日本の刑事裁判は有罪率99.9%!起訴されたら有罪に

牢屋の中の手

日本の刑事裁判では起訴されたら有罪率99.9%

刑事事件では、目撃者による通報や告発、被害者からの被害届・告訴など、さまざまなきっかけから捜査機関が事件の調査を開始します。ここでいう捜査機関とは警察や検察などのことで、刑事事件の捜査が進むにつれて、警察から検察へと主導権が移っていき、刑事裁判にかけられると最終的には裁判所が判断を下すことになります。

刑事裁判にかけることを起訴処分と言い、公訴の提起とも呼びます。起訴処分を受けても裁判で有罪とならなければ犯罪者ではありませんが、世間的には逮捕された時点で犯罪者扱いを受けているというのが現状です。逮捕された時点で世間的に犯罪者と同じような扱いを受ける原因としては、起訴後の有罪率が非常に高く、99.9%が有罪となっているという事実です。このページでは、刑事事件における各段階の実情も併せてみていきます。

日本の刑事裁判の実情

認知された事件のほとんどは窃盗

警察などが把握することのできた刑法犯のうち、7割程度が窃盗です。次に器物損壊が大きな割合を占めていますが、こちらは1割程度です。
ニュースなどでよく取り上げられるので殺人などの重大事件は目立ちますが、刑事事件全体のうち1%にも満たないということが分かっています。

最も多い窃盗には万引きやひったくり、置き引きなどが含まれており、これら比較的軽微な犯罪はその行為をする機会も多く、気軽にできてしまうということもありこれだけの割合で発生しています。

認知件数に対する検挙率は3割程度

「検挙」とは、警察で認知し扱った事件を検察官に送致・送付したり、微罪処分にしたりすることをいいます。
つまり、警察がただ事件を知っただけでなく、さらに刑事裁判にかける方向で手続きが進むことを意味します。微罪処分は例外的な処分で、検察に事件を送るまでもなく終結されることを言います。

警察は事件を認知したとしてもすべてを検挙するわけではありません。このことは、検挙したくてもできなかったケースと、検挙までしなくてもいいと判断され放置されたケースとに大別できるでしょう。

たとえば、通報を受けたとしてもあまりに手がかりがなければ犯人を特定することも困難です。
その場合本腰を入れてさまざまな情報から犯人を探しだそうとしてくれるかもしれませんが、捜査機関も日ごろ数多くの事件を取り扱っていますので捜査機関の労力と犯人逮捕による利益を天秤にかけ、あまり労力をかけたくないと思われるような事件であれば検挙にまで至らないということが起こり得ます。

逆に言えば、手がかりの少ない事件であったとしても殺人事件など、重大な事件であれば捜査機関も頑張って検挙しようと活動します。
しかしながら重大事件は認知件数のうちでも非常に小さな割合しか占めていないということもあり、結果として認知件数に対する検挙率は3割程度となっています。

認知された事件の7割が窃盗であり軽微な万引きなども含まれていることも考慮すればここまで検挙率がここまで下がるのも理解できます。
検挙人員のうち、窃盗は5割程度、暴行・横領・傷害がそれぞれ1割程度となっています。

半数以上は逮捕されない

犯罪者は常に逮捕される、といったイメージがはびこっています。しかし実際のところ逮捕率は3割から4割程度であり、半数以上は逮捕されていないことが分かっています。
つまり犯罪をした人たちでもその多くは身柄拘束を受けず、捜査中も普段通りの生活をしているのです。
ただし、逮捕をされなければ有罪にならないということではなく、あくまでも身体の拘束をされているかどうかの違いだけです。

こちらも読まれています

刑事事件の被疑者が逮捕されないケース

犯人が逃げてしまう、もしくは証拠を隠してしまい処罰することができなくなってしまう場合にのみ逮捕をして拘束しておくことが許されています。
つまり、逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれがないと評価されると逮捕されずに捜査が進行します。一度は逮捕されたものの、弁護士が対応するなどすることで、その後釈放されるというケースも数%の割合であります。

次に犯罪別の逮捕率を見てみると、やはり傾向としては重い罪であるほど逮捕率が高くなっており、窃盗であれば3割程度と低く、恐喝や強制わいせつ、覚せい剤の使用や放火については6割以上が逮捕されています。

被逮捕者の9割以上が勾留される

逮捕後の措置についてみてみます。逮捕後はしばらく警察による取り調べなどが行われますが、時間制限が設けられていますので48時間が経過すれば送検されることになります。検察の主な仕事は、警察から受けた事件につき起訴・不起訴の判断をすることにあります。
しかし検察で身柄を引き受けていられる事件も限られており、24時間以内に次の措置を決めなければなりません。ここで起こり得ることは起訴・不起訴の処分、勾留の請求、釈放、略式命令請求などです。

ただし日本では起訴処分をするまでに、その後の裁判において有利となるようできるだけ証拠を集めようとするなど、有罪にできるだけの自信を持とうとする傾向にあります。そのため24時間では時間が不十分で、継続して被疑者を拘束するために勾留請求をするのが一般的となっています。そこで被逮捕者の措置としては9割以上が勾留請求され、逮捕中に起訴されるケースは1%にも満たないということが分かっています。

しかし、検察官がこれ以上拘束をする必要がないと判断する場合もあり、釈放されるケースもあります。略式命令も被疑者としてはある種起訴処分と近い結果になるため、逮捕中に起こる略式命令請求も起訴処分同様1%以下となっています。

勾留後の起訴率は半数ほど

勾留請求を受けると直ちに勾留が開始されるわけではなく、裁判官の許可を要します。請求は裁判官に向けて行いますので、裁判官が勾留の必要がないと判断すれば勾留は行われず、却下となります。この勾留請求却下は2~3%ほど行われています。また、勾留決定後には検察官が起訴をするかどうか、基本的には20日間以内に判断し、結果半数ほどの被勾留者が起訴処分となっています。略式命令となる者も1割程度います。

勾留後に起訴されるのは半数程度ですが、起訴された場合はほぼ有罪になりますので勾留される前から刑事事件に強い弁護士に相談・依頼しておくことが重要になります。

起訴後の有罪率は99.9%

起訴処分となればいよいよ裁判によって有罪無罪および有罪の場合にはその量刑が決められます。
これまでの過程、初期の段階においては検挙率がそもそも3割程度であったこと、逮捕の割合も犯罪の内容によってまちまちで、勾留されるのかどうか、起訴されるのかどうかも一概に言えるものではありませんでした。

しかし、起訴後についてはほとんどが有罪判決となっており、起訴されるとほぼ有罪になってしまうと言えてしまいます。その割合はなんと99.9%です。
有罪無罪の審理は裁判において行われるはずが、実のところ起訴された時点ですでに有罪が決定しているかのような実情があります。

なぜ起訴後の有罪率が高いのか

有罪になりそうな事件のみを起訴しているから

起訴後の有罪率が99.9%という非常に高くなっている理由を考えてみます。
これは裁判所が検察官の肩を持ち、審理を放棄しているというわけではありません。有罪率の高さにもっとも関係しているのは、検察が容易に起訴をしないということにあるでしょう。

上でも説明しましたが、逮捕の有無は起訴・不起訴に直接関係するものではありませんが、傾向としては重大な事件ほど身柄拘束の必要性が高いため逮捕が行われ、そして重大な事件であるほど起訴の必要性もあると言えます。

民事上の紛争解決の手法である示談は刑事手続においても一定の効果を持ち、示談の成立によって被害者の処罰感情がおさまっていると捉えることもできるため、不起訴処分に付する可能性が高くなります。しかし公益に関わる犯罪や、重大な事件であればこれだけで不起訴処分にするのは不当と捉え起訴処分になることもあるでしょう。

要は、重大な事件ほど起訴処分の傾向も強くなり、逮捕割合との相関も少し出てくるということです。
そして身柄拘束においては前項で説明した通り、各段階で絞り込みが行われます。逮捕割合が4割程度、その後警察において釈放されるのが3%ほど、送検後の釈放も5%ほどあり、勾留請求に対する却下も数%の割合で起こり、勾留後も4割程度は釈放がなされています。

起訴判断の慎重さが勾留期間の長期化につながっている

拘束を受けずに起訴されることも珍しくありませんが、日本では起訴までに慎重な判断を要しており、このことが勾留請求の割合の高さや期間の長さに現れているとも言えるでしょう。
原則、勾留期間は10日です。そしてその期間でも足りないという事情があれば必要な日数分延長をするということになっています。
しかし勾留が10日以内で済むケースは3割から4割程度であり、過半数は11日以上20日以内の範囲で勾留されています。

罪を認めていることが多いから

起訴後の有罪率99.9%という数字は、起訴された者のすべてを分母に含んで算出されています。
同じ起訴をされた者でも、もともと有罪であることに争いがない者と無罪を主張する者がいます。

そのため、無罪を勝ち取ろうとする者にとってこの数字が必ずしも参考になるとは限らず、この場合には無罪を主張した者を分母に算出した割合を見ていかなければあまり意味のある数字にはならないでしょう。

実際、起訴された者の多くは有罪につき争っていないことが分かっています。
これらの者は量刑につき争いがあるのであり、できるだけ軽い罪にして欲しいと主張している人たちです。たとえば、懲役刑なら何年の宣告がされるかによってどれだけの期間刑務所で過ごさなければならないのかが変わってきます。

特に執行猶予との関係においてはその宣告される期間は重要になってきます。懲役〇年と言い渡されてもその期間すべてにつき執行猶予が付けば実刑を受けることはなく、自宅でこれまで通り生活することはできます。しかし、執行猶予にも付与できる限度があり、その限度期間を超えてしまうと実刑を受けざるを得なくなるのです。

無罪を主張するケースでも有罪率は90%以上

一方で無罪を主張する者はそれ以前の問題であり、そもそも自分は犯罪者ではないと言っています。
この中にもパターンは分かれ、ある事実はあったもののその行為はそもそも犯罪にあたらないと言っているようなパターンと、冤罪のパターンがあります。

前者については、たとえば、確かに殴るという行為はしたものの正当防衛であり違法性は阻却されると主張する場合や、違法な行為と知りながらその手段以外取る余地がなかった場合などがあるでしょう。
一方で、そもそも何も犯罪が発生していないかった場合や真犯人が別にいるような場合が後者にあたるでしょう。

いずれにしても無罪を主張する者が有罪率を参考にする場合、自分と同じ状況において無罪を勝ち得る割合を知る必要があります。
しかしながら前項のように起訴処分そのものが慎重になされているということもあり、無罪を争う者だけでみても有罪率は非常に高くなっています。
結局90%以上の有罪率となっていますが、起訴された全体からみたときの99.9%という数字から比べれば無罪になる確率は、本当はもう少し高かった、ということが分かります。

もっと具体的に有罪率を知りたいと思うのであれば犯罪の種類別で有罪率を算出する必要がありますが、そうして得られた数字にどれだけの意味があるのかは微妙なところでしょう。
なぜなら最終的には個別具体的に事件の様態や被害状況、被告人の反省具合などを判断材料に使うことになり、まったく同じ状況における有罪率は知り得ないからです。

一方で判決の内容に相場のようなものが考慮されるのも事実です。これまで下されてきた判決内容とのバランスなども考え、被告人間にあまりに不平等な結果を出せないということもあります。
そもそも検察官による求刑が相場も参考にしていることや、裁判官も自らの主観のみで判断するわけではないため相場に一定の関係性が出てきます。

刑事裁判で有罪にならないためにできること

起訴されないようにする

起訴後の有罪率の高さからみるに、有罪とならないためには起訴されないことが非常に重要であると言えるでしょう。
結果論ではあるものの、逮捕後に無罪を主張する場合には不起訴処分となるように努めることが大切です。
そのためには、取調べの際などに横暴な態度をとらず反省していることを真摯に伝え再犯防止に努めることが必要です。自ら、再犯してしまうことがないよう、何かしらの措置を取ると良いでしょう。

また、最も効果が期待できることは被害者との示談を成立させることです。
被害者が被疑者を許していると捉え、不起訴獲得に近づくことができます。示談交渉では基本的に示談金を相手に渡すことになります。
ここに裁判所の関与はありませんので、被害者と話し合って相手方が提示、もしくは被疑者側から金額を提示し、双方が納得のいく金額で決まります。
示談交渉をしておくことは後に起こり得る民事裁判の手間を省略する効果も期待できます。

刑事裁判はあくまで検察と被告人が対立するのであり、そこで罰金刑が科されても被害者に振り込まれるわけではありません。
そのためこれとは別に被害者が損害賠償を求めて民事裁判を起こすことが考えられます。
示談はここでの損害賠償を示談金として決することになりますので、迅速な解決ができ、双方にメリットのある行為なのです。

弁護士にサポートしてもらう

起訴されないためにすべき行動は示談交渉を代表にいくつか挙げられますが、これらを効果的に実施するには法律の専門家である弁護士のサポートを受けると良いでしょう。

特に重要となる示談については被害者が被疑者に会いたくないというケースもあり、直接交渉したのでは上手くいかないことがあります。そこで弁護士を通して交渉をすることで円滑に成立させることができ、さらに法外な示談金を取られることを防止することもできるでしょう。
このほか取調べでの最適な対応や、すでに逮捕されていても釈放してもらえるように働きかけてもくれます。

また、最終的に起訴されたとしても無罪を勝ち取ることが不可能になるわけではありません。
確率だけで言えば低いですが、弁護士を付けて裁判上の弁護活動をしてもらうことで少しでも無罪に近づくことができますので、できるだけ弁護士のサポートを得るようにしましょう。
弁護士にはそれぞれの得意分野がありますので、弁護士に相談をするときには「刑事事件に強い弁護士」をしっかりと選ぶということも重要になります。

逮捕後72時間で自由に面会できるのは弁護士だけ!

ご自身・ご家族やご友人が
逮捕されてしまったら、今すぐ弁護士にご相談を!

このようなことでお困りですか?

  • 身に覚えがないのに警察に呼ばれてしまった
  • 逮捕されたことで解雇されたり、退学になるのは困る
  • 今すぐ釈放してほしい
  • 被害者の方と早期に示談したい
  • 事件の前科逮捕歴を残したくない
  • なんとかして不起訴の可能性を少しでも上げたい

刑事事件に強い弁護士を探す

都道府県から弁護士を探す

北海道・東北地方
関東
中部
関西
中国・四国
九州

関連記事

刑事事件に強い弁護士
全国70拠点以上。約360名の弁護士が365日対応【元検事の弁護士が所属】