「公然わいせつ罪」には被害者がいない場合も~痴漢との違いは?~

公然わいせつ

性犯罪における「わいせつ」とは?

「強制わいせつ」や「公然わいせつ」などの性犯罪を示す際に使われる「わいせつ」という言葉はあいまいなもので、時代と共に変化していく性格を持っています。そしてこれら2つの犯罪それぞれに適用される「わいせつ」の意味も、厳密にいえば違う点があります。

性行為等に及ばない性犯罪を、痴漢だとひとくくりにして「わいせつ」行為を捉えることは、思わぬ罪に問われる場合もありますので、しっかりと知識を身に着けておく必要があるのです。

「わいせつ」の定義は1つではない

「わいせつ」とは、法的には「いたずらに性欲を興奮または刺激させる」、「一般人の正常な性的羞恥心を害する」「善良な性的道義観念に反する」行為であると規定されています。この定義のうち前者2つについてはあいまいな規定であり、3つめは時代や社会情勢によって変化していくものだと考えられています。

そのため、具体的に何が「わいせつ」な行為に該当してしまうのかについては、それぞれの犯罪を規定する刑法その他の法令や、事件の状況と照らし合わせることが必要となってくるのです。

「わいせつ」の罪については、国民の善良な性風俗を保護法益とする見方が一般的でしたが、何が善良な性風俗なのかは明確に示せず、論理感を特定の刑罰を加えることで強制することは問題だと考えられるため、一概にどういった行為が「わいせつ」に該当するのかをはっきりとは言えないというのが正しい判断でしょう。

「わいせつ」と芸術性の関係

過激な性描写が問題になり、「わいせつ」の定義について社会的な関心が高まることがあります。その際に基準となる「わいせつ」の程度は、時代の変化と共に移り変わっていくため、これも個別に取り上げられた事件について、裁判所が判断を下すことになっています。

しかし小説や映画などの芸術作品については、指摘された問題箇所だけではなく、作品全体の芸術性を勘案し、どのように一般に供されるのかという点も含めて、相対的に「わいせつ」について判断するべきだとされています。

どのような言葉が書かれているから、何が写っているからといって、それが「わいせつ」であるとは言えないのです。

「公然わいせつ罪」とは

「わいせつ」が問題となる犯罪として代表的なものに、「公然わいせつ」があります。

「公然わいせつ」については、刑法第174条に次のように規定されています。

刑法
(公然わいせつ)

第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

条文にある「公然」とは、不特定多数の人が自由に行き来できる空間のことで、いわゆる公共の場とされる路上や公園などを指します。ただし喫茶店や映画館のような、人の入退室に関して特別な制限をかけていない屋内も「公然わいせつ」の罪が適用される範囲になります。エレベーターホールや、ストリップ劇場、車の中などでも成立する可能性があります。

他の犯罪と異なる点としては、「わいせつ」行為が行われた場所に誰もいなくても、不特定多数の人から認識される可能性がある場所ならば、「公然わいせつ罪」が成立することが挙げられます。要するに、誰も被害者がいないのに、犯罪者として逮捕されることがあるのです。

この点は、痴漢など特定の被害者がいる性犯罪との大きな違いです。

「公然わいせつ」の罪に問われる行為は?

「公然わいせつ」の罪に問われてしまう行為を具体的に見ていきましょう。

最も分かりやすい行為は、例えば「コートの下は全裸で、通りかかった人にコートを開いて裸を見せつける」といったような露出のケースは、被害者がいる「公然わいせつ罪」に問われます。この場合は、冒頭で述べた「いたずらに性欲を興奮または刺激させる」、「一般人の正常な性的羞恥心を害する」に該当するものであり、性的な嫌悪感や羞恥心を乱すような行為が該当します。

そのため、人が認識できる状態で他人の性欲を刺激させること、例えば性器や臀部、胸などを露出する行為や、性行為やその疑似行為、自慰行為を行うことは、「公然わいせつ罪」に問われるものです。一方で、誰もいない公園で自分の局部を露出したり、自慰行為をしたりすることも「公然わいせつ罪」に問われる可能性があります。

誰も被害者がいないケースとなりますが、その場を警察官に見つかり、その程度や常習性が悪質であると判断されれば、現行犯逮捕されることもあります。この「わいせつ」行為が自分ひとりで完結せず、他人に抱きつくような、人を巻き込んでしまう「わいせつ」行為は、「公然わいせつ罪」ではなく「強制わいせつ罪」が適用さてしまいます。

「わいせつ」にあたらない行為

法的な基準では「わいせつ」に該当すると考えられても、「公然わいせつ罪」には問われないと考えられる行為があります。例えば、恋人同士が路上でキスを交わす行為は、今や日常的に見られるものであり、「いたずらに性欲を興奮または刺激させる」、「一般人の正常な性的羞恥心を害する」と判断する人がいても、「公然わいせつ罪」は適用されないでしょう。

この行為がエスカレートして服を脱がし始めるようなことがあれば、「公然わいせつ罪」に問われてしまう可能性はあります。一方で、「公然わいせつ」には該当する行為を故意に行ったということも同罪の構成要件となりますので、意図せずにポロリと性器や臀部、胸などを露出してしまった、ということでは罪は問えないと考えられています。

「公然わいせつ罪」の刑罰規定は?

「公然わいせつ罪」を規定する刑法の条文によると、同罪の刑罰は「6カ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」と定められており、他の犯罪の刑罰よりも幅が広いものになっています。つまり、最も重いケースでは6カ月の懲役刑、逆に軽い場合では1,000円以上1万円未満の過料となるのです。

ちなみに拘留とは1カ月未満の禁錮刑を指し、懲役刑のように刑務作業は科せられず、刑務所などの刑事施設で身柄を拘束されるものですが、過料や拘留は、実際の裁判ではあまり下されることのない刑罰です。

実際に「公然わいせつ罪」に科せられる刑罰は?

「公然わいせつ罪」に係る実際の判例を見ると、同罪の被告人に下される刑罰は、罰金刑になるケースが多いようです。初犯であれば、よほど悪質な行為でない限り略式裁判による罰金刑となる可能性が高く、また悪質性が低い行為については、不起訴処分の場合もあります。

「公然わいせつ罪」で懲役刑を下されるケースは、同罪の単独ではなく、他の罪も一緒に犯してしまった場合が多いと考えられます。例えば、酒に酔って着ているものを全部脱ぎ、その上で暴れて公道に設置された看板や公園のゴミ箱を壊し、挙句の果てに乱暴行為を制止しようとした警察官に暴力を振るってしまったような場合には、初犯であっても重い刑罰が下される可能性があります。

この際、公の場で衣服を脱いだ行為は「公然わいせつ罪」、物を壊した行為は「器物損壊罪」、警察官に暴力を振るった行為は「公務執行妨害罪」に問われます。警察官に暴力を振るってしまった場合は、「公務執行妨害」の方が罪が重いので、懲役6カ月以上の刑罰を受ける可能性がありますが、酒に酔って正常な判断ができない状態で、初犯であれば執行猶予がつく可能性も高いと言えます。

「公然わいせつ」とストリップ劇場

ストリップ劇場や、性風俗店においても、不特定多数が見られる状態で、陰部などを露出した場合には「公然わいせつ罪」に問われる可能性があります。サービスとして成立しているのだから問題はないと考える人がいるかもしれませんが、その内容によっては摘発の対象となってしまいます。

これらの場所で逮捕されるのは、主に店舗の営業を行っていた店側と、陰部などを露出した本人ですが、お金を払って客として入場していた人が逮捕される可能性もゼロではなく、その場で客自身が「わいせつ」行為をしていれば、罪に問われることがあるのです。

「公然わいせつ罪」で設定された刑罰で、比較的罪が重くなるのは、ストリップ劇場の経営者とストリッパーと言われています。近年ストリップという風俗業態自体が廃れてきたこともあり、「公然わいせつ罪」でストリップ劇場が摘発されたというニュースもめっきり見聞きしなくなりましたが、過激な見せ物や行為を目玉にして営業しているようなストリップ劇場には、見せしめ的な意味も込めて、罰金刑の最高額が判決として下されていたこともあるのです。

「公然わいせつ罪」で逮捕された時の対処法

「公然わいせつ罪」で逮捕された場合、他の犯罪と同じように、身柄は拘束され取調べを受けます。特定の人を対象とした「わいせつ」行為や、物を壊したり暴力を振るったりという余罪がなく、初犯であればその日のうち、少なくとも数日で身柄は解放されるでしょう。

そして罪を認め、反省の念が受け入れられれば、略式起訴で罰金刑となると予想されます。しかし、罪を認めない時や再犯の場合、また余罪があるといったケースでは、身柄拘束が長期間にわたり、起訴されることもあります。

反省の念を見せることが大切

「公然わいせつ罪」で逮捕された場合に大切なことは、反省の念を見せることだと言われています。なぜ「わいせつ」行為に及んでしまったのか、今の感情はどうか、今後どうしていくのかを反省文などにまとめるのも良いでしょう。

「公然わいせつ罪」に問われる行為は性癖であると解されることもあるので、家族や親族がきっちりと監視するといった誓約書を検察に提出する方法もあります。これらの手続きは、弁護士を通じて行った方がより効果的に進めることができますので、軽い罰金刑で済むからなどと考えずに、相談をしてみることをお勧めします。

冤罪の場合は、徹底的に戦うこと

ごく稀に、「公然わいせつ」で冤罪があり得ます。例えば、裸のままでベランダに出てしまった時や、車の中で着替えているだけなのに通報されて逮捕ということが考えられないでもないのです。

万が一このような冤罪で逮捕されてしまったら、軽い罰金刑で済むと罪を認めるのではなく、弁護士に相談して不起訴処分となるように手続きを進めてもらいましょう。

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