示談書にどのような内容が記載されるかイメージするために、示談書のひな型を紹介します。

示談書のひな型イメージ

痴漢事件の示談交渉は弁護士に相談!

ここまで読んで頂いてお分かり頂いたと思いますが、痴漢事件では、まず示談交渉の場を設けるまでが大変です。加害者男性では、被害者女性の連絡先を手に入れることすらほぼ不可能であり、弁護士への依頼が必要になります。

さらに、痴漢で逮捕されて身柄拘束されている状況ですと、社会生活へのスムーズな復帰のためにも、示談交渉をして合意を得るまで、ゆっくりと交渉する時間の余裕もない状況です。

そうなると、刑事事件の経験が豊富なのか、示談の交渉術に長けているのか、痴漢案件を専門にしているのかなど、弁護士の選択がかなり重要になってきます。ここでの弁護士の選択が、将来を左右する選択になりますので、しっかりと痴漢事件に強い弁護士へ連絡するようにしましょう。

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