準強制わいせつ罪とは?罪の内容と強制わいせつ罪との違い

酔った女性を襲おうとする男性

準強制わいせつ罪とは

法体制の整備がなされるなど、性犯罪に対する意識は年々変化しています。判例の変更がなされたり刑罰が重く設定し直されたり、取り締まりも厳しくなってきています。そんな中、ニュース等でも「強制わいせつ」というワードをよく耳にするようになっています。これはどんな意味を持つのかだいたいの認識はできているかと思いますが、犯罪として取り締まる場合には法的にどのような意味を持っているのか知る必要があります。

「準」が示すのは罪の軽重ではなく手段の違い

同様に、「準強制わいせつ」というワードも聞いたことがあるかと思います。意識していなければ「準」という言葉が付いているので、「強制わいせつ」よりは軽いわいせつな事件としてひとまとまりで理解していたかもしれませんが、これらは互いに手段の異なる犯罪で、どちらかが重いということもありません。

どちらも似たような点はあり、被害の内容、刑罰も同類ですが、具体的な違いとして、暴力的に犯行に及ぶのか、それ以外の方法で歯向かえないようにして犯行に及ぶのか、という違いがあります。後者が「準強制わいせつ」あたる行為です。なお、注意しておきたいのが、どちらも罪の重さとしては同じであるということです。「準」が付いているから比較的軽い罪であるというのは間違った認識です。それでは、以下で成立要件や他の類似する罪との違いについて詳細に見ていきます。

準強制わいせつ罪の成立要件

法的に正しい理解をするには、その罪について定めた条文を確認する必要があります。準強制わいせつ罪については刑法の178条にその内容が書かれています。

刑法第178条(準強制わいせつ罪)

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

「176条の例による」とありますが、刑法176条とは強制わいせつ罪についての規定です。

刑法第176条(強制わいせつ罪)

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

つまり、178条に定められていることをした者は、176条を犯した場合と同じように処罰されるということです。ここからも両罪が同等の罪であるということが伺えます。

それでは、条文の文言に従い、どのような場合に178条の「準強制わいせつ罪」が成立するのか考えていきます。重要なのは「被害者が心神喪失または抗拒不能な状態」で、「わいせつな行為」をしたかどうかです。

わいせつな行為をすること

同罪における「わいせつな行為」とは、「性的な羞恥心を害するような行為」を言います。具体的には陰部を触ったり胸を触ったりする行為です。
もちろんこの行為があっただけで当然に該当するわけではなく、程度や状況、加害者の意図、被害者の年齢、そのための手段なども考慮されます。
ただし、性的な意図が加害者にあったかどうか、成立可否において考慮されるケースと考慮されないケースとに分かれます。

最近は性的な意図がなくても、わいせつ行為とみなされる判例も

最近の判例では、この性的な意図がなくてもわいせつな行為に該当し、強制わいせつ罪が成立するという判断がなされて注目を浴びました。
というのも、それまでの判例をもとに評価したのでは、加害者の性的な意図がなければ強制わいせつ罪で裁くことができないということになっていました。客観的に性的な目的がありそうと思えても、単に強要罪の範疇で片付けられていました。
これが変更される判例が出たことで、客観的に明らかな性的意味を含むと思われる場合には、加害者に性的な意図がなかったとしても「わいせつな行為」として認定することができるようになったのです。

そのため、上の例にある陰部を触るような行為は、特殊な状況下によるものでなければ明らかに性的意味を含むと評価されやいでしょう。その結果、加害者の目的としてはそれが被害者に対する復讐心から来るものであったとしても「わいせつな行為」と評価されることになります。

一方で客観的に判断して明らかに性的な性質を有していると言えないようなケースもあります。微妙な行為が争われているときには、加害者の意図・目的も考慮される余地が残されていることから、この余地を残したという点で判例に批判もあるようです。

被害者が心神喪失または抗拒不能な状態であること

犯行時において被害者が心神喪失の状態であった、または抗拒不能な状態であったということがこの「準強制わいせつ罪」の大きな特徴であると言えるでしょう。

心神喪失とは

「心神喪失」とは、精神的な障害によって正常な判断ができなくなっている状態を言います。たとえば、薬物中毒や精神病を患っており、自らの行いがやっても良いことなのか、それとも悪いことなのか理解ができない人などです。そしてその能力に従って行動することもできない人も含まれます。

抗拒不能とは

これに対し「抗拒不能」とは、上の精神的な障害などによらず、具体的事情の下で反抗が不能な状態に陥っていることを言います。
どこからが抗拒不能に入るのか、完全な線引きで明確にすることは難しいですが、社会一般の常識に照らし、心理的身体的に抗うことが困難であったかどうかが評価されます。具体例としては、泥酔している人や薬の影響で意識が朦朧としている人などが挙げられます。

つまり、医師が麻酔を患者に行い、意識がなくなってからわいせつ行為に及んだときには、準強制わいせつの成立が考えらえます。お酒を大量に飲ませ、正常な判断ができず意識もはっきりしていない状態で行為に及ぶ場合も同様です。
少し毛色の異なるケースとして、医師による診察中の行為もあります。医師が診察と称してわいせつと言える行為をした場合、患者の意識が正常であっても、適切な診察だと誤信しているとこれに対して反抗することが難しくなります。この場合でも、他の様々な状況等を勘案して準強制わいせつ罪が成立する余地があるでしょう。

睡眠中や飲酒による酩酊状態にある人の被害が多い

実際に多い事件としては、睡眠中や飲酒による酩酊状態にある人が被害に遭うケースです。裁判でこれを抗拒不能と捉えるかどうかは、犯行時前後にとった被害者の行動などから推察されます。
たとえば、わいせつ行為を受けた場面で意識がはっきりとしていたこと、自分の意思で自由な行動ができていたことなどが判明すると、準強制わいせつ罪が成立しにくい方向へと傾くでしょう。被害者の主張だけで判定してしまうと冤罪の可能性も高まるため、こうした客観的な情報をもとに評価を行います。
逆に、犯行時足元がふらふらしていたこと、呂律が回っていなかったことなどが示せれば、準強制わいせつ罪成立に近づくことになります。

準強制わいせつ罪と強制わいせつ罪の違い

手段が異なる

ここまでで説明したように、準強制わいせつが成立するには、心神喪失または抗拒不能という条件が必要でした。酒で酔い潰させる、睡眠薬を飲ませる等の手段がきっかけになります。

一方で、「強制わいせつ」では、暴行または脅迫を用いることが手段として必要で、暴行または脅迫の手段によって相手の反抗をできなくさせたうえでわいせつ行為を行った場合に成立します。
たとえば、殴ったり蹴ったりして押さえつける、わめくと痛めつけるなどと脅す行為が該当します。相手が反抗できないほどの程度かどうかが重要で、その判断には両者の年齢や犯行時の状況、凶器の有無などが総合的に考慮されます。相手が気絶している場合には心神喪失であると言えますが、頭を殴ったことにより気絶していたのであれば、強制わいせつとして処罰されます。

なお、被害者が13歳未満の場合には暴行等がなくても強制わいせつ罪が成立する可能性があります。これは相手の合意があったとしても同様です。合意をしても、13歳未満には正常な判断ができないと考えるためです。

その他の性犯罪との違い

他にも近い性格を持つ犯罪類型があります。いくつか簡単に紹介していきます。

準強制性交等罪

これは準強制わいせつ罪よりも重い罪です。わいせつな行為に留まらず、同罪における「性交等」をした場合に該当します。この言葉の意味は刑法の改正によって広く捉えられるように変わり、男女問わず加害者になり得るようになっています。たとえば、膣内だけではなく、肛門、口内に男性器を挿入する行為なども含めて適用されます。そしてその時点で被害者が心神喪失または抗拒不能な状態であることが要件です。

強制性交等罪

こちらは上の「性交等」を抗拒不能の状態によらず、暴行や脅迫を用いて行った場合に該当する罪です。強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪の関係と同様です。

監護者性交等罪

こちらは加害者が被害者に対し、監護をする立場にある場合に適用される罪です。ただ関係性が監護と監護される者であればいいだけではなく、「性交等」にあたりその立場を利用していることが求められます。

合意があっても準強制わいせつ罪で訴えられる?

準強制わいせつ罪は最大10年もの懲役刑に科される、比較的重たい罪です。そして被害者の受ける精神的身体的損害も非常に大きいです。そのため他人を抗拒不能な状態へ陥れわいせつな行為に及ぶということは決してしてはいけません。
しかしながら本人にその意図がないということもあり得ます。準強制わいせつと言えるのかどうか微妙なケースや、冤罪に遭うこともあるでしょう。

合意を得ていたのに被害者に順強制わいせつを主張されるケース

たとえば、準強制わいせつ罪における「わいせつな行為」と言える行いをしたものの、犯罪の意図はなく、相手方の合意も得ていたという場面を考えてみます。
通常、問題とはなりませんが、これがお酒を飲んでいた状況で行われた場合には事件に発展する可能性があります。相手方が合意をしていても、それが飲酒によって正常な判断能力を欠いていたことに由来するかもしれないからです。そうすると、酔いが覚めてから準強制わいせつだと主張されるかもしれないのです。
こうしたケースでは、自身の身の潔白を証明する証拠の存在が非常に重要になります。行為に至るまでの経緯や、普段の関係性、メッセージのやり取りなど、できるだけ抗拒不能とは関係なく同意があったと言えるものを集めなければなりません。

合意せざるをえなかったと主張されるケース

また違うシチュエーションにおいて、合意せざるを得なかったと主張されることにも注意が必要です。
例えば上司と部下の関係性があると、対等である場合に比べて部下は上司の要求を断りにくい心理が働きます。そのためセクハラ行為が準強制わいせつとして認められる可能性が出てきます。
ただし、ただ社内での上下関係があるだけで抗拒不能だと認定されるわけではありませんので、よっぽど断ることのできない状況を作り出したり、普段から服従関係に置かれていたりしたという場合でなければ準強制わいせつの成立には至らない可能性もあります。

これらの事情を被害者側からの視点で見ても、証拠がいかに重要か分かるかと思います。実際に心神喪失・抗拒不能になっていたとしても、その事実を明らかにできなければなりません。
直接的に証明できる証拠を集めることが難しくても、他の事情等から推定できるものを集めることが大切になります。

準強制わいせつ罪については弁護士に相談

準強制わいせつ罪の成立には、「わいせつ行為」をしたこと及び「相手の抗拒不能または心神喪失な状態」に乗じたことが求められます。
しかし説明したように、その評価は簡単にできるものではありません。明らかと言える行為や状況を除いては、証拠を集めることによって成立可否等を争います。また、実際に裁判上で有罪と認められ刑罰を受けるまでにはいくつかの段階を経ることになります。そしてその過程で、加害者側がどのような行動を取るかによって結末は大きく変わってきます。
弁護士はその活動をサポートしてくれる存在です。裁判だけでなく、逮捕前後という段階からもサポートを得られます。そこでどのようなメリットが得られるのか、逮捕後の流れとともに説明していきます。

準強制わいせつ罪での逮捕後すぐでも相談できる

通常は、逮捕されるとまず警察に拘束されることになります。その時間は最大48時間と決まっており、その間に取調べを受けます。
逮捕の瞬間から自由に行動することはできなくなり、自宅に帰ること、家族に会うこともできなくなります。身内からの面会もこの期間はできません。しかし、弁護士だけはここで面会する権利を持っています。

そのため、取り調べでどのような対応をするべきかアドバイスを受けることができるとともに、弁護士を通して家族とやり取りをすることもできます。被疑者と敵対する立場の警察しか周りにいないため拘束された被疑者は精神的にも負担がかかり続けます。弁護士は被疑者の味方として、このつらさを和らげる効果も持つのです。

早期釈放のための活動

警察で拘束された後、検察に移送され最大24時間過ごすことになります。その後検察の勾留請求が裁判官に認められると20日間にも及ぶ勾留が始まります。
弁護士はその間も弁護活動を行いますが、被疑者への負担が大きい身体拘束を解くため、これ以上の拘束が不要である旨訴えかけ、できるだけ早期釈放ができるように尽力してくれます。

被害者との示談交渉と不起訴

逮捕をされていても、裁判で有罪判決が下されていなければ犯罪者ではありません。起訴され、被告人になったとしても同様です。
しかし起訴後の有罪率は非常に高いため、統計的には起訴されないことが重要であると言えます。そこで重要になるのが被害者と示談交渉することです。
示談が成立していれば、被害者の許しをすでに得ていると評価できますので、不起訴にできる可能性は高くなります。また刑事裁判とは別に民事上の争いを防ぐこともできます。

ただし、準強制わいせつ罪の加害者が直接交渉を持ちかけても成立させるのは難しいです。そもそも、加害者本人では被害者の連絡先を聞くことすら困難です。特に準強制わいせつ罪のような性犯罪では加害者本人が交渉することは好ましくありません。そこで弁護士が重要な役割を担います。加害者の代わりに交渉をし、起訴されないようにサポートをしてくれるのです。

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強制わいせつ罪の示談金の相場は?

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準強制わいせつ罪とは、わいせつな行為を、相手の反抗できない状況を利用して行う犯罪です。
強制わいせつとの違いは罪の重さではなく、暴行や脅迫を用いないという手段の違いです。ただしどちらの場合であっても逮捕前から逮捕後、起訴後でも弁護士に相談することの重要性は変わりません。

弁護士は有罪にならないよう、釈放してもらえるようにサポート・アドバイスをしてくれます。示談交渉なども代わりにしてくれ、最も信頼できる味方として活動してくれるでしょう。

刑事事件ではスピードが重要になりますので、「刑事事件に強い弁護士」を探して、なるべく早く相談をすることをおすすめします。

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