殺人未遂・幇助・教唆~殺人にまつわる犯罪~

未遂・幇助・教唆

殺人に至らなくても「殺人未遂罪」に問われる

殺人罪は重罪ですが、実際に殺人を犯さなくても「殺人未遂罪」に問われることがあります。殺人未遂罪は広義の意味で殺人罪の一種で、“既遂(実際に殺人を行った場合)の罪”ではない“未遂の罪”です。
殺人未遂罪は刑法203条文に

「第199条及び前条の罪の未遂は、罰する」
(「前条」とは202条の「自殺関与罪・同意殺人罪」のこと)

とのみ書かかれており、具体的な刑罰は明記されていません。

この条文の解釈は、199条や202条で定めらている刑罰がそのまま適用できるということで、殺人未遂は殺人既遂と同じ重さの量刑、つまり“死刑又は無期、若しくは5年以上の懲役”を科せられる可能性があるということです。
実際には被害者が死亡していないため、最高刑の死刑になることはほぼありません。それでも有罪となった場合、結構な長さの有期刑が下されます。近年の傾向をみると3年から15年程度の懲役(実刑)判決が出ています。

殺人未遂に問われるポイント

決めては“殺意の有無”

殺人未遂罪が成立するポイントは、殺人罪と同じく“殺意の有無”です。
この方法で被害者を攻撃したら死ぬかもしれないと予想される手段で、実際に攻撃を実行すると、殺人未遂を問われる可能性が高くなります。たとえば刃物や木刀、あるいは金属バットといった殺傷能力が十分にある凶器を使った場合です。

また具体的なターゲットがいない場合、石油をまいて火をつけようとするなど、誰かが死ぬ可能性がある行為を故意に行った場合も殺人未遂罪が成立する可能性があります。

一方、殴る・蹴るといった、素手で被害者に瀕死の重傷を負わせた場合は状況が異なります。検察は、実際の裁判で有罪判決となる確実性の高い「業務上過失致死傷罪」や「傷害罪」で起訴するのが一般的です。

殺人を手助けしたら当然罪に問われる

殺人幇助も重罪

殺人行為を手伝うと「殺人幇助の罪」に問われます。これは殺人に限らず、犯罪全体に共通する罪で、犯罪行為を手伝った場合は刑法62条1項の
「正犯を幇助した者は、従犯とする」
という項目で定められており、実際に犯行を行った行為(正犯)を手助けすれば、幇助の罪になります。

この幇助が成立する要件は、

  • 意志を持って犯罪行為を手助けした
  • 手助けした行為が、犯罪成立に役立った

という二点です。

まず正犯(主犯)の加害者が、殺人を犯すことを承知の上で凶器を手渡すなど、それに協力したら幇助の罪が成立します。この場合、正犯の人物が人を殺すことを知らなければ協力しても罪は問われません。
たとえば犯人が人を殺す目的で包丁を買った場合、レジで包丁を売り渡した人は、まさかこの包丁が凶器になるとは予想できませんので、幇助にはなりません。

そして幇助が成立するもうひとつの要件は、確実に犯行の手助けをしたか否かという点になります。
具体的には二人で一人の被害者を殺そうとした場合、正犯が被害者をナイフで刺し、従犯(幇助する者)は被害者が逃げないよう羽交い絞めにするなど、正犯の犯行に役立つ行為を行った場合、幇助は成立します。

しかし、従犯の羽交い絞めに抵抗し逃亡した被害者を、結果的に正犯が一人で殺した場合、従犯は犯行の役に立たなかったとして幇助の罪は成立しない可能性が出てきます。もっともこのように事件に深く関与した場合、万一、殺人自体の幇助は免れたとしても、被害者の死体遺棄などなんらかの幇助の罪では訴追されることになりそうです。

幇助の罪の場合、予想される量刑は“正犯の半分の刑罰”が相場です。つまり正犯の殺人罪で、懲役20年の実刑判決だった場合、幇助した者は懲役10年の実刑判決となる可能性が高くなります。

他人に殺させるのも正犯と同罪

殺人を唆すのが「殺人教唆」!

幇助の場合と同様「殺人教唆罪」という独立した刑法はなく、殺人を唆す(そそのかす)と「殺人罪における教唆の罪」になります。「教唆の罪」は刑法61条に定められており、条文は

「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」

というシンプルなモノです。

つまり殺人に限らず、犯罪行為を直接行うのではなく、他人をそそのかして実行させる罪が「教唆」になります。
教唆の罪で起訴され、有罪が確定すると、その刑罰は、実行犯(正犯)と同じ罪が科せられる、大変重いものとなります。自分の手を汚さず、他の人に罪を犯させる行為ですから、確かに相当悪質な犯罪と言えます。ただ、教唆の罪は立証が難しい犯罪でもあります。

殺人罪における教唆の罪が成立する条件は

  • 正犯(実行犯)が確実に被害者を殺していること
  • 正犯者が被害者に殺意を持った理由が、教唆犯の指示や命令、あるいは暗示がきっかけであること

というモノです。

殺人事件が成立していなければ、正犯者は殺人罪には問われませんので、最初の条件は当然のものです。立証が難しいのは二つ目の条件で、正犯者がずっと以前から被害者に殺意を持っており、教唆犯は単に“背中を押した”程度では、幇助の罪に問われることはあっても、教唆にはならないわけです。

教唆犯の働きかけによって、はじめて正犯者に殺意が芽生え、その結果殺人を実行したことが実証された場合のみ、殺人教唆が成立します。
ですから頭の回る犯人の場合、正犯者に殺人を教唆した物証を残さないよう、細心の努力をするわけですが、教唆の方法や手段は特に限定されていませんので、立件に足りうる数々の状況証拠が積み上がった場合はやはり捕まってしまいます。悪い事は考えてはいけません。

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