刑事裁判の手順~判決を大きく左右する証拠調べにおける証人尋問~

証人席

証拠調べで最も重要な証人尋問

刑事裁判の証拠として提出された証拠書類は、基本的に裁判官が確認するだけで審理を行うため、改めて法廷内で全文が読み上げられることはなく、証拠として採用されるかどうかは別として、調べに長い時間がかけられることはあまりありません。

法廷での公開裁判において最も長い時間を必要とするのは、被害者や目撃者、あるいは証拠書類で証拠の鑑定をした鑑定人などの証人に、検察官や弁護人、あるいは裁判官が直接質問をする証人尋問となります。

証人尋問は1人の証人に対して、検察官と弁護人双方の質問に加え、裁判官も質問することがあるので、1回の公判期日で証人尋問が可能な人数はそれほど多くありません。

そのため、法廷に何人の証人を召喚するかでその裁判の期間は決まってくるとも言え、証人尋問は証拠調べで特に重要視されるだけではなく、裁判全体を見てもここがハイライトであると言えるでしょう。

なぜ証人尋問が重要視されるのか

日本の刑事裁判の公判は、口頭主義や直接主義といった基本原則を重視します。そのため、法廷において裁判官の目の前で口頭によって行われる証人の証言が、特に裁判の行方を左右する重要なものとなるのです。

後述の通り証人は召喚を拒否することができず、虚偽の陳述を行うと罰せられますが、近年は証人の保護も重要視され、2016(平成28)年の刑事訴訟法改正により、証人の氏名や住居に関する情報を保護する措置が講じられています。

例えば、原則として検察官、被告人、弁護人が証人尋問を要求する際には相手方に証人の住所や住所を知る機会を与えなければなりませんが、報復による加害などのおそれがある場合には、これらを知らせない条件を付すこと、あるいは代替的な呼称や連絡先を開示することも可能となっています。

証人への召喚は拒否できない

証人として採用された人の元には、裁判所から召喚状が届きます。

○○年○○月○○日、△△地方裁判所に××の事件に関して証人として出廷してください」という主旨の手紙となり、召喚された証人には原則として拒否権はありません。

病気などの正当な理由がない場合、召喚状を無視して出廷しないと、罰金刑などの刑事罰に処せられる可能性があります。

召喚を無視すると勾引の可能性も

証人が裁判所への召喚を無視し続けると、裁判所から勾引という処分が下される可能性があります。勾引とは、強制的に身柄を拘束されたうえで裁判に出廷させられることで、通常は公判期日の前日から裁判所の最寄りの拘置所あるいは留置場といった刑事施設で身柄を拘束されてしまいます。

ただし、証人としての召喚はある日突然裁判所から通知が来るわけではなく、事前に警察か検察、あるいは弁護士から「裁判で証言してくれませんか?」という打診があり、この時点で頑強に拒否すれば、証人として召喚される可能性は低くなり、実際に勾引されてしまうようなケースは希だそうです。

証人には日当などが支給される

しかし日本の司法の考え方では、裁判で証人として証言することは国民の義務と捉えられていますので、証人として出廷を求められたら、なるべく協力する方が良いとされます。

裁判所が遠隔地にあっても、証人として出廷するための交通費と日当は現金で支給されますので、単に遠いからとか、仕事が忙しいといった理由で拒否することは避けた方が無難です。

また証人の請求は、「この人を証人として法廷に呼んで欲しい」と検察側と弁護側の双方から裁判官に申請することで行われますが、裁判官が申請された証人すべてを採用するとは限りません。

裁判官は裁判の効率性を重視する傾向にあり、無駄に審理を長引かせるだけだと考えられる場合は、証人の申請が却下されることもあります。

証人の虚偽の陳述は処罰される

証人として刑事裁判に出廷した場合、基本的に証人本人は傍聴席に座ります。

事件が話題になって傍聴席が満席になるような場合でも、証人の出廷は事前に分かっていますので、傍聴席の中に証人の指定席が設置されているのです。また性犯罪の被害者や、組織犯罪の証言者など、証人が被告人や傍聴人に対して顔出しできない場合は、別室で待機するケースもあります。

公判が開廷されて証人尋問が始まると、証人は証言台に立ちますが、公開の場で顔を出したくない、あるいは被告人などに顔を見せたくない場合には、仕切り板が立てられたり、隣室からビデオ中継が行われたりするなど、証人の保護のための制度も採り入れられています。

宣誓し、事実だけを証言する

証人は最初に宣誓書を読み上げ、真実のみを語ることを宣誓します。この文面は裁判所によって微妙に違うようですが、「包み隠さず、真実だけを証言します」という意味の宣誓となります。

この宣誓をしたことで、証人は法廷内の証言に関して虚偽の陳述をすると、刑法第169条に定められている偽証罪に問われることになります。

刑法
第百六十九条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

とはいえ、裁判の判決の行方を左右するような虚偽の陳述を除けば、本当に偽証罪に問われることは希ですが、証人には黙秘権がないという事実もあります。

確かに証人というのは裁判の法廷において、何かしらの証言をするために出廷するのですから「黙秘します」というのでは話にならないのですが、刑事裁判の場合、証人が自分の発言によって家族などが罪に問われる可能性がある場合に限って、証言を拒否できる証言拒絶権は認められ、また医者や弁護士などが持っている守秘義務も有効となります。

「記憶にございません」はあり?

もっとも人の記憶は、いつまでも鮮明に残っているとは限らないので、「記憶にありません」、「覚えていません」という証言をしても咎められることはありません。

証人の証言は裁判において最も重要な証拠になるため、証人に黙秘権は認められていませんが、責任が重大であるからこそ、曖昧な記憶で証言するのではなく、記憶に自信がない場合は、素直に忘れたとか覚えていないと言った方が良いとされます。

証人尋問の流れ

出廷した証人は検察側と弁護側の双方から質問を受けます。

普通はその証人を申請した側、例えば検察側が被害者本人を証人として申請した場合は、検察官から質問を開始して答えますが、刑事裁判の証人は原則として自分から発言することはありません。

検察官が「事件当日、証人はどこにいましたか?」、「被告人とは面識がありますか?」といった質問をして、証人は質問されたことに答える形で証言を続けていきます。

この際に、証人が質問をした人の方を見て質問に答えることがよくありますが、裁判官は証人に対して、「証人は裁判官の方を見て答えてください」と注意を受けることがあります。

証人にしてみれば、会話は質問をした人の方を見て話すという常識的なマナーを守っているつもりなのですが、裁判官は審理をするうえで証人の目の動きや表情の変化も慎重に観察するため、裁判官の方を向きながら証言をするというのは、裁判の法廷における独特の作法だと言えるでしょう。

相手側から反対尋問が行われる

証人を呼び出した側は、証人の証言によって自分の主張を十分に裁判官に伝えると質問を終え、続いて反対尋問と呼ばれる相手側からの質問が行われます。

検察側が呼んだ被害者本人であれば、検察官の質問が終わった後、次には被告人側から被害者に質問をします。一方で被告人本人が質問することはできず、検察側の呼んだ証人に質問をするのは被告の弁護人となります。

検察官が証人に行う質問の内容は、あくまでも犯罪事実を証明するための質問ですが、弁護人がする質問は真逆となり、被告人の無罪を証明するためのものや、罪を軽くするための質問です。

したがって起訴事実を否認しているような裁判の場合は、弁護人は検察側の証人の証言に対して矛盾点を指摘するなど、まるでドラマのような展開を見せることがあります。

もっとも、実際の法廷で否認裁判は多くありませんので、そうしたドラマチックな証人尋問にはなかなかお目にかかることはありません。

裁判官が質問することもある

そして検察側と弁護側の双方の質問が終わると、基本的には証人尋問は終わりなのですが、終了する前に裁判官が証人に対して直接質問することがあります。検察側からも弁護側からも質問されなかったことや、質問の流れの中で裁判官が個人的に持った疑問を尋ねるのです。

以上のような流れで、1人の証人に対する証人尋問は行われ、複数の証人がいる場合には、複数の公判期日において証人尋問は続けられます。

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