刑事裁判では、執行猶予付き判決が得られるかどうかの基準がある

無罪を祈る被告人

執行猶予とは?

刑事裁判で有罪の判決を下される場合、実刑判決と執行猶予付きの判決に大別されます。どちらも有罪であることに変わりはないのですが、懲役刑などの実刑判決の場合は、判決が下されて確定すると、直ちに刑務所などに収容されます。

一方で執行猶予付きの判決を受けた場合は直ちに刑務所に入る必要はなく、被告人は社会生活に戻ることができるのです。そして執行猶予の期間中に他の罪を犯したりしなければ、罪は消えませんが刑罰そのものは免除されるのです。

有罪が確定的であれば、執行猶予付き判決を狙う

刑務所で長期にわたる服役生活を送るのか、もしくは裁判が終わればすぐに社会復帰を果たすことができるのかは、被告人の後の人生にとって大きな差となります。そのため、被告人が有罪か無罪かの争点がなく、量刑もあらかじめ一定期間が予想される裁判においては、被告人とその弁護人が望む結果は執行猶予付きの有罪判決となるのです。しかし執行猶予付きの判決を得るためには、いくつかの条件があります。

本項では、執行猶予付きの判決を得るための条件と、得るために必要となる手続きなどについて説明します。

執行猶予付き判決を得る条件~刑罰の重さ~

執行猶予付き判決に関しては、刑法第25条から27条に以下のように規定されています。

刑法

(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)
第二十六条 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)
第二十六条の二 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。

(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第二十七条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

(以上、抜粋)

以上のように、刑事裁判の判決において執行猶予を得るためには、複数の条件を満たしていなければなりません。その条件とは、被告人に科される刑罰の重さと、被告人自身の状況だと言えます。

重罪には執行猶予は付かない

刑罰に執行猶予が付くか付かないかには、上記刑法の条文にもあるように、被告人が起訴された罪の最高刑罰が、懲役または禁錮3年以下、または罰金50万円以下であること、という最低限の条件があります。

この規定が、裁判官が執行猶予を付けるかどうかを判断する具体的な基準になるのです。つまり、懲役3年を超えると見込まれるような凶悪な罪を犯していると、執行猶予は刑法上で付けることができないのです。

たとえば殺人罪、あるいは強盗や現住建造物放火といった犯罪の場合、最高刑には死刑や無期懲役が含まれているため、有罪判決が下されると確実に実刑となり、執行猶予が付けられる可能性はないと考えられます。

ただし、窃盗罪や詐欺罪に関する法定の最高刑は懲役10年となりますが、検察の求刑によっては判決が3年以下の懲役または禁固になる可能性があり、その場合は裁判官の裁量で執行猶予が付けられる可能性が出てきます。そのため、過去の判例や裁判の進行状況を鑑み、弁護人と相談し、執行猶予付きの判決を狙うかどうかの判断が必要となってきます。

懲役3年の刑に相当するものは?

被告人や被害者の状況にもよりますが、検察側が行う求刑は窃盗罪や詐欺罪の場合は被害金額に比例すると言われ、懲役または禁錮3年という刑罰の目安は被害額が1,000万円を超えない程度になっているようです。

もちろん被告人が起こした事件の計画性や悪質性なども加味されるのですが、判決で予想される刑罰が懲役または禁固3年程度、といった場合には、実刑判決を受けて刑務所行きとなるか、あるいは執行猶予を勝ち取れるかは微妙なところです。その際に、執行猶予付きの判決を得るための鍵を握っているのは、弁護人だとも言えます。

その理由は、量刑にははっきりした規定があるのですが、執行猶予が付くかどうかの、もうひとつの条件である被告人の状況については、弁護活動によって改善できる余地が多いためです。

執行猶予付き判決を得る条件~被告人の状況~

刑事事件の裁判において、被告人が受ける有罪判決に執行猶予が付けられるためには条件がありますが、ひとつは前項のように刑罰の軽重に関するもので、もうひとつは被告人の状況について裁判官が勘案するというものがあります。

それも当該事件を起こす前と、起こして逮捕された後に分けられますので、ここで説明します。

初犯であることが条件のひとつ

上記の刑法第25条にも「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」という条件が定められています。

これはいわゆる、再犯は執行猶予を得られない、と言われる所以ですが、前科があれば実刑判決となる可能性は確かに高いようで、犯罪常習者に執行猶予は与えないという条件なのですが、これは解釈に幅があると言われています。

例えば、過去にケンカをしたことで傷害罪の疑いで逮捕され有罪となり刑罰を受け、その後にまた逮捕はされたものの、起訴された罪状が覚せい剤取締法違反といった、過去の罪状とは関連性の低い事件であった時には、初犯扱いとされる可能性があるのです。

また同じような犯罪の前科があっても、5年~10年といった一定以上の期間が経過していれば、これも初犯扱いとされることがあります。

被告人が十分に反省していることも条件

執行猶予には、被告人が反省の態度を示しているかどうかも重要です。被告人が十分に反省していることとは、文字通り被告人が自分の犯した罪を反省して、二度と同じ過ちを繰り返さないという気持ちになっているということで、情状酌量という言葉で括ることができるでしょう。

裁判官は法廷内での被告人の言動を注意深く観察していて、本当に反省しているかどうか、被害者に謝罪の念を持っているのかどうかを判断します。しかし心の中までは見通せませんので、次項に挙げるような具体的な反省の証拠を示すことも忘れてはいけません。

執行猶予付き判決を得るために

刑事事件の被疑者として逮捕され、起訴されて被告人になってしまい、実刑を免れなくなった場合に、執行猶予付きの判決を得るためにまず重要なことは、判決が言い渡される結審までに、被害者との示談を成立させることです。

裁判官にとって示談の成立は、被告人が十分に被害者に対して謝罪の意思を示し、被害者がそれを受け容れた証として重要視しますので、執行猶予付きの判決となる可能性が高いと言えます。しかし近年、被害者は示談に合意したら裁判に負けると考える人も増えているため、いくら弁護人が頑張っても示談のテーブルにすらつかないケースもあると言われます。

そのような場合には、被害者に謝罪文を送ったり、日弁連(日本弁護士連合会)を通して贖罪寄付をするなどして、形に残るような反省の意思表示をしたりするのも効果的でしょう。また薬物系の犯罪など、被害者がいない犯罪の場合にも反省文を自主的に提出するとか、被害者と示談できないケースと同じように贖罪寄付をするのも良いでしょう。

贖罪寄付とは、日弁連や法テラスなどが窓口になり、寄付されたお金は主に被害者支援に使われるもので、被疑者や被告人が寄付をすると証明書が発行され、それを公判の際に裁判所へ証拠として提出するのです。

刑事事件に強い弁護士を選任すること

そして何よりも重要なのは、刑事事件の取り扱いや裁判弁護の経験が多い弁護士を選任することです。刑事事件の裁判では、量刑の見通しや公判の進行状況などを確実に把握し、適切な時期に効果的な弁護活動を行う必要があります。

ただでさえ被告人に対して悪意を持っている被害者に示談の申し入れをするなどの弁護活動は、経験のある弁護士でないと成功しないとも言えるでしょう。弁護士比較サイトなどを利用し、刑事事件に強い弁護士を探し、実際に接見してみて信頼に足る弁護士を選任することが大切です。

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