裁判所での勾留質問~その後外部への連絡や、国選弁護人の依頼も可~

弁護士に電話

逮捕されると、外部と連絡は一切取れなくなる

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまうと、逮捕直後から外部と一切の連絡が取れなくなります。

逮捕されたことを家族に伝えたいと言っても、会社に連絡したいと言っても、これから大事な商談に向かうと言っても許してくれることはありません。たいていの場合は証拠隠滅のおそれがあるという理由で携帯電話やスマートフォンは警察が預かることになり、自分では連絡のしようがなくなります。

弁護士に連絡するように警察に依頼することはでき、原則として弁護士はいつでも被疑者と面会することは可能なのですが、逮捕直後の被疑者が、すぐに駆けつけてくれる私選弁護士の連絡先を覚えている方が希なケースだと思われます。

そのため、知り合いに弁護士もおらず、自身が被疑者として逮捕されるなどと夢にも思っていなかった人が、逮捕された事実を外部に連絡できるのは、逮捕後数日を待たなくてはなりません。いきなり姿を消した人を探すため、家族や会社の同僚が捜索願を出すために警察に行ったら、逮捕されて近くの警察の留置場にいると知る、という笑えない話も実際にはあり得るのです。

本項では、私選弁護士をいきなり呼べないような人が逮捕されてしまった場合、外部と連絡を取れるようになるのはいつか、また弁護士に相談できるようになるのはいつか、どういう弁護士と会えるのかを説明していきます。

逮捕後、勾留が決まる前にある勾留質問

逮捕された被疑者は、警察に連行され写真撮影や指紋採取などの逮捕に紐付く一連の手続きを受けた後、一般的なケースではまず警察で取調べを受けるために留置場で身柄を拘束されます。逮捕には期限があり、警察では最長でも48時間、その後送検されて検察では24時間の合計72時間と定められていますが、その間、一般的には外部と一切連絡が取れない状態が続きます。

弁護士を呼んでくれないと一切喋らない、黙秘権を行使すると訴えても、被疑者から具体的に弁護士の名前や連絡先を伝えない限り弁護士に連絡をするとは考えづらく、特定の弁護士を呼んで欲しいと言っても、果たしてすぐに連絡がつき面会できるかどうかというと、難しいと言わざるを得ないでしょう。

逮捕後、最初に外部と連絡が取れるチャンスは、72時間の逮捕期限が終了した後になるのです。

逮捕期限の前に行われる勾留質問とは?

警察から送検されてきた被疑者を検察が改めて取調べるのですが、検察の逮捕期限である24時間ではとうてい起訴をするかどうかの判断はできません。そのため、捜査が簡単で済む軽微な事件で被疑者が全面的に警察や検察の言い分を認めている、あるいは真犯人が出てきて誤認逮捕である判明したような、明らかに身柄拘束の必要がない場合を除いて、検察は裁判所に対して勾留請求を行います。

逮捕においても、警察や検察が裁判所に対して逮捕状を請求するわけですから、人の身柄を拘束するためには裁判所が、その必要を認めなければ許されないのです。そして一方的に検察の言い分だけを聞いて引き続き身柄の拘束を続ける勾留を認めることはできないため、被疑者の言い分も聞くために裁判所は被疑者を呼び出します。

検察の検事行った勾留請求に対し、その手続きが正当かどうかを判断するため、裁判所の裁判官が被疑者に対して行う質問が勾留質問です。この勾留質問の流れは、検事調べで被疑者が検察庁へ連れて行かれる時と似ていますが、勾留質問の場では、弁護士制度を説明したビデオを見せる、外部に逮捕されたことを伝える、国選弁護人を依頼できる、といった特別な手続きも進められるのです。

勾留質問の後、裁判所が連絡を取ってくれる

勾留質問が終わった後に勾留が決定されると、裁判所は被疑者の関係者に、被疑者が逮捕されたことを連絡してくれます。前述の通り、逮捕は突然予期せぬ日時に行われ、被疑者の家族や勤務先では、逮捕された人といきなり連絡がとれなくなってしまうため、失踪したと勘違いされることも珍しくありません。

そのため、裁判所は日本国内で一カ所だけ、被疑者が指定する連絡先に電話にて、被疑者が逮捕されたことを知らせてくれます。

関係者への連絡は電話連絡のみ

裁判所から被疑者の関係者への連絡は、電話のみで他の連絡方法は許されません。そのため、裁判所に家族や会社、知り合いの弁護士など外部への連絡を依頼する場合は、連絡先の電話番号を教える必要があります。連絡したい相手の所在地や名前だけでは、裁判所が相手先の電話番号を調べてくれるという手厚いサービスはありません。

最近は個人間の連絡はSNSを利用している人も多く、電話番号は携帯電話やスマートフォンの電話帳に登録してあるだけで、相手先の電話番号まで暗記している人は少ないと思われます。その携帯電話やスマートフォンは、たいていの場合は証拠として警察が預かっていて、電話番号を確認するからと返却してはもらえません。

逮捕された時のためだけではなく、携帯電話やスマートフォンを無くしたり壊れてしまったりした場合のことも考えて、緊急連絡先の電話番号くらいは暗記しておいた方が良いかもしれません。

事務的な連絡のため、頼まない方が良いケースも

勾留質問後に許される外部への連絡は、もちろん自分で電話をかけるわけではなく、裁判所の係員が代わりに電話をします。裁判官による勾留質問の後、裁判官が「日本国内で一カ所だけ、あなた(被疑者)が逮捕されたことを知らせることができますが、どうしますか?」と聞いてきます。

「どうしますか?」と聞かれるわけですから、強制ではありませんので、ここで一呼吸置いて考えてみましょう。ある日突然、あなた(被疑者)と連絡が取れなくなって心配していたら、今度は裁判所から電話がかかってきて、逮捕後に勾留されているなどと知らされたら、たいていの人は混乱し、余計に心配することになるでしょう。

また勤め先に連絡してもらうとしても、裁判所からの連絡は事務的なものであり、「○○さんは、逮捕されて○○署に逮捕され勾留されています」と、事実を事務的に伝えるだけですので、そんなことで会社をパニックに陥れることは望ましくありません。

勾留期間中の釈放を目指し、早期の社会復帰を目指す場合には、裁判所に連絡を頼むよりも、後に選ぶ弁護士に外部への連絡を頼んだほうが無難だと思われます。この際の連絡先は、私選弁護士の連絡先を覚えている場合か、逮捕されていることを知っている親族あたりに限った方が良いかもしれません。

国選弁護人の依頼も勾留が決まった後

勾留質問の際に、裁判所は弁護人制度について説明しなければなりません。この時には、罪の重さや資力といった条件次第ですが、国選弁護人の選任を請求できることも知らされます。

これは刑事訴訟法の第207条に勾留請求の定めと合わせ、以下の通り規定されています。

刑事訴訟法

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

2 前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨を告げ、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に対しては、貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。

3 前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たっては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。

4 第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たっては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

5 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

被疑者の段階で国選弁護人を依頼できるようになったのは2006年からで、それ以前は起訴された後でなければできませんでした。

また2006年の改正では、予想される刑罰が死刑か無期懲役、あるいは刑期が3年を超える懲役刑になりうる被疑者であれば国選弁護人に弁護活動を依頼することができるようになっていましたが、2016年の改正で刑罰の枠が取り払われ、すべての刑事事件で勾留されている被疑者に対して国選弁護制度の利用が可能となりました。

国選弁護人の依頼は意外と難しい

しかし国選弁護人の選任は、私選弁護人を雇う金銭的余裕がない人に限られ、依頼するかどうかは任意となっています。また国選弁護人を申請する場合には、自らの資産を申告しなければならず、勾留質問が終わった直後に、同じ裁判官に申請書を書いて提出しますが、この際に申告する資産状況次第で国選弁護人に依頼できるかどうかが決まります。

被疑者は身柄を拘束されたままで、資産状況の詳細まで申告することはできませんが、だいたい預貯金の残高がいくら、自家用車などすぐに現金化できる可処分資産はどのくらいといったことを書き添えます。

一般的には国選弁護人の申請が認められるのは、この資産が50万円以下だとも言われており、それ以上の資産がある場合には申請しても却下される可能性が高いと考えられます。私選弁護人を依頼する考えであれば、この時点で国選弁護人の依頼を行う必要はありません。

やはり、信頼できるのは私選弁護士

国選弁護士に加え、逮捕後いつでも依頼することができる当番弁護士という存在がありますが、一回限りの相談で終わってしまい、親身になって相談に乗ってくれるかどうかも運次第という側面があります。

そのため、もし刑事事件の被疑者として逮捕されてしまったら、自分で知り合いの私選弁護士に依頼するか、家族や友人・知人が力を合わせて有能な弁護士を探し出し、相談することをお勧めします。

現在ではインターネットでも簡単に刑事事件の取り扱いが多い、経験と実績のある弁護士を検索することも可能ですので、刑事事件の手続きにおいて唯一の味方となる有能な弁護士を探してください。

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