痴漢事件の示談金・慰謝料相場~冤罪でも示談金・慰謝料は必要?

慰謝料の100万円

痴漢の示談金・慰謝料の相場

痴漢事件で逮捕されたときには、加害者は被害者女性に対して、示談金や慰謝料を払うことになる場合が多くなります。まずは、示談金・慰謝料はどの程度の金額が相場であるかを紹介します。

強制わいせつ罪か迷惑防止条例違反のどちらであるかや、加害者の年収、社会的地位などによっても、金額は変わりますが、一般的には下表の金額が、示談金・慰謝料の相場になります。

示談金・慰謝料
強制わいせつ罪 10万から100万円
迷惑防止条例違反 10万から50万円

示談金と慰謝料の違いとは

示談金と慰謝料をひとまとめにして相場を紹介しましたが、示談金と慰謝料ではどのような違いがあるのでしょうか?

示談金も慰謝料も、加害者が被害者に払うお金という点では違いがありません。2つの違いとしては、示談金が「痴漢事件を解決するお金」であるのに対して、慰謝料は「被害者女性が受けた損害を賠償するためのお金」です。

裁判などになった場合には、慰謝料を支払うことになる場合もありますが、通常は示談金の中に慰謝料も含まれており、示談する場合には示談金のみを支払うことになります。示談が成立していれば、その後に慰謝料を支払う必要などもなくなります。

強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の違いとは

上の表で、「強制わいせつ罪」と「迷惑防止条例違反」どちらにあたるのかによって、示談金や慰謝料の相場に差が出てきています。そもそも、「強制わいせつ罪」と「迷惑防止条例違反」は何が違うのでしょうか?

法律上ではそれぞれ、強制わいせつ罪は「暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること」、迷惑防止条例違反は「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」、と定められています。痴漢行為の内容で区別されているのですが、この表現ですとわかりにくいと思いますので、2つの違いを簡単にまとめます。

  • 強制わいせつ罪→「被害者の下着の中などに手を入れて、直接被害者の体を触った場合」
  • 迷惑防止条例違反→「スカートなどの衣服の上から被害者の体を触った場合」

つまり、衣服の中に手を入れて、直接被害者の体を触ったかどうかが、「強制わいせつ罪」と「迷惑防止条例違反」の違いです。

このように犯罪内容に違いがありますので、刑罰の内容にも差があります。強制わいせつ罪は「6月以上10年以下の懲役」となっており懲役刑のみ、迷惑防止条例違反は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」となっており罰金刑もあり、初犯であれば罰金のみの場合が多いです。

ここまでの内容を表にまとめます。

痴漢行為 刑罰 示談金・慰謝料
強制わいせつ罪 服の中に手を入れて直接触る 6月以上10年以下の懲役
(懲役刑のみ)
10万から100万円
迷惑防止条例違反 服の上から体を触る 6ヶ月以下の懲役
または
50万円以下の罰金
10万から50万円

痴漢で逮捕されたとき示談はするべき?

示談をすることで、釈放されたり、不起訴になったり、刑が軽くなったりしますので、痴漢で捕まってしまった場合には示談を成立させるメリットは大きいです。そのため、痴漢をしてしまい逮捕されたときには、弁護士に示談交渉をしてもらうべきでしょう。しかし、実際には痴漢をしていないのに、痴漢に間違われて逮捕されてしまったというような、痴漢冤罪の場合もあります。次に、痴漢冤罪の場合の示談について解説します。

痴漢冤罪でも示談金・慰謝料は必要?

痴漢に間違われてしまい、痴漢冤罪の被害者となってしまった場合でも、示談金や慰謝料は必要なのでしょうか?

やってもいない痴漢を認めて、何十万にもなる示談金を支払うのはかなりの抵抗があると思います。しかし、痴漢で逮捕されると長期間の勾留をされ、会社を長期欠勤せざるを得なくなり、さらに裁判などになれば、時間や労力、金銭面などで多大な負担を余儀なくされることになります。

痴漢冤罪への理解は高まってきてはいますが、会社を長期欠勤すると解雇になってしまう可能性もあります。また、裁判で無罪が認められる可能性はとても低くなっていますし、不起訴を勝ち取ることも簡単ではありません。示談をすることで不起訴となる可能性が高まりますので、早めに示談を成立させて不起訴となり釈放されると、もとの社会生活に戻りやすいことが示談をするメリットにあります。また、不起訴にならずとも、示談が成立すれば、身柄はすぐに解放されることが多いです。

また、略式起訴であれば通常の裁判に比べて負担は減りますが、罰金を払うことになり前科がついてしまいます。有罪ということになるので、これを理由に解雇されてしまう場合もあります。

このような事情から、痴漢事件を早く終わらせ、今までの生活になるべく早く戻ることを優先して、痴漢冤罪にまきこまれてしまい、やってもいない痴漢で逮捕されてしまったような場合であっても、示談金を払って早期の解決を目指すという選択肢もあります。示談金を支払う場合には、慰謝料は示談金の中に含まれており、示談金と別に慰謝料を支払う必要はありません。

痴漢冤罪で逮捕されてから示談・釈放までの流れ

痴漢に間違われてしまってから、示談交渉が行われて釈放されるまでの簡単な流れをまとめました。

  1. 車内や駅のホームなどで痴漢と間違われてしまい、駅事務室へ
  2. 駅事務室へ行くと、警察官に管轄の警察署まで連れていかれます
  3. 警察署では、被害者に現行犯逮捕されたとされて身柄を拘束されます
  4. 示談交渉をする場合、弁護士が警察に被害者の連絡先を聞く
  5. 弁護士に連絡先を伝える事を、警察が被害者に確認する
  6. 被害者の同意が得られた場合、警察から被害者の連絡先を聞く
  7. 弁護士が被害者女性と示談交渉を行う
  8. 示談が成立したら示談書の作成を行う
  9. 検察官が「不起訴」と判断
  10. 釈放されもとの生活に戻ることができる

示談交渉をする場合、被害者女性は加害者と思っている人と会うことはまずありません。また、被害者女性が示談条件をのむかどうか検討する時間もありますので、示談を早めに成立させるためには、痴漢に間違われてからなるべく早く弁護士に相談する必要があります。

示談しない場合のデメリット

勾留が長引く

痴漢で逮捕されて勾留されると、拘置所や留置所といった施設での生活を最大20日間することになります。勾留が長期間になればなるほど、職場を解雇されてしまうなど、これまで営んできた社会生活に重大なダメージが与えられる可能性が高くなります。

そのため、痴漢で逮捕された場合には不起訴を勝ち取ることが重要で、不起訴処分を勝ち取る主な方法としては、「被害者との示談を成立させる」ことになります。不起訴が決まった時点で保釈されることになりますので、早めに被害者との示談を成立させることで、勾留後であっても、早期釈放をされる可能性が高くなります。

前科がつく

メディアなどで実名報道されているなどの事情がなければ、前科が企業などに知られるということは通常ありませんが、大人になってからついた前科は一生データベースに残り続けます。また、企業などに知られることはないと言いましたが、噂などで伝わることやネット上に情報が載っていることもあります。そうなると就職などに悪影響を与えてしまったり、職業によっては受けた刑事罰によって就くことができなくなったりする場合があります。

前科がつくと生じる不利益としてもう一つ、再度の刑事罰を受ける際には、捜査機関は前科照会をすることができますので、前科の影響で刑事罰が重くなる場合もあります。この点は、痴漢冤罪にまきこまれてしまったような、今までもずっと真面目に生きてきた方のような場合は重要ではないかもしれません。

起訴される前に被害者との示談を成立させていると、起訴猶予となり不起訴となる可能性が高くなります。不起訴となった場合には、裁判で有罪となることはありませんので、前科がつくことはありません。

痴漢冤罪で示談しない場合の対処

実際に痴漢をしてしまった場合には、示談を成立させるのが一番だとは思いますが、痴漢冤罪の場合には、「やっていない罪を認めることはしたくない」と考える方も多いですので、示談交渉はせずに対応することもあります。最後に、示談しない場合には痴漢冤罪にどのように対処するかを簡単に紹介します。

拘束・勾留されないことを目指す

逮捕される前や、勾留される前に弁護士へ相談・依頼した場合には、身柄の拘束や勾留されないように対応することになります。

痴漢に間違われて、駅ホームにいるときに弁護士に連絡がついた場合には、弁護士に現場に来てもらい、自分の氏名や住所、弁護士の事務所名などを、被害者女性などに伝え、その場から立ち去ることができるよう動くことになります。また、痴漢行為が行われた車内ではなく、電車から降りて、ホーム上で行われるような場合もあります。このような場合などには、警察が来ていたとしても、弁護士が駆けつけて、警察官に対して現行犯逮捕の要件を満たしてないことを伝え、身柄拘束をされずに済む場合もあります。

逮捕後には勾留されないように動くのですが、痴漢冤罪の場合は被疑者も職場や家庭のあるサラリーマンなどであることが多く、すべてを捨てて逃亡したり、証拠隠滅をするような可能性は低く、本来であれば勾留の必要がないことも多いです。検察官との面会や、裁判官との面会を行い、逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを主張し、場合によっては家族などの意見書や、通勤方法を変えて被害者女性と会わないようにする上申書などを提出します。

不起訴を目指す

起訴されたときの有罪率は99.9%といわれており、痴漢冤罪事件であっても、無罪を勝ち取るというのは困難を極めます。もし無罪を勝ち取ることができた場合であっても、それまでに莫大な時間と労力が必要で、さらには裁判費用などもかかります。そのため、裁判になる前に不起訴を勝ち取ることがとても重要になります。

不起訴を勝ち取る方法は、示談を成立させる以外では、検察側に証拠がないことへの指摘や、弁護側がここまでに集めた証拠を提示して、検事に対して不起訴になるよう働きかけることです。例えば、目撃者の証言であったり、再現実験のビデオを見せたりすることで、他の犯人の可能性が高いことを主張します。このように弁護士が検事面会をすることで、示談をすることなく不起訴を勝ち取れる場合もあります。

無罪を目指す

上でも述べたように、起訴された場合の有罪率は99.9%で、痴漢冤罪でも有罪になる可能性は高くなります。起訴されてもどうしても無罪を勝ち取りたい場合には、裁判で痴漢冤罪であることが認められ無罪になった例もありますので、目撃者を集めたり、証拠を集めたり、再現実験を行ったりして、無罪を目指して闘うことになります。

痴漢で逮捕されたら、弁護士に相談しましょう

痴漢で逮捕されると家族や職場などに大きな影響を与えますし、場合によっては会社を解雇されるなど、今まで営んでいた生活に重い影響が与えられる可能性があります。しかし、弁護士に依頼して示談が成立すると、釈放や不起訴を勝ち取り、早々に身柄拘束を解かれることで、前科もつくことなく、今までの生活への影響を最小限に抑える可能性が高くなります。

また、痴漢冤罪であったとしても、示談金の相場である10万円〜50万円(強制わいせつ罪であれば10万円〜100万円)を支払うことで、職場や家庭を守れるのであれば、示談を成立させることも選択肢の1つにはなります。

痴漢をされた被害者女性が直接加害者と会うことはほぼありませんので、示談交渉は弁護士に任せることになります。示談によって不起訴を勝ち取るには、早めに示談を成立させなければなりませんので、早めに示談交渉に向けて動き出さなければなりません。そのため、逮捕前や逮捕直後、勾留直後など、できるだけ早く弁護士へ相談するのがおすすめです。

お医者さんに外科、内科などがあるのと同じようなイメージで、弁護士にも事務所によって得意分野がありますので、相談するときには刑事事件に強い弁護士に相談するようにしましょう。

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