「窃盗罪」の定義~他人の財物を窃取する(盗む)ことで成立する犯罪~

財布

窃盗罪とは?どんな罪?

窃盗罪とは、おおまかに言うと「他人が占有する財物(モノ)を権利者に無断で、故意に盗んだ場合」に適用される罪です。

「窃盗罪」の定義と刑罰は、刑法第235条に次のように定められています。

刑法
(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

他人の財物、いわゆる財産的価値のある物を盗んだ者は「窃盗罪」に問われ、逮捕され起訴されてしまうと、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるというものです。

それでは、どのような行為が「窃盗罪」となるのでしょうか。

実際の数字を引用して紹介していきます。

犯罪件数は多いが、検挙率は低い「窃盗罪」

令和4年版犯罪白書によると、「窃盗」の認知件数は381,769件と非常に多く発生していますが、これは刑法犯 全体の6割を超える数字である反面、戦後最少の件数となっています。

認知件数とは警察が知り得る「窃盗」の件数ですから、警察に届けず、被害者が泣き寝入りしている「窃盗」の数はもっと多いでしょう。

身の回りにも、傘を盗まれた、落とし物が戻って来ない、などの事態に遭ったとしても、警察への通報を、手間がかかるからと迷っているうちに忘れることが多くあるはずです。

「窃盗」の検挙率は42.2%と低く、ちょっとした被害の場合は警察に届け出ても、盗まれた物は返ってこないと諦めてしまう風潮は頷けるもので、見つかりっこないという考えから、気軽に犯罪に手を染めてしまうという悪循環も存在します。

「窃盗」の手口はどのようなもの?

それでは、具体的な「窃盗」の手口を、犯罪白書から見てみましょう。

令和4年版犯罪白書では、「窃盗」の手口は、侵入窃盗(総数の9.8%)、乗り物盗(同31.3%)、非侵入窃盗(同59.0%)と大きく3つに分類されています。

窃盗 認知件数の手口別構成比
令和4年版犯罪白書より引用(PDF 10ページ)

侵入窃盗のうち最も多いのが空き巣(総数の2.9%)で、忍込み(同1.3%)、出店荒し(同1.0%)、事務所荒し(同0.8%)と続きます。

乗り物盗では自転車盗(総数の27.9%)と多く、オートバイ盗(同2.0%)、自動車盗(同1.4%)となっています。

総数の半分以上を占める非侵入窃盗で最も多いのは万引き(総数の22.6%)で、車上・部品ねらい(同9.5%)、置引き(同2.5%)、自動販売機ねらい(同0.8%)、色情ねらい(同1.6%)、仮睡者ねらい(同0.5%)、すり(同0.3%)、ひったくり(同0.1%)、払出盗(同2.2%)となり、その他の非侵入窃盗が総数の18.9%と、非常に細かい犯罪類型が存在することが分かります。

一方で、「窃盗」の検挙件数は42.2%と低いのは先に述べた通りですが、検挙件数のうち万引きが総数の39.4%、車上・部品ねらいが6.2%、空き巣が4.9%、自転車盗が5.3%と、「窃盗」には検挙されやすい犯罪と、そうでない犯罪があります。犯人の検挙が難しいという点があるかもしれませんが、乗り物盗、特に自転車盗の取り締まりをもっと厳しく行って欲しいものです。

以上のように、「窃盗」とは他人の物を盗ってしまう行為で、万引きや他人の住居に忍び込んで盗みを働く空き巣など、最初からそれが犯罪であると承知の上で行為を行う場合と、犯罪意識が薄い行為も「窃盗罪」に問われることもあるのです。

駅前で鍵のかかっていない自転車を勝手に乗ったり、急に雨が降り出し傘立てに置いてあった他人の傘を拝借したりするなどの行為も、「窃盗罪」となります。

「窃盗」と「強盗」の違い

「窃盗罪」と同様に、他人の物を盗む行為の犯罪として「強盗罪」がありますが、その違いを確かめてみましょう。

上記の通り、刑法第235条において、「窃盗」とは「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されていますが、一方の「強盗」は刑法第236条に以下のように定められています。

刑法
(強盗)

第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

当然ながら、「強盗」は5年以上の有期懲役という、「窃盗」と比べて厳しい刑罰が科されることになります。「窃盗」も「強盗」も人の財物を盗む行為ですが、これらの違いは「暴行または脅迫」が伴うかどうかです。

万引きや空き巣、自転車泥棒といった「窃盗」は、被害者に気づかれずに財物を盗んだ時の罪となります。一般的には被害者が盗まれたことに気づくのは犯行が行われた後となるので、被害者が犯人から脅されたり、暴行を受けたりすることがなかった場合のものです。

一方で「強盗」は、加害者が被害者に対して言動や凶器などで脅迫し、被害者から強制的に財物を奪い取る行為です。ただし「窃盗」の行為を阻止するために被害者や第三者が犯人を捕まえようとした場合、犯人が相手に怪我を負わせた場合も、強盗罪が成立する可能性が高くなります。

「窃盗」と「遺失物横領」の違い

「強盗」のように強い犯罪意識を持った行為、あるいは見つからなければいいと考えて行ってしまう犯罪の「窃盗」に比べて、特に罪の意識がなくても行ってしまう犯罪に、置き忘れた、あるいは落とした他人の物を持ち去るという行為、いわゆるネコババがありますが、これは「窃盗」ではないのでしょうか?

例えば、現金であるかどうかに関わらず、拾った物を警察に届けずに、そのまま自分の物にしてしまうネコババの行為は、「遺失物等横領罪」にあたります。

刑法では第254条において、次の通りに規定されています。

刑法
(遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「遺失物横領罪」の刑罰は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金と、「窃盗」よりも比較的軽いものとなっています。

この差は「占有」という法律上の概念にありますが、次に詳しく説明します。

「窃盗罪」における「占有」の概念とは?

他人の物に手を出す行為に変わりはない「窃盗罪」と「遺失物等横領罪」の違いはいったいどこから生じてくるのでしょうか。

それは、「占有」という法律上の概念です。盗んだ物やお金が、その行為の瞬間に被害者の「占有」下にあったかどうか、という点が重要になってきます。「占有」とは、その物やお金が被害者の手元にある状態、あるいは置き場を明確に被害者が認識している状態のことです。

盗んだ物が被害者の服のポケットやカバンの中など、すぐ手にできる場所にあった場合は、「占有」下の物を盗んだことになり、このケースは完全に「窃盗」となります。

それに対して、被害者が落としたり置き忘れたりして「占有」下から離れてしまった物、いわゆる「占有」離脱物を拾って、そのまま自分の物にしてしまう行為は、「遺失物等横領」となるのです。

こうした定義を踏まえると、ネコババの行為はすべて「遺失物等横領」で済むようにも考えられますが、「窃盗」が問われてしまう事もあることを理解しておきましょう。

「窃盗」となるネコババ行為

例えば、財布を拾った際、すぐに落とし主が現れ、拾い主を泥棒と見なして訴えてきたような場合には、「遺失物横領」ではなく「窃盗」に問われることがあります。

近年の法解釈や裁判の判例によると、落し物のすべてが「占有」離脱物とされるのではなく、落とし主が落とした事に気づき、遺失物の比較的近く(判例では20~80m程度)にいると、まだ落とし主の「占有」下にあったと見なされています。

こうした状況で、落とし主が被害者として拾い主を訴えると、「窃盗罪」が科せられる場合があります。

また、置き傘や放置自転車も、もともとの持ち主を知っていた上で盗んでしまえば「窃盗罪」が成立する可能性があります。

さらには、傘立てや自転車の置き場所によっては、その傘立て自体の持ち主や、駐輪場の経営者が「占有」権を主張し、「窃盗罪」になるケースも考えられます。

以上のような場合には、傘1本や自転車1台の拾得が、「窃盗」の犯罪行為として成立する事もあるのです。

素直に罪を認めることが肝心

「窃盗」行為を働いてしまい、後に犯罪が発覚して警察や被害者などとやり取りを行う場合、注意しておいた方が良いことがあります。

本当に出来心でネコババ行為をしたのであれば、弁済を行うなど相応の罪を償う必要は当然あります。しかし勘違いや、捨てられていたものを拾得しただけという意識で、結果的に犯罪行為を行ってしまった場合は、必要以上に重い罪を被ることはないのです。

「なぜ自分だけが捕まる」とか、「そんな所に放置しておいた方が悪い」などと揉めて事を荒立てることなく、素直に聴取に応じ、被害者への謝罪の意思を示した方が良いでしょう。

それでも被害者が訴えを起こす構えを崩さない場合には、適正な刑事手続きを受けるためにも弁護士に相談し、対応方法のアドバイスを受けてください。初犯であった場合、誠意を持って謝罪し、弁済を済ませれば、よほどのことがない限り、不起訴処分で済む可能性が高いでしょう。

「窃盗罪」の刑罰は?

他人の置き傘の持ち去り、自転車の乗り逃げ、あるいは拾った財布の中身の抜き取りといった行為は立派な犯罪行為で、「窃盗罪」となるものです。警察にこれらの犯罪が見つかった場合には、被害金額の大小に関わらず検挙されてしまいますし、逮捕されて留置場に勾留されることもあり得えます。

ただし、いわゆるネコババ行為で捕まって、起訴された後に公開裁判で実刑判決を受け、実際に実刑判決を受けて刑務所に行かされることはめったにありません。被害金額が高額で悪質な場合や、過去に同じような犯罪を複数回繰り返している常習犯だった場合には、実刑を科せられることもありますが、初犯ではまずないと考えて良いでしょう。

被害金額も小さく、被害者への謝罪や弁済などを含む示談を早期に成立させれば、不起訴処分で終わる可能性が高いものです。略式手続きになってしまっても、罰金刑が科されるだけで短期間のうちに事件が終結する場合もあるのです。

弁護士の力を借りて、被害者との示談に向けての手続きや話し合いを進めることをお勧めします。ただし、たとえ「窃盗」でも「遺失物横領」でも、自分がまったく関与していない冤罪で、無実を主張する場合には裁判までの長期戦を覚悟する必要もあります。

小さな犯罪で、罪を認めれば家に帰れると考えるのではなく、弁護士に依頼して徹底的に戦うべきでしょう。

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