刑事事件の取調べ~あらかじめ流れを知っておけば冷静に対応できる~

取り調べ

刑事事件の被疑者となり、逮捕状で逮捕された後に待っているのは警察の取調べ。テレビドラマでもよくある場面だが、実際にはいきなり取調室に入り尋問されるわけではなく、意外と前後にさまざまな儀式が待っている。実際の取調べがどんなものか知っておこう。

刑事事件の取調べの前に

刑事事件の容疑者とされてしまうことは、ほとんどの人は一生のうちに経験することがありません。しかし警察庁の犯罪統計書によると、平成27年の交通業過を含む検挙人員数は約24万7千件と、あながち他人事と思ってもいられないような数の犯罪が世の中にはあるのです。

自身が罪を犯したのではなく、家族や友人、知人が罪を犯して逮捕されてしまう可能性もあります。また、自身が罪を犯したのならまだしも、身に覚えのない罪で逮捕されることもあるのです。

逮捕状を携えて警察官がいきなり訪ねて来て、何が何やら分からないうちに手錠を打たれ腰縄をつけられ、ワンボックスカーに乗せられ警察署へ連行されるのです。おそらく逮捕をした警察官または検察官が何を言ったかなど覚えていないくらい気は動転し、これから何が起こるのか、何をすれば良いのか分からなくなることでしょう。

ここで重要になってくるのが、最初の取調べに対する対応です。

知っているのと知らないのでは大違いですので、自分のため、または大切な家族や友人のために、刑事事件についての知識を学んでおきましょう。

警察署に着いた後、まずは写真撮影と指紋採取が行われる

テレビドラマや映画で、被疑者逮捕のシーンは何度も観ていることだと思いますが、たいていはパトカーやワンボックスカーで連行されて警察署に入った後、次は取調べのシーンになることでしょう。しかし実際は、取調べの前に、写真撮影と指紋採取が行われます。

これは逮捕とセットになっているため、拒否はできません。

DNA採取には逮捕状とは別の令状が必要

ただし、同時に要求されるかもしれないDNA採取については、拒否することができます。

犯人のDNAが決定的な証拠になるような事件では、警察は身体捜査令状と鑑定処分許可状という、逮捕状とは別の令状を取っているはずです。

これがなければ、強制的に採血はできません。しかし何でも証拠を揃えたい警察は、これらの令状なしでもDNA採取を要求してくることがあるようです。その際に応じるかどうかは個人の判断ですが、DNAが何の証拠にもならないような犯罪であれば、素直に応じておいて、警察官との関係性を良くするのも一つの手段でしょう。

駆け引きは取調べの前から始まっています。

刑事事件の取調べの雰囲気は?

テレビドラマの取調べのシーンでは、いきなり捜査官の怒号から始まり、被疑者を揺さぶり張り倒すような場面もありますが、実際にはそんなことはないはずです。

後述のように、取調べの可視化が進められている社会情勢の中で、必ずしも断言はできませんが、かつて問題になった違法な取調べを行う捜査官はほぼ絶滅しているでしょう。

捜査官のパーソナリティで雰囲気が変わる

どのような取調べの雰囲気になるかは、担当する捜査官の能力やパーソナリティで変わってきます。しかしながら、被疑者が犯罪の容疑を認めている場合には、割合と紳士的な態度で接してくるであろうことは想像に難くありません。

一方で、頑なに罪を認めない被疑者の前では、捜査官の印象は厳しいものになるでしょう。

身に覚えのない罪で逮捕された場合でも、否認する際には激高するのではなく、冷静に状況の説明を求め、自分がなぜ逮捕されたのかを理解し、反論するのが得策かもしれません。

取調べとはいえ、人と人とのコミュニケーションであるため、難しいとは思いますが落ち着いて対応するようにしましょう。

一見、穏やかな雰囲気で取調べは進む

取調室には、直接被疑者と話をする捜査官のほか、複数の捜査官が入室していると思われがちですが、これは捜査官のやり方によって違います。

別の捜査官を取調室の外に待機させているケースもあるようです。

取調室には事務机が2台向かい合わせで置いてあり、ドア側に捜査官、奥に被疑者が座りますので、この辺はテレビドラマの通りです。

被疑者が椅子に座ると、手錠が外されますが、たいていの場合はパイプ椅子などに固定されます。

そしていよいよ取調べの開始ですが、被疑者が容疑を頑なに否定し、よほど険悪な関係になっていない限り、最初は雑談から始めるのが普通です。

2日目になると、留置場でよく眠れたか、食事はきちんと摂れているかといった体調に関する話題を振るわけですが、取調べの捜査官に、留置場の布団が臭いとか、食事の量が少ないとか不満を訴えても、待遇が改善されるわけでありません。

刑事事件の取調べへの対応~黙秘権の行使~

取調べを担当する捜査官は、「それでは取調べを始めます。あなたには黙秘権がありますので、自分の不利になることは無理に言わなくても構いません」と黙秘権の告知が行われます。

これは取調べの度に毎回行うことが義務づけられています。

黙秘権の法的根拠

被疑者の黙秘権は、憲法第38条1項、および刑事訴訟法第311条1項に定められています。

憲法

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

刑事訴訟法

第三百十一条 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。

以上のように、黙秘権は被疑者の防御権であり、自身が供述したくないことについて沈黙を守ったままでいても、そのことが理由で不利益を受けることはないとされるものです。そのため、黙秘権には自白を強要するための拷問などの取調べを抑止する効果があるとされています。

黙秘権を行使し、貫き通すのは難しい?

黙秘権が告知された後、本格的な取調べがスタートします。

容疑を認めている場合は、事件に至るまでの詳しい経緯や、被疑者の行動に関して、捜査官が質問して被疑者が答える形で進められます。

容疑を否認している場合は、捜査官の言ったことを否定し続けるか、黙秘を貫くことになります。しかし、黙秘権を行使して、無言を貫き通すことはかなり難しいことです。

相手の捜査官も百戦錬磨の強者で、あの手この手で証言を引き出そうとします。何気ない会話から、当該事件の証言に導くことなど、簡単なことかもしれませんし、完全な黙秘を続けた被疑者はほとんどいないとも言われています。

ただし、「弁護士に会うまで一切の供述を拒否します」という方法は使えるでしょう。

弁護士のアドバイスを受ければ、どこまで黙秘権を行使し続ければ良いのか判断できますし、何よりも弁護士の存在が心の支えになるからです。

刑事事件の取調べへの対応~取調べ受忍義務~

一方で、刑事事件で逮捕された被疑者には、取調べに応ずる義務があるとする見方があります。

法律の解釈によるものであり、義務といえるかどうかは議論されているところですが、義務があるという見方の根拠は、次の通りです。

取調べには応じなければならない?

上記の憲法第38条には黙秘権が定められている反面、刑事訴訟法第198条の1項には、次のような文言があります。

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

捜査当局は、この条文の後半部分を「逮捕や勾留されている被疑者は取調べに応じる義務がある」と反対解釈しています。

黙秘権の否定にもつながるこの解釈は、被疑者の人権を考えた場合には問題があると考えられますが、いずれにしても捜査当局は、被疑者は取調べには必ず応じなければならないと考えているようです。

黙秘権の行使と合わせ、弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けるべきでしょう。

刑事事件の取調べへの対応~取調べの可視化~

以上のように、被疑者の人権を守るという立場からすれば、捜査当局の考え方は違法であり、取調べに関しては改善されるべき点がたくさんあると思われます。

しかし実際には、昔の厳しい密室での取調べというイメージから考えると、現在の捜査当局による取調べは、より可視化が進み、問題を解消しようとする姿勢も感じられるところではあります。

取調室のドアは開けられている

取調室は、基本的には殺風景な内装で、小さな部屋に複数の捜査官に相対して被疑者が一人座らされ、圧迫を受けながら質問される状況となります。しかし密室で、外からは誰も様子が伺いしれないという状況は、近年なくなってきているようです。

密室での取調べは、捜査官による違法な取調べを助長するとして、近年では取調室のドアは開けておくというルールが定められています。

被疑者のプライバシー保護のために、仕切りが立てられ外からは見えない状況にはなっていますが、密室での取調べを受けることはないと言えるでしょう。

取調べの可視化は道半ば

しかし一方で、刑事事件における捜査員の取調べの可視化は、まだすべての事件で義務化が進んでいるわけではありません。

被疑者の人権を守るため、2016(平成28)年に刑事訴訟法が改正され、被疑者の取調べにおいて、原則として取調べの録音と録画が義務付けられることになりました。

しかし、対象となるものは、殺人、傷害致死、強盗致死傷、強姦致死傷、保護責任者遺棄致死、危険運転致死などの裁判員裁判の対象となる事件、そして検察独自の操作事件である収賄、脱税事件などに限られ、施行予定も2019(平成31)年6月までとされています。

捜査機関が作り出す冤罪を防ぐためには、すべての事件における取調べの可視化が望まれるところですが、現在のところは被疑者が自衛手段を講じるしかないのが実情です。

弁護士に会うことができれば、被疑者ノートをもらって、受けた取調べの内容を記録しておくことができます。

このノートは違法な取調べを受けないための自衛手段でもあるため、必ず受けた取調べの内容を綿密に記録するようにしましょう。

刑事事件の取調べは時代に沿って変化

刑事事件の容疑を否認している場合の被疑者の落とし方は、担当する捜査官によって違います。

証拠を元に理詰めで被疑者を追い詰めるタイプや、被害者の話をして情に訴えるタイプ、あるいは被疑者が罪を認めるまで、何も言わずジッと睨みつけるタイプなど色々だと言われています。

このような捜査官とのやり取りについては、昔も今も変わらないかもしれませんが、違法な取調べが問題になったことで、被疑者が置かれる状況については、年々変化が見られます。

取調べの時間制限

現在は、基本的には、1日8時間を超える取調べは禁止され、また午後10時から翌朝の午前5時までは取調べができなくなっています。

また午前中から始まった取調べは、昼食時間前までには被疑者を留置場に一旦戻さなければならず、被疑者を長時間にわたって尋問することはなくなっているようです。

被疑者の健康管理を担当する留置場管理課が積極的に刑事課に対して働きかけることも、被疑者にとってはありがたいことです。

「警察捜査における取調べ適正化指針」

以上のような措置は、密室での取調べにより発生した取調べにおける不祥事を受け、警察庁が「警察捜査における取調べ適正化指針」(平成20年)を出したことによるものです。

同指針ではまた、不適正行為として以下の行動を挙げています。

  • 被疑者の身体に接触すること(やむを得ない場合を除く)。
  • 直接又は間接に有形力を行使すること。
  • 殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。
  • 一定の動作又は姿勢をとるよう強く要求すること。
  • 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
  • 被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすること。
  • 一定の時間帯等に取調べを行おうとするときに、あらかじめ、警視総監若しくは道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)又は警察署長の承認を受けないこと。

このように、取調べの状況は改善されてきているようですが、まだ被疑者にとって十分に人権に配慮されていると言えない部分もあります。

弁護士のアドバイスを受けながら、取調べに臨むことをお勧めします。

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