量刑とは~刑の重さはどう決まる?量刑に影響する要素
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そもそも量刑とは
量刑とは、裁判所が被告人に対して言い渡す刑を決めることをいいます。
日本の刑法では、同じ罪でも言い渡される刑の内容には幅があります。
たとえば、殺人罪の場合、刑法の条文に定められている刑の種類には次のようなものがあります。
- 死刑
- 無期懲役
- 有期懲役(5年から20年の間で)
つまり、刑法の条文を読んだだけでは、被告人をどんな刑を科すべきかがはっきりしていないのです。
そこで、実際に判決を下す際には、「7年の懲役が妥当か、それとも10年にするのか」あるいは、「死刑にするのか無期懲役にするのか」といったことを、様々な事情を考慮しながら決めていきます。
法定刑と処断刑、宣告刑の違い
同じ罪でも実際に言い渡される刑には幅がある
量刑の決め方について解説する前に、その前提となる知識として
- 法定刑
- 処断刑
- 宣告刑
の意味と違いについて簡単に紹介します。
法定刑
刑法の各条文に定められている刑のことをいいます。実際の量刑では、法定刑の範囲で刑の種類や重さが決められていきます。
処断刑
処断刑は、法定刑に法律上または裁判上刑の加重や減軽をする必要があった場合に、法定刑に刑法総則を適用して導き出したものです。量刑では、処断刑をもとに実際の刑を決めていくことになります。
宣告刑
宣告刑は、被告に実際に言い渡す刑です。
宣告刑は処断刑の範囲内で、犯罪態様などの事情を考えながら決めていきます。
量刑とは、この宣告刑を決める作業です。
量刑の決め方
量刑は次のようなプロセスで決定されます。
- 適用される条文の決定
- 刑種の選択
- 処断刑の決定
- 再犯加重
- 法律上の減軽
- 併合罪の加重
- 酌量減軽
- 宣告刑の決定
適用される条文の決定
まず、どの条文にあてはめるべきかを決定します。
刑種の選択
条文に2種類以上の法定刑が定められている場合は、犯行態様や結果の重さなどを考えて刑の種類を選択します。
処断刑の決定
法定刑をベースに処断刑を決定します。刑を加重・減軽する理由があるときは、刑法の規定を元に加重・減軽します。
再犯加重
一度罪を犯し、懲役刑を受けた人が再び犯罪行為に及んだ場合、刑を加重できる旨の定めがあります。
再犯加重の場合、懲役の長期の最大2倍まで刑が加重される可能性があります。
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法律上の減軽
自分の意思で犯罪を途中で辞めた場合、心神喪失の状態にあった場合などでは、必ず刑が減軽されます。また、自首、過剰防衛などの場合も、刑を減軽することができます。
併合罪の加重
2つ以上の犯罪を行っている場合、併合罪として刑が加重されます。
酌量減軽
被告人に情状酌量の余地がある場合に、裁判所は裁量で刑を減軽することもできます。
宣告刑の決定
処断刑の範囲内で、裁判所が宣告刑を決定します。
量刑を決めるときの判断要素
ここまで見てきたように、量刑では裁判所が大きな裁量を持っています。
それでは、裁判所は具体的にどのような事情を考慮して量刑を決めているのでしょうか。
ここでは、量刑を決めるときの具体的な判断要素をいくつか紹介します。
- 犯行の手段・方法・態様
- 犯行の動機
- 計画性の有無
- 結果の重大性
- 被害弁償の有無
- 被害者の処罰感情
- 被告人の性格
- 被告人の態度
- 被告人の年齢・周囲の環境
- 前科・前歴の有無
- 社会の処罰感情
犯行の手段・方法・態様
犯行の手段や方法、態様は量刑においては重要な判断要素です。
たとえば、共犯者がいた場合では、犯行のリーダー格だった人とそうでない人とでは量刑が変わってきます。
また、傷害罪や殺人罪などでは、凶器の種類や危害を加えた部位・回数なども問題になります。
一般的に、悪質であるほど刑が重くなりやすくなります。
犯行の動機
犯行の動機や計画性の有無も考慮されます。
たとえば、被害者に挑発されて暴行に及んだ場合と、通り魔的に暴行に及んだ場合とでは、前者の方が刑が軽くなります。
通り魔的な犯行や反社会的な動機に基づく犯行は、刑が重くなりやすいのです。逆に、被害者に一定の落ち度があった場合には、情状酌量の余地も出てきます。
計画性の有無
計画性の有無も量刑に影響します。計画性のある犯行の場合は、刑も重くなりやすい傾向もあります。
結果の重大性
被害者の人数や被害の程度といった、犯罪の結果も量刑に大きく影響します。
被害が大きいほど、当然刑も重くなります。
被害弁償の有無
量刑にあたっては被害の回復状況や弁償の状況も重視されます。
示談金を支払うなど被害の弁償があった場合は、被告人に対して有利な事情として働きます。
被害者の処罰感情
被害者の処罰感情も量刑に影響します。処罰感情が強い場合、それだけ刑も重くなりやすいといえるでしょう。
被告人の性格
被告人の性格も量刑に影響します。
被告人の性格から伺える犯罪傾向の進み具合、反社会性、粗暴性などは再犯の可能性や更生の見込みにも大きく影響してくるからです。
被告人の態度
被告人の態度も量刑に影響します。罪を認めて十分に反省しているといった場合では、量刑の判断では有利に働きやすいといえるでしょう。逆に、反省が認められない場合は、刑が重くなる可能性があります。
被告人の年齢・周囲の環境
被告人の経済状態や家族関係、定職の有無などの環境面も量刑に影響します。生活基盤が安定していると、再犯のおそれが少ないと評価できるからです。
また、年齢が若いと更生の見込みがあるとして量刑の判断で有利に扱われることがあります。
前科・前歴の有無
同種の前科や前歴がある場合は、再犯のおそれが高いと評価されて、刑が重くなりやすくなります。
社会の処罰感情
実際の量刑では、社会情勢も影響します。社会の処罰感情が強い場合は、刑も重くなりやすいといえるでしょう。
量刑の相場について
量刑には様々な要素が絡むため、刑の重さを推測することは簡単ではありません。
ただ、実務上は「量刑相場」といって、過去の裁判例をもとに一応の相場が形成されています。
あくまでも1つの目安ではありますが、弁護士も量刑相場をもとに、検察官の求刑や裁判官の判決内容を予想しています。
今後の事件の見通しが気になる方は弁護士にご相談ください。
量刑で有利に扱われるために知っておきたいこと
実際の量刑では、犯行の態様や被害の程度を始め、再犯のリスクや被告人の性格など複数の要素が関係してきます。
ここでは、できるだけ量刑で有利に扱われるために、被疑者側がやるべきことをまとめました。
真摯に反省する
冤罪ではない場合は、自分の犯した罪を真摯に反省することが大切です。態度が悪いと裁判官の心証が悪くなり、量刑に影響を与える可能性があります。
被害者と示談をする
実際の量刑では、被害弁償や被害者の処罰感情も重視されます。
そこで重要になるのが、被害者との示談交渉です。示談をして賠償金を支払い、被害者に許してもらうことは、当然量刑に際しては加害者に有利な事情として扱われます。もし犯罪行為をして逮捕されてしまったら、できるだけ早く被害者と示談を成立させることが大切です。
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刑事事件の量刑の推測は、ふつうの人では難しい
刑を軽くするための取り組みは弁護士に相談を
量刑の決め方については、裁判所に大きな裁量が認められています。事件の内容はもちろん、被告人の生活環境や社会情勢など複数の要素に左右されるものであるため、素人が正確な量刑を推測することは困難です。しかし、弁護士であれば過去の裁判例からある程度は予測可能ですし、示談交渉など刑を軽くするためのサポートもできます。
もし家族や友人などが事件の加害者になってしまったら、早めに弁護士に相談しましょう。
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