刑事裁判の手順~検察による冒頭陳述で本格的な審理が開始される~

冒頭陳述イメージ

刑事裁判の流れ~冒頭手続きから冒頭陳述へ~

刑事裁判の法廷は、被告人にとって今後の人生を左右する重要な場所です。裁判官は刑事事件の犯人と考えられる被疑者を逮捕し、取調べを行ったうえで起訴をしますが、それはあくまでも検察側だけの言い分です。行われた犯罪事実はひとつですが、検察側の見方が必ずしも正確であるとは限りません。

その検事側の主張と、罪を犯したとされる被告人の主張を、法廷において双方から十分に聞き取り、裁判官が審理を進めて無罪か有罪か、有罪の場合は量刑の重さの判決を下すのが刑事裁判です。

裁判所は決して検察側と弁護側が論争してどちらの主張が正しいかを決める場ではなく、裁判官が双方の主張を聞いて審判を下す場なのです。

裁判官は常に公正中立であり、事件に関する情報を新聞やテレビニュースなどで報道されていたとしても、最初は何も知らないという立場で裁判に臨みます。

事件の内容が明らかにされる冒頭手続き

裁判の開始時点で裁判官は、手元に起訴状などの資料は持っていても、それが検察側と弁護側の双方から見てどういう意味を持つのか、内容を確認して主張を聞くことから始めます。

刑事裁判は、まず法廷に立っている被告人が、起訴状に記載されている被告人本人かどうかを確かめる人定質問から始められ、検察側が作成した事件の内容が記載されている起訴状の朗読が行われ、被告人の人権を守るために黙秘権などの告知がされた後、弁護側の被告人と弁護人が、起訴状の事件事実についてどう考えるかを表明する罪状認否へと進みます。

弁護側が罪状認否において示す態度によって裁判の方向性、いわゆる争点が明確となり、次の段階である検察官による冒頭陳述が行われるのです。

被告人にとっては、これまで何度も取調べを受け、何度も聞かされている事件の内容が、冒頭手続きにおいては繰り返して説明されるだけと感じるかもしれませんが、これは裁判官に事件の内容を知らしめるために重要な手続きです。

事前に資料は配付されないものの、裁判の傍聴をするために法廷に赴いた傍聴人に対して、事件の内容を明らかにする意味もあります。

争点が明らかになることは非常に重要なこと

冒頭手続きにおいて、弁護側が検察側の主張を全面的に認めるのか、部分的に認めるのか、それとも全面的に認めず無罪を主張するのかといった違いで、その後の裁判の進み方がまったく違ってきます。

次に説明する冒頭陳述においても、検察側が何を証拠として何を証明しようとしているのかで、弁護側の戦い方も変わってきます。

例えば、被告人のものであるかもしれない物証が事件の現場にあった場合、もし検察側がその段階では証拠として不十分と判断して提出しなければ、裁判官はそれがないものとして審理を進めます。

当然ながら、その物証は被告人のものではないと主張しようとしていた弁護側は、提出されなければ被告人のものではないという主張をする必要はないのです。

これらの裁判の冒頭陳述以降、繰り返される一連の手続きで、主張を臨機応変に変えられる弁護人は、腕の立つ弁護士と言われるでしょう。

検察側の冒頭陳述とは?

刑事裁判の第一回の公判において、検察官は起訴状朗読で、被告人は罪状認否で、この裁判における自分の主張の大きな方向性を明らかにし、そしていよいよ本格的な審理が法廷において始まります。

公判において裁判官が犯罪事実などを認定するためには、その判断の合理的な根拠となる証拠が必要となり、その証拠調べのスタートが検察側による冒頭陳述です。

その際、前述の通り基本的には裁判官が事件についての知識を持っていないという所から始まりますから、まずはこの裁判で扱う事件はどのような事件なのかということを、法廷で明らかにしなければなりません。

そのために行われるのが冒頭陳述と呼ばれる手続きで、刑事事件の場合は検察側から冒頭陳述を始めます。

検察側の視点で事件を説明する

検察官は冒頭陳述において、その訴訟において、どの証拠によってどのような事実を証明しようとしているのかを陳述します。

この手続きは、刑事訴訟法第296条に定められています。

刑事訴訟法

第二百九十六条 証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。

また冒頭陳述では、被告人が犯行に及んだ動機や原因、犯罪が行われた日時、場所、方法、被告人の経歴や前科なども、検察官が具体的に述べていきます。

この冒頭陳述では、事件の内容を起訴状に書かれている内容よりも詳しく説明され、被告人の生い立ちから事件当日に犯行に至るまでの行動、あるいは犯行手口といった事件の詳細な内容も検察官によって陳述されていきます。

この際、事件の流れを説明しながら、逮捕後の取調べで作成された供述調書や具体的な証拠が「甲○号証」とか、「乙×号証」といった番号付きで示されます。

法廷では傍聴席にまで裁判資料は配られないので、傍聴に来ている事件の関係者や傍聴人には詳しくは分かりませんが、裁判官や弁護側には、検察官の持っているものと同じ資料がありますので、その資料を見ながら検察官の冒頭陳述を聞くことになります。

あくまでも、検察側目線で見た事実

ただし、検察官が行う冒頭陳述で述べられる事件の内容は、あくまでも警察や検察といった捜査当局の目線で見た事件であることを知っておかなくてはなりません。

いくら取調べを行って供述調書を作成したからといって、被告人自身がまとめた陳述ではないため、被告人が本当に犯行を思いついたのはいつだったのか、犯行の後に被告人は何を思ったのかなど、警察の捜査官や検事の想像が含まれる可能性は否定できません。

また冒頭陳述は、捜査段階で被疑者が取調べで語った供述調書を元に作られていますが、警察や検察による取調べは密室で行われている以上、捜査当局による誘導尋問が行われている可能性もないとは言えません。

警察や検察の立場からの説明であることを考慮せず、冒頭陳述の内容をそのまま受け入れてしまうと、審理の冒頭から被告人が犯人だという断定的な印象を持ってしまいます。

裁判官は検察側だけの主張をのみ採用して審理を進めて判断をすることはありませんが、もし傍聴席に座っている関係者が聞いたら、被告人は検察が言う通りの罪を犯したに違いないと考えてしまうので、十分な注意を持って冒頭陳述を聞く必要があります。

弁護側の冒頭陳述とは?

検察側による冒頭陳述が終了すると、弁護人による弁護側の冒頭陳述が行われることがあります。これは裁判員裁判などを除き、必ずしも求められることではありませんが、弁護側が要請し裁判官が認めた場合に行われるものです。

裁判官にとって、検察側だけの冒頭陳述を聞いただけの事件の印象と、弁護側の冒頭陳述も聞いた場合の事件の捉え方は違ったものになる可能性があります。そのため、この冒頭陳述を弁護側から請求し、何を述べるかは弁護人の腕の見せ所と言っても良いでしょう。

なお、裁判員裁判においては、被告人側から見た事件の事実を知らしめるために、弁護側の冒頭陳述は必ず求められます。

弁護側の冒頭陳述が行われないケース

最初から被告側が、検察側による起訴容疑を全面的に認めている量刑裁判の場合、弁護側が冒頭陳述を行わないケースが珍しくありません。

事件事実や起訴内容に関しては、特に争う必要はないわけですから、検察側と同じ罪を犯す被告人の様子を冒頭陳述で語ったとしても、被告人のメリットにはならないからです。また、検察側と似たような内容の冒頭陳述を行うことは、時間の無駄で時間稼ぎと裁判官に捉えられてしまう恐れもあります。

以上のような理由で、裁判員裁判以外の刑事裁判で弁護側が冒頭陳述を行うのは、起訴容疑を真っ向から否定して、被告人が無実を主張する否認裁判の時が多いのです。

否認裁判で弁護人が行う冒頭陳述は、まるで推理ドラマのように、検察官の行ったそれと比べると同じ事件なのにまったく違った解釈となります。もちろんこの弁護側による冒頭陳述は、検察官とは反対の弁護人目線でみた事件となりますので、それが真実であるとは言い切れません。

冒頭陳述の大切さ

第三者的視点で裁判を傍聴に来た傍聴人にとっては、否認裁判の冒頭陳述はドラマ性があり興味が持てる展開かもしれませんが、裁判官は真逆に思える検察側と弁護側、双方の主張から真実を見つけようとします。

量刑裁判ではあまり行われない弁護側の冒頭陳述ですが、事件の印象を最初に決める重要な手続きであるとも言えます。

刑事事件の裁判弁護に強い弁護士は、多くの経験を積み、こういった場合にどう戦略を立てて進めるのが良いかを熟知しています。多くの弁護士を比較し、自分の状況に合った人を選ぶことが大切です。

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