盗撮事件の示談交渉の流れ【示談が重要な理由】

示談交渉

盗撮事件での示談交渉の流れ

盗撮事件の被疑者・被告人となった場合には、示談を成立させることが重要になるケースが多いです。後ほど詳しく説明しますが、当事者同士で示談交渉はほとんどの場合上手く行きませんので、被害者との示談交渉を行う場合には、ほとんどの方が弁護士への依頼をすることになります。

弁護士に依頼した場合の弁護活動では、早期の身柄開放や処分の軽減を主な目的として行いますので、その中心的な業務としては、「被害者との示談交渉」ということになります。弁護士に依頼した後は、「弁護士に任せておけば安心」という方もいるでしょうが、「任せっきりにしておくのは不安」という方もいると思います。任せたままにしておくことが不安になる理由の1つとしては、実際の示談交渉がどのような流れで取り行われるのかわからないので、見通しが分からないという点があるのではないでしょうか。

そこで、このページでは、盗撮事件における示談交渉の流れについての説明をします。

まずは、弁護士が行う示談交渉の流れを簡単に紹介します。

  1. 被害者の連絡先を入手する
  2. 示談交渉を始めたいことを伝える
  3. 示談交渉を行う
  4. 示談書の作成

示談交渉はおおむねこのように進むことになります。1つ1つの内容については後で詳しく説明をします。

盗撮の被害者の連絡先を入手する

電車内や階段などで盗撮行為をするというような事例の場合ですと、加害者と被害者には面識がなく、通常はお互いの連絡先を知らないでしょう。この場合には、示談交渉を進めようとしても、相手先が分からないので交渉のしようがありません。

そこで、最初に弁護士がすることは、示談交渉をする相手である被害者の連絡先を手に入れるということです。警察や検察に対して、被害者との示談をしたいので、被害者の連絡先を知りたい旨を伝えます。すると、捜査機関が被害者に連絡先を伝えることの確認を取り、承諾を得られた場合には、連絡先を開示してくれることになります。もちろん、被害者に連絡先の開示を拒絶されることもあれば、加害者本人に対しての開示は拒絶した上で、弁護士のみに開示するという場合もあります。

また、被害者の自宅を覗いて逮捕されたようなケースなどですと、誰が被害者であるのか、誰と示談交渉をすべきか、わかっている事もあります。このようなケースであれば、少なくとも示談交渉の申し入れ自体が全くできないという状況にはならないでしょう。

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盗撮事件の解決に示談が重要な理由

示談交渉を始めたいことを伝える

謝罪と反省の意思を伝える

被害者の連絡先が分かった途端に、いきなり「示談交渉をしたいです」と伝えてしまうのは適切な方法ではありません。事件を起こしておいて、いきなり示談をしたいと伝えられると、被害者としても気持ちがいいものではなく、示談交渉を進める上で障害になってしまうかもしれません。そのため、スムーズに示談交渉を進めていくためには、まずは謝罪の意を伝える必要があります。

もちろん、盗撮事件で示談交渉をしている場合は、不起訴処分獲得のために時間制限があるはずです。このような場合であれば、謝罪文を持参すると当時に、示談交渉を開始することもあるでしょうが、それでもあくまで謝罪が先です。

一般的には、加害者本人が謝罪文を書いて、弁護士から被害者に渡してもらうというやり方が多いです。もちろん、謝罪文の内容は弁護士がチェックしてくれます。文面が不適切な内容ではないか、被害者に対して真摯な姿勢が伝わるかなど、今までの盗撮事件の経験を踏まえた上で、チェックをしてくれます。

示談交渉を始めたい旨を伝える

盗撮の被害者に対する謝罪の意を伝えたあと、いきなり示談交渉を開始するのでは失礼になってしまう場合もあります。示談をまとめるには被害者の同意が必要ですので、示談を進める事自体にも被害者の同意がどうしても必要となります。円滑に示談交渉を進めるためにも、まずは「示談交渉を進めること」に対して、被害者側に納得をしてもらうことが大切です。

ここまで入念に被害者側の心情に配慮することにはもちろん理由があります。盗撮事件の被害者は加害者に対して、強い嫌悪感を抱いているケースが多く、被害者の感情を害してしまうと、示談交渉が全く進まなくなってしまうことも考えられるからです。

また、盗撮事件の場合には、被害者が未成年であるケースも多く、その際の示談交渉の相手は直接の被害者である未成年者ではなく、親御さんなど保護者と行うことになります。もちろん自分の娘などが盗撮の被害にあってしまいお怒りでしょうから、示談交渉をまとめるのはかなり難しい作業と言えます。そのような事情もあって、可能な限り丁寧に、具体的な示談交渉に入る前から、順を追って被害者側の感情に十分配慮しつつ手順を進める必要があるというわけです。

示談交渉を開始する

ここまでで、盗撮事件についての示談交渉のスタートラインについたことになります。被害者側との示談交渉が本格的にスタートすると、まずは加害者側で用意した示談書を提示することになります。つまり、弁護士は加害者との面談・接見を重ねる中で、どのような示談内容を提示するのかを、加害者本人、あるいは加害者家族と弁護士の間で事前にしっかりと相談をしておく必要があります。

示談金額だけでなく、示談金の支払い方法、その他の事項(電車内の盗撮であれは事件路線を使わないなどケースによって再発防止策等)を提示し、被害者側の納得を得るように示談交渉します。

示談書の作成から終了まで

合意に至った場合は、合意内容を書面にして、両者が署名することになります。そして、示談で決まった内容通りに示談金を支払い、示談書の写しを捜査機関あるいは裁判所に対して提出し、適正な処分内容・判決内容を主張していきます。

示談書への記載内容

示談書に記載する具体的な主な内容としては、下記の5つになります。

  • 自らの犯行を認め、深く謝罪していること
  • 再発防止策
  • 示談金額
  • 示談金の支払い方法
  • 支払期限

さらに、これ以外にも記載しなければいけない事項がいくつかあります。

清算条項

1つは、清算条項という事項で、「示談が成立したので、ここで決めたこと以上の支払いをすることはありません」という旨を明記するということで、お互いに個人的に金銭などを請求することもないし、この件で民事訴訟を提起することもない、ということなどを記載します。

宥恕条項

2つ目は、宥恕条項という条項で、既に被害者女性が今回の痴漢事件を許しており、加害者男性の刑事処罰を望んでいないという意思があるということを示す条項です。加害者男性の身柄拘束を解くなど、盗撮事件解決のために一番大切な条項になりますので、これは確実に明記しておかなければならない内容になってきます。

守秘義務条項

最後は、守秘義務条項で、これは被害者女性も加害者男性も、今回の盗撮事件について今後一切口外しないという旨を記載します。これは、お互いの名誉のために記載される条項になります。

もちろん、一回で示談交渉がまとまることもあれば、金額などの条件面で折り合いがつかなければ、何度も示談交渉を繰り返し行うこともあります。ここで弁護士が示談をまとめるために、依頼者に無断で示談金額を高額なものにしてしまうということは通常ありませんのでご安心ください。示談交渉が一回でまとまらなければ、都度面談や接見で報告をしてくれますし、次回の提示金額をどうすべきかなどの相談をすることになります。

示談の成立は、検察官、裁判所の判断を左右する

盗撮事件で、被害者との示談が成立しているかどうかは、検察官、裁判所の判断を大きく左右するものです。

本来被害者は直接関わらない

逮捕されてから有罪判決を受けるまでは、「刑事手続」というプロセスに乗ることになります。最近はさまざまな問題意識から制度の変更が迫られてはいますが、刑事裁判で直接争う当事者とは、「検察と加害者」のみで、被害者は含まれません。あくまでも、検察官が加害者の犯罪事実を立証し、裁判官がそれを判断するというのが、刑事事件の制度上の建前となっています。

それでは、被害者との示談交渉が成立するかどうかは、検察官と加害者が中心となる刑事手続にはあまり関係ないのではないか、という疑問が出るかもしれません。しかし、犯罪には被害者が存在しますし、被害者保護も重要な目的の1つですので、実際には被害者の感情というのも影響を持つことになります。

盗撮事件は比較的軽微な事件

例えば、殺人事件を起こして逮捕された場合、被害者家族がどれだけ加害者を許していたとしても、それによって不起訴になるなど、決定的な意味をもつことはありません。なぜなら、犯した罪がとても重いものだからです。「犯罪に重い軽いなんてあるの?」という倫理的な問題はありますが、刑法などで定められている刑罰にも、犯罪によって重さに違いがある以上は、それを基準とした場合、犯罪にも軽重があると考えることができます。

盗撮事件の場合、基本的には各都道府県の迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、場合によっては、建造物等侵入罪などで逮捕されることになります。これは、現在存在している刑事罰の中では、比較的軽い犯罪ですので、軽微な犯罪に位置すると考えられています。

そのため、「確かに加害者は盗撮行為をしたが、被害者が許している以上、その意思を尊重してもよいのではないか」「被害者が許しているのだから、今回の盗撮行為は刑罰を科すほどではないと判断すべきではないか」という状況が生まれる可能性が高まることになるのです。

示談成立がどのように検察官・裁判所の判断に影響するのか

盗撮で逮捕された加害者は、それ以降の刑事手続の中で、検察官や裁判所によって次のような判断を受けることになります。

  • 勾留する必要があるのか
  • 勾留延長する必要があるのか
  • 公訴提起する必要があるのか
  • 起訴猶予をつける必要があるのか
  • 長期の実刑判決にする必要があるのか

このように簡単な例をあげても、盗撮で逮捕されてから、これだけの判断・分岐点があることになります。それぞれの判断の際に、被害者との示談が成立していることは確実に加害者にとって有利な材料となります。

本来なら勾留して更に10日間取り調べる必要があるような事件だとしても、被害者との示談がこの段階で既に成立しているのであれば、勾留請求を待たずして身柄が解放される可能性もあります。被害者との示談があるから、勾留延長による長期の身体拘束を回避できるかもしれません。示談書の中で、被害者が処罰を望まない旨記載されていることによって、不起訴処分を獲得できる場合もあるでしょう。あるいは、有罪判決になったとしても、執行猶予判決を獲得できるかもしれません。不起訴を勝ち取ることができれば前科もつきませんので、加害者の今後の人生にとってはかなり重要な分岐点になります。

このように、被害者との示談の有無は、各段階の判断に大きく影響し、加害者にとって有利な状況を生み出す要素とすることができるものなのです。

盗撮事件を示談で解決することのメリット

もちろん、被害者との示談が成立していれば、必ず不起訴になるなど、加害者にとって有利な判断が確実に得られるというわけではありません。しかし、被害者との示談が成立している方が、不起訴や身柄解放の可能性を高めることができるのは事実です。では、これらのような有利な判断を得ることによって、加害者には具体的にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

盗撮の前科を回避できる

盗撮事件において、被害者との示談を成立させておくと、盗撮という犯罪行為をしたにもかかわらず、前科がつくのを避けられる可能性があります。初犯であり、盗撮行為態様が極めて軽微で、かつ、被害者との示談がまとまっているのであれば、不起訴処分を勝ち取ることは十分可能です。不起訴処分にもいくつか理由はあるのですが、どのような理由であったとしても、前科がつくことはありません。今後の社会生活を営む上で、これは非常に有利な材料となります。

早期の身柄解放を期待できる

逮捕されてから勾留決定がされるまで最大で72時間、勾留期間は最大20日間、さらに裁判手続にまで進んでしまうと数ヶ月は身体拘束が続くことになります。しかも、加害者本人が外部と直接連絡をとる手段は接見以外にはありえません。

例えば、会社勤めをしている方は、何日までなら会社を休むことができますか?本人や家族から直接電話をしないのであれば、数日であったとしても欠勤は厳しいもののはずです。身体拘束期間が長期に及ぶことで、無断欠勤で懲戒解雇になってしまうなど、会社から処分を受ける可能性は高まりますし、その後の社会復帰も厳しいものになるに違いありません。あるいは、加害者が学生の場合であれば、出席数に問題が出てきますし、進級要件や就職活動にも影響が出てくるでしょう。

しかし、被害者との示談を早期にまとめることができれば、身柄開放を早めることができます。会社に連絡することもできますし、欠勤連絡を家族などにしてもらっていれば、場合によっては盗撮事件を起こしたことが会社に露見しないまま、職場復帰をすることができる可能性もあります。

盗撮の民事裁判を免れることができる

盗撮事件を起こしてしまった場合、当然被害者は精神的な苦痛を被っているはずですから、本来ならば民事上の損害賠償請求をされる可能性もあります。民事裁判はかなり長期間に及ぶものですし、刑事手続とは別で行われますので、民事裁判と刑事手続の両方を進めるということは、心身ともに負担の多いものとなります。

もちろん盗撮事件についての示談で被害者側と合意した内容にもよりますが、通常、示談が成立する際には、今後の民事的な請求は一切しないというようなことが示談書内で確認されます。つまり、被害者との示談を成立させることで、民事上の問題も解決させることができるというわけです。

盗撮事件で当事者同士の交渉は難しい

盗撮事件では、事件の起きた場所が電車内などの公共の場所であれば、被害者との面識がないことも多いです。このような場合には、被害者側も加害者本人に連絡先を教えることを嫌がる場合がほとんどですので、示談交渉は弁護士に任せるしかありません。

また、自宅を覗いて軽犯罪法違反で逮捕された場合や、会社内の女性トイレに忍び込んで盗撮行為を行い逮捕されたような場合であれば、示談交渉の相手先は分かる場合が多いとは思います。盗撮事件であっても、そのような場合であれば、加害者本人や加害者家族が示談交渉してもいいのではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

もちろん示談交渉をすること自体は可能ではありますが、おすすめはできません。示談交渉の流れの中でも説明したように、示談交渉では「加害者側に納得をしてもらうこと」が必須となります。その際に、いきなり盗撮をした加害者本人がやってきたのでは、誠意を感じるどころか、被害を思い出してしまい怒りが沸いてくるという被害者の方が多いのではないでしょうか。弁護士という第三者であり、示談交渉の経験豊富な専門家が間に入る方が、被害者も冷静に対応ができるはずですし、その方が示談も穏便にまとまりやすくなります。

盗撮の示談交渉は弁護士に相談しましょう!

「示談交渉なんて大げさに言うけど、ただの話し合いだから自分でもできる」と甘く見積もって、自分自身での示談交渉を行うと、被害者側の感情を害するなどして状況を悪化させてしまう可能性が高いと思います。

盗撮についての示談交渉を円満に進めて、示談成立をさせるためには主に下記の4点が重要になります。

  • 被害者の連絡先を得る
  • 誠意ある謝罪文の書き方
  • 適正な示談内容の提示
  • スムーズな交渉

これらの全ては、盗撮事件の示談交渉についての豊富な経験がある弁護士だからこそ実現できるものです。示談交渉が上手く行くかどうかは、加害者の処分内容・判決内容を大きく左右するものですから、今後の人生にまで大きな影響を及ぼす可能性のある事項であると言っても過言ではありません。

示談を早期に成立させるためには、準備を早く始めて、実際の示談交渉にどれだけ早く入れるかが重要になってきます。盗撮で逮捕されてしまった方、逮捕されるおそれがあって不安だという方は、盗撮事件に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

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